獣人アパートに引っ越してきたんだが、もうオレは限界かもしれない 作:にゃがみ原くま
電気を消して布団に倒れこむと、酔いが回っているせいか、すぐさま意識が揺蕩った。ただ、歯は磨いたし、風呂に入って寝間着にも着替えている。すなわち、心残りなんて何一つない状態だったので、そのまま夢の世界にどんぶらこしようとしたそのとき、突然、玄関のドアがガチャガチャとけたたましい音を立てた。
酔いも眠気も一瞬で吹っ飛んだね。
もっとも、驚いたし怖くもあったけど、しっかり鍵をかけた記憶があったから、このときはまだ少し心に余裕があった。
だから、しばらくしてガチャンとノブが回ったときは、心臓が鷲掴みにされたような気分にさせられたよ。
ゆっくりと扉が開いていくときの蝶番の軋みなんて、オレの耳には断末魔の悲鳴にしか聞こえなかったね。
情けない話だけど、その間オレにできたことと言えば、床を這って部屋の隅まで逃げることだけ。そこでオレは産まれたての小鹿のようにガクブルしながら、月明りを背負って浮かび上がるシルエットを見守ったんだ。
最初の印象は、背が小さく体格も華奢ってことだったな。よくよく見て、頭に二つの三角が乗っかり、下半身では紐のような何かがゆらゆら揺れていることにも気付いた。
人型ではあるけど、人間ではない。
むしろ獣に近い何か、と言うのがオレの結論だった。
……あれ? それって、何となく心当たりがあるような?
「にゃ。遊びに来てやったにゃ」
ああ。声にも聞き覚えがある――
「――って、ヤニ子じゃねーか!?」
果たしてそこにいたのは、昼間に出会ったばかりの獣人ヤニ子であった。
「て、て、てめーどうやって入った!? 鍵はかかっていたはずだぞ!?」
「なんかガチャガチャしてたら開いたにゃ。このアパート、だいたい全部屋そんな感じにゃ」
マジかよ。
このアパートのセキュリティのガバさに愕然とするオレを尻目に、ヤニ子はズカズカと勝手に部屋に上がりこんでくると、
「にしても、この部屋くらいにゃー。電気くらいつけろにゃ」
言うや否や、これまた勝手に電気紐を引っ張って灯りをつけやがった。部屋中に広がる白い光が、闇に慣れたオレの目を焼く。
「うおっまぶしっ! こ、こら、電気つけるな! もう寝るんだよ、オレは!」
「寝る? 寝るって、まだ十時にゃ。そんな早く寝たら、目がちっちゃくなるにゃ」
余計なお世話だ。
と、言い返そうとして、オレはハッと気付いた。それではヤニ子のペースに飲まれるだけだ、と。その前にオレにはすべきことがあるのではないか、と。
だから、まずオレはおっとり刀で空気洗浄機の電源を入れた。超強力消臭モードが作動したのを確認し、ダメ押しに指差し確認ヨシ。これで安心して言い返せるってもんだ。
「余計なお世話だ。……それで? お前、何しに来たんだよ?」
「にゃ、酒とつまみ持って来たにゃ」
そう言ってヤニ子は左手に持ったビニール袋を持ち上げると、コロッとした笑顔で、
「今朝のお詫びにゃ。あのときは急に迫ってごめんなさいなのにゃ」
ふ、ふーん。
ま、まぁ? そう言うことなら、受け入れるのもやぶさかではない、かな。いきなり部屋に押し入ってきたのはどうかと思うけど。オレとしても、年頃の彼女に「くさい」って言ってしまったこと、謝って清算したいと思ってたところだし。
――なんて、殊勝に考えていたんだけどなぁ。
結論から言えば、ヤニ子は反省なんてしていなかった。でなきゃ、
「これで一緒に朝まで飲むにゃ」
なんて、ぶっ飛んでくるわけないからな。
いや、たしかにヤニ子は謝ってくれたし、オレもそれを受け入れるつもりではいるよ。だけど、それがどうして徹夜で宅飲みするって話に飛躍するのか、オレにはさっぱり理解できなかった。それにほら、オレとヤニ子は一応男と女だし。
「そんなわけで、えーと」
ヤニ子はビニール袋に手を突っ込んで、がさがさと手探りし、
「あったあった。ほい、これが槍太の分にゃ」
と、何かを放ってよこした。半ば混乱していたオレは、条件反射でそれをキャッチし、
「っ!? ストロングじゃねーかっ!?」
酒に弱いオレには手に余る激つよ酒。しかも獣人用。
「そうにゃ。酔いたいときには、それが最っ高にゃ」
言うや否や、ヤニ子はその場にどかりと腰を落として大胡坐をかき、自分の分のストロングの缶タブをプシュッ。そのまま口をつけると、ゴクゴクと喉を鳴らしながら、美味しそうに嚥下していった。
「ぷっはーっ! うんまいにゃあぁぁぁ♡」
500ミリ缶を一気に飲み干して、恍惚の一言。マジかよ。ストロングって相当に強い酒なんだろ? 一気飲みなんてして大丈夫なのか?
「うぃーーっく。ひく。げぷ。あ~、一本じゃ全然足んないにゃ~」
大丈夫らしい。恥も外聞もなく豪快なおくびをかまして、ヤニ子は早くも2本目のストロング缶に手を伸ばす。そこで、ようやくヤニ子は唖然とするオレに気付いた。
「にゃ? なんにゃ、槍太。お前、まだ飲んでないのかにゃ? おら、おめーもさっさと飲むにゃ」
「い、いや、いい。いい。オレはいらない。遠慮しておく」
必死で首をぶんぶん振るオレを、胡乱に見ていたヤニ子の目が、不意にニンマリといやらしく歪んだ。
「まったく、ニャーの酒が飲めないなんて、槍太は失礼な奴にゃ」
そうごちて、ヤニ子はストロングを一口含む。と、思うや否や、ずいっと這い寄ってきて、いきなりオレを畳にに押し倒しやがった。
その拍子に後頭部をしたたかに打ち付けられたオレは、当然に発奮し、
「ぐへっ! て、てめなにしやが、」
だけど、抗弁は最後まで言えなかった。その前に、オレの口は文字通り塞がれてしまった。
「っ!?」
ヤニ子の舌が妖しくうごめく。とっさに閉じた唇がこじ開けられ、その隙間から生温かくなった酒が流し込まれる。あらゆる意味で不意打ちを食らったオレは、なすがままにそれを飲み込んでしまった。
「ぷはっ! て、てめーこら、何しやがるっ!?」
何とかヤニ子を振り払ったオレは、憤然と声を荒げる。だけど、ヤニ子はオレに跨ったまま愉快そうに笑うだけだった。
「にゃはははは! 幸せのお裾分けなのにゃ」
「こ、このやろう……!!」
反省どころか悪びれもしないヤニ子に、オレの怒りのボルテージは青天井。終いには飽和を迎え、脳の血管がプッツンと切れた。比喩ではなく、実際にそう錯覚するほどの衝撃が脳天に走り、目が回ったかのように視界が歪んだ。
「え? にゃにが?」
呂律も回らない。全身がほんのりと火照りを帯びる一方で、石のように固く重くなっていく。だけど、不思議なことに不安や恐怖は感じない。むしろ意識がふわふわして、夢の世界にいるようで心地良くすらある。
「にゃは! にゃはははは!! 槍太、顔がまっ赤っ赤にゃあ! もしかして、たった一口でもうクラクラなのかにゃあ?」
ヤニ子の高笑いも、取るに足らないほど遠くに感じた。
「しっかし、にゃふふふふ♡ 相変わらず槍太は美味そうな匂いがするにゃあ♡」
それでも、ヤニ子の瞳に宿った危険な色だけは、見逃せなかった。なにせ、その色ときたら、獲物を前に舌なめずりする肉食獣そのものだったのだから。もっとも、すでにべろんべろんだったオレには、口以外の有効な手立てを打てる状態ではなかったんだけど。
「や、やめ、」
「やめてあげないにゃ♡」
オレの懇願を無視して、ヤニ子がやおら身体を傾ける。そのままオレの上半身にぴったりと重ねると、吸血鬼のような妖艶さでオレの首筋に顔を近づけ、すんすんすんすんすんすんと何度も何度も何度も鼻を鳴らした。
「にゃあ♡ なんにゃこれ♡ なんにゃこれ♡ 美味そうすぎて、お腹がきゅんきゅんするのにゃあ♡」
首筋に吹きかかるヤニ子の吐息の熱さに、背筋がぞわぞわする。
「はぁ♡ はぁ♡ も、もうたまらないのにゃあ♡」
いよいよオレの首筋にヤニ子の舌が這った。たっぷりの唾液を含んだそれは、もはや生物のように複雑にうごめき、オレの首筋をヤニ子で塗りつぶしていく。
「んれぇー♡」
一通り首筋をしゃぶりつくすと、首のラインを通って耳へ。甘い吐息をまぶしながら、耳のしわをなぞるようになぶりはじめる。
「んちゅ♡ はぁはぁ♡ んちゅ♡ にゃ♡ ちゅ♡ ちゅ♡ んにゃ♡ にゃ♡」
ヤニ子の吐息が、鼓膜を通してダイレクトで脳に響く。頭の中がヤニ子に浸食されていくような感覚を、オレの本能が危険と断じ、全身の毛を逆立てた。そこからはもうほとんど反射で、オレはヤニ子の魔舌から逃げるように首をひねり、
「動いちゃダメにゃ♡」
両手で顔をロックされた。
「動いたらうまく舐められないにゃ♡ あーむ♡」
耳たぶが甘噛みされたと思ったのももつかのま、激しくむしゃぶりつかれる。ここまでくると、オレの脳内はもうほとんどをヤニ子に浸食されて、ろくな抵抗もできなくなるほど蕩けきっていた。ただただヤニ子にされるがまま、きつく目を閉じて嵐が過ぎ去るの待つしかなかった。
「ちゅ♡ ちゅ♡ れぇー、ん♡ んちゅ♡ んにゃ♡ ちゅ♡ ん、にゃ♡? あ♡ にゅふ♡ にゅふふふふ♡」
どれくらいの時間がたっただろうか。不意に、意味深な含み笑いと共にヤニ子の感触が遠ざかる。祈るように薄目を開けて様子を伺ってみれば、娼婦のように妖艶な笑みでオレを見下ろすヤニ子と目が合った。
「にゃんか、ここ♡ 固いのが当たってるんにゃけど♡」
見せつけるように、ヤニ子が腰をくねらせる。その動きに股間で何かが引っ掛り、オレはいつの間にか自分が勃起していたことを知った。
「まったく♡ 嫌そうなふりしてたくせに♡ 本当は期待♡ してたんだにゃあ♡」
ヤニ子はオレを揶揄うようにニンマリと笑い、
「どーれ♡ ご開帳にゃ♡」
パンツごと、ズボンをずり下した。
「うにゃにゃ♡ お、思ってたより、おっきいにゃあ♡ これ、本当に入るかにゃあ♡?」
そのヤニ子の不穏なつぶやきを、オレはどこか他人事のように聞いた。
「ま♡ ものは試しにゃ♡ だめだったらそのときはそのときにゃ♡」
猫のしなやかさで、ヤニ子は立ち上がることなくジーンズを脱ぎ捨て、次いでショーツに手をかけ、
「にゃ♡? なんにゃ♡ これ♡ 糸引いてる♡? にゃは♡ にゃはは♡ すんごいにゃ♡ ニャーのまんこ♡ びっしょびっしょなのにゃ♡」
そう下品にげらげら笑いながら、ヤニ子は器用にショーツも脱ぎ捨てる。腰を浮かせ、オレの陰茎を入口にあてがうと、熱く熟したヤニ子の入口が、ぽたぽたと涎をたらしながら、オレの先端に吸いついてきた。
「だけど♡ にゃは♡ これなら簡単に入りそうだにゃ♡」
オレが身をよじったのは、精一杯の抵抗だった。だけど、もちろんそれは梨の礫で、むしろヤニ子の嗜虐心を刺激しただけだった。
「はぁ♡ はぁ♡ そ、その動き♡ イモムシみたいでかわいいにゃあ♡ あーだめ♡ もうむり♡ がまんできないにゃ♡ はぁ♡ はぁ♡ いれる♡ いれちゃうにゃ♡ ♡ ♡」
興奮のあまり目を血走らせたヤニ子が、しかし、おっかなびっくりゆっくりと腰を沈めていった。
「う、にゃっ♡ あ♡ あっ♡ あっ♡」
ヤニ子の膣内は柔い粘膜がびっしりと詰まり、しかも熱く濡れそぼっていた。そこをかき分けながら進んでいくのは、腰が抜けそうになるほど気持ちいい。ヤニ子の最奥で、先端がコリっとした感触を捉えたときには、あやうく果ててしまいそうになるほどの快感が走った。
そしてそれは、ヤニ子も同じであったらしい。
「はぁはぁ♡ は、はいったにゃ♡ はじめては痛いって♡ 聞いてた、ん♡ にゃけど♡ にゃは♡ た、たいしたことなにゃい♡ のにゃ♡」
と、嘯きながらも、身体は小刻みに痙攣し呼吸も乱れている。それでもヤニ子は、ふーふーと深い息を何度か吐いて態勢を整えると、やおら腰を動かしはじめた。
「にゃ、ニャーは♡ はじめて♡ にゃん♡ だけど♡ ま、マンカスのマンガで♡ あん♡ 予習はばっちり、にゃ♡ 任せる、にゃん♡」
はじめはオーソドックスな上下の抽送から。ぎこちなく、不器用に。
「ん♡ ん♡ あ♡ にゃ♡ にゃ♡ にゃ♡ にゃ♡」
だんだんとヤニ子の抽送がテンポよく、リズムミカルになっていく。腰の動き自体も洗練されていき、先端が最奥に達するタイミングでは腰をぐりんとひねるようになった。
「にゃ♡ はん♡ こ、これ♡ この感じ♡ いい♡」
最奥がこねくられる刺激がよほど気に入ったのか、ヤニ子がミディアムショートの髪を激しく振り乱す。
「にゃ♡ にゃ♡ にゃ♡ き、きもちいい♡ きもち♡ よすぎるにゃあぁぁぁぁっ♡ ♡ ♡」
ヤニ子の粘膜のヒダ一枚一枚がオレを扱き上げ、先端はコリコリした最奥がこね回す。そのもたらす快楽に、じわじわと限界が這いあがってきてしまった。
――中はマズい。
最後の最後で、そう理性が働いた。ヤニ子の腰を止めようと、力を振り絞って手を伸ばしたが、
「んにゃ♡? 手♡? 手♡? さ、最後は♡ 手ぇ繋ぐのかにゃ♡?」
オレの意図は、思いっきり曲解されてしまった。
どこか嬉しそうなヤニ子は、いわゆる恋人つなぎでオレの両手を握ると、最後の追い込みをかけてきた。
「う♡ にゃ♡ にゃにか♡ くりゅ♡ にゃ♡ にゃ♡ く、くりゅ♡ くりゅ♡ くりゅ♡」
ヤニ子の呼吸が次第に浅く、早くなる。限界が近いのかもしれない。
だけど、限界を迎えたのはオレのほうが早かった。両手を握ったことで体勢を安定させたヤニ子の腰遣いに、オレはまったく耐えられなかったのだ。ヤニ子の中でオレの陰茎が脈動をはじめ、その都度、途方もない快楽とともに精が放出されていった。
「っ~~~~♡ ♡ ♡」
その瞬間、ヤニ子も達したらしい。ヤニ子は声にならない嬌声と共に上半身を弓形に反り返らせると、びくんびくんと何度も何度も全身を痙攣をさせた。
「ん♡ あっ♡ あっ♡ あ♡ にゃ、にゃふぅ♡ き、きもちよかったのにゃあ♡」
未だ小刻みに痙攣しながら、しかし峠は超えたヤニ子が、絶頂の尻尾を引きずったような蕩けた顔で、うっとりと恍惚の息をはいた。
「はぁ♡ にゃふふ♡ 槍太も、きもちかったかにゃ♡?」
わざわざ耳元に顔を近づけて、ヤニ子がそうささやきかけてくる。だけど、それに答える余裕は、オレにはもう残されていなかった。
「にゃにゃ♡ ニャーとのえっち、どうだったのにゃ♡? 答えてほしいにゃ♡」
耳にかかるヤニ子の吐息すら煩わしい。もう放っておいてくれ、と思う。
なにせこっちは、酩酊状態だったところを逆レイプされて、精魂搾り取られたのだ。まして、その前には初めての引っ越しとその作業もこなしている。肉体的にも精神的にも疲労困憊で、もう指一本動かせないし、何も考えられない考えたくない。
「にゃあ♡ もしかして、もうおねむなのかにゃ♡? まったく、一発やってすぐ寝ちゃうなんて、槍太はひどいやつにゃ♡」
何か言い返すべき言葉がある気がしたが、もう頭も働かない。意識も視界も急速にぼやけていく中で、オレは最後にタバコの匂いを嗅いだ気がした。
「ぷっはぁ~♡ うんまいにゃあ♡ 一発やった後のヤニは最高にゃね~♡」
ああ。空気清浄機をつけておいて良かったな。
そんなことを思いながら、オレの意識は漆黒にのまれていった。
えちえちなSSをいっぱい読んで勉強した私の結論。
①男のセリフや喘ぎ、過度な心理描写はノイズ。
②女の子のセリフに♡があるとえちち。
③過剰なオノマトペもえちち。←これだけ入れられなかった
えちえち描写は、以後もこの3点を意識して執筆していきます。
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