将軍を目指した薙刀令嬢、愛欲の女神の寵愛を得て「娼婦」となる 〜神罰寸前で無恩寵の男に抱かれたら、無限の経験値で最強の武神になりました〜 作:夜叉五郎
『――ッ!?』
言葉にならなかった。
痛覚など、初めから存在しなかったかのように吹き飛んだ。
代わりに駆け巡ったのは、魂の核を直接鷲掴みにされ、内側から激しく揺さぶられるような、天変地異の衝撃だった。
(な、んだ……これ……はっ!?)
最奥で結合した一点から、灼熱の奔流が堰を切ったように逆流してくる。
それは神罰の苦痛を塗りつぶすどころか、私の全身を巡る魔力経路、毛細血管の隅々に至るまでを一瞬で満たしていく純粋な光の奔流。
「あ……っ、ぁあ……ッ! わた、る……っ、ワタル……ッ!!」
誇り高い武人の口調など、跡形もなく消え失せていた。
私は泣きじゃくる子供のように両腕を伸ばし、覆い被さる彼の首にしがみついた。 背中を指先で抱きしめ、彼が愛おしそうに腰を寄せるたびに、私の奥が甘美な悲鳴を上げてきつく締めつける。
「アリア……綺麗だ」
耳元で囁かれる熱い吐息。
その言葉一つで、身体の芯が蕩けてしまいそうだ。
ワタルの声は掠れていて、興奮と戸惑いが混じっているのがわかった。
彼の手が私の腰を掴む力に、わずかな震えがある。
太腿が勝手に彼の腰に絡みつき、もっと、もっと深くへと迎え入れようとする。
熱い。
甘い。
濃密だ。
二人の吐息と体液が溶け合うたび、私の白磁の肌に浮かんでいた忌まわしい赤い隈取りが、まるで陽光に溶ける朝露のようにすうっと消え失せていく。
(っ……赤い隈が……消えていく……!?)
神罰の予兆だった朱色の筋が、ワタルと結合した一点から溶けていく。
娼婦として客を取るというノルマの消化だけでは説明がつかない。
この男の規格外の器が、愛欲の女神の呪いそのものを呑み込んでいるのだ。
「……っ、アリア、すごい熱い……」
ワタルが息を吐き、額を私の肩に押しつけてくる。
その声が、興奮で震えていた。
――そして運命の刻。
私の中に宿っていたパッシブスキル【交歓の研鑽(エクスペリエンス・シェア)】が自動的に発動する。
瞬間、頭の芯を焼き尽くすほどの甘い鐘の音が、頭蓋の奥で祝福のように乱打された。 才能限界を持たぬ無限の器と魂を重ね合わせたことで、爆発的な経験値と愛の濁流が雪崩れ込んでくる。
魂の格が跳ね上がっていくのが分かる。
同時に、私の内奥で、これまで頑なに築き上げてきた精神の伽藍が、ガラガラと音を立てて崩壊していった。 世界が、グルンと天地逆転するようにひっくり返っていく。
将軍?
武門の誇り?
万夫不当の刃?
なんと矮小で、滑稽で、阿呆らしい思い込みだったのか。
長柄を握りしめ、掌の皮を剥き、男たちを蹴散らして得ようとしていたあの栄光など、この愛しい人と一つに溶け合う至福の足元にも及ばない。
全身が至福の光で満たされ、生まれ変わっていく。
(あ……あぁっ、溢れる……! 私の魂が、ワタルで満ちていく……っ!)
そして、私は直感した。 視界の裏、私の魂を映す無形の鏡に、前人未到の神威が次々と刻み込まれていくのを。
【口技】――解放。
【足技】――解放。
【棒技】――解放。
【乳技】――解放。
【腰技】――解放。
【穴技】――解放。
建国王と共に戦場を駆けた初代王妃ですら、五つのスキルを解放するのが限界だったという。
それなのに、いま――私は、愛欲の女神が授けし最高位の恩寵、全六スキルの完全覚醒、未踏の「第六階梯」へと一瞬にして到達していた。
だが、そんな力など、今の私にはどうでもよかった。
ただ目の前で、汗を滲ませながら熱い眼差しで私だけを見つめてくれる、この愛しい男の体温だけが欲しかった。
「ひぐっ……ぁ、ああっ……んんっ!!」
肉体と魂を同時に貫く甘美な悦脱に、背中が弓なりに反り上がる。 翠の瞳から、とめどなく熱い雫が零れ落ちた。
悔し涙でも、神罰の苦痛によるものでもない。 完全なる充足、絶対の救済、そして最愛の男の腕の中で雌として愛され、満たされる圧倒的な幸福――随喜の涙が、私の頬を濡らし、白いシーツを濡らしていく。
零れる涙を、ワタルが愛おしそうに口づけで吸い取ってくれる。
「……泣くなよ」
掠れた声でそう言われ、胸が張り裂けそうだった。
彼の唇が私の頬に触れ、涙の塩味を吸い取っていく。
もう、後戻りなどできない。 剣の道など、どうでもよかった。
私はただ、この男の愛に溺れ、この男のすべてを慈しみ、生涯この人だけの女として愛され続けるのだ。
「すき……っ、ワタル、好き……っ! 私を……もっと愛してくれ……っ、ワタルの精で、いっぱいに満たしてくれ……っ!!」
艶やかに乱れた黒髪をシーツに散らし、紅い唇を寄せて何度も彼の唇や顎へ甘く吸い付きながら、私は自ら貪るように腰を跳ね上げ――解放されたばかりの【腰技】を縦横無尽に発揮し、彼を深く、どこまでも深く迎え入れ続けた。
愛欲の女神の神殿で、マダム・ヴィオラが紫煙の向こうで微笑みながら語ったあの言葉が、雷鳴のように脳裏を反響する。
『いずれ貴女も、雄々しい殿方に抱かれて、本当の女の悦びを知ることになりますわ』
あれは戯れ言などではなかった。
真実だったのだ。
私は男を拒んでいたのではない。
この男――界道ワタルという、世界の枠組みすら超越した無限の器に出会うためだけに、これまでのすべてを拒絶し続けていただけなのだ。
「あ……っ、ぁあ……ッ! わた、る……っ、ワタル……ッ!!」
喉の奥からせり上がるのは、武人の凛とした声ではなく、雄を求めて泣き叫ぶ牝の歓喜。
ワタルの荒々しい腰の突き入れが、私の秘奥の最も敏感な一点を容赦なく抉るたび、頭蓋が真っ白な光で焼き尽くされる。
鍛え上げた骨盤底筋群――【穴技】のインナーマッスルが、私の意思を超えて千の指のように蠢き、侵入してきた彼の剛直を逃がすまいと狂ったように締め上げ、吸い付いた。
かつて敵を討つために締め上げた筋肉が、いまや極上の快楽を貪り尽くすための名器の牙となって、彼から放たれる熱い精魄を貪欲に搾り取っていく。
「アリア、すごい締まりだ……っ」
耳元で荒く息を吐き出すワタルの声が、鼓膜を甘く蕩かす。 彼の手が私の腰を掴み、さらに深く引き込んでくる。
指が私の肌に食い込み、興奮で力が入っているのがわかった。
「ひぐッ!? あ、あぁぁぁッ! 奥が……魂の奥が、壊れる……っ! イク、いってしまう……っ!!」
身体の奥底で、何かが決定的に弾け飛んだ。 幾重もの絶頂の波が怒涛のように押し寄せ、視界が快楽の朱に染まる。
全身の毛穴から甘い脂汗を噴き出しながら、私は弓なりに背を反らせてワタルの背中に爪を立て、あられもない声で狂乱の絶頂へと叩き落とされた。
頬を焼いていた神罰の隈取りは完全に消え失せ、代わりに肌は真珠のように瑞々しく発光していた。
やがて、激しく荒れ狂っていた嵐のような熱情が静まり、部屋には二人の重なり合う微かな息遣いだけが満ちていく。
ワタルは力尽きたように私の上に身を預け、額に滲んだ汗を私の鎖骨に落とした。
その温もりが、肌を通してじんわりと胸の奥へと染み渡っていく。
「……アリア、大丈夫か?」
気遣わしげに覗き込んでくる彼の瞳は、私を暴力的に貪った男のものとは思えないほど、穏やかで優しさに満ちていた。
彼の声はまだ少し掠れていて、興奮の余韻が残っている。
額の汗が私の肌に落ちる感触が、熱い。
その不器用な温かさに触れた瞬間、張り詰めていた私の心は跡形もなく融けていく。
「……ワタル」
私は震える腕を彼の首筋へと回し、自分からぎゅっと引き寄せた。 互いの唇が触れ合う。
最初は確かめ合うような、花びらが触れ合うほどの柔らかな口づけ。
けれど、一度交わされたそれは、すぐに抗いようのない熱を帯びて深くなっていった。
「ん……っ……ふ……」
覚醒した【口技】の神威が息づく私の赤い唇が、無意識にワタルの唇を甘く食み、熱い舌先を絡め取る。
荒々しく奪い合った先ほどまでとは違う、胸が締め付けられるほどに甘く、とろけるような口づけ。
互いの唾液を分かち合い、吐息を吸い合うたび、頭の芯が痺れるような多幸感が波寄せてくる。
ワタルが小さく息を漏らし、私の唇を優しく吸い返す。
その不器用な返し方が、たまらなく愛おしい。
武具を捨て、誇りを失ったはずなのに、満ち足りて涙が零れそうだった。
彼の手が私の乱れた黒髪を優しく梳く感触に、私は子猫のように目を細め、何度も、何度も口づけを重ねた。
(ああ……愛欲の女神様……)
蕩けた意識の片隅で、私はかつて憎み、呪い続けた天上の存在へ、心からの祈りを捧げていた。
将軍の道などという血生臭い茨の道を閉ざし、私をこのクラスへと導いてくださったこと。
あの理不尽な神託も、追放も、すべてはこの男の腕の中に抱かれ、この至福に巡り逢うための導きだったのだと。
「……感謝いたします、女神様。私を……この人に、ワタルに導いて下さって……」
心の中で深く頭を垂れ、歓喜と感謝の祈りを捧げる。
唇を離すと、銀色の糸が微かに引いて切れた。 至近距離で見つめ合うワタルの顔は赤く染まり、どこか気恥ずかしそうに視線を泳がせている。
その初々しさがたまらなく愛おしく、私はふわりと、生まれて初めての純粋な恋する女の笑みを零した。
「……私のすべては、もうお前のものだ、ワタル。……ずっと、そばにいてくれ」
囁きながら、私は再び甘い吐息を溢れさせ、彼の胸へと幸せそうに身を擦り寄せた。
太腿を彼の腰にきつく絡め、奥をぎゅっと締めつけながら、二人の甘い吐息と水音が、夜の更ける安宿の一室をどこまでも甘美に染め上げていった。
〜 続く 〜