―――目が覚める、いつも通りに歯磨き洗顔して着替えて走って登校した。静かな校舎に入り体育館倉庫で筋トレして時間を潰した。ホームルームが始まる時間に迫っていたので走って教室へ向かった。あすかさんは…いた。挨拶した。
「おはようございます、あすかさん。」
「おはよう! 下駄箱覗いたら学校には来てたみたいだけど、どこにいたの?」
「早く来すぎたので体育館倉庫でひたすら筋トレして時間潰してました。」
「ふーん、朝ご飯食べた?」
「いえ、食欲がないので。」
「ふーん、昼のお弁当は?」
「食欲がないので食べません。」
「……ということは⁉ 夜だけ⁉ その体格で⁉」
「まあ、正確に言うとサプリメントや痛み止めは飲んでますけどね。」
「サプリメントはともかく、痛み止めは何のため?」
「稀に脳ミソを針で刺されるような激痛に襲われるので予防薬として飲んでます。」
「病院に行った方がいいんじゃないの?」
「でもご覧の通りピンピンしてますよ。問題ありません。」
「既に問題発生してると思うけどなぁ…。」
「大丈夫ですよ。心配ご無用です。」
やがて授業が始まった。4時限目まできっちり聞いてノートも取った。昼休みになった。
「それでは行ってきます。」
「どこへ?」
「体育館倉庫で筋トレしてきます。」
「まだやるの⁉ 本当に大丈夫⁉」
「大丈夫ですよ。朝の続きだと思えばどうってことないです。」
「ならいいけど…無理しないでね…。」
「はい、行ってきます。」
走って向かった。黙々と筋トレに励む。
「愛珠叶くん!」
扉の方から声が聞こえた気がする。顔を向ける。
「貴女は…斎藤葵さんですよね? 如何されましたか?」
「朝と昼の田中さんとの会話を盗み聞きしちゃったのはごめんなさい。先に謝らせてもらうね。朝も昼もご飯食べてないって本当なの?」
「稀に喉が渇いて水道水飲めばそれで充分ですね。」
「これ…少ないけど、食べたらどうかな?」
お弁当箱の中を見せられる。一気に吐き気に襲われた。えづいた。思いっきりえづいた。
「ちょっと⁉ 大丈夫⁉」
「すみません⁉ すみません…⁉」
何度も深呼吸した。ようやく落ち着いた。
「ご覧の通りです。もし強引に飲みこんだとしても吐いてしまうと思います。お気持ちだけ受け取らせていただきます。申し訳ございません。」
「こっちこそごめん…。でもあんなに筋トレして1日1食なんて…心配だよ…。」
「今のところ異常なしです。心配ご無用です。」
「でも謎の頭痛がするんでしょ?」
「そうですね、でも薬飲み続けたら頭痛にはならなくなりましたから平気ですよ。」
「そう…無理しないでね…。」
「はい、お気遣いいただきありがとうございます。」
斎藤さんは去って行った。ホッとした。筋トレの続きをした。授業に遅刻した。
放課後、部活の時間になった。あすかさん、斎藤さんの後ろについていく。音楽室内は…相変わらずだった。入部届も楽器選びも適当に済ませて練習に入る。俺はアルトサックスを選んだ。ネットの動画を観てこれが最も吹きたい曲を吹けると思ったからだ。適当に空き教室を見つけて練習した。斎藤さんとのマンツーマンレッスンが始まった。彼女は中学からの経験者らしく俺に基礎中の基礎から教えていただいた。ドレミファソラシド、それ以上、それ以下の高音、低音の出し方まで熱心に教えていただいた。
葵「飲み込みが早いね⁉ 本当に初心者のド素人⁉」
「本当ですよ。あの…1曲吹いてもよろしいでしょうか。」
葵「う、うん…いいよ。」
飽きる程聴いた曲を脳内で音符と一致させる。よし、準備は出来た。音にメリハリを付けるためにしっかり息の吹き込みを安定させる。最初から気合を入れて吹いた。サビは力強く吹いた。
「ご清聴ありがとうございました。」
一礼する。
葵「えっ⁉ えっ⁉ 今の何て曲⁉ 初心者のド素人だよね⁉」
「B'zというユニットをご存じですか?」
葵「うん⁉ 知ってる知ってる⁉」
「そのユニットの『CHAMP』という曲です。」
葵「ええっと…ちょっと待って…B'z…CHAMP…。」
斎藤さんがスマホで何やら検索している。聞き慣れたメロディが流れる。
葵「えっ⁉ 凄い…⁉ さっき吹いたのと大体同じだよ⁉」
「曲自体は飽きる程聴いたのでその再現に努めました。」
葵「ちょっとみんな呼んでくる⁉」
斎藤さんは素早く教室から出ていった。何だか妙なことになったと思った。見たところ1年生がゾロゾロと入ってくる。
「何々? どうしたの?」
葵「いいからいいから⁉ 愛珠叶くん、さっきのもう1回お願い⁉」
「よろしいのですか?」
葵「うん⁉ いいよ⁉ 思いっきりやっちゃって⁉」
斎藤さんの期待に応えてさっきよりも再現性の高さに努めながら吹いた。
「「「「「おー⁉」」」」」
「えっ⁉ マジ⁉ 初心者のド素人って聞いたけど⁉」
「凄い…⁉ こんなの初心者のド素人じゃないよ…⁉」
「初日でこんなに上手く吹く人初めて見た…⁉」
「恐縮です。」
一礼した。
「私も一緒に練習していい⁉」
「私も⁉ 負けてられないよ⁉」
「私も⁉ 楽器持ってくる⁉」
「皆さんにお任せいたします。」
それから1年生だけで『CHAMP』の合奏練習というやつに変わった。どこはどの楽器が吹くかも皆さんで話し合われた。俺は全部を任されたが。こうして皆さんとの演奏に夢中になった。誰かと一緒に演奏することの楽しさを知った気がする。あっという間に部活は終了した。
「あー楽しかった⁉」
「本当⁉ 多名賀くん本当に凄いよ⁉」
「こんなにテンション上がったの久しぶり⁉」
「恐縮です。」
葵「みんな! せーの!」
「「「「「ありがとうございました‼」」」」」
「あ、はい。こちらこそ一緒に演奏していただいてありがとうございました。」
一礼する。そして解散となった。楽器を楽器室へ戻す。楽器室を出る。斎藤さんが待っていた。
葵「愛珠叶くん、一緒に帰らない?」
「ああ…それでしたら…。」
斎藤さんと一緒に昇降口へ向かった。
「遅い⁉」
あすかさんが待っていた。
葵「田中さん…? えっ⁉ もしかして付き合ってるの⁉」
「はい、昨日から付き合うことになりました。」
「そういうこと! よろしくね! 斎藤さん!」
葵「……そうだよね。愛珠叶くんみたいな良い男、放っておくはずがないよね…。」
笑顔だが何だかぎこちない。
「良い男…? 俺がですか?」
葵「うん…⁉」
彼女が赤面する。可愛らしいと思った。だが既に俺にはあすかさんという存在がいる。
「俺なんて喧嘩くらいしか取り柄のないくだらない男ですよ。斎藤さんにはもっと素敵な男性が現れますよ。」
「『喧嘩くらい』ってことはないでしょ! あの時も凄かったけど今日だって愛珠叶くんの演奏聴いてビックリしたわよ! これはいい人材ゲットしたって思った!」
葵「『あの時』って…?」
「ああ、それはですね…。」
春休み中の京都駅での一件を説明した。
葵「凄いね…⁉ 漫画やアニメの主人公みたい…⁉」
「大したことないですよ、日頃から鍛えてますから。あんなヒョロガリモヤシ集団ブチのめしたくらいで大げさです。」
葵「でも刺されたんだよね…? 見せてもらっていい?」
学ランとシャツをめくった。
葵「まだ瘡蓋になってるよ…⁉ 本当に大丈夫なの…⁉」
「当日に部屋に戻った頃には出血は止まっていたので運動しまくって汗も流しました。大丈夫です。」
「……無茶しないでよもう…⁉」
葵「……えっ⁉ 昼休みだけじゃなくて帰った後も運動してるの⁉」
「はい、本当に疲れるのはこれからです。」
「……初めて聞いたわよ。本当に病院行った方がいいんじゃない?」
「去年からの日課になってるので今更何もしないのも落ち着かないですよ。心配ご無用です。」
そんなわけで斎藤さんともあすかさんとも分かれの挨拶をして走って帰った。急いで着替えて外に出る。念入りに柔軟体操してから走りまくった。川の土手…途中で橋が架かってるのでそこを終点に端から端まで走りまくった。もう息が上がって走れないという所まで追い込んでから筋トレに移った。スクワット4000回、腹筋運動1000回、コンクリートの上で拳立て1000回、指立伏せ200回やった。頭も体もフラフラになったのを確認して堤防に登ろうとした。女性らしき人影が見えた。見覚えがある…気がした。近づく、斎藤さんだった。
「斎藤さん? 如何されましたか?」
葵「『如何されましたか』じゃないよ…⁉ 信じられないくらい走って…筋トレまでして…どうしてそこまでするの…⁉」
「頭も体もフラフラになるまで追い込まないと眠れません。もう夜も遅いはずですよ。送っていきます。」
葵「嫌…⁉ ひとりにしておけないよ…⁉」
「俺とあすかさんが付き合ってるのは伝えたはずです。言いにくいですが…大きなお世話というものです。」
葵「それでもいい⁉ このままひとりにしておく方がよっぽど不安だよ⁉」
ため息をついた。これ以上言っても無駄なようだ。言葉を交わさずに歩いて部屋に戻った。当然のように斎藤さんも入った。
「俺はシャワー浴びます。ノートPCでも眺めて退屈を紛らわせてください。」
汗でズブ濡れのTシャツからジャージにパンツまで全て洗濯機に放り込んで全裸になる。振り向く。斎藤さんが立っていた。
「あすかさんを裏切れません。どうか分かってください。」
葵「1番じゃなくていいの…⁉ 2番目でも3番目でもいい…⁉ 私を…抱いて…⁉」
そう告げて跪き俺のにしゃぶりついた。股間は正直だった。刺激を受ければ反応する。卑猥な音が部屋に響く。
葵「愛珠叶くんの…凄い大きいね…⁉ 太くて長くて…もう田中さんとはしたの?」
「はい。」
葵「じゃあ同じようにしてほしい…⁉」
「後悔しませんか?」
葵「するわけない…⁉」
自ら制服も下着も脱ぎ全裸になる。ボリュームこそあすかさんには劣るが肌は負けず劣らず綺麗だった。興奮した。布団に仰向けに寝かせる。舌を絡めながら胸を揉む。ビクンと反応する。乳首を舐めて舌で転がす。快感の声が聞こえる。そのまま両脚を開きあそこに顔をうずめる。
葵「汚いよ…そんなとこ…⁉」
「あすかさんと同じようにしろと言われたので同じようにするだけです。」
いやらしい匂いに思考が麻痺する。前戯の必要もない程濡れていたが敢えて舌で舐めとった。ビクンと反応する。指で広げて奥まで舐める。荒い息遣いと喘ぎ声が部屋に響く。
「入れますよ。」
葵「うん…来て…⁉」
正面から突き入れた。喘ぎ声が一瞬止まる。
「痛いですか?」
葵「大丈夫…⁉ 物凄く気持ちいい…⁉ もっとして…⁉」
白くて綺麗な肌、普段は清楚で真面目で大人しそうな彼女が今は俺の前でいやらしく快感に悶えている光景に物凄く興奮した。自然に腰の動きが激しくなる。
葵「はあ…⁉ はあ…⁉ あっ⁉ ああ…⁉ ああんっ⁉ イクッ⁉ イッちゃう⁉ ううん⁉」
全身を痙攣させ体をのけ反らせる。構わず続けた。のしかかり舌を絡めながら胸を揉み続けた。呻き声が甲高くなる。
葵「うっ⁉ ううっ⁉ ううんっ⁉ はあぁっ⁉ また…⁉ イクッ はあんっ⁉ イクッ⁉」
また絶頂に達した。抱きしめて仰向けになり跨らせる。下から突き上げる。次第に斎藤さんが腰を動かす。涎を垂らし喘ぎながら夢中で腰を動かす姿に興奮した。両手を伸ばし胸を揉む。乳首を刺激する。
葵「気持ちいい…⁉ 気持ちいいよぉ…⁉ 私…⁉ また…⁉ はあぁっ⁉ イク⁉ イクッ⁉」
窮屈なあそこを締め付けられる。快感に抗った。俺も限界が近い。強引に抱えて引き抜きティッシュで血に塗れた俺のを拭きとってから口に押し込む。舌で先端を刺激される。放った。
葵「ん…⁉ ん…。これが…愛珠叶くんの味…クセになりそう…⁉」
四つん這いにさせる。後ろから突き入れる。体をのけ反らせる。美しいうなじ、背中、お尻、ひくつくお尻の穴を眺めながら夢中で腰を動かした。斎藤さんの喘ぎ声とお尻がぶつかる音が部屋に響く。滑りのいい彼女の中と締まりのいいあそこから伝わる快感に抗い続ける。油断すると中に出してしまいそうだ。
葵「あっ⁉ あっ⁉ あっ⁉ ああんっ⁉ 凄い…⁉ 気持ちいい⁉ イクッ⁉ イクッ⁉」
まだ血のついていた俺のを拭いてから口に押し込む。根元を握り唇をすぼめ器用に手と頭を前後に動かす。舌で舐め回される。放った。
葵「ん…⁉ ん…。はあ…⁉ まだ濃くて量も多いね…。それに…まだまだ元気だね…⁉」
「斎藤さんのいやらしい姿見せられてそう簡単に納まりません。」
葵「ふふっ、嬉しい⁉ もっといっぱい気持ちよくなろう⁉」
それから立ったり座ったりしながらセックスに耽った。すっかり疲れ切って斎藤さんを抱きしめて胸に顔をうずめながら眠りについた。
目が覚める、腹が減っている。そういえば昨日は晩飯を食っていないのを思い出した。丼一杯にご飯を盛ってレトルトカレーと納豆をかけてスプーンでかき込んだ。ついでにサプリメントと痛み止めを飲んでからシャワーを浴びた。
葵「おはよう…。」
全裸の斎藤さんが視界に映った。股間が元気になる。
葵「昨日あんなにしたのにまだまだ元気だね…。でも死にそうなくらい気持ちよくなったから口で我慢してもらっていい?」
「お願いします。」
俺の前に跪く。卑猥な音を立ててしゃぶりつく。物凄く興奮した。放ったが納まらなかった。萎えるまでしてもらった。最高に気持ちよかった。斎藤さんにもシャワーを浴びてもらった。その間に歯磨き洗顔を済ませる。彼女がバスルームから出てくる。目を逸らした。
葵「は~サッパリした! ……どうして目を逸らしてるの?」
「斎藤さんの好意は嬉しいですが…今日までです。俺にはあすかさんがいます。他に良い男見つけてそちらへ気を向けてください。」
葵「そう言われてもねぇ…。愛珠叶くん以上に良い男が現れなかったらどうすればいいの?」
「恋愛だって早い者勝ちです。斎藤さんはあすかさんに負けたんです。そこは分かってください。」
葵「恋愛だって弱肉強食だよ。いいよ、これから全力で愛珠叶くんに尽くして田中さんより私の方に振り向かせるから。」
「あすかさんとは仲良くしてください。お願いです。」
葵「もちろん、女子社会で揉め事起こしたってロクなことにならないから。」
「……ならいいです。歯ブラシ用意しましたので着替えたら歯磨きしてください。」
葵「ありがと♪ 何だかんだ言っても優しいよね、愛珠叶くん♪」
斎藤さんが着替える物音がする。ホッとした。彼女が姿を現す。
葵「どう? 似合ってる?」
「はい。」
前髪のヘアピンも二つに結わえられていたお下げ髪姿もなかった。ありのままの髪型の斎藤さんがいた。似合ってると思ったのは本音だ。
「俺は先に行って朝練します。準備が終わったら玄関の鍵はかけなくて結構ですよ。こんなボロアパートに泥棒に入る暇人もいないでしょう。」
葵「……うん、わかった。」
「通学路はひたすら線路沿いに歩けば北宇治の最寄り駅に着くはずです。それでは行ってきます。」
葵「いってらっしゃい。」
部屋を出る。走って登校した。今日は職員室へ直行した。「失礼します」と声を掛けてから入室した。室内にいる女性の先生に話しかけた。
「おはようございます。音楽室の鍵をお借りしたいのですがよろしいでしょうか?」
「ああ、早いな。私は吹奏楽部の副顧問の松本美知恵という者だ。これからよろしく頼む。」
「俺は多名賀愛珠叶と申します。よろしくお願いいたします。」
「『たなかあすか』? 確か…入部届に同じ名前がいたような…?」
「そちらは女子の田中あすかさんです。同じクラスの同姓同名です。」
「そうか、分かった。練習頑張るんだな。」
「はい、頑張ります。失礼します。」
走って楽器室の鍵を開けて楽器ケースを取り出す。音楽室の鍵を開けて支度する。楽譜も何もないので今の俺でも吹けそうなのから選曲する。決めた、脳内で音譜を一致させる。準備完了。吹き始めた。イメージ通りに指が滑らかに、素早く動く。吹きたい曲を吹ける喜びに目覚めた気がする。本来ならエレキギターやベースやドラムが再現には必要なのだがそこは諦めた。あっという間にホームルームの時間に迫った。急いで戸締りして走って職員室へ向かい松本先生に鍵を返し教室へ向かった。あすかさんの後ろ姿が目に映った。罪悪感を押し殺して挨拶した。
「おはようございます、あすかさん。」
「おはよう! いい音出してたね! 朝練してたの?」
「はい、早く上達したいし吹きたい曲がありまくりですので。」
「そんなに多いの?」
「プロデビューしてもう30年以上経ちますからね。」
「凄いわね…。愛珠叶くんの吹く曲楽しみにしてる。」
「はい、ご期待に添うよう頑張ります。」
そして吹奏楽部に入部してから2日目に入った。