二人一緒に入った朝のお風呂場でスッキリと目を覚ました後、脱衣所で火照った身体をバスタオルで拭き上げる。
「ふぅ、サッパリしたわねぇ」
「ああ、バッチリ目が覚めた」
お湯を弾くほんのりと桜色に染まった素肌から甘い香りを漂わせ、操祈がバスタオル越しに豊かな身体のラインを揺らす。
響は手慣れた手つきで彼女の濡れた黄金色の髪をドライヤーで優しく乾かしてやる。
操祈は嬉しそうに目を細め、心地よさそうに響の胸元へ背中を預けてきた。
髪を乾かし終えた操祈は、響の前で常盤台中学の指定制服へと着替える。
中学生離れした豊かな胸を強調する薄手のニットと、プリーツスカート。
見慣れたはずの制服姿だが、彼女の暴力的なまでに完成されたプロポーションが合わさると、何度見ても目を奪われそうになる。
「お待たせ、響。ふふっ、私の制服姿に見惚れちゃったかしらぁ?」
「まあな。そんだけ凶悪なスタイルを見せつけられたら、嫌でも目がいくさ」
「もうっ、素直なんだからぁ……」
嬉しそうに頬を染めた操祈に腕を絡められながら、着替えを終えた響は広々としたアイランドキッチンへと向かう。
「さてと。今日の朝ごはんは、和食と洋食どっちの気分だ?」
「うーん……今日は響特製の和食がいいわぁ。お味噌汁と、出汁巻き卵付きでお願いね?」
「はいはい、女王サマの仰せのままに」
響がエプロンを身につけ、手際よく出汁巻き卵や焼き魚の調理を進める横で、操祈が「私にも手伝わせてぇ」と甲斐甲斐しくお皿や箸を並べていく。
広々としたLDKに響く料理の音。
響は手慣れた手つきで焼き魚に塩を振りかけながら尋ねる。
「味付けは薄めでいいよな?」
「ええ♪」
操祈は響の隣で味噌汁の具材を小皿に取り分けながら嬉しそうに答える。
「響の出汁巻き卵って絶品なのよねぇ……ふふっ」
出来上がった和定食がテーブルに並ぶ。
操祈が箸を手に持つと「いただきます」と二人で唱和する。
「ん〜っ、とっても美味しいわぁ。響のお出汁の取り方、本当に絶品ねぇ」
「そりゃどうも。お前のリクエスト通り、ちょっと甘めの出汁巻き卵にしといたぞ」
「ふふっ、私の好みを完璧にわかってるのねぇ。さすが私の響だわぁ」
嬉しそうに目を細めながら、操祈は美味しそうに朝食を食べ進める。
二人だけの甘く穏やかな朝の時間が流れる中、操祈がふと思い出したように響を見つめてきた。
「そういえば響。放課後は第七学区のクレープ屋さんでデートだから、絶対に遅れちゃダメよぉ?」
「わかってるって。限定のゲコ太グッズが目当てだろ? 学校が終わったらすぐに待ち合わせ場所に向かうよ」
二人で手際よく朝食の食器を片付けると、連れ立って玄関へと向かった。
操祈は常盤台中学の指定制服を身に纏い、響はいつものように愛刀『贄殿遮那』の入った袋を肩に担いでいる。
爽やかな朝の空気の中、二人は肩を並べて学園都市の通学路を歩き出した。
やがて、通学路の分かれ道となる交差点に差し掛かる。
「それじゃあ響、また放課後にねぇ」
「ああ。気をつけて行けよ、操祈」
名残惜しそうに見上げてくる恋人の豊かな金髪を優しく撫でてやる。
操祈は嬉しそうに目を細めると、常盤台中学の方角へと手を振って歩き出していった。
彼女の後ろ姿が見えなくなったのを見届けてから、響も自身の通う高校へと足を進めた。
無事に教室へ到着し、自分の席に鞄を置く。すると、待ち構えていたように馴染みの顔ぶれが集まってきた。
「よォ響。朝からリア充オーラ全開で不幸だ……」
「相変わらず朝からアツアツだにゃー、響ィ」
「ホンマやで! 常盤台の女王サマと同棲生活やなんて、裏山しすぎてワイは血涙が出そうでっせ!」
呆れたように肩をすくめる幼馴染の上条当麻と、ニヤニヤと笑うクラスメイトの土御門元春、青髪ピアスだった。
彼らは学園都市内でも珍しい響の「普通の」友人たちであり、教室のバカトリオと呼ばれるムードメーカーたちだ。
「ったくよォ……お前ら人の恋愛事情をネタにして盛り上がりすぎなんだよ。当麻の不幸体質と一緒にすんな」
「誰が不幸体質だ! ……いやまあ、確かに今日も朝から鉄骨が降ってきて死にかけたんだけど……」
「当麻さんの不幸レベルはマジでハンパないぜよ……」
「そんなんで毎日生きてるお前が凄いんだよなぁ。それより響、食蜂ちゃんと一緒に住んでてホンマに何もしてへんのか? わいは知っとるで! あのボディに何もせんとか絶対無理やって!」
青髪ピアスが身を乗り出してくる。彼の好奇心は無尽蔵だ。
「おいおい、誤解すんな。別に何も……」
響が苦笑いを浮かべると、土御門がニヤリと笑って食いついてきた。
「響ィ。お前さん、昨日の夜も食蜂ちゃんの身体を眺めてニヤついてたんだろォ? 共同生活ってのは色々と刺激的だにゃー」
「土御門テメェ!? どこで見てんだよそれ!?」
響の声が思わず大きくなり、教室中の視線が集まる。
慌てて声を落とす響に、当麻が呆れたようにツッコミを入れた。
「土御門の妄想だろ。……ったく、響も乗せられすぎだ。そういうのはプライバシーってもんを考えろよ」
「まぁまぁ当麻さん、これがワイらの友情ってやつでっせ! 響兄貴がどんな風に食蜂ちゃんを攻略したか気になるんやからな!?」
「攻略って……お前らなぁ……」
呆れた顔をしながらも、響の口元は僅かに緩んでいた。
(……こうしてバカ話ができるのも、こいつらとの関係あってこそだしな。まったく、俺には勿体無いくらいの友人たちだよ)
男たちの他愛のないバカ話が盛り上がっていると、ガラッと教室のドアが開いた。
「はいはーい、バカな話はしてないで席につくのですよー! ホームルームを始めるのです!」
小学生の幼女にしか見えない小柄な体格の担任教師、月詠小萌が教壇に立つ。ピンク色のフリルがついた可愛らしい服装だが、これでもれっきとした大人だ。
「上条ちゃんも天城ちゃんも、朝から元気なのはいいことですが、そろそろ静かにするのですよ?」
「わりぃ、小萌先生」
「はいはい、席つくにゃー」
小萌先生に注意され、響や当麻たちはそれぞれの席へと戻っていく。
ホームルームが始まり、小萌先生が出席簿を手に取る。
「今日も全員欠席なしですね!素晴らしいことです!」
先生はニッコリ笑いながら出席を取り始めます。
「天城ちゃん!」
「はい」
響が短く答えると、小萌先生は満足そうに頷きました。
「上条ちゃん!」
「うぃっす……ってか先生、その出席方法じゃ一人で出席取ってる意味なくね?」
当麻が眠そうに手を挙げると、先生はプンプンと頬を膨らませます。
「むっ!失礼なことを言わないでください!これはれっきとしたクラスの管理なのですよ!」
「すんません……」
「さてさて!今日の連絡事項は特にありませんので、皆さん授業頑張るのですよ!」
小萌先生の元気な号令で、平和なホームルームが終了する。
その後は特に大きなトラブルが起きることもなく、当麻やバカトリオたちと昼休みに食堂で騒いだり、平和に授業を受けたりしているうちに、あっという間に放課後のチャイムが鳴り響いた。
「わりぃ当麻、俺は今日このあと操祈と約束があるから先に行くわ」
「へいへい、リア充はさっさと彼女のところに行けっての。不幸だ……」
恨めしそうな当麻の声を背中に浴びながら、響は愛刀『贄殿遮那』の入った袋を担いで教室を後にした。
向かう先は第七学区のクレープ屋。愛しの恋人である操祈との待ち合わせ場所だ。