将軍を目指した薙刀令嬢、愛欲の女神の寵愛を得て「娼婦」となる 〜神罰寸前で無恩寵の男に抱かれたら、無限の経験値で最強の武神になりました〜 作:夜叉五郎
大聖堂を包む荘厳なパイプオルガンの調べが、今日ばかりは我が身を祝福する凱歌のように聞こえていた。
卒業式を兼ねた成人の儀。
十八歳を迎えた学院の生徒たちが一堂に会し、祭壇の前に整列している。
これまでの生き様と魂の研鑽を職業神が量り、生涯を決定づける職業(クラス)を授ける絶対の神託。
私は仕立てのよい礼服に身を包み、背筋を真っ直ぐに伸ばしてその時を待っていた。
腰まで届く黒髪をきっちりと結い上げ、無駄に豊かな胸の肉は、いつにも増して固い晒で締め潰してある。
締め付けられた胸の内側は、すでに微かな熱を帯び、呼吸のたびに布地が敏感な先端を擦っていた。普段ならただの不快感でしかない感覚が、今日は妙に意識に引っかかってくる。
すべては今日、この日を迎えるためだ。
幼少より薙刀の長柄を握り、豆の潰れた掌を隠しながら、万の兵を統率すべく喉を潰すような発声訓練を重ねてきた。
男兵士を容赦なく蹴り倒し、下腹部の深層筋を極限まで鍛え抜いた日々。
父上のような万夫不当の将軍となり、祖国を護る刃となる。
戦さの神の加護を得ることについて、私には一片の疑いもなかった。
「シルフィード子爵家令嬢、アリア・フォン・シルフィード。前へ」
高位神官の澄んだ声が大聖堂に響き渡る。
壇上へと歩み出る私に、講堂中から視線が集まった。
先日の演習場で私に叩き伏せられたエドワード殿下は、悔しげに唇を噛みながらも、その瞳にねっとりとした執着を滲ませて私を見つめている。
その隣には、彼を睨みつけながら私へ激しい敵意を放つ公爵令嬢エレオノーラの姿があった。
一方で、反公爵派のクラリスたち下級貴族の令嬢たちは、祈るように両手を胸の前で組み、憧れに満ちた熱い眼差しを私に送ってくれている。
(皆、見ていろ。私が切り拓く武人の道を)
迷いのない足取りで祭壇の前に進み、厳かに跪いた。
神官が祈りを捧げ、私の頭上に掲げられた大きな神聖水晶板に手をかざす。
水晶が眩い光を放ち、淡い金色の魔力が渦巻いた。
神官が水晶に浮かび上がった文字を読み取ろうと目を凝らし――そして、息を呑んだ。
異様な沈黙。
神官の額にたらりと冷や汗が流れ、その顔が驚愕と困惑に歪む。
「し、神官長……? いかがされた?」
列席していた学院長が不審そうに声をかける。
神官は震える唇を何度も動かし、信じられないものを見るように私を一瞥すると、掠れた声を絞り出した。
「……アリア・フォン・シルフィード。汝に授けられしは、愛欲の女神が最高寵愛――クラス【娼婦】である」
静寂。
大聖堂を埋め尽くす数百人の呼吸が、一瞬にして凍りついた。
(……な、にを……?)
耳朶を打った言葉の意味が、脳に届かない。
娼婦?
愛欲の女神?
私が? 戦さの神ではなく、よりにもよって、愛欲……?
愛欲の女神に連なるこのクラスは、街の路地裏で体を売るような加護なき夜鷹とは根底から異なる。
異性を惹きつけてやまぬ格段の美貌と、男を狂わせる極上の肢体を持つ者しか決して選ばれることはない、神に選ばれし「神聖娼婦」。
男に媚び諂い、阿ることが苦にならない女性にとっては、ある意味で頂点とも言える栄誉あるクラスなのだ。
もしこれが、身分や体裁に縛られぬ一般の市井の成人の儀であったなら、類まれな至宝の美姫の誕生として、万雷の祝福と羨望の眼差しを一身に浴びていただろう。
しかし――ここは血統と家格、そして体面を何よりも重んじる王立士官学院。
上流階級の人間たちの巣窟なのだ。
選ばれし神聖娼婦であろうと、高貴な貴族社会の目線から見れば、金と欲望で肉体を弄ばれる「加護無しの夜鷹」と何ら変わらぬ唾棄すべき淫売に過ぎない。
「……な、何かの間違いではないのか!?」
私は思わず立ち上がり、神官に詰め寄った。
武人としての冷静さなど、一瞬で吹き飛んでいた。
「私は将軍を目指し、武芸百般を修めてきた! 薙刀を握り、声を枯らし、肉体を限界まで鍛え上げてきたのだぞ! なぜ私が、そのような……!」
「ま、間違いではない……! 見よ、愛欲の女神の神託水晶板に刻まれた文字を!」
神官が怯えながら掲げた水晶板。
そこに浮かび上がっていたのは、私の人生を根本から嘲笑うかのような、自動付与されたパッシブスキルの詳細と、残酷な鑑定結果だった。
ーーー
< クラス:娼婦(神聖娼婦)>
◆ 自動付与パッシブスキル(基本スキル)
【愛欲の視線受容(パッションレセプター)】
* 異性から向けられる性的な視線や欲情を全身の肌で受容し、自身の全ステータス(筋力・敏捷・反応速度)を強化する。
* バフの倍率は相手の才能限界(器の大きさ)の高さに比例して劇的に増大する。
※副次効果:受容した視線の熱量や痺れの強弱により、相手の才能限界を正確に測るスカウターとして機能する。同時に、自身の性感帯へも強制的に快感と発情がフィードバック(受容)されてしまう。
【交歓の研鑽(エクスペリエンス・シェア)】
* 性交を行うことで、自身とパートナーの双方に莫大な経験値を獲得させる。相手の才能限界が高いほど、得られる経験値は乗数的に跳ね上がる。
【交歓の恩寵(性交バフ)】
* 性交完了後、24時間にわたり全ステータスを底上げする(初期Lv1で1.1倍)。スキルレベルの上昇により倍率は増加し、将来的に「精神異常完全無効」「常時自動回復(リジェネ)」が付与される。
【聖潔なる肉体(無垢の加護)】
* あらゆる性病および伝染性疾患に対する完全免疫。この効果は性交相手にも一時的に伝播・付与される。
【生命の調律(妊娠操作)】
* 受精および着床の可否を自らの意志で完全にコントロール可能。性交相手の意図せぬ孕ませを完全に遮断する。
◆ 潜在固有スキルの適性(※初夜の交歓を契機に特定スキルを解放)
* 口技の素養:戦場を震わす号令のため、日夜重ねた過酷な発声訓練による、喉奥と舌先の精密な連動。
* 足技の素養:男兵士を容赦なく蹴り倒し組み伏せてきた白兵体術による、強靭な脚力と柔軟性。
* 棒技の素養:薙刀の長柄を操り、遠心力と重心を制御し続けた掌と指先の卓越した技術。
* 乳技の素養:邪魔な胸肉を殺すため、固い晒で日々苛烈に虐め抜き研ぎ澄まされた豊満な双眸の高感度。
* 腰技の素養:薙刀の太刀筋に威力を乗せる流麗な骨盤の回旋と、舞うような身のこなし。
* 穴技の素養:一撃の威力を極限まで高めるため、極限まで締め上げ鍛え抜いた強靭な骨盤底筋群。
ーーー
(私の……修練が……?)
血を吐く思いで積み上げてきた鍛錬のすべてが。
男を薙ぎ倒すために磨いた技のすべてが。
神の目には、男の欲望を貪り、悦ばせるための「至高の性技の素養」と判定されていたというのか。
水晶板の文字を追う指先が、小さく震えていた。
下腹部の奥が、じわりと熱を帯び始めていることに気づく。
まだ誰の視線も浴びていないはずなのに、説明を読んでいるだけで、骨盤の奥が疼き始めている。
あまりの理不尽と屈辱に、視界が真っ赤に染まり、膝がガクガクと震え出す。
その沈黙を切り裂いたのは、甲高い笑い声だった。
「――あは、あははははっ!」
椅子を蹴倒すような音を立てて立ち上がったのは、公爵令嬢エレオノーラだった。
彼女の顔は怒りと悔し涙でぐしゃぐしゃに歪み、その細い指先が、壇上の私へと真っ直ぐに突きつけられる。
「やはり! やはりそうだったのね、アリア・フォン・シルフィード!!」
聖堂の天井に、エレオノーラの悲痛な絶叫が木霊する。
「男に微塵も興味がないような澄ました顔をして、薙刀だの将軍だのと見せびらかして……全部、全部嘘っぱちだったんじゃないの! そのクラスこそが、神が暴いた貴女の浅ましい本性よ!!」
「エレオノーラ、落ち着きなさい!」
周囲の教師が制止しようとするが、彼女の激昂は止まらない。
大粒の涙をポロポロと零しながら、唇を血が出るほど噛み締め、私を汚物のように睨みつける。
「そうやって高潔ぶっておきながら、心の底では『これで堂々と殿下の情婦になれる』とほくそ笑んでいるんでしょう!? ……最低! 虫唾が走るわ、この淫売女!!」
エレオノーラは耐えきれないようにドレスの裾を乱暴に翻すと、顔を覆いながら聖堂を駆け去っていった。
「エレオノーラ様!」
「なんてこと……薄汚らわしい!」
取り巻きの高位貴族令嬢たちも、私に向けて唾を吐きかけるような冷酷な蔑視を投げつけると、雪崩を打って彼女のあとを追っていく。
だが、本当の地獄はそこからだった。
エレオノーラたちが去ったあと、私の視線は自然と、客席のクラリスたちへと向かった。
反公爵派として、私の背中を信じ、先ほどまで「軍に入っても応援している」と熱烈な瞳を向けてくれていた少女たち。
彼女たちは、凍りついていた。
「クラ、リス……」
掠れた声で名を呼んだ私に対し、クラリスは――まるで得体の知れない汚泥を見るかのように、怯えて半歩後ずさった。
その顔には、先ほどまでの愛想のいい笑みなど微塵もない。
「……嘘、でしょう」
クラリスの口から、冷たい呟きが漏れる。
「男に媚びない、強い女性だと……私たちの希望だと思っていたのに」
「騙していたのね」
「裏で殿下に色目を使っていたから、愛欲の女神なんかに選ばれたんだわ……」
「幻滅しましたわ、アリア様」
「近寄らないで、穢らわしい……」
ひそひそと交わされる辛辣な言葉が、薙刀の刃よりも鋭く私の胸を刺し貫く。
私が視線を向けると、彼女たちは申し合わせたように一斉に目を逸らし、侮蔑と失望を露わにして背を向けた。
敵の罵倒など痛くも痒くもなかった。
だが、信じてくれていた同性の後輩たちから向けられたこの絶対的な幻滅は、私の誇りを芯からへし折るのに十分すぎる毒だった。
「……くっ、ふふ……はははは!」
今度は、エドワード王子の下卑た哄笑が響いた。
王子は立ち上がり、卑しい笑みを浮かべながら壇上の私を舐め回すように見つめる。
「聞いたか、アリア! 神はお前がどう使われるべきかをよくご存じだ! 散々私を拒みおって……だが、娼婦ならば話は別だ。愛欲神殿の最高寵愛ともなれば、病の心配もない極上の肉玩具ではないか! 私の部屋へ来い。いくらでも金を払って、その気高いプライドごと存分に可愛がってやるぞ!」
その言葉を合図にしたかのように、講堂にいた男たちの目が一変した。
これまで私を恐れ、遠巻きに見ていた貴族令息たちの視線が、一瞬にして値踏みするような生々しい色欲へと変色する。
その瞬間だった。
男たちの視線が一斉に私の身体へと降り注いだ。
値踏みするような、貪るような、熱を帯びた視線。
ゾクリ、と背筋を甘い痺れが這い上がる。
晒で固く締め上げた胸の内側が、急激に熱を持ち始めた。
乳首が硬く尖り、布地に擦れて疼く。
普段はただの圧迫感でしかなかった締め付けが、今は逆に敏感な突起を刺激し続けている。
(っ……!)
下腹部の奥が、ぎゅっと熱く収縮した。
骨盤底を極限まで鍛え上げてきた筋肉が、意思とは無関係にうねり、子宮のあたりが熱い塊を抱えたように重くなる。
太腿の内側がじわりと熱を帯び、愛液が滲み出す感触が、はっきりとわかってしまう。
【愛欲の視線受容(パッションレセプター)】――男の欲情を肌で受容して力に変え、同時に自らの体を強制的に発情させる娼婦の基本スキル。
視線が胸に触れるたび、乳首がさらに硬くなり、甘い電流が走る。
腰のくびれを舐め回すような視線を感じれば、骨盤が勝手に小さく震える。
唇を見られるだけで、口の中が熱くなり、舌が疼く。
「ひあっ……!」
赤い唇から漏れそうになった甘い吐息を、奥歯を噛み砕くほどの力で押し殺した。
呼吸が乱れそうになるのを、気合で無理やり統制する。
だが、抑えれば抑えるほど、身体の奥がさらに熱く疼いてしまう。
(な、んだ……これは……!?)
男たちの視線が私に触れるたび、肌が粟立ち、熱を帯びていく。
屈辱で視界が滲む。
なのに、男たちの下卑た視線を浴びるほど、全身の筋肉には力がなみなみとみなぎり、同時に秘部がじゅわりと熱く濡れていく。
私の意思とは無関係に、男たちの下劣な欲望を私の肉体が受け入れ、疼き始めているのだ。
力が漲る感覚と、下腹部の疼きが混ざり合い、区別がつかなくなってくる。
「……くっ」
膝が小さく震えるのを、意志の力で踏みとどめた。
ここで崩れたら、奴らの思う壺だ。
私は誰の慰み者にもならず、私の魂と剣は、神にすら売り渡してなるものか。
顎を引き、乱れそうになる呼吸を気迫で統制する。
視線を一切受け止めぬように、ただ前だけを見据えて、冷たい大聖堂の通路を歩き出した。
一歩踏み出すたびに、晒の内側で硬く尖った乳首が布地に擦れ、下腹部の熱い疼きが波打つ。
それでも、私は背筋を伸ばしたまま、誰の視線にも屈せず、一人で歩き続けた。
〜 続く 〜