彼女は強く大きく逞しい忍獣に、女として惹かれています。
獅子との間に仔を成すためには手段を選ばぬほどに……。
Skebにてご依頼を受け、執筆した作品です。
お楽しみいただければ幸いです!
岩塔が立ちならぶ峡谷を、ひとりの女が見下ろしていた。
須弥山に吹く風は強い。彼女の長い髪が巻きあげられた。その隙間から怜悧な瞳と朱色の唇が覗く。高い鼻梁、細い顎。誰もが美女と認めるだろう。
どのような意味が込められているのか。彼女の左眼の下には、二本の線が刻まれている。
背がすらりと高く、胸は豊かに張りだす。グラマーな肢体である。
それを包むのは、煽情的な真紅のボンテージだ。何本ものベルトが肌を縛り、白さと滑らかさを強調する。
美女の名は弐という。奇妙な名だ。しかし人造の存在なれば、最低限の区別がつけば問題ない。彼女自身も、充分だと思っている。
「!」
髪色と同じの、芥子色の瞳がきゅぅっと細められた。眼下になにかを見つけたのだ。
峡谷を疾走るふたつの影だった。それらはみるみる間に大きくなる。岩塔を蹴って駆けのぼり、やがて弐の前に、二頭のジャッカルが馳せ参じた。
「グルルル!」
彼らは遮光器土偶のような奇怪な兜と、武装付きの鎧をまとっている。四足で立っているにもかかわらず、その体高は弐よりも大きい。
しかし美女はなんの気負いも見せない。むしろ傲岸さを含めた視線で、二頭を見据えた。
「首尾はどうだい?」
「アォォオンッ!」
問いかけに対し、胡狼たちは高く吠えた。その響きだけで弐は、彼らが任務を完璧にこなしてきたことを知る。
張りつめた美貌がふっと綻んだ。
「ふふ……さすが、アタシの可愛いお子たちだ!」
声の響きも柔らかなものへ転じる。ジャッカルたちは尾を振ると、揃って伏せた。
彼女の表情もすっかり変わっていた。配下へ向ける冷徹なものから……厳しさと優しさを併せ持った、母のものへ。
「卑留呼さまもお喜びだったろう? なにせ、計画が進んだんだからね」
言いながら弐は、ジャッカルたちの兜と鎧を外してやる。彼らは訓練された忍犬だ。装具を自ら着脱することができる。それでも美女は部下を、いや。我が仔を労ってやりたかったのだ。
「本当に、よくやった!」
人間より遥かに大きな獣である。頭を撫でるには腕全体を使う必要があった。ジャッカルたちは精悍な顔つきをしているが、今ばかりは心地よさそうに目を細めている。
仲睦まじい一人と二頭の上に、ぬっと影がかかった。弐は振りかえる。
「あなた……。この子たちがまた、卑留呼さまのお役に立ったんだよ!」
美女があなたと呼んだもの。それはジャッカルよりもさらに大きい四足獣だった。獅子と呼ばれる忍獣である。
スマートな印象の胡狼に比して、彼の体躯も顔貌もずんぐりとしていた。分厚い身を支える四足は短く、奇蹄が地面を踏みしめている。
獅子をあなたと、胡狼たちをお子と、美女は呼ぶ。弐は心の底から彼らを家族だと思っている。それは彼女が忍獣使いだから、という理由ではない。
美女とジャッカルの間には言葉どおりの、血の縁があるのだ。
「また血継限界の忍者を取りこまれて……。卑留呼さまの望みが叶う日も、もうすぐだね」
主の計画は順調に進んでいる。被造の存在である弐にとって、それはなによりの喜びだ。しかし、それと同じくらい……いや。それ以上の幸せが弐にはあった。
卑留呼は弐に休息を許した。よって彼女は家族団欒の時間を楽しむことができる。
神殿の一室で一人と三頭が横たわる。弐の左右にはジャッカルたちが。そして背後には彼女たちを包みこむようにして、獅子が身体を伸ばす。
「はぁ……」
美女はうっとりと息を吐く。毛皮をまとう彼らに囲まれていると体だけでなく、心まで温かくなるようだ。
すっかりリラックスした彼女は、家族と呼べる存在を手に入れるまでのことを思いだしていた。
◇
五つの血継限界を鬼芽羅の術にて取りこみ、完全忍者となる。そんな野望を抱く卑留呼の手足として働くため、弐は造りだされた。
しかし被造の存在だからといって、主への貢献だけが彼女の欲求ではなかった。
「あなた……いらして」
弐は今日もひとり、須弥山の開けた岩場に立つ。朱唇を開いて印を結ぶと、轟音とともに巨体の獅子が口寄せされた。
「グルルル……」
鼻息とともに唸りをあげる彼を、ぽぅっと見上げる。
異形の存在であることはわかる。しかし……。彼は大きく、強く、逞しい。そんな存在に女として惹かれていた。
獅子もまた、牝から向けられる欲情に応える器量があった。
「ねぇ、あなた。今日も」
弐の呼びかけに獅子は応じる。ごろりと仰向けになると、四肢の力を抜いた。ヘソを天に向けた腹はまるで、毛に覆われた小山のようだ。
全裸の美女は軽く跳躍すると、その上に乗る。
「もう大きくしてる……」
後足の間にはすでに、期待の証が示されていた。
獅子の牡性器は包皮から飛びだし、濃桃色の抜き身を露わにする。その長さは弐の身長を、太さは弐の胴回りを優に越えている。
長大すぎる逸物を前に、いそいそと準備を始めた。身体に巻きつくベルトを全て外す。前垂れとボンテージが解かれた。美女の肌が露わとなる。
真っ白なデコルテから、みっしりと実った膨らみが揺れる。くびれた蜂腰から張りだした臀部まで、悩ましいカーブを描かれていた。
豊満でありつつも、均整を保つ女体だ。そして巨房の先端を飾る乳首は、少女のごとき桜色をしている。細部に至るまで美しい。さすが被造の存在というべきか。
「ふふふ……」
そんな極上の肢体を以て、弐は獅子のペニスをぎゅっと抱きしめた。表面に生える無数の陰茎棘が白肌を刺す。強い知覚がさらに愛おしさを引きだしてくる。
芥子色の髪が液汁で濡れた。縦割れの尿道から先走りが流れてきたのだ。
「んん……」
獅子は巨躯の持ち主である。分泌する体液の量も桁違いだった。カウパー液だけで弐の顔貌が覆われ、首元にまで滴りおちる。
鼻腔を満たす獣臭と唇内に流れこむ苦味が、ますます美女を燃えたたせる。
「はぁ……っ、あつい……」
うっとりと呟くと淫欲に任せ、さらに強く牡性器を抱きよせる。柔い内腿で大きく撫でこすると、巨肉棒は根元からぶるりと震えた。
「んん……っ」
肢体をぴたりと寄せているのだ。淫裂も擦りつけることとなる。包皮越しの陰核が潰れ、悦電が尾骨に染みこむ。蜜がとろりと漏れだし、陽根と陰花弁は境をなくすがごとく密着する。
「ふっ、ふぅっ……」
豊房ももちろん奉仕に用いる。双つの胸乳を離し、その隙間を牡性器に挟みこむ。
どこを触っても蕩けるように柔らかな肉だ。しかし陰の部分は特に絶品である。愛するものに味わってほしかった。
「はっ、はぁっ……はぁぁっ!」
なめらかな白肌すべてを使って愛撫を施す。忍びといえどその行為は過酷だった。先走り汁で濡れる弐の額にも汗が混じりだす。
献身的な性動に獅子も応えた。
「オ、オォォッ!」
玉袋が収縮し、肉棒が痙攣する。射精の気配ははっきりとしていた。弐は身体を滑らせると、ペニスの先端まで顔を寄せた。
「んん……んちゅっ、ちゅうっ……」
そしてトドメとばかりに。亀頭へ口付けの雨を降らせる。縦割れの尿道はさらにひくつきと、カウパーの滲出を増す。
牡性器から伝わる熱が高まった。そう思った一瞬後、白濁液が噴きあがった。
どくっ! どくんっ! どくんっ!
「むぁっ……! あぁぁ……!」
視界は一瞬で白濁に覆われる。開いた唇内に熱い胤汁がなだれ込んだ。全てを受けとめようという気概はあったが、もちろん叶わない。それでも弐は精いっぱい、獅子の精を取りこもうとする。
どくんっ! どくんっ! どぶっ!
「お、おぉぉ……っ」
迸りが止む気配はない。抱きしめた肉棒は拍動を続ける。振りおとされないように、弐はぎゅっとしがみつく。
それでも奉仕は忘れない。敏感な裏スジに唇を寄せ、長く伸ばした舌で舐めまわす。彼がより多くの胤を吐きだせるよう、快楽を供給する。
「はぁっ、はぁっ……。あぁぁ……っ」
火山の噴火にも似た射精は、やがて終わった。
文字どおり、頭から胤汁を被ったのだ。長い髪にも豊かな肢体にも、たっぷりと粘汁がまぶっている。余りに濃い獣臭で、脳の芯が痺れたようになった。
「んん……ぢゅ、ぢゅるっ……」
淫熱に浮かされた弐は、白濁液を手に掬いとる。椀型にした両掌いっぱいになった。口を付けると音を立てて飲みくだしていく。
精虫をたっぷりと含む胤汁。それを摂取したことで、弐の欲望はますます高まる。美女はいまだそそり勃つ、獅子の牡性器に視線を送るが……。
(さすがにこれを挿れるのは……)
興奮の最中にあっても、性交は不可能と判断せざるを得なかった。
弐はただの女ではない。被造のくノ一だ。それでもやはり、己の胴部よりも太い逸物を膣内に招きいれるのは叶わない。
「…………」
最も愛するものと繋がることできないのだ。ならばせめて、彼の仔をこの身に宿したい。
弐は獅子の精液を、再びたっぷりと手に取った。粘った汁はいまだ熱を帯びている。青臭いにおいが漂い、下腹が疼いた。
獅子の腹を寝具にし、美女もごろりと寝転がる。
「ん……」
左の二指で淫裂を大きく割る。愛蜜がにちゃりと糸を引いた。そのまま、胤汁をたっぷりとまとわせた右の二指を胎内へ埋めた。
全身を使った牡性器愛撫により、彼女自身も昂っている。あっさりと最奥まで行きついた。
「あぁっ!」
腹の最奥、こりりとしたものに行き当たった。胎袋と膣腔をつなぐ子宮頸部だ。鋭敏な肉輪は全身が引き攣れるほどの快楽を発する。足先がひとりでにピンと伸びた。
「ん……んんっ!」
獅子の精子が狭路を通りぬけ、子袋に漂う卵子と出会う。それを望む弐は、しつこく擦撫を続けた。
豊かな胸房にも淫火が灯りだす。先端が切なく疼き、桜色の乳首が勃ちあがった。
「はっ、はぁ……!」
気がつけば細い指先が、たわわな膨らみを掴んでいた。五指の隙間から柔肉がこぼれるほど強く掴む。ぬるぬるとした胤汁が密着感を増幅させた。
懐妊を願う行為だが、ローションを用いた自慰のようなものだ。昂って当然だった。
「ん……んんぅっ!」
獅子の精液を内外に塗りたくりながら、弐は絶頂に達した。
己の最奥、子袋へ至る門扉を想像する。快楽を浴びたそこはぱくぱくと口を開き、愛するものの胤を取りこんでいく。そして……。
(今回こそ、孕みたい……)
しかし詳細なイメージと熱烈な望みを以てしても、彼女の期待は裏切られる。弐が獅子の仔を妊娠することはやはりなかった。
◇
「卑留呼さま。追い忍を捕らえました」
ある日のこと。弐は須弥山に入りこんだ忍者を発見し、昏倒させた。今は神殿の一室に拘束している。
主の卑留呼は度重なる人体実験の末、里を追われた。その命はいまだに狙われている。彼の身を守ることも、被造者の重要な役割だ。
「秋道一族……倍化の術か」
監禁場所の映像を投影すると、卑留呼は呟いた。かつて所属していた、木の葉の里から遣わされた忍びである。彼らの秘伝忍術はもちろん承知していた。
「わが身に取りこむには物足りないな」
卑留呼はそう続ける。それから右の袖をちょっと揺らした。
「不要だ。処分しろ」
「はい」
極めて簡便なやりとりの末、追手の命運は決まった。
弐は彼を捕らえた部屋へ向かう。バンザイをするかのように磔にされた男は、静かに目を閉じている。しかし意識は戻っていたらしい。
「殺すならさっさと殺せ」
はっきりとした発声でそう言いはなつ。
追い忍を任されるほどの手練れである。失敗すれば命はない。その掟を心底から理解しているようだ。
「えぇ。すぐに始末して……」
太い首に鞭を巻きつけた時。弐はふと閃いた。
(倍化の術……)
秋道一族の秘伝忍術は、身体を膨張強化する。これを使えるようになれば……自分の念願が叶うのではないか?
弐の脳裏に鮮やかに、獅子の巨躯と巨根を受けいれる己の姿が見えた。
「気が変わった」
そう言うと鞭を放りだす。そして縛りつけられた男に身を寄せた。豊かな胸房を押しつけられ、稀な美貌が接近し、男はにわかに動揺しはじめる。
しかし彼女が繰りだすのはもちろん、色仕掛けなどではない。
「鬼芽羅の術」
「なっ……!?」
次の瞬間、男の表情が固まった。美女と自分。その境が泡立ちはじめたと気がついたのだ。
主のように、血継限界を持つ忍者を取りこむことはできない。しかしそうでなければ、部下たちでも合成合身の禁術を用いることができる。
「や、やめろ! たのむ! やめてくれぇっ!」
潔い覚悟を見せたはずの男は、情けない命乞いを始めた。任務の中で死ぬ覚悟はあったのだろう。しかし捕食されることは想定していなかったようだ。
もちろん、弐が聞きいれることはない。
「あ、あぁ……」
ぶくぶくと音を立て、鍛えあげられた身体が細胞の一片にまで分解される。侵食は頭にも及んだ。顔形が崩れるだけでなく、脳に刻まれた中身も奪われていく。
「ふふ……これで……」
間もなく、磔台にかけられていた男は影も形も消滅した。この場に存在するのは、頬を上気させた美女だけである。
◇
弐は、秋道一族の者を鬼芽羅の術にて取りこんだ。それは彼が備えていた秘伝忍術も我が物にしたことを意味する。
その日の夜。弐はさっそく獅子を、須弥山の岩場へ呼びだした。
「あなた……。ついにあなたと、交わる時が来たよ」
開けた野外にもかかわらず、美女はすでに白肌すべてを晒している。
解き放たれた双房が重たげに揺れる。先端を飾る桜色の飾りは、彼女の期待を示すかのように持ちあがっていた。
強い風に全身を撫であげられ、美女はぶるりと全身を震わせた。子宮の疼きに合わせて、くびれた蜂腰がひとりでにくねる。
昂る心を、弐は努めて落ちつかせる。そしてチャクラを練りあげ、印を結んだ。
「超倍化の術!」
弐の身体が大きくなっていく。しかしその美貌も肢体も均整を保ったままだ。
やがて彼女の背丈は獅子の全長と並んだ。充分に交わりを果たせるサイズだ。神殿の一室で行っていたら壁を破っていたかもしれない。
「ッ……!」
美女は感極まり、声にならない声をあげる。しかしまだ早い。ゆっくりと寝転がると大きく脚を開き、腰を少しだけ持ちあげる。
その姿は交接を待ちのぞむものに他ならない。ゆえに言葉を持たぬ彼も意を十全に組みとる。
広げた脚の間に獅子が入りこんだ。小山のごとき巨体にのしかかられても、己の身体はびくともしない。秋道一族の秘伝忍術は完璧に扱えているようだ。
(あぁ……ついに……!)
愛しい存在と交わることができる。その感激から、女の準備はすでに整っていた。期待に湧く子宮口が涎を垂らす。濃い愛蜜が淫裂から溢れるほどだ。
獅子も同様だった。怒張した牡性器を女孔に押しつける。そのまま腰を進めていった。
ずずず……!
「! あぁぁッ!」
弐は大きな声をあげた。そこに含まれるのは快楽ではなかった。
獅子のペニス。その表面には何本もの棘が生えている。白肌にも引っかかるのだ。粘膜に発生する痛苦は、くノ一でも耐えられぬほどだった。
ただならぬ弐の様子を見て、獅子は身を引こうとした。しかし。
「い、いいから……! そのまま、来て……!」
美女は下から脚を絡めた。愛する存在との、念願の交合なのだ。痛みなどに邪魔されたくない。
獅子の胴部を抱きよせたことで、陰茎棘はさらに深く強く、膣腔に食いこんだ。美女の額に悩乱の縦ジワが刻みこまれる。
弐の覚悟が伝わったのか。獅子はそのまま腰を進ませてくる。その度に硬い肉棘が、膣ヒダをぴんぴんと弾く。
「ふっ、うぅぅう……あぁぁッ!」
嗜虐的な牡性器に胎内を占領されていく。脂汗が全身から噴きだした。
低く唸りつづける弐だが、彼女の知覚は少しずつ変わりはじめていた。
ずずっ!
「あはぁっ!」
亀頭が膣奥に迫る頃にはすっかり、陰茎棘の痛みは去っていた。今や悦楽だけが下腹を満たしている。
愛するものとつながりたい。そんな願いが肉体を超えたのだ。弐の悩乱を見た獅子は、巨大なペニスをさらに押しこむ。
ずんっ……!
やがて一人と一頭は完全に合身する。腹と腹とがくっつき、美女は獅子の重さと温かさを味わう。
「あぁ……あなた……もう少し、このまま……」
獣の胴に脚を絡め、頭を両腕でかき抱く。弐は少女のようにうっとりと、吐息を吹きかけた。
獅子はその言葉に従う。舌を伸ばし、美貌をぺろぺろと舌撫した。恋人同士のようなやりとりだ。弐は震えるほどの感動を覚える。
しかし震えの理由は徐々に、別のものに代わっていく。尖肉を埋められた腹奥が疼く。腰がもじもじと動きだした。
「あ、あなた……。アタシ、もうッ……」
芥子色の瞳を蕩けさせ、獅子を上目遣いで見上げる。深くつながっているのだ。彼もまた、弐と同じ願望を抱いていたに違いない。
ずっ、ずずっ、ず……!
「あ! あぁぁ……ッ!」
膣奥から淫口に向けて、性撃が移動していく。獅子の引き腰に合わせて、無数の肉棘が膣ヒダを弾く。ぱちぱちとスパークするような快感が脳に閃いた。
膣腔はいつしか、溢れんばかりの愛蜜に満たされていた。獅子のピストンは極めてスムーズになる。
ずちゅっ! ずぢゅっ! じゅちっ!
リズミカルな水音が、岩塔の間に奏でられる。
肉に響く快楽はしっかりと蓄積していた。視界が徐々に白光に包まれていく。天上界へ押しあげられるようだ。弐は抗うことなく身を任せる。その瞬間は間もなく訪れた。
「あぁ……あなたぁ……!」
愛しいものを呼びながら、美女は絶頂に至った。牡性器を抱きしめるように膣腔が緊縮する。内腑の中で子宮は震えながら広がる。胤を多く受けとる準備だ。
どくんっ! どくっ、どくんっ!
幹竿を強く締めつけられ、亀頭をくすぐられ。獅子も合わせて射精に達した。
肉棒は根元まで埋まり、尿口と子宮口はしかと密着している。胤汁は余すところなく、弐の胎内へ送られた。
「はぁぁあ……! あぁッ!」
獅子の吐精は常より長い気がした。空を射つより、己の胎へ注ぐ方が快いのだ。それを知った弐は心をも満たされていく。
「はぁっ、はぁっ……」
獅子から種付けを受ける。念願がついに叶った。弐は愛するものをかき抱いたまま、心地よい余韻に浸る。
しかし欲望に限りはなく、それは人造の者でも変わりはない。すぐにまた新たな望みが頭をもたげた。
「あなた……アタシ、まだ……」
言いながら一旦、獅子を遠ざけた。肉棘を生やす牡性器はいまだ硬さを保っている。敏感になった弐のナカを掻きまわした。
「あっ……!」
性悦に痺れながらも体位を変える。今度は地面を背負うのではなく、腹を向けた。
四つん這いになると、胎中の重さを確かに感じる。獅子の胤汁をしかと受けとめたと知り、嬉しさが込みあげた。
「ふっ、ふぅぅ……」
淫裂も尻穴さえも高々と掲げ、印を結ぶ手を自ら封じる。羞恥を煽るだけでなく、無防備極まる格好だ。
しかし弐に不安はない。愛するものがすぐ傍にいるからだ。
ずずずずっ!
「あぁッ!」
大量に射精され、深い法悦にも至った。弐の胎内は熱い潤みに満ちている。獅子の牡性器はあっという間に、最奥に達した。
巨獣の前足はがっしりと、美女の柳腰を抱えこむ。彼はそのまま性運動を繰りだした。
ぶぢゅっ、ぐちゅっ、ぐちっ! ぐちょンッ!
粘った水音が岩塔の狭間に反響する。蜜壺の中で白濁液と愛蜜が掻きまわされる音だ。結合部からは淫臭さえ漂いだす。その生々しさが弐の性感を掻きたてた。
「はぁっ、あ! あ、あぁぁあ゛……!」
掌と膝には巨体の重さと抽送の勢いが加えられる。内腿がぷるぷると震えた。しかし苦しさなどあるはずはない。それらの大きさはそのまま、愛されているという証明になるのだから。
「あっ、あはぁ……っ、あぁっ!」
棒肉を奥まで突きこまれると、腹の毛が尻穴をくすぐった。思わず笑いだしそうになる。そんな掻痒感すらも悦感に転じていく。
獣の体位を堪能する弐だが……ふと、違和感を覚えた。
「……? あぁッ!?」
胎内の圧迫感がにわかに膨れあがった。手と膝への負荷も急激に増す。四つん這いの姿勢を保つことも困難になった。
獅子の体躯が大きくなったのだろうか。違う。
(ま、まさかっ)
自分の身体が縮みはじめている。弐はそれに気がついた。
超倍化の術はチャクラだけでなく、カロリーの消費も激しい。秋道一族は補助の手段を用意しているが、弐にはない。術を奪っただけでは不完全だったのだ。
まず四肢が限界を迎えた。手足は伸びて、突っ伏してしまう。
「!」
獅子も異変を察知した。己の巨体と硬い地面とで美女の肢体をサンドイッチすれば、気が付いて当然だ。
巨獣は自ら性交を中断しようとした。しかし。
「し、心配いらない……! だから……っ!」
それを拒んだのはまたしても、美女の方だった。
肉だけでなく骨さえも軋んでいる。しかしやめるわけにはいかない。弐は下から、必死に呼びかけた。
「…………」
獅子は吠え声すらあげない。しかし彼女の決死は確かに伝わったらしい。四足を広げて地面に深く踏んばる。うつ伏せとなった弐に、完全に覆いかぶさった。
ずちゅっ! ずぢゅっ! じゅぼっ!
「はぁ……あ゛! あぁあ゛!」
地鳴りが須弥山に響きだす。抽送はいきなりラストスパートに入った。
長引かせるとそれだけ弐の負担になる。ならばいっそ早めた方がいい。巨獣はそう判断したのだろう。
「お゛っ、おぉ……っ、おぉ゛!」
弐はありったけのチャクラを込め、超倍化の術を維持することに集中する。性交に必死の彼女を邪魔するものがあった。愛するものからもたらされる、快感だ。
「ふぅっ、うっ! うぅぅぅう……!」
美女の腹は堅い地面に接している。胎内を突きこまれると子宮口が亀頭に押しつぶされ、悦刺を逃がすことができない。意識が飛びそうな悦楽が下腹から湧きあがる。
幸い、獅子の絶頂は早めに訪れた。
どくんっ! どくんっ! どく、どぷんっ!
膣内射精が再び見舞われる。
人造の美女が惹かれるほどの強雄である。二度目の迸胤であるのに、勢いも量も熱さも、全く翳りがない。
注ぎこみを終えると、獅子は速やかに弐の上から退いた。
「はぁッ、はぁッ、はぁッ!」
途端に美女は、荒い呼吸を始める。
限界をとうに超えた弐の身体は、元の大きさに戻っていた。一指を動かすことすら困難だった。
しかし彼女はなんとか、うつ伏せから仰向けに体位を移した。そうしなければ苦しみから逃れられないからだ。
「う、うぅ……っ」
天に向けた彼女の腹。そこは戯画のカエルのごとく、ぽっこりと膨らんでいた。膣腔に留まった液汁は、吐息とともに噴きでるが……。子宮に浸入りこんだものはそうもいかない。美女の胎内で熱さを保ち、渦巻きつづける。
均整の取れた肢体はもはや見る影もない。しかし弐はそこに、幸せな連想を見出していた。
(これは、まるで……)
これはまるで、獅子の仔を妊娠したかのようではないか。
己の指で胎に胤を送りこんでも、ついぞ実るのことはなかった。しかし今回は直に、溢れるほど注がれたのだ。
「ふふ……うふふ……」
愛するものと交わるという念願は叶った。ならばもうひとつの念願も、現実になるのではないか?
チャクラを搾りきった気だるさも、腹を満たす精の重さすらも甘く感じる。弐は幸せな未来を夢見ながら、気を失った。
◇
部下に起こった変化は日ごとに大きくなっていく。もはや見過ごすことはできない。卑留呼は弐を呼びだした。
この場には壱と参も同席した。彼らももちろん、同胞の異常を察している。その先……すなわち、大きく膨らんだ美女の腹に視線を送っていた。
「はい……。倍化の術を用いて獅子とまぐわい、その子を孕みました」
美貌をぽっと赤らめると、弐は正直に報告する。
卑留呼の口元は包帯で覆われている。表情は読みとりづらい。しかし露出している双眸の間に、わずかに皺が寄った。
「…………」
無言の卑留呼の前で、壱と参は顔を見合わせている。ややあって、参の方が口を開いた。
「なぁ……。それ、堕ろした方がいいじゃないの?」
「はぁッ!?」
弐はいきなり激昂する。柳眉を吊りあげ、同胞を睨みつけた。次は壱が代わった。
「だって、なにが産まれてくるかわからないだろ?」
「っ……!」
そのとおりだ。どんな存在が成されたかは、誕生するまでわからない。それが異種間の交雑というものだ。産まれたものが己だけでなく、主を脅かす可能性もある。
弐も内心ではその懸念を持っていたのだろう。一瞬、言葉を詰まらせた。しかし。
「絶対に産む! アタシと……あのひとの子どもなんだ!」
全てを振り切るように叫んだ。目元は涙で光っている。いかなる状況でも、感情を表に出すべからず。アカデミーの生徒でも知っている心得さえ、弐は忘却している。
彼女の設計をしたのは卑留呼自身だ。入力をしくじるはずなどない。
「わかった、わかったって……」
弐の迫力に壱も参も早々に降参を選んだ。美女は次に、主に対して視線を向ける。芥子色の瞳は真剣そのものだった。
「卑留呼さま。後生です。どうかアタシにこの子たちを、産ませてください……!」
「……わかった。許可しよう」
主の言葉を聞き、弐は表情をぱっと明るくさせる。壱と参は何か言いたげだが、顔を見合わせるばかりだった。
部下たちを残し、卑留呼は部屋を後にした。
「…………」
ぺたぺたという足音を神殿に響かせながら、卑留呼は考える。
合成合身の禁術に手を染め、血継限界の能力をも取りこんだ。己はもはや、化外の存在と言ってよい。
しかし人間としての感覚を完全に喪失したわけではなかった。
(なかなかに、理解しがたいな……)
鬼芽羅の術の実験だけではない。諜報や潜入にも使えるかと考え、女性型人造人間の容姿は見目麗しくデザインした。
そんな彼女が対極ともいえる醜獣に惹かれ、危険を省みず、仔どもさえこしらえた。造物主でも予想できなかった行動である。
人体実験などもう何度も行った。その規模も内容も里を追われるほどのものだ。しかし弐の異常性は、自身とは明らかに方向が異なる。
華やかな美貌を歪ませ、均整の取れた肢体へ獅子を招く。その様を想像すると……。
「むぅ……」
卑留呼はひとりで歩きつづける。彼の眉間の皺は、ますます深くなっていくのだった。
◇
卑留呼から出産許可が出て間もなくのこと。弐は臨月を迎えた。
彼女は成熟した女体の持ち主だ。それでも赤仔を収めている腹は、滑稽なほど膨らんでいる。豊かに実った胸房よりも遥かに大きく突きだし、内股でよちよちと歩かないと、重さを支えきれない。
胤をもたらした獅子は、小山のような体躯の持ち主だから。そればかりが理由ではなかった。
(双子だったのは、嬉しいけど……)
彼女の子宮には二頭の仔が宿されていた。初産でありながら、二回の分娩を遂げなければならない。美貌に不安の陰が落ちていた。
しかし逃げだす選択肢などあるはずもない。ボンテージを脱ぎすて、全裸になった。
「グルルル……」
「あなた……ありがとう」
分娩の場には獅子も立ちあった。彼の存在が心の支えとなってくれる。
獅子は横座りになった。鼻を鳴らして弐を招く。美女はひとつ頷くと、獣腹に背を預けた。そして大きく両脚を広げる。
内股の筋に引っ張られ、ぼて腹の下、縦割れの姫孔が口を開いた。
どっ……くん……、どっ……くん……。
獅子とぴたりと密着している。非常にゆっくりとした鼓動と、高い体温が伝わってきた。
ここは土壇場である。しかし愛するものの存在を極めて近くに感じ、安らいだ気持ちになれた。
「ふぅ……ふっ……」
美女は目を閉じると、呼吸を整えだした。母に合わせて仔も機会を窺っているらしい。胎から聞こえる息遣いが少しずつ大きくなっていく。
その時は不意に訪れた。
ぐぐっ……!
「あっ……あぁぁあ゛!」
突如として襲いかかった産撃は、弐から脂汗と悲鳴を搾りだした。
めりめりと音を立て、内側から子宮口が開かれていく。体奥を割りひらかれる痛苦。初めて味わうそれは、くノ一でも耐えがたかった。
ぐ、ぐぐ、ぐぢっ!
「あぁぁぁあ゛!」
窄まった肉輪はまだ、さらに押しひろげられる。それでもなお胎児の頭は潜りぬけてこない。
当然のことだった。弐がその身に宿したのは、巨躯を持つ獅子の仔なのだ。大きさも尋常ではなかった。
「はぁッ、あぁ、あがァッ!」
子宮口に食いこむ痛みで、身体の内外が縮む。仔獣はますます力を込めて、子袋を脱しようとする。それがまた痛みを呼んで……。
いつまで経っても分娩が進まない。弐は悪循環に嵌まってしまった。
(なんとか……しないと……!)
弐は被造の存在である。しかし産まれようとする意志の強さを知った。この身に代えても叶えてやりたいと願う。
そんな思いが少しずつ、外界への戸を開けていった。
ずるる……。
「! あぁぁッ!」
身体を駆けめぐる感覚が変わった。腹を裂かれるようなものから、全身を真っ二つにされるようなものへ、だ。
胎児は子宮頸部を通過していた。産道へ下り、そのまま淫口を目指す。
「ふっ……ふぅっ! うぅ……!」
重さも厚みも、獅子の牡性器とは比較にならない。そんなものが膣腔を割りすすんでいく。
巨乳よりも張りだした腹に、胎児の歩みが示された。白肌の上にぼこ、ぼこりと、肉瘤が移動していく。仔獣は膣口にまで迫ったことがわかった。
ぐぐぐっ!
しかしそこは最後にして最大の難関といえる。
(アソコが……裂けるッ……!)
ひくひくと蠢く陰唇のあわい。きつく締まったそこから黒いものが覗く。胎児の鼻先だ。弐が息を吸うと引っ込み、息を吐くと飛び出る。
母体の締緩とぴたりと合致していたが、その均衡はついに破られた。
ぶぢゅンッ!
「あ……ああ゛!」
大きな水音と嬌声が響いた。同時に弐の秘唇に雷撃のような悦感が駆けぬける。
全身が痺れているのに、目線が勝手に動いた。両脚の間に向いた。そこになにかがうずくまっている。
毛並みはびっしょりと羊水で濡れ、目は完全に閉じている。紛れもない。産まれたばかりの我が仔だ。
「あ、あぁ……ッ」
胸にこみ上げるものがあった。朱唇がわなわなと震える。しかし感動を堪能する前に、再びの強振が弐の体奥から生じる。
どくんっ!
「ッ!」
声にならない声とともに、細い首がのけ反った。後頭部が勢いよく獅子の腹にぶつかる。彼は抗議することなく、変わらず弐を見守っていた。
美女が孕んだのは双仔だ。ならばこれで終わらない。息つく間もなく次の出産が始まる。
「はぁッ、はぁぁ……」
常は勝気な光を宿す瞳が、不安げに揺れる。一度目の分娩で体力を使いはたしてしまった。そんな状態で誕生させることができるのだろうか。
幸いなことに、弐の心配は杞憂となる。
ぐぐぐっ!
「は、あ!? あぁぁぁあ……!」
内側から子宮口を押しひろげられた、その時。弐は甘やかな声を響かせた。快楽と多幸感が、美女の全身を貫く。
限界に達した身体を保護するため、彼女の脳内には過剰なホルモンが分泌されていた。それが出産の痛苦を軽減する。
いや。それどころではない。
「ふぅっ、ぅうンッ!」
弐ははっきりと快感を覚えていた。淫裂の上、尿口から透明な潮が吹きでる。アヌスはきゅぅっと緊縮し、菊皺を一層深くした。
変化はもちろん、体内にも及んでいる。
「はぁっ、はっ、はっ!」
悦電を浴びて、子宮口も麻痺したようだ。緩んだ肉輪はすぐさま潜りぬけられる。兄が均した産道を、弟は悠々と進んでいった。膣ヒダを奥から順に薙ぎたおされていく。
「あぁ……あ、あぁぁあ……!」
今や、彼女が感じる全ての知覚がこの状況を肯定していた。
愛するものとの交わりで仔を孕み、産みおとす。それはこの上のない幸福と……快楽をもたらすのだ、と。
ぶちゅウッ!
「あ……あ、あぁぁぁあ゛!」
かつてない絶頂とともに、弐は第二仔を分娩した。
股間から身体を裂かれるような痛みも、体力を底まで振り絞った疲れも、完全に忘れている。双仔の母となった歓びが総身に溢れていた。
「見て、あなた。アタシとあなたの、お子たち……あぁ……!」
弐は顔をあげると、愛するものとそれを分かち合う。獅子は舌を伸ばし、美女の顔貌を舐めまわした。
慰撫を受けた美女はまた、感極まった声をあげるのだった。
◇
獅子の腹に身体を預け続けていると、産悦も少しずつ落ち着いてきた。弐はようやく、ゆっくりと我が仔たちと向きあう。
(これが、アタシの……)
人間と獅子との、単純なあいのこではない。父と同じ四足獣ではあるが……マズルは尖り、脚は細く、スマートな印象だ。ジャッカルと呼ぶのが適切だろう。
交雑ではなにが産まれるかわからない。その危惧は正しかったといえる。
「ファ……アァ……」
二匹は小さく鳴きだした。
巨獅子の胤から芽吹いた仔どもだ。その身体はすでに成犬ほどの大きさがある。しかし産まれたての彼らは母の庇護を必要としており、弐もその役目をしっかりと理解していた。
「待ってな。すぐにお乳をあげるからね」
美女はすでに全裸だ。準備の必要はない。巨房をゆさりと揺らすと、仔を抱きあげた。尖口を桜色の乳首へ近づける。
ちゅう!
「んんっ!」
次の瞬間、仔獣は強く吸いついた。細い乳管にミルクが殺到し、勢いよく体外へ啜りだされる。
放出には快楽を覚えるものだ。それは母乳でも変わりはない。しかし弐が感じる悦は、肉に依るものだけではなかった。
(こんなに必死に、アタシの……)
一生懸命に乳を飲む我が仔の姿を見ると、温かいものが胸に溢れた。人造の存在にあるはずのなかったもの。それが目覚めたとはっきりわかる。
やがて胡狼は満腹になったようだ。尖口から白滋養をこぼしながら、母の乳房から離れる。
「さぁ、お前も」
次はもう一匹も抱えあげる。今度は逆側に乳房に吸いついた。順番待ちをして余計に腹が減ったのか。牙を立てんばかりに吸いつく。
荒々しい啜乳が美女の背をくねらせた。桜色の先端から円肉の中心まで、じんと重い快感が染みこんでくる。
「はぁ、はぁ……」
弐の美貌が汗と朱で覆われる頃。母としての最初の仕事が終わった。
思う存分に乳を飲んだ胡狼の仔たちは、うとうととしだした。彼らをそっと、獅子の腹上に寝かせる。弐もその隣に横たわった。
「お前たちが産まれてこれたのは、卑留呼さまのおかげなんだよ」
背を撫でながら、弐は我が仔たちに語りかけた。
交雑種の危険性を理由にされては、堕胎を命じられても仕方なかった。しかし主は寛大にも、愛するものとの仔を産むことを許してくれたのだ。
産まれたばかりの彼らに、そんな事情を理解できるわけがない。産道を潜りぬけた疲れと腹を満たす幸福感から、二匹の目は完全に閉じかけていた。
「卑留呼さまのお役に立てるように……。アタシがしっかり、育ててあげるからね」
それでも弐はしっかりと言いきる。母が傍にいる安心からか、彼らはすぐに眠りに落ちていった。
そして弐も……。赤仔たちの温かさと柔らかさ。そして獅子の頼もしさを感じながら、瞼を下ろすのだった。
◇
「ん……」
昔のことを思いだしていたら少し微睡んでいたらしい。弐は目を開く。辺りを見回した。
そこには夢の続きそのままの景色が広がっている。両隣には胡狼たちが、背後には獅子が。静かに眠っていた。
「スゥ、スゥ……」
ジャッカルたちの寝息は深く、ゆっくりしている。リラックスしきっていることがわかった。
「ふふ……」
須弥山を駆けまわる際の精悍さがウソのようだ。二頭の寝顔はまだあどけない。緩みそうになる口元を、弐はきゅっと引きあげた。
「巡回の時間だよ! いつまで寝てるんだい!」
そして鞭を床に振るう。気づけば任務の時間となっていた。見過ごすことはできない。
ジャッカルたちは飛びおきると、自ら仮面と鎧を装着する。それから風のように駆けだしていった。
(お子たちも、すっかり一人前だね)
彼らの素早さと従順さに、満足げに頷く。
弐の思考は別の方向へ進んでいった。二頭の胡狼はもう手がかかるまい。子育ては終了したといえる。
ならば再び、愛の結晶をつくっても問題ないだろう。
「…………」
無言のまま、弐は細首を反らした。獅子の顔を見上げる。愛する伴侶はそれだけで察してくれた。頭を垂れて、大きな口を近づける。
「ん……んちゅ……」
一人と一頭は口付けを交わす。彼我の体躯は違いすぎる。美貌は舌先で舐めまわされ、あっという間に獣の唾液でべとべとになった。
しかし彼女は笑みを深くするばかりだ。
「えぇ。夜になったら……ね」
久々の性交を前にして、早くも胎が疼きだす。
忍びの世界は非情だ。争いは絶えることなく、戦いの連鎖はどこまでも続く。そんな中で自分は崇高な任務と……愛し愛される家族を持っている。
己ほどの幸せ者はいまい。被造のくノ一は、そう確信するのだった。