※この作品はR-18です。

Japanese Culture!   作:三条ゴート

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艦娘ホノルルに妙な任務が回ってきた。
一人で港町への届け物。
その際、奇縁が舞い込んでくる。

それは、乱痴気騒ぎへの招待。
提督は、今日もホノルルに振り回されるのだ。


※この作品はpixivにも掲載しています。


Go straight!

 晴れ渡った空に海鳥の声が響く。

 晩夏の港町は蒸し暑い日が続いていた。

 今年は台風が来ず、秋に移る機を逸しているようだ。

 カレンダーを裏切る暑さに、人々は辟易していた。

 

 この港町は規模が大きく、様々な人と船が行き交う。

 観光客はもちろん、国籍もさまざまな人々が集まり、至るところで異国の言葉が飛び交う賑やかな町だ。

 

 その片隅に奇妙な二人連れがいた。

 ベンチに腰を下ろし、話し込んでいる。

 片方は、紺のスーツの恰幅の良い老人。

 もう片方は、鮮やかな金髪の若い女。

 纏う空気が違っており、二人を結ぶ関係は、傍目には容易に推し量れなかった。

 

「やぁ、助かったよ。艦娘って、凄いんだね」

 

 男が口を開く。

 上質なスーツを着ており、腕時計や革靴を見ても、かなり裕福な人物であることが窺える。

 禿げ上がった頭に噴き出た汗を、しきりにハンカチで拭っていた。

 

「礼を言われることじゃないよ。これがあたし達の仕事だ」

 

 もう一人は、艦娘だ。

 ブルックリン級軽巡洋艦、ホノルル。

 ツインテールに結った鮮やかな金髪は、左右で大きな縦巻きのカールを描いていた。

 彫りが深めで日本人離れした顔立ちが目を引く。

 屈託のない笑みを浮かべ、人当たりの良い雰囲気だ。

 明るく輝く碧眼は、見る者を惹き付ける深さを持っていた。

 

 男が乗っていたフェリーが深海棲艦の急襲を受け、ホノルルが救出に駆けつけた。

 ホノルル一人で救援に当たったのは、偶然が重なった結果である。

 鎮守府からこの港町へ急ぎの届け物があったのだが、沿岸道路が事故で封鎖されていた。

 そこで、やむなくホノルルが艦装を纏い、海を経由して持参することになったのだ。

 

 深海棲艦の攻撃は散発的であり、フェリーはほぼ無傷のまま退避できた。

 ホノルルが目的地の港まで護衛したところで、この男に声をかけられたのだった。

 

「祭りの準備もあってね、急いで帰らなくちゃいけなかったんだ」

「Festival?」

 

 ホノルルは辺りを見回した。しかし、港町に変わった様子はない。

 任務の合間に何度も訪れている町だ。どこかで祭りが始まっているのなら、気づかないはずがない。

 

「いやいや、ここの話じゃない。ずっと向こうの、山の村さ」

 

 ホノルルが首を傾げると、男は笑った。

 

「私はあそこで林業をやっていてね。自治会長なんぞも務めている。祭りの支度となると、どうしても手が要るんだよ」 

「村長さんとは違うの?」

「ははは、わしが一声掛けりゃぁ、村の皆が動くわい」

 

 ホノルルが目を輝かせる。

 艦娘として生まれ、海の上で戦ってきた彼女にとって、山はまだ未知の領域だ。

 そこの話を聞けることは、とても楽しいことだった。

 

「つまり、Village Admiral?」

「び、びれ……?」

「ええと、つまり、村の提督ってこと?」

「それとは違うんじゃが……まあ、ええわ」

 

 ホノルルの屈託のない態度に、男は初対面とは思えない親しみを覚えた。

 まるで、昔から知る村の娘と話しているような気分になる。

 

「それでさ、Festivalって、どういうこと?」

「それは……いや、お前さんなら……」

「……?」

「つまり、じゃな――」

 

 それは、奇妙な祭りだった。

 神社の脇門から飛び出し、村中を巡って正門から境内へ戻る。

 境内に置かれた棒を最初に取った者の勝ち。

 その熱気を神に奉納する、村独自のお祭り。

 

「それでな、お前さんが参加するのはどうかえ?」

「あたし?良いの?」

「もちろんじゃ。このわしがお墨付きを付けちゃる」

「OK!I've got this(任せとけ) !」

「ほっほっほ、元気があってええのぉ」

 

 男は、救援の際に見たホノルルの身体能力を見込んでいた。

 艦娘として数多の海を駆け抜け、鍛え上げられた体は、並の成人男性をも凌駕する。

 それを祭りでも発揮して、村を大いに沸かせてほしい――そう考えたのだ。

 

「ここまで派手な祭りなら、もっと有名じゃないの?聞いたことないんだけど」

「ああ、それはなぁ……」

 

 男が経緯を簡潔に説明した。

 

 マスコミを呼んで大々的に宣伝したこともあったが、記者連中のマナーが悪く、観光客達も輪を掛けて迷惑になったという。

 この祭り自体、純粋な信仰に根差したものであり、土足で汚されることを村人達が忌避した。

 それ故に、祭りの期間は外部からの交通の一切を遮断しているという。

 

「Wow!って事は、あたしがSpecialってこと!?」

「そうじゃ。お前さんは特別じゃ。他言無用じゃぞ」

「Of course(もちろん)!誰にも言わないからな」

「ハッハッハ、その意気じゃ」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「機関全開!Let's go!!」

 

 男と別れた後、上機嫌で帰路につくホノルル。

 すぐにでも、外出申請を出さなくてはならない。

 届け物から始まって、妙な方向に話が進んだ。

 

「Japanese Culture――」

 

 ホノルルは笑みを堪えられなかった。

 

「――Now things are getting interesting(面白いことになってきたぜ)!」

 

 

 ――――――――

 

 

 こちっ、こちっ、こちっ……。

 静寂の中、時計が時を刻む音だけが鮮明に響く。

 執務室は張り詰めていた。

 空気が刃となり、物音も殺しているようだった。

 

「提督、一息、入れられませんか?」

 

 秘書艦の大淀が、そっと書類を差し出す。

 提督は力強く判を押す。

 大淀は、震える手でケースに収めた。

 

 ずっとこれの繰り返しだった。

 鈍色のオーラを纏い、とにかく書類に判をつく提督。

 大淀は、ただ逆らわないようにするのが精一杯だ。

 

「提督……瞬き、した方が良いですよ?」

 

 ぎょろり、と目玉が動いた。

 今の提督からは殺気すら感じる。

 カッと目を見開き、白目は血走り、瘴気を纏っているようだ。

 大淀は正視できなくて、目を逸らした。

 

――ダメだ、あれだけはダメだ……!

 

 事の発端は、ホノルルから出された外出申請だ。

 港で知り合った人の村の祭りに行きたい、という理由だったが。

 

 見た瞬間、冷や汗が止らなかった。

 理由の分からない寒気を覚えた。

 胸騒ぎが抑えられなかった。

 

 それ故に、こうして職務に精励していた。

 幸いにも、最近は深海棲艦が大人しく、一日くらいならば時間を作れそうだ。

 だから着いていき、彼女の安全を確保しなくてはならない。

 理由は説明できないが、そうしないといけない気がしていた。

 

 ひとまず、ホノルルに村の自治会長へ連絡を入れさせた。

 ホノルルは特別に招かれた客だという。直属の上司として挨拶に出向くという名目で、提督にも入村の許可が下りた。

 

「て、提督……これで、最後です……」

 

 そおっと、差し出される書類。

 むしる勢いで、掴み取る。

 ハンコにインクを纏わせる。

 

 スッと、手を差し上げる。仰角45度。

 そして、叩き付ける。力一杯。

 腕力と重力を受け、ハンコが爆音を奏でた。

 承認印の周りに、派手にインクが飛び散った。

 

「……ホノルルは、どこだ?」

「ホノルルさん、ですか?」

 

 ぎ、ぎ、ぎ……。

 書類仕事ですっかり固まった首を、強引に動かした音が響いた。

 鬼気迫る表情に、大淀は後ずさった。

 

「先程、出発されましたよ?」

「――何!?」

「村の方がお迎えに来られたと言うことで……」

 

 提督は、愕然とした。

 自分が同行すること、ホノルルに伝えていなかった。

 予感ばかりが先行して、段取りの大半を置き去りにしていたのだ。

 

「――大淀、後を頼むぞ!」

「あっ……はい……」

 

 そのままの勢いで飛び出す提督。

 当座の引き継ぎは終わっているので、後は大淀でも何とかなる。

 呆気に取られ、大淀はその背を見送るしかなかった。

 

「そもそも、外出申請を却下すれば良かったのでは……」

 

 呟きは、静寂に飲み込まれた。

 

 

 ――――――――

 

 

――この道で合っていてくれ……!

 

 狭い山道を、大型のSUVが突っ走る。

 継ぎ接ぎだらけのアスファルトが、車体を大きく揺らす。

 センターラインもない道にこの車体、軽トラックでさえすれ違う余地がない。

 ガードレールもなく、脱輪すれば木々の中へ特攻する羽目にすらなりかねない場所だった。 

 

「カーナビ、間違ってくれるなよ?」

 

 ハンドルを握るのは提督だ。

 先に出発してしまったホノルルを追いかけ、村を目指している。

 足はアクセルに掛かったままだ。

 ブレーキはおろか、加減するという発想すらない。アクセルのオンかオフかしかない。

 脱輪すら危惧される細い道を、ハンドルだけで捌ききっていた。

 

 提督の危惧には理由があった。

 別の山村の祭りに参加したとき、半被とふんどしだけの大胆な艶姿を、往来で披露した前科がある。

 その時は、年寄りと子供しか参加者がおらず、ホノルルが神の使いと間違われる珍事も相まって無事に乗り切れた。

 

 今回の話がそうとは限らない。

 むしろ年頃の男性が混ざっている方が普通だろう。

 さらには先の祭りの後、ホノルルは悪びれもしていなかった。

 違うことは言い含めておいたが、ちゃんと聞いていたかどうか。

 胸騒ぎは大きくなるばかりだった。 

 

 悪戦苦闘すること、小一時間。

 バリケードが設置されており、傍らに若い男がいた。

 提督が用件を告げれば、通行を許可された。

 この道で合っていたようだ。

 

 雲一つない快晴なのに、妙に寒く感じられる。

 とにかく、間に合ってくれ。

 ただ願うばかりだった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 辿り着いた場所は、どこか寂れた雰囲気の村だった。

 林業が盛んなのだろう。そこかしこに原木が積み上がっている。

 辺りを見回せば、放牧地と実り豊かな畑が広がっていた。

 目につく娯楽施設といえば、草臥れたパチンコ屋が一軒だけ。

 観光客を呼び込むような施設もなく、外部を寄せ付けない空気があった。

 

 しかし、祭りの会場は活気に溢れていた。

 一部の道には、藁束が隙間なく立てかけられていた。

 大勢で走り回る祭りだとホノルルは言っていたが、安全対策なのか。

 いくつかの屋台も見られ、食欲を擽る香ばしい匂いがしていた。

 港とは違う新鮮な活気に、提督の緊張も緩んでいた。

 

(荒っぽい祭りだな……)

 

 神社までの道すがら、提督は眉を顰めていた。

 藁は立てかけてあるが、それくらいだ。

 これを鎮守府で再現するとなれば、安全対策で物言いがつくだろう。

 この村の男は、みな頑丈に育つのか。

 風習は怖い、とぼやきつつ歩みを進めていた。

 

 祭りのルートは、神社の脇門から出て村内を巡り、正門に戻る流れだった。

 開始を控え、参加者は神社に集められていた。

 ホノルルもそこにいるとのことだったが、祭りの当日は、車の乗り入れが禁じられている。

 夏の熱気が抜けきらない気温、提督は汗を流しつつ歩いていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 ホノルルとは連絡が付かなかった。

 走るための衣装に着替え終わったのか。

 提督は急いだ。

 

「ダメだったかぁ……!」

 

 ようやくたどり着いた神社の脇門。

 観衆の輪の外で、提督は膝をついていた。

 

 皆がスタートの準備に入っている。

 半被にふんどしの男達の集団に、紅一点。

 ホノルルだ。

 文字通りの、紅一点だった。

 

 鮮やかに輝く金のツインテールが、左右で大きな縦巻きのカールを描いていた。

 問題は、首から下だ。

 

 白の半被が豊かすぎる胸を、辛うじて包み込んでいた。

 丈は臍の上まで、くびれた腰が見事なコントラストを演出している。

 そして、その下だ。

 

 赤ふんどし、その一枚だけ。

 捻りふんどしであるため、前垂れはなく、局部を覆うだけだ。鼠径部のラインも露わになっている。

 豊かなボリュームの臀部には、赤い布が真ん中に深く食い込んでいる。

 腰骨の上を走る横布と、股座を覆う赤い布が、締めていることを辛うじて知らせている格好だ。

 色が大問題で、ホノルルの白い肌との対比もさることながら、他の男達が白のふんどしなので、一際目立っている。

 中途半端に隠しているだけに、臀部の豊かなラインが強調されてしまっていた。

 艦娘として鍛え上げられているので、張りと柔らかさのバランスが絶妙だ。

 その上で、際立ったボリュームだ。

 男達の目線は、どうしてもそこに向かってしまう。

 一応、厚手の足袋を穿いてはいる。だが、覆うのは足首までだ。

 艶めかしい脚線美を、日の高いうちから往来に曝け出していた。

 

「これ、貞操の危機なんじゃないのか?」

 

 提督は愕然としたまま眺めるしかなかった。

 屈託なく笑っているホノルル。

 彼女の周囲では、男達の豪快な笑い声が響いていた。

 異様に過ぎる光景に、提督の思考は焼き付き掛かっていた。 

 

「ええ身体しとるのぉ、嬢ちゃん」

「おっちゃんこそ、すげえ鍛え方だな」

「伊達に農家はやっとらんよ、ほれ」

「Wow!でっけー力こぶ!いい腕、してんじゃん!」

 

 ずっと前からいたように溶け込んでいる。

 肌も露わな装いでも物怖じせず、気さくに言葉を交わす様子が、余所者の壁を越えさせていた。

 コミュニケーション能力の高さを遺憾なく発揮していた。

 

「嬢ちゃん、怪我には気をつけてな。会長さんに怒られてしまう」

「Got it(分かったよ)!」

「無理はせんでな。危なくなったら、隅に引っ込むとええ」

「へへっ、あたし、そんなに柔じゃないぜ」

「海軍におるんじゃったか?わしらも気張らんとなぁ」

「あたしを舐めてかかったら、痛い目を見るよ?」

 

 ホノルルは、村一番の名士である自治会長が直々に招いた特別参加者。参加者たちへは、無礼を働くなとあらかじめ厳命されていた。

 邪な気持ちを禁ずる方が難しい魅惑の肢体ではあるが、軍に所属する艦娘であることも伝えられている。

 下手に手を出せばどうなるか分からない。それが村の皆の共通認識であり、目の保養として割り切っているのだ。 

 

「ホノルル、ホノルル!!」

 

 観衆はがっちりとしたスクラムとなっており、後から来た提督は入れない。

 必死に呼びかけるも、歓声にかき消される。

 男女問わず野良仕事で鍛えられている村で、皆、声が大きいのだ。

 

(……?)

 

 ふと、視線を感じた。

 ホノルルと一瞬だけ、視線が合った気がした。

 しかし、ホノルルは男達に連れられていっている。

 参加者が一団となって動き始めていた。

 

「おう皆、そろそろ始まるぞ」

「お前ら、気張っていくぞ!」

「Let's go!」

 

 開始を告げられれば、ホノルルを含めた皆が気勢を上げる。

 それは、離れたところから見守る提督にも伝わっており――

 

(頼む、頼むから、無事に終わってくれ……!)

 

 それと反比例するように、提督の周りの気温だけが下がっていた。

 

「……Well, there you are(へえ、いたんだ).」

 

 小さな呟きは、歓声にかき消された。

 ホノルルの口角が引き上がる。

 男達には見せなかった、妖しい微笑みだった。

 

 

 ――――――――

 

 

「Hey !置いていくからな!」

 

 号砲と共に皆がスタート……は、しなかった。

 ホノルル一人が飛び出し、男達が遅れて続く。

 観衆が一斉にどよめいた。

 提督は狼狽した。

 

(当たり前だ、馬鹿たれぇぇぇぇぇ!!)

 

 ホノルルは、クラウチングスタートを切ったのだ。

 身体を前に屈め、両手を前につく。

 十分に足に力を溜め、弾かれるように飛び出した。

 全身のバネを使ったしなやかな連動が、無駄のない躍動を描き出す。

 それだけなら、良い。

 

 それを男達の目の前で、やったのだ。

 赤ふんどし一つのお尻を突き上げた。

 白くてきめ細やかな肌と、豊かで艶めかしい臀部の曲線美を見せつけた。

 赤の布地が守るのは、本当の中心だけ。

 これで見るなと言う方が無理な相談だ。

 故に、男達のスタートが遅れたのだ。

 

 しかし、ただふざけていたわけではない。

 すぐに軽やかな走りに移行していた。

 吹いてきた風に身を預けたかのような、力みのないフォームだ。

 特に、腰から下の淀みない連動が際立っている。

 下半身を覆うのは赤ふんどしだけ、筋の一つ一つまではっきりと見えるのだ。

 ホノルルが艦娘という存在であり、鍛え上げられた身体であることを、まざまざと示していた。

 

「絶対、碌なことにならんぞ……!」

 

 ホノルルと連絡する手段がなく、追いかけるしかなかった。

 観衆の外側で孤独なデッドヒートを繰り広げていた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「Wow!やるじゃん!」

 

 スタートこそリードしたが、すぐに追いつかれる。

 理由は明白で、足袋一つで田舎道を走ることに慣れていないからだ。

 男達はこの祭りで何度も走っている。経験の差が出ていた。

 

 ホノルルを含めた先頭集団が、カーブに差し掛かる。

 二段に積まれた丸太が、材木置き場の一角で行く手を阻んでいた。

 ルートはそれを迂回する形になっていたが――

 

「Ugh, what a hassle(面倒くせえ)!」

 

 皆がどよめいた。

 ホノルルは、曲がらなかった。

 勢い良く踏み切り、走り込みの勢いを生かして飛び上がった。

 丸太の最上段に飛び乗ったのだ。

 

 ジャンプの勢いで思い切り身体を反らせるホノルル。

 胸が弾み、引き締まった脚線美がより強調される。

 着地しても、丸太の高さがある。

 皆が見上げるので、お尻から下が見放題だ。

 

「見えすぎなんだよ!」

 

 提督の叫びは、皆の気勢に埋もれた。

 とんでもない艶姿だ。

 公序良俗に真っ向から喧嘩を売る姿だった。

 

 ◆ ◆ ◆ 

 

「やるのぉ、嬢ちゃん!」

「Nah, nah(いやいや)、まだ本気じゃないぜ!」

 

 土埃を上げ、先頭集団が疾駆する。

 ホノルルはその一番手だ。

 

「ヤバい構図なんじゃないのか、これ……?」

 

 ふんどし一つでお尻を出している女の子を、屈強な男達が追う。

 見た目だけならば犯罪のシーンだ。

 しかし、ホノルルは嬉々として走り回っている。

 どうしてこれが成立するのか、提督には理解に苦しむ光景だ。

 

「ガチのマジは、これから……うわ、ヤバい――」

 

 調子に乗っていれば、カーブは目の前。

 藁が積まれた塀が視界に広がる。

 男達は曲がり角に備えていた。

 

「馬鹿、前を見ろ!?」

 

 惨劇を予期して、提督の血の気が引く。

 しかし、ホノルルはそのまま駆けた。

 壁に一直線のコースだ。

 

「脱線は、しないぜ!」

 

 跳んだ。

 目の前の壁に向かって。

 

 宙で身体を捻り、壁を強く蹴り出す。

 三角飛びとなって、勢いで先頭集団に落下していく。

 

 頭上だ。

 見上げ、皆が息を飲む。

 

 身体を捻る様に、一切の隙がない。

 軸が通り、ぶれずに横回転。

 無駄な力はなく、勢いに逆らわない流線の美しさ。

 半裸が故に、筋の一つに至るまでの躍動を見せつける。

 男達、観衆、提督、皆が見とれた。

 

「Here we go!!」

「おうさ!」

 

 着地点は、先頭を走るおっちゃんの逞しい背中。

 負ぶさる形でホノルルが前を指さす。

 おっちゃんも背負ったまま勢いよく駆けた。

 先の余韻に引っ張られているのか。

 奇妙な構図になっても、誰もそれを不思議と思わない。

 全てがホノルルのペースだった。

 

「おい、馬鹿、下りろって!?」

 

 一人だけペースを乱す提督。

 ホノルルの姿は、危険すぎた。

 

 負ぶさる格好なので、足を豪快に開いている。 

 豊かな臀部に対して、赤ふんどし一枚は防御力が全く足りていない。

 極めて無防備で、お尻の真ん中の『何か』が、はみ出ている恐れすらある。

 

 提督の背中を、冷たい汗が滴り落ちた。

 太陽は、快晴の空に高々と上がっているのに。

 

 ◆ ◆ ◆

 

(ホノルル、なかなかやるなぁ)

 

 走り慣れない道でも、先頭を維持していた。

 表情は乱れず、ペースは変わらず。

 爽やかに汗の玉を飛ばし、観衆に笑顔を振りまいている。

 少し抜け出したときには、後ろへ手を振る余裕すらあった。

 順位には男達の下心があったにしても、ずば抜けた身体能力を見せていた。

 

「Oh, here we go again(おっと、またか)!」

 

 更にカーブに差し掛かる。

 目の前には放牧地、牛たちが草を食んでいる。

 柵に藁が立てられていた。

 

「おらよ、っと……うわわわわわっ!?!?」

 

 先程と同じく三角飛びを試みるホノルル。

 しかし、足場にした柵が支えきれずに傾いた。

 

 観衆がどよめく。

 ホノルルはバランスを取ろうと、両手を広げていた。

 着地点には片足のスペースしかない。

 

 バランスを保つため、胸が不規則に揺れ、足は無防備に開いてしまう。

 内腿から股座の丸み、股関節周りの筋のくぼみ、普段ならば絶対に見えない所が晒される。

 ホノルルには見せる意図などない。だからこそ、却って大胆だ。

 見上げる男達のペースも乱れた。

 

「危ねえ、危ねえ……ちょっと通るぜ!」

 

 バランスを取り戻したホノルルが、柵の上を駆けていく。

 二頭の牛が見上げていた。

 片方は首を傾げ、もう片方は草を食む口を止めた。

 異様な光景を、ただ見送っていた。

 

 間隙を縫うようにして、男達が追いつく。

 柵から飛び降りたホノルルは、再び先頭集団の中に入ってしまった。

 

「牛共、そこ、変われぇぇぇぇぇ!!」

 

 提督の口から、叫び声がこぼれた。

 

 あいつら、ベストポジションじゃないか。

 文字通りの真下に陣取っていやがった。

 ふんどしでギリギリ隠れているからこそ、想像の余地がある。

 赤ふんどし一つが目立つ状態だから、隠れている、じゃなくて、そこに『何か』隠してあると示す状態だ。

 

(俺も牛に変装すれば良かったか?)

 

「……って、そう言うことじゃねえ!」

 

 邪な想像を振り払い、提督は走る。

 ホノルルのペースは早く、すぐに先頭集団に追いつく。

 むしろ息が上がってきたのは提督の方だ。

 鍛え直した方が良い、と頭の片隅で考えていた。 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 コースが中間地点に差しかかったとき、男達が気勢を上げた。

 脇門から続いた緩い下り坂は、ここで底を打つ。

 前方には、じわりと登り勾配が待っていた。

 

「こりゃ、ちょっときついかもな……」

 

 履き慣れない足袋での全力疾走。

 流石のホノルルにも、疲労が見え始めている。

 そこへ来ての登り坂は、重く脚へとのしかかった。

 

 車なら、下りから登りへ切り替わるこの地形を『サグ』と呼ぶ。

 下りで伸びた隊列は、登りに触れた先頭から速度を失う。後方の男達は、まだ下りの勢いを残したままだ。

 

 開いていた距離が、前から押し潰されるように縮まっていく。

 先頭集団が登りで失速し、そこへ後方集団が追いつく。

 あっという間に、男達は団子状態になった。

 

――I can make it(行けるぜ)!

 

 ホノルルは、あえて集団の外側に出た。

 カーブに差し掛かったところで、あえてアウトコースを取ったのだ。

 

 外へ膨らんだ勢いを殺さず、そのまま跳び上がる。

 目の前に迫る壁を、力強く蹴った。

 

 一斉に歓声が上がった。

 ホノルルは、男達の頭上にいた。

 肌も露わな姿が、宙に舞ったのだ。

 

「ゴメンな、借りてくよ!」

 

 団子になった男達の肩へ、ふわりと足を乗せる。

 三角飛びの勢いのまま、次々とその頭上を突き進んでいた。

 これだけ不安定な足場でも、身体の軸が全くぶれない。

 勢いのままに駆け抜けてゆく。

 

 肩を踏まれた男が見上げる。

 肉感の桃源郷、真ん中を辛うじて守る赤。

 それが文字通りの目と鼻の先。

 瞬きすれば、もうなくなっている。 

 

 駆ける姿は、さながら忍者だ。

 ただし黒装束はない。

 肌も露わに、極めて目立つ忍者だった。

 

「おらよっと!!」

 

 渡り終え、勢い良く飛び出る。

 大きな放物線の中、身体を丸くしての前方宙返り。

 

 膝を胸元へ抱え込むように、身体を丸める。

 赤ふんどしが、丸く畳まれた身体の中心で鮮やかに映える。

 その向こう側の想像をちらつかせつつも、それは瞬間の芸術。

 直後には勢い良く身体を伸ばす。

 きゅっと締まったヒップがボリュームを誇示し、艶めかしい脚線美を見せつける。

  

「お先に失礼!」

 

 『サグ』に足を取られ、更に艶姿で足が止まり掛かる男達。

 それを文字通りの尻目に、ホノルルは勢い良くかけ出していった。

 

「いてててて……」

 

 尚、提督は、『サグ』のポイントを上手く捌けず、盛大にすっ転んでいた。

 

「――Watch your step(足下、気をつけなよ)」

 

 小さな呟きは、歓声に押し潰された。

 

 

 ――――――――

 

 

 そこから先はホノルルの一人舞台だ。

 男達の背を跳んだ勢いをそのままに、登り勾配を駆け抜ける。

 

 豪快に跳んでは身を翻し、全身を惜しげもなく見せつける。

 余裕が出てきた頃には、逆さになった瞬間に手を振っていた。

 

 複雑なカーブさえ、最短の軌道で駆け抜ける。

 塀の上に軽やかに着地し、細い足場も難なく抜けてゆく。

 身体はぶれず、飛び回る姿は身体能力の高さを示した。

 全身が淀みなく連動する様子は、皆の目に躍動の美しさを焼き付けた。

 

 男達の視線に下心が混じるのも、ホノルルには愛嬌のうちだ。

 走りつつも臀部の食い込みを調整し、砂を払い落とす姿が、男達を釘付けにする。

 ちろり、と舌を出して小悪魔の笑みを返した。

 

 陽光に金髪を煌めかせ、汗の雫が虹色の光を散らす。

 手の届かない高みで、ホノルルは妖艶な離れ業を次々と描いていく。

 白い肌が砂埃で汚れる姿も、却って魅力を引き立たせる。

 一挙手一投足の全てが美しく、可愛らしく、艶めかしい。

 輝くような笑顔を振りまき、皆の注目を浴び続ける。

 

 ホノルルはこの祭りの中心であり続けた。

 全身全霊で、この瞬間を楽しんでいた。

 

 ◆ ◆ ◆ 

 

 いよいよ、ゴールが見えてきた。

 鳥居をくぐり抜け、本殿前に立ててある棒を手にすれば終わりだ。

 

 ホノルルが大きく引き離している。

 身体能力と陽性の色香、それらが男達のペースを乱していた。

 本殿めがけて、一気に駆け抜けた。

 

 ホノルルは満面の笑みで立ち止まる。

 くるりと振り向き、仁王立ち。

 胸を張り、追走する皆を見据え――

 

 ホノルルは、跳ねた。

 膝を折り、腰を落とし、力を溜めた後に、勢いよく伸び上がった。

 妖艶な身体は流麗な一本の線となり、勢いのまま後方へ飛ぶ。

 両手で着地すれば、その反動でもう一度跳ねる。

 お手本のように綺麗なバク転だ。

 ベクトルに逆らわない美しい連動に、男達も、観衆も、息を飲む。

 

 しかし、そこでは終わらない。

 

 着地した勢いと、大地から来た反動を、頭の先まで通す。

 石畳を蹴れば、身体が高々と浮かび上がった。

 飛ぶ、ではない。浮かんだのだ。

 それほどに、力みのない自然な飛翔だった。

 

 宙で身体を折り畳み、くるりと後方へ縦に一回転。

 華やかで、軽やかで、妖艶なショーのフィナーレだ。

 瑞々しいお尻が、勢いで天を向く。

 直後、体を伸ばす。

 弾けるように伸びる手足はとても美しかった。

 鮮やかに着地を決めれば、皆が立ち止まり、ただ見入るばかり。

 

「I'm number one!」

 

 祭りの勝者の証である棒を片手に、もう一度仁王立ち。

 直後、皆の拍手と歓声がホノルルを包み込んだ。

 両手を振り、満面の笑みで応えるホノルル。

 半裸の乱痴気騒ぎの後とは思えない、爽やかな光景だった。 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 提督がようやく追いついたとき、全ては終わっていた。

 その場にへたり込む。

 ホノルルと、その後ろの男達と、その誰よりも、疲労困憊していた。

 

 

 ――――――――

 

 

 すっかり日が暮れた山道。

 提督が運転する車で、ホノルルは帰路に就いていた。

 あの後、提督と揃って自治会長を始めとした村の皆に挨拶をして、そのまま帰ってきた。

 祭りは大盛況に終わり、その立役者として一晩の滞在を求められたが、それを断ってきたのだ。

 

 言葉を交わさない、静かな車内。

 補修だらけの路面の振動がガタガタと響いていた。

 

「提督、いるならいるって言ってくれれば良かったじゃん」

 

 口火を切ったのはホノルル。

 着替えもせず、半被にふんどしの姿のままだ。

 土埃の匂いを纏い、駆け回っていた瞬間そのままに、車に乗っていた。

 汗は引いているが、半被やふんどしに染み込んでおり、甘い娘の香りを放っていた。

 

「……悪かったな。そりゃ、俺の手落ちだ」

 

 憮然とした様子で、提督が答えた。

 ずっと前を見たままだ。

 曲がりくねる山道、ホノルルと目を合わせる余裕はない。

 しかしその声色には、それ以上に複雑な感情が込められていた。

 

「だが、お前を一人で行かせなくて良かったよ」

 

 安堵と共に、言葉を吐き出す。

 あれだけの乱痴気騒ぎをホノルル一人でやらせなくて良かった、その思いは本当だった。

 

「あたし一人だと、ダメだったんだ?」

 

 助手席から、ホノルルがのぞき込む。

 口元は微笑んでいるが、目には力が込められている。

 鮮やかな碧眼が煌めき、提督を射抜いた。

 

「ふぅん、そっかぁ。あたし一人だと、ダメだったんだ」

 

 不穏な気配を感じ、提督はさらに前に集中した。

 それに飲まれれば、ろくなことにならないだろう。

 

「――提督、toilet!」

「何!?」

  

 唐突に、ホノルルが叫ぶ。

 

「やばい、漏れる、ほら、そこ、parking!!」

 

 よく通る声が助手席から圧力となってのしかかる。

 勢いに飲まれ、提督は言われるがままにハンドルを傾ける。

 ホノルルが指さした先には、街灯が一つあるだけの休憩用の駐車スペースがあった。 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「着いたぞ!……ホノルル?」

 

 提督の狼狽に静寂が答えた。

 隣を見れば、にっこりと微笑むホノルル。

 シートベルトを解き、SUVの大きなシートに胡座をかいていた。

 

「トイレじゃなかったのか?」

「Sorry。あれ、嘘」

 

 全く悪びれないホノルル。

 考えが読めず、提督は困惑するばかりだ。

 

「あたしは、さ――」

 

 身体を傾け、身を乗り出す。

 半被一枚に包まれた豊かな胸の谷間が見える距離だ。

 土と汗の混ざった匂いが分かる。

 いつもの潮の匂いとは、まるで違う匂い。

 

「あたしは、一人じゃ嫌だったよ」

「はあ?一人で来る予定じゃなかったのか?」

「最初はそうだったよ。でもね――」

 

 胸から目をそらせば、瑞々しい太股が目に入る。

 胡座なので、股座にも目が行ってしまう。

 昼間より食い込みが激しくなっていた。

 こんな格好で、男達の前を駆け回ったのか。

 提督の表情がさらに苦くなる。

 

「提督が来てくれたから、もっと良かったよ」

 

 甘く輝く碧眼が、提督を見据えた。

 胡座をかき、頬杖をつき、上目遣いに見つめていた。

 女の子としては、とても行儀の悪い格好だ。

 

 しかし、今のホノルルの魅力を最大限に引き出していた。

 そのだらしない座り方が、かえって肌の瑞々しさを際立たせていた。

 距離が近いぶん、祭りの最中には意識しなかった、局部が殊更に目を引く。

 窘める言葉が、喉元まで出掛かる。

 しかし、唇は震えるばかりで、一言も紡ぎ出せなかった。

 

 ゴクリ、と生唾を飲み下す。

 走り回っていた姿が、脳裏に浮かぶ。

 しかし、一つだけ聞いておかなくてはいけない。

 

「その、だな……なんで、その格好のままなんだ?」

 

 車に乗るとき、着替える猶予を与えるつもりだった。

 しかし、ホノルルは強引に乗り込んだのだ。

 その上で「Let's go!」。

 勢いのままに、帰路についてしまったのだ。

 

「ねえ、提督……あたしを見て、どう思った?」

 

 ホノルルは、答えない。

 むしろ提督の答えを促す。

 覗き込む視線にトゲはなくとも、逃げる余地を与えない隙の無さはあった。

 

 固唾と生唾を、まとめて飲み込んだ。

 脳裏に浮かぶは、後ろの男達。

 視線には下心が籠もっていた。

 

 無理も無い。

 剥き出しのお尻をふんどし一枚が、辛うじて隠している。

 水着のように全体を覆うものではない。流れる汗も、お尻の丸みから弾け飛ぶ。

 

 しかし、それがどうしても、認められなかった。

 何故、皆に見せびらかす必要があった?

 言ってくれれば、いくらでも裸を拝んでやったし、抱いてやったのに。

 何故、こんなにも回りくどい手を使った?

 

「Because it was fun. Obviously(楽しかったからだよ。決まっているじゃん)」

 

 がくり、と提督は肩を落とした。

 そうだ。こいつは、こういう奴だった。

 

 ただ、抱かれるだけでも良い。

 肉欲のままに、喘ぎ、踊り、狂う。

 

 でも今回のような演出を見つけたなら、それもアリとする大らかさ。

 自分一人で祭りを楽しむだけでも良い。

 でも、提督を散々に煽り立て、心を乱れさせた上で、抱かれることにも楽しみを見いだす奴だ。

 

 艦娘として弁えてはくれているが、どこか享楽的な性格。

 ベッドインすらも厭わない軽さが、提督との距離を縮めた一因でもある。

 だとするならば、これからも、この軽さに振り回されるのだろうか。

 

「Let me ask you again, Admiral(もう一回聞くよ、提督). Do you really feel nothing when you look at me?(あたしを見て、何とも思わない?)」

 

 ぐいっと、身を乗り出した。

 唇すら触れ合いそうな距離だ。

 

 ホノルルの、甘い少女の香りが、鼻腔に忍び入る。

 目線を反らせば、豊かな胸の谷間が目に入る。

 シートの上で身を乗り出し、にじり寄っており、剥き出しの太股が触れた。

 昼間とは違う妖艶な輝きが、提督の瞳を捕らえた。

 

 提督が、車外に目を走らせた。

 街灯一つの人気がない駐車スペース。

 聞こえるのは虫の声ばかり、車の音は聞こえない。

 

「……夜風に当たろうか。ここは、蒸し暑い」

 

 告げる声は奇妙なほど落ち着いていた。

 提督の瞳に、性欲の濁りが浮かんでいる。

 狼狽の色はない。

 理性が完全に沈黙して、葛藤がなくなったが故の静けさだ。

 

 そして、ホノルルは目敏く捉えていた。

 鎮守府において唯一、提督と肉体関係がある間柄だ。

 求めてくるときの気配は、分かるようになっていた。

 

「That's more like it(そう来なくっちゃ)」

 

 口角が引き上がり、会心の笑みが浮かんでいた――

 

 

 ――――――――

 

 

 晩夏の山中は、濃い草いきれに包まれていた。

 息が詰まるほど濃く、草木の息吹が満ちている。

 秋の花の香りも混ざり始め、その匂いには季節の移ろいが僅かに含まれていた。

 

 車の外で、提督がホノルルを抱く。

 唇を重ね合わせ、力強く抱きしめた。

 祭りが終わって汗が引いたホノルルだったが、提督の体温で再び汗が浮かぶ。

 

「んっ、ふぅ、んん、んぅ……んん、んっ……」

 

 深く口づけ合う二人。

 提督の方が背が高く、ホノルルは少しだけ背伸びをして唇を差し出す。

 すくい上げるように提督が抱き留めていた。

 

 提督の口づけは、いつも以上に濃かった。

 呼吸の暇も与えないほどの力強さ。

 予想していなかった勢いに、ホノルルが翻弄される番だった。

 

 提督の手が、尻たぶを鷲掴みにする。

 散々に男達に見せつけたそれに、指の感触を刻み込む。

 滴り落ちる汗を撫でとり、平手で叩いて弾力を確かめ、存在感を刻み込む。

 

 この尻が、嫉妬心を煽り立てた。

 これだけの物を、見ず知らずの男に、下から眺めさせた。

 サービス過剰も甚だしい。

 じっくりと眺めて良いのは、俺だけだ。

 恨み言も込めつつ、ホノルルの尻を弄ぶ。

 

「う、んんっ……提督、それはぁ……Oh、あっ、あっ♥」

 

 指を引っかけ、ふんどしの縦布を引き上げる。

 股間にさらに食い込めば、快感を惹起されてホノルルが悶えた。

 生地はしっかりしているので、力を込めるだけ腰も引き上げられる。

 爪先立ちになるほど引き上げれば、悶えるお尻が、右に左にと揺らめく。

 昼間の意趣返しとばかりに、何度も揺らめかせ、痴態を楽しむ提督だった。

 

「へへ、提督、我慢できないんじゃない?」

「どれほど持つかは、俺にも自信がない」

「もう持たないんじゃないの?」

「何だと……ほれ」

「――Oh、Ah♥引っ張らないで、あ、ああぁっ♥」

 

 ホノルルの手が提督の股間を撫で上げる。

 ズボンの生地を突き破らんばかりの勢いで屹立しており、苦しそうですらある。

 しかし、まだ主導権は提督のまま。

 煽る文言に応え、さらに縦布を引き上げられる。

 文字通りに爪先しか届かない状態にされ、力が股間に集中して、さらなる快感を突き返されてしまった。

 

 むわぁっ、と女の匂いが漂う。

 引き上げたために生地に隙間が出来て、股間の濃厚な汗の匂いがフェロモンとなって作用していた。

 そして、ホノルルが感じている証拠として、愛液の匂いも混ざり始めている。

 

「……たまにはいいな」

「何のこと?」

「独り言だ……」

 

 土の匂いがする。

 材木の匂いが混ざっている。

 肥料の匂いが、微かにしている。

 

 山村で元気よく駆け回った、名残だ。 

 日頃は潮の匂いを纏っているが、今日だけは山の匂いを纏っていた。

 

 だから、車外に出たのだ。

 草いきれの中で土の匂いを感じ、いつもと違うホノルルを抱きしめたかった。

 浜辺で騒いでいる姿がとても似合っているが、山の中にいる新鮮さも、自分一人のものにしたかったのだ。

 

「なあ、提督、それはいい加減に……痒いんだけど……」

 

 生地の丈夫さ故に、いつまでも引き上げれば刺激も強い。

 手を止めれば、痒みに身を捩るホノルル。

 ふんどしは抑えたままなので、生地は食い込む。

 

 新鮮なアングルだった。

 お尻の丸みを上から見下ろす、それはあったはずだが。

 パンツと違って、文字通りに谷間のラインしか覆わない。

 真ん中に赤い生地が食い込むと、ボリュームが強調されるようだ。

 ホノルルの艶めかしさを改めて見せつけられたようで、見入ってしまう。

 

「だからさ、痒いんだって……!」

 

 焦れて涙目になるホノルル。

 そろそろ見せる余裕がなくなってきている。

 

「おう、悪いな……」

「――うひぃっ!?て、提督……!」

 

 提督は、ふんどしの生地の隙間から指をつっこんだ。

 痒いと言うから、掻いてやったのだ。

 すると、ホノルルは声を裏返して悲鳴を上げた。

 

「そこ……はっ、あっ、っ、っ……あっ、あぅ……♥」

 

 痒みが満たされる感触が、性の感覚をも刺激したようだ。

 指の腹を押し込むようにして、秘裂の下端から会陰を擦過する。

 もっと掻いてほしいのか、ホノルルが膝を広げて股座をさらにさらけ出す。

 例えるなら、ペットが首を掻いてもらい、捻って別の痒いところをおねだりする仕草に近いのか。

 ただし女が股を広げる仕草は、可愛さとは別の次元が存在していた。

 

「Yes……Ah……提督、そこ……もっと……っ、っ、あぁっ♥」

 

 前後から手を突っ込み、生地を押しのけ、指を強めに押し込んで擦る。

 淫唇には触れず、後ろもお尻の皺を軽く撫でる程度だ。

 ホノルルは提督に強く抱きついて辛うじてバランスを保ち、がに股になって腰をグラインドさせている。

 痒いところにより刺激を送ろうとする仕草が、新鮮な艶めかしさだ。

 腰をくねらせる仕草が、ペニスを求める雌そのものだ。

 提督も夢中になり、ホノルルの求めるがままに、股座を擦り続けた。

 

「Come、Come……Yes……Ah、あああぁぁぁぁぁ♥」

 

 ホノルルが愉悦を歌い上げた。

 提督の手を汚し、ふんどしに更に染みこませ、濃厚な情事の匂いを醸し出した。

 

「ホノルル、まだまだ働いて貰うぞ――」

 

 半被を開き、胸元を露わにした。

 瑞々しい乳房が勢いよく転がり出た。

 ホノルルは妖艶に微笑んだ。

 異論など、あるはずもなかった――

 

 

 ――――――――

 

 

「提督、準備、良いじゃん」

「お前と付き合っていれば、こうなるに決まっているだろ」

「へへっ、Can't argue with that(返す言葉もないよ)」

 

 車体を背に、提督が仁王立ちになる。

 ズボンを下ろし、いきり立つペニスが外気に晒される。

 ホノルルはその前に腰を下ろし、露わになった乳房がペニスを受け止める。

 

 車にはローションが準備されており、パイズリの準備が整っていた。

 好色を隠そうともせず、どこでも気が向くままに身体を求めるホノルルと付き合っていれば、これくらいの準備は出来ている。

 ここまで馴染んでしまったこと、手放しでは喜べない提督だが、それだけホノルルの身体の虜になっているとも言えた。

 

「それで、これ……なんか、変な感じ……♥」

「痒かったんだろう?丁度良いじゃないか」

「そりゃ、そうなんだけど……あっ……♥」

 

 ホノルルの体勢は、正確には「蹲踞」。

相撲で力士が立ち会いの前に腰を下ろす、あの格好だ。

 足を折り曲げることで太股やお尻の肉付きが更に強調され、上から見下ろしていても性欲を更に煽り立てられる。

 赤ふんどしが真ん中を走る光景が艶めかしさを強調していた。

 

 そのふんどし、股の部分にローションが塗り込められていた。

 食い込みはするが、滑りがあるお陰で痒みは抑えられている。

 その代わり少しでも身動ぎをすれば、股が強く刺激される。

 やや安定を欠く蹲踞の格好が、股間への刺激を強めており、ホノルルは快楽に苛まれていた。

 

「それじゃ……行くぜ……♥」

「おお、良いぞ……、――!」

「Hey、今からそれで、持つの?」

「ぬぅ……言わせておけば……!!」

 

 ローションで潤っている乳房が、ペニスを受け止めた。

 まずは両サイドからの圧迫が出迎える。

 豊かな乳房が驚くほど形を変え、肉の質感がペニスを包み込む。

 ビクビクと震え、血管が浮き出るほど興奮を露わにしたそこに、快楽を刻み込む。

 これだけでも、提督は呻きを抑えられない。

 

「ほら、どうだ、ていと……、っ、ひぅっ!?」

「ははは、どれだけ持つかな?」

「提督の、方が、先だ……おぅ、ああぁ……♥」

 

 更にペースアップし、提督を快楽で追い詰める。

 しかし、そこで腰が砕けてしまう。

 蹲踞のままのパイズリなどやったことがなく、バランスが上手く保てない。

 腰回りが揺れてしまえば、ローションを帯びた生地が股間を苛む。

 責め立てようと思えば、快楽が返ってくるジレンマに陥っていた。

 

(良い眺めだ……ああ、そうか)

 

 この体勢を提案したのは、提督だ。

 ここまで来て思い出したのが、昼間の光景。

 先頭を走るおっちゃんの背に負ぶさったホノルルだ。

 あの時と同じように、大股を開き、真ん中を辛うじてふんどしが守る。

 今はその光景によく似ていた。

 

「ほら、どうだ?参るのは、お前の方だぞ?」

「Hey, quit it, you(やめろって、この)……!」

「いつもの勢いはどうした?」

「覚えていろよ……提督……!」

 

 乗じるように、提督が腰を突き出す。

 ホノルルの胸を犯すような絵図になる。

 乳房による圧を強めて応えるも、身体が揺れれば、股間が刺激される。

 どちらが先に音を上げるかの勝負になっていた。

 

「くぅ、ふっ……んん……!!」

 

 本当に、良い眺めだった。

 乳房で攻めれば、股に快楽が跳ね返る。

 思うようにペースが掴めず、顔を歪めるホノルル。

 単純な気持ち良さではない複雑な表情が、提督を煽り立てた。

 

「これで、どう……!」

「おお、なかなか、だな……!」

 

 ホノルルも気を取り直し、乳房の責めを強める。

 強く圧迫し、根元から先端へと扱きあげる刺激を入れる。

 ペニスが丸ごと包み込まれそうな圧巻のボリュームだけに、気を張っていないとあっという間に発射まで持って行かれそうだ。

 

 反撃として、その乳房を犯すように腰を突き出す。

 ホノルルの綺麗な顔に、何度も先端が擦りつけられる。

 思うように進めない不満を露わにしている様子が、提督には心地良い。

 

――しかし、これは……ヤバいな……!

 

 ホノルルは提督の弱いところを的確に把握している。

 跳ね返る快感を堪えつつも、責めの手を緩めない。

 

「Give upなら、さっさと言いなよ?」

 

 にんまりと笑う様子が、癪だった。

 負けじと腰を突き出し、ホノルルの胸を犯す。

 

「Ah, damn it(クソッ)……そろそろ、参った、しなよ……!」

「そりゃ、お前の方だろうが……!」

 

 更に力強く犯す。

 乳房が波打ってボリュームを誇示する。

 ホノルルが力を込める。

 肌の質感に覆われる感触が、ペニスを責め立てる。

 

 直後には、ホノルルがバランスを崩し掛かる。

 しかし、手は緩めない。

 ふんどしによる股の攻めに屈するか、提督を先に落とすか。

 

 

「ほら、これで、どうだ……ほら、ほら、Let's go♥」

「ぬぅ……くぅ……っ!」

 

 股間のことを構わず、乳房を転がした。

 左右の手を別々に回し、乳房が不規則に潰れる。

 その壮観な眺めが更に煽り立て、提督が先に屈した。

 ホノルルの綺麗な顔に、濃厚な精液を吐き出した、が。

 

「あぅっ、あああぁぁぁぁぁぁぁっ♥」

 

 直後、ホノルルも仰け反って絶頂を味わってしまう。

 精子を浴びて気を抜いた瞬間、ふんどしの生地が敏感なところを擦った。

 激しい責めは、諸刃の剣となって襲いかかってしまったのだ。

 

「これでイーブンだな、どうだ……?」

 

 提督の滾りは衰えを見せず、ペニスは天を向いたまま。

 

「丁度良いHandicap、参ったするのは、提督だからね♥」

 

 淫靡に微笑むホノルル。

 昼間、あれだけ走り回ったのに、一向に疲れが見えない。

 股の下から、愛液が滴っている。

 ローションも混ざっていれば、ふんどしの生地では抑えられないほどに濡れていたのだ。

 

 

 ――――――――

 

 

「ドロドロだな、どんどん溢れてくるぞ?」

「提督……焦らさないで……♥」

「悪い、もう少し焦らさせろ」

「You’re so mean(意地悪)」

 

 ホノルルが車体に手をつき、提督に尻を向ける。

 後ろから被さる提督がホノルルの股に手を伸ばし、濡れた秘裂から内腿、尻たぶの丸みと、盛んに撫で回している。

 それだけでも更に濡れてしまう淫靡な身体で遊んでいた。

 今のホノルルは焦らされるだけでも、強烈な快感となって刻み込まれていた。

 

「さて、お望みの物をやるぞ。ほら、足を開け」

「遅いっての♥……全く……♥」

 

 股を開き、尻を突き出す。

 滴り落ちる愛液が、濃厚な雌の匂いを醸し出す。

 ふんどしは剥ぎ取られており、秘裂も尻穴も曝け出されていた。

 

 その上で、土埃の匂いを纏ったままだ。

 村を散々に走り回った名残が鼻腔を擽る。

 よく知っているはずのホノルルが、別人のように感じられた。

 だから――

 

「――そらっ!!」

「Wow!?んおっ、おおぉぉっ……♥」

 

 すぐにでも、中まで確かめたい。

 身体もよく分かっているホノルルが、とても新鮮に映っていた。

 だから、勢い任せに犯す。

 奥の奥まで、感じたかった。

 

「Yes……Oh, yeah ……Come,Come……♥」

 

 ホノルルも夢中になっている。

 尻を突き出し、揺すり立てている。

 散々に煽り立てたが、いざ提督が本気を見せれば、好色の本性が迫り上がっていた。

 貫かれる快楽、支給を揺さぶられる快感、それらがホノルルの理性を吹き飛ばした。

 

「Please,Fuck me,more……提督、もっと……ああぁっ♥」

 

 提督の手が、風を切る。

 勢いのまま、叩き落とされる。

 ホノルルの尻が、小気味の良い音を立てた。

 

 この、尻だ。

 この尻が、村の男を誑かしたんだ。

 俺の物でなくてはならないはずなのに。

 何て、悪い尻なんだ。

 だから、こうしてやる――

 

「提督、痛いって、ガチの、マジで、ああぁっ♥」

「本当にそう思っているか?」

「I’m, like, totally serious(思ってる、ガチのマジだから)、ああぁっ、っ、っ♥」

 

 平手で、豊かな尻肉が揺れる。

 そのたびに、締め付けがきつくなる。

 快感が、次の平手を促した。

 

 どれだけ犯しても、締め付けはきついままだ。

 だから、ホノルルを抱くときは、いつも新鮮な刺激だ。

 艦娘として鍛えられた体幹もあるのだろう。

 いくら交わろうとも、この身体に飽きることはない。

 提督の中で、そんな確信があった。

 

「男を誘惑する――」

 

 全力で腰を突き出す。

 ホノルルのことは、この際考えない。

 

「――悪い娘だ!」

「おっ、ほぉぉぉぉぉっ♥」

 

 本当に力任せの突き込み。

 ホノルルの身体が車体に押しつけられる。

 とたんに、きつい締め付けが返る。

 

 立ってはいるが、形としては寝バックに近い。

 車体に腰が押しつけられたことで、ホノルル側が窮屈になり、それがペニスへの締め付けに跳ね返る。

 豊かな尻が間に挟まり、挿入が中途半端になる。

 

 その上で、子宮を求めてしまう。

 だから、提督のピストンは、更に力任せとなる。

 手荒くお腹の中を掻き回される感触も、ホノルルにとってはご褒美だった。

 

「Oh!?No、おっ、おおぉ、あっ、ああぁぁぁっ♥」

 

 手を強引に差し込み、乳房を揉みしだく。

 潰れかかっているだけに、質感は格別だ。

 

「Come,Ah……そこ、そこ……ああぁっ♥」

 

 指先が乳首を捕まえた。

 ホノルルの声色が変わる。

 更なる快楽の大波が襲いかかっていた。

 

「もう、たまらんな……ホノルル……!!」

 

 そこで、腰を強く叩き付ける。

 窮屈な体位でも、奥まで届く。

 支給まで侵蝕された感触に、ホノルルが身悶えした。

 

 奇しくも、肉感を存分に享受できる格好となった。

 手は乳房を何重にも揉み潰し、柔らかさを受け取る。

 腰を叩き付ければ、豊かで張りのある尻の感触を楽しめる。

 ただ豊かなだけではなく、鍛えられた裏打ちもあるので、張りも絶妙だ。

 これだけ贅沢な身体を存分に犯せることに、提督の雄の本能はブレーキを失い、暴走するばかりだった。

 

「くれてやる、受け取れ……ホノルル……うっ、ぐぅっ――!!」

「提督……また、っ……Come、おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ♥」

 

 ホノルルを、性の匂いで上書きする。

 昼間見た男達に対する当てつけの意図もある。

 しかも、染めるのは子宮だ。

 

 肌から落ちない土埃が、昼の光景を脳裏に焼き付けていた。

 見ず知らずの男達の方が、艶姿を堪能できたのだ。

 それに対する嫉妬をまとめてぶつけるように、力強いピストン。

 ホノルルも締め付けで返し、膣内が真っ白に染まった。

 

 寝バック同然の格好で強引にピストンをされれば、襞を存分に捲り返される。

 ホノルルもまた、絶頂を迎えていた。

 

「――What!?」

 

 余韻に浸る暇もなかった。

 視界がずるりと、引き下ろされた。

 ホノルルの目の前には、柔らかな下草が広がった。

 

「て、提督!?」

 

 今度は大地に組み伏せられている。

 完全なうつ伏せではなく、膝を立てる格好にさせられているため、尻を突き上げる状態にさせられた。

 

「――Oh,Yes♥Oh,Oh♥」

 

 にゅるり、と尻を分け入る感触。

 ローションを纏った提督の指が、尻穴を貫いていた。

 反射的に仰け反るホノルル。

 今日の提督は、想定をずっと越えていた――

 

 

 ――――――――

 

 

 にゅるり、にゅる、にゅるっ。

 

 尻穴を、指先が丹念に解してゆく。

 これだけ交わってはいるが、アナルセックスの経験はない。

 いつもならばホノルルから誘うが、今日の提督はいつにも増して強引だった。

 

「おおぉっ、ほぉっ、おっ、おっ♥」

 

 新鮮な刺激に、ホノルルは悶えた。

 突き上げた尻を揺さぶり、更なる刺激をおねだりする。

 昼から今までの疲労に加え、尻穴からの刺激が身体を蕩かしてしまい、突っ伏したまま、ほとんど動けない。

 初めてのアナルセックスは、一方的に快楽を植え付けられる格好となっていた。

 

「――うひぃっ!?」

 

 すぽん、と音がした。

 提督が強引に指を引き抜いたのだ。

 そこで奏でるのは、いくらホノルルでも、強い羞恥を刺激される。

 裏返った悲鳴を上げてしまうも、一緒に愛液まで零せば、嫌がっているわけではないのが明白だった。

 

「行くぞ……力、抜けよ」

「ガチのマジで、そこはヤバいかも……優しくして、ね……?」

 

 いきり立つペニスの先端が尻穴に押し当てられ、ホノルルも応えて突き上げる。

 ヒクヒクと物欲しげに震える様を見せるも、初めてなので力の加減が分からない。

 ホノルルの声に、震えが籠もっていた。

 

「――んおおおぅぅぅぅぅっ♥おおおぉぉぉぉぉっ♥」

 

 尻穴を貫かれる感触は、強烈だった。

 反射で、顎が閉じなくなる。

 口を開けたまま、嬌声とも、咆吼とも取れない声を上げた。

 

――このケツが、悪いんだ!

 

 提督の瞳は、焦点を結んでいない。

 ホノルルを犯しているには違いない。 

 しかし、その視界の中に、昼間の光景も映っていた。

 

 祭りの時、散々に男の心を乱した、ケツ。

 ふんどし一つで見せびらかし、俺の心まで乱した、ケツ。

 だから、誰にその権利があるのか、刻んでやる。

 

「おおぅ、おお、おお、おっ♥提督、捲れちゃう、おぅ、おおぉぉっ♥」

 

 先ほど以上に、手加減がない。

 膣とは違い、つるんとした直腸を、ペニスが蹂躙する。

 人肌の絹にくるみ込まれるような感触は、普通のセックスでは味わえない。

 締め付けは更に厳しい。もとより、ここは絞り出す器官だからだ。

 塗り込めたローションが勢いを助け、直腸にペニスを刻み込んだ。

 

「このっ――悪い娘だ!」

「ひゃうっ!?」

「こいつめ、こいつめ……!!」

 

 平手が、二度、三度、と打ち下ろされる。

 その上で、尻穴を存分に穿り返す。

 これだけの肉厚なら、叩いたくらいでは調味料に過ぎないだろう。

 反射的に締め付ける感触が心地良かった。

 昼は余裕を保っていたホノルルの悲鳴も、福音となって響いていた。

 

「あがっ、あっ……提督……提督……♥」

 

 乳房が胸郭と地面の間に挟まり込み、潰れ、ボリュームを示す。

 尚のこと呼吸に支障が出るが、それよりも快楽を享受したい。

 好色の本性を隠さず、平手を下ろされても、尻を振っておねだりする。

 悲鳴も、少しずつ嬌声へと変わる。

 直腸をこじ開けられるのが、気持ち良くなってくる。

 どこまでもセックスに対して貪欲な身体だった。

 

「犯してやる、こんな行儀の悪いケツは……こうだ……!」

「Yes♥yeah♥そのまま、そのまま、提督♥」

 

 アナルセックスの快楽が覿面に響いていた。

 未経験の感触に酔い痴れている。

 作戦は当りだったな、と頭の隅で誰かが囁く。

 昼間頑張った甲斐があった、と達成感も覚えていた。

 

「くっ、くぅ、はっ、はぁ……!!」

 

 目を血走らせ、尻穴を抉り返す。

 ホノルルと違って、全く余裕が無い。

 

 仮想敵は、昼間の男達だ。

 だから、ホノルルの所有権を、このケツに刻む。

 眺めるばかりだった皆への、当てつけを刻んでやる。

 この淫乱娘は、俺のものだ。

 誰にも渡さない。

 離れられないようにしてやる――

 

「こっちにも、くれてやるぞ、ケツ、上げろ!」

「やぁっ!?あっ、はぁっ♥……Yes,Sir♥」

 

 もう一度、尻肉を張り飛ばしてやる。

 ホノルルが従順に、尻を突き上げる。

 背を弓なりに反らせ、更に強調する。

 

 下草にきつくしがみついて、ピストンの全てを受け止めようとしている。

 その従順な姿が、提督の淫欲を加速した。

 尻穴は本来、デリケートな場所だが、関係ない。

 ここにも刻み、淫乱娘を手懐けなくてはいけなかった。

 

「行くぞ……行くぞ、おおおぉぉぉぉっ!!」

「Yes♥Fuck me♥fuck……fuck……おほぉぉぉぉぉぉぉっ♥」

 

 特濃の精液が、直腸に注ぎ込まれた。

 ホノルルの声が、夜の草いきれに響く。

 街灯一つの寂しい場所が、艶やかに彩られた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ちょっと、休もうよ、提督……」

「……明日の朝までには、戻っていないといけないぞ?」

「いや、そう言ってもさ……ガチのマジで、ヤバいって」

 

 尻穴からペニスを引き抜き、提督がへたり込む。

 これだけ激しいセックスをした経験はなく、疲労がのし掛かってくる。

 

「あたし、動けないんだってば……ほら……♥」

 

 ホノルルは突っ伏したままだ。

 しかし、片手が尻たぶに伸びた。

 引っ張ってみせれば、強調される尻穴。

 閉じきっておらず、精液の固まりがこぼれ落ちた。

 

 それを見た瞬間、むくりとペニスが起き上がった。

 この調子で明日の朝まで帰れるのか。

 あるいは、言い訳を拵えておかなくてはいけないか。

 それは、今は全く分からなかった。

 

「――な、動けないだろ?」

 

 ホノルルは勝ち誇った笑みを浮かべていた。 

 

 

 ――――――――

 

 

 後日の執務室。

 爽やかな秋晴れ、もうクーラーはいらない季節。

 窓を開ければ、微風がカーテンを揺らす。

 空気の流れが心地良かった。

 

「提督~!」

 

 秘書艦の席に座らされたホノルルが口を尖らせる。

 提督に向かって、勁烈な視線を飛ばしていた。

 

「大声を上げるな。外に聞こえるだろ」

「聞かせるつもりで、言っているんだよ!」

 

 憤懣やるかたない様子だ。

 両手を机の天板に叩き付け、勢い良く立ち上がる。

 対する提督は、どこ吹く風で書類に勤しんでいた。

 

「あたしが、今日から一ヶ月間、秘書艦ってなんだよ!?」

「見ての通りだ。お前を外にはやれん」

「なんでだよ!?」

「その理由は、お前自身がよく知っていると思うが?」

 

 提督の声は、冷たい。

 脳裏にはつい先日の乱痴気騒ぎが浮かんでいた。

 この娘を放っておけば、何を仕出かすか分からない。

 

「へえ、あたしを閉じ込めようって?ふーん、へーぇ、ほーぉ……」

「そう言うことだ。励み給え。書類はいくらでもあるぞ」

「あたし、書類整理だと戦力にならないよ?」

「だったら、この際だから覚えておくように」

 

 先のセックスで精力を根こそぎ放ってしまったのか。

 提督の声には、全く揺らぎがなかった。

 

――耐えろ。乗せられたら終わりだ。

 

 そして、先日の艶姿も浮かんでいた。

 あれだけ心乱された経験はなく、これからも経験したくない。

 しばらく、ホノルルには籠の中の鳥になって貰う。

 あの騒ぎをこれからも続けられれば、身体が持たない。

 

「ひょっとして、別の考え、ないかい?」

 

 ホノルルが席を立つ。

 執務机の前まで寄ってくるが、その手に書類は無い。

 代わりに、淫靡な微笑みを浮かべていた。

 昼の執務室には、全く似つかわしくない表情だ。

 提督の背筋を冷や汗が滴り落ちた。

 

「ない。全く、これっぽっちも、ないぞ」

「そっかー。じゃあ、あたしが、作ってあげようか♥」

 

 ホノルルが執務机の上に、腰を下ろした。

 わざとスカートをめくり上げていた。

 

「要らん。要らんから、戻りなさい」

「へっ、やなこった♥」

「だから、――!?」

 

 提督の視界には、大きな丸みと、何もない肌色。

 昼の執務室には、全く似つかわしくない光景だ。

 

「この用事で、秘書艦にしたんだろ?」

「しとらん……仕舞え……!」

「Nuh-uh(やなこった)♥」

 

 更にめくり上げ、見せつける。

 下着が無いのは明らかだ。

 最初から、これが目的だったのか。

 ちろり、と舌を見せて微笑む様子が忌々しい。

 

 

 このじゃじゃ馬に、これからも振り回され続けるのか。

 しかし、身体の味わいは極上だ。

 これがないと生きていけないほどに虜になっている。

 もう、戻れないところまで来てしまったのか。

 

 

 提督の口から、深くて深い溜息が、こぼれ落ちた。

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