将軍を目指した薙刀令嬢、愛欲の女神の寵愛を得て「娼婦」となる 〜神罰寸前で無恩寵の男に抱かれたら、無限の経験値で最強の武神になりました〜 作:夜叉五郎
――ダンジョン浅層、人気のない薄暗い岩窟フロア。
カビ臭い湿った空気の中、俺はボマーと十数メートルの距離を挟んで立たされていた。
通路の退路はボマーの手下どもが壁のように塞ぎ、少し離れた岩陰には、腕を組み、冷徹な翠の瞳でこちらを凝視しているアリアの姿がある。
(……なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ)
昨日ダンジョンで間引きしたゴブリンの魔石と、道端の薬草を換金しにギルドへ戻っただけだった。
それなのに、いきなりあの黒髪の美女に「あいつと決闘しろ。勝ったら抱かせてやる」と指名され、衛兵の目を嫌ったボマー一味に抗う間もなくここまで引きずり出されてしまったのだ。
「おい、アリアのお嬢ちゃんよぉ!」
突如、ボマーが両刃斧の切っ先を地面に突き立て、岩陰のアリアへ向けて下卑た笑みを投げかけた。
「始める前に、もう一度きっちり念押ししとこうじゃねぇか! 本当だろうなァ!? この道端の乞食みたいなひょろガリをぶっ殺せば……お前を好きに抱いていいってのはよォッ!」
ボマーの濁った双眸が、ぎらついた性欲を剥き出しにしてアリアの全身を嘗め回す。
それに対し、アリアは一切怯むことなく、冷ややかな視線を返した。
彼女は抱えていた薙刀を傍らの岩肌へ立てかけると、すっと背筋を伸ばし、己の引き締まった細い腰に優美に両手を当てた。
薄絹の布地がピンと張り詰め、豊満な胸の丸みとしなやかなウエストのくびれ、そして切れ込みの深いスリットから覗く白磁の太ももが、陰影の深い窟の中で眩いばかりに際立つ。
自らの肉体の曲線を誇示するかのように、わずかに腰をくねらせたアリアは、紅い唇を蠱惑的に吊り上げてみせた。
「ああ……本当だとも。この極上の身体、望むならお前に捧げてやろう」
艶めかしい吐息混じりの美声が岩窟内に染み渡り、アリアは細めた翠の瞳で冷酷な挑発を投げつける。
「――ただし。本当にこのワタルに、貴様が勝てたなら……の話だがな」
アリアの見せつけた挑発的な肢体と妖艶な煽りに、通路を塞いでいた手下のゴロツキどもが一斉に下品な指笛を吹き鳴らした。
「ヒューッ!」
「たまんねぇぜお嬢ちゃん!」
「言っちまったなぁおい!」
ボマーの顔は下卑た興奮で真っ赤に紅潮し、鼻息を荒げて両刃斧を肩へと担ぎ直した。
「ケッ、言ってくれるじゃねぇか! 決まりだ! おい乞食、恨むなよなぁ! お前が一瞬で肉塊になりゃあ、あの子爵令嬢の極上な躰は俺のもんだァッ!」
(……はぁ。どいつもこいつも、好き勝手言ってくれちゃって)
俺の脳内は、呆れるほど冷え切っていた。
毎日ダンジョンに一人で潜り、死線を越えてきた俺の身体能力は、とっくに目の前の大男を遥かに置き去りにしていた。
神の恩寵を持たない俺は、レベルアップによる補正がスキル枠に一切分散されず、すべて筋力・敏捷・耐久のフィジカルへ強制的に極振りされているからだ。
「死ねやァァッ!!」
怒号とともに、ボマーの巨体が突進してくる。
岩肌を砕くほどの勢いで振り下ろされる鉄塊の大斧。
(……遅い)
スローモーションのように軌道を見切った俺は、ボロ布マントの裾から愛用の道具を引き抜いた。
――日本のホームセンターで買った、なぜか不壊のサバイバルナイフ。
逆手に構えた刃を、振り下ろされる大斧の腹へ、垂直にカチリと合わせた。
『バギィィィッッ――ン!!』
絶対破壊不能の異界の金属に激突したボマーの両刃斧は、まるで薄氷のように中央から粉々に砕け散り、鋭い破片となって洞窟の壁へと弾け飛んだ。
「な……ッ!? お、俺の特注の大斧が……!?」
手元に残った無惨な柄を見つめ、ボマーが呆然と目を見開く。
「人の頭目掛けて斧を振り下ろすんじゃねぇよ、危ねぇだろ!!」
怒鳴りつけながら、俺はすでに左手を動かしていた。
腰のホルスターから抜き放った山歩き用の赤いボトル――無限復活の熊避けスプレー。
間合いをゼロ距離まで詰め、硬直したボマーの顔面目掛けて、フルパワーでレバーを押し込んだ。
『プシャァァァァァァッッ!!』
「ギギャアアアッ!? ぶっ、目が、鼻がああぁぁッ!? 息が、息ができねぇぇぇッ!!」
魔物すら悶絶する超高濃度の劇毒ガスだ。
生身の人間が耐えられるはずもない。
屈強なはずの巨漢は両手で顔面を掻きむしり、鼻水と涙と涎を撒き散らしながら岩肌を激しく転げ回った。
「ヒ、ヒィッ!? ボスが一瞬で……!?」
「化け物だ! 逃げろォッ!」
手下どもは転がるボマーの襟首を引っ掴み、悲鳴を上げながら通路の奥へと雪崩を打って逃げ去っていった。
静まり返る洞窟。
「ふぅ……。ダンジョンなら死人が出ても追求されないって言ってたけど、死ぬのはあんたの方だったな……」
俺はナイフの汚れを払い、スプレーを腰に戻して溜息をついた。
すると、背後の暗がりから足音が近づいてきた。
「……見事だ、ワタル」
振り返ると、アリアがそこに立っていた。
先ほどまでの冷徹な威圧感は鳴りを潜め、抜けるような白い頬を僅かに朱に染めながら、翠の瞳を潤ませて俺を見つめている。
その白磁の肌には、薄っすらと痛々しい朱色の筋――神罰の予兆である隈取りが確かに浮かび上がっていた。
「私の勝手な賭けに巻き込み、すまなかった。……だが、貴方は私の期待を遥かに超えてみせた」
「いや、謝るくらいなら最初から巻き込まないでほしいんですけど……」
「礼をさせてくれ。……こちらへ来い」
「……へ?」
断る隙もなかった。
アリアはしなやかな細い指先で俺の手首を掴むと、信じられないほどの力でぐいぐいと俺を引きずり、ダンジョンの出口へと歩き出した。
手首から伝わる体温が、尋常ではない。
まるで高熱病に侵されているかのように熱く、その呼吸は浅く乱れていた。
連れ込まれたのは、ギルドの裏手にある薄暗い安宿の一室だった。
ドアが閉まり、鍵がガチャリと下ろされた瞬間、アリアは糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。
「はっ……ぁっ……く……っ!」
「おい、大丈夫か!?」
慌てて駆け寄り、肩を支える。
薄絹越しに触れる彼女の肢体は、火傷しそうなほどに熱を帯びていた。
額や鎖骨にはびっしりと艶やかな汗が浮かび、荒い息を吐き出す濡れた赤い唇からは、むせ返るような甘い熱気が漏れ出ている。
神罰のカウントダウン――ノルマ未達による身体の限界が、いま臨界点を迎えようとしていた。
「……触れろ、ワタル」
アリアが震える腕を伸ばし、俺の胸元に指を絡めてきた。
武人としての気品を保とうと引き結ばれた眉の奥で、翠の瞳が激しい熱情と懇願に揺れている。
「私は……約束を違えぬ女だ。ボマーを倒した貴様に、私のすべてを差し出す……。神罰に焼き尽くされる前に……貴様のその規格外の才能限界で……私を、救ってくれ……っ!」
息を呑んだ。
ダンジョンで一人薙刀を振るう姿を見て以来、俺の頭からこの女の存在が離れたことはなかった。
ギルドの噂で彼女の正体を知り、神聖娼婦を客として指名するにはいくら貯めればいいのかと、懐の金勘定をしながらずっと抱く機会を夢想していたのだ。
だが、それはずっと先の話のはずだった。
身分違いの元子爵令嬢に手が届くはずもなく、日々の生き残りに追われる中での、しがない男の淡い妄想に過ぎなかったはずなのだ。
それが今、目の前に転がり込んできた。
「……後悔すんなよ、アリア」
俺は乱暴にローブを脱ぎ捨てると、熱く震える彼女の身体を力強く押し倒した。
きしむ安ベッドの上に、艶やかな黒髪が波打つように広がる。
薄暗い部屋の中で、アリアの抜けるような白い肌が妖しく浮かび上がっていた。
胸元を覆う薄絹の端を引き下ろせば、かつて苛烈な晒で締め上げられていたという豊満な双乳が、露わになった瞬間にたわわな重みを放り出し、荒い息遣いに合わせて艶やかに波打つ。
その頂に咲く薄紅の蕾は、神罰の高熱に当てられて硬く尖り、俺の視線が触れただけでびくりと甘い震えを返してきた。
「んっ……ぁ……っ」
指先を肌に滑らせると、吸い付くような白磁の肉体から、肌を焦がすほどの熱が伝わってくる。
武人として鍛え抜かれた引き締まったウエスト、しなやかな骨盤のくびれ。
薄布がたくし上げられ、惜しげもなく晒された長い脚の付け根へと手を伸ばせば、熱気とともに漂う濃厚な雌の香りが、俺の理性を焼き尽くすように鼻腔を突いた。
すでに入り口は溢れ出る熱い蜜で濡れそぼり、指先が触れるだけで、アリアの腰が切なく跳ね上がる。
「あ……く、ワタル……っ! あそこが……奥が、疼いて……裂けそうに熱い……っ!」
涼やかだったはずの美貌は情欲と苦悶に染まり、赤い唇から漏れ出る嬌声が、部屋の空気を濃密に濁らせていく。
凛とした武人の残滓を完全に溶かし去り、ただ一人の雄を待ち焦がれる牝の身体へと作り替えられていくその無防備な姿に、俺の昂ぶりはもはや限界を突破していた。
熱く湿った蜜壺の前に自らをあてがうと、アリアの翠の瞳が潤んだまま俺を見上げ、細い腕が必死に俺の背中に回された。
「私を……壊すくらいに……っ、貫いてくれ……っ!」
引き締まった太ももを押し開き、濡れそぼる秘肉の最奥へと、力任せに腰を沈め込んだ。
〜 続く 〜