【R-18G】命散るとき、花は咲く――ファイアーエムブレム無惨 作:無為庵閑人
異様極まりない行為は一昼夜続いた。もちろん、死人に恥という感情はないので衆人環視の下でもまぐわい続けた。だが、それも1日のことだった。オグマの死体にかかっていた魔法が切れ、シーダに覆いかぶさるようにして動かなくなっていた。オグマの死体は暗黒魔導士が運び出した。ゾンビが死体をレイプするという現象が興味深かったのか、司法官の許可を得て実験材料として運び込んだらしい。
死者同士のセックスというおぞましい見世物が終わると、シーダの腐乱死体は再び大地に投げ出された。
シーダを犯す人間はいなくなっていたが、新たな凌辱者たちはもうすぐそこに近寄っていた。臭いを嗅ぎつけた烏と野犬、それに野良猫に鼬だ。見張りたちは、埋葬のためにシーダの遺骸の奪還する者を撃退する任こそ受けていたが、こうした動物たちを追い払うことは指示されていなかった。それに強烈な死臭を避けるために見張り小屋に退避していたため、獣たちは見張りを恐れることなく御馳走に集まり始めた。
烏は獄門台の、シーダの頭蓋骨にへばりつく腐肉を、蟲ごとついばむ。犬は大地に転がされていた腐肉の塊に貪りついた。烏の中には胴体の中でも特に柔らかい腹とその奥にある臓物を狙うものがいたが、犬との争いとなり、撃退されていた。結局、最も栄養価に富む内臓は犬の腹の中に納まった。マルスと愛を育み、彼の子を宿し、育て、産むはずだった卵巣と子宮も野犬共の昼飯となり果てた。夜には犬に代わって猫や鼬などの小型の獣が指などの細い部分の肉を舐り齧る。
いつの間にか死体を漁るものたちの間で、食事の時間帯と場所についての紳士協定ができていたようだ。
体が食われだしたことで、遺体はみるみるうちにしぼみ、今度は元の半分程度にまで縮んだ。だが、捕食者たちに肉も脂も内臓も、もりもりと喰われているため、さらに小さくなるのは時間の問題だった。
シーダが捕食者の餌食となって四日ほど経った。
白木の台から首は消えていた。そこにはシーダの肉に群がっていた烏の羽根と乾いた糞、それで固められた髪の毛の一部しか残っていない。
誰かがシーダの首の奪還に成功したのか。
だが、よく見ると獄門台の下に、頭頂部で二つに割れ、下あごが外れた髑髏が転がっている。檀上にあった首は、その肉を最後の一切れまでついばもうとする烏によってつつき落とされてしまっていたのだ。その衝撃で頭骨はパッカリと割れてドロドロに溶けた脳味噌だった腐汁が大地にぶちまけられたが、それも獣たちにいつの間にか貪られていた。
食い残されたシーダの屍は、秋風に吹かれて干からびた肉と脂肪と皮が骨にへばりついたミイラになった。わずかに残った肉は完全に真っ黒となっていたが、早くもカビに冒された部分は青・赤などの毒々しいカラフルな色で染まっている。マルスと一度だけ愛し合ったときにたっぷりと愛でられた乳房は、脂肪分が多すぎて獣たちもすぐには飛びつかなかったせいか、萎びてはいるものの一番多く身が残っていて、唯一原型らしきものをとどめている。手足の肉はほとんどが食いつくされており、骨の方が多い。腹はもっとも凄惨で、獣の食い散らした歯形の残る肉と内臓の残骸がぐちゃぐちゃになっていた。肋骨の辺りは空洞で、涼しい風が吹き抜けていく。
シーダの「罪状」が書かれた捨て札に、誰かが冗談半分に「元王女、雌豚を経て、今雌犬」という文言を足していた。確かに遠目からは、もはや人間の遺骸なのかどうかさえも判別がつきにくく、大型犬のミイラといえば、そうにも見える。