※この作品はR-18です。

将軍を目指した薙刀令嬢、愛欲の女神の寵愛を得て「娼婦」となる 〜神罰寸前で無恩寵の男に抱かれたら、無限の経験値で最強の武神になりました〜   作:夜叉五郎

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第四章 アリア・フォン・シルフィード視点

 成人の儀を終え、大聖堂の冷たい石畳を後にした私の足取りは、鉛のように重かった。

 全身を覆う仕立てのよい礼服が、まるで鉄の枷のように肌を締めつける。

 

 大聖堂を埋め尽くした貴族令息たちの下卑た視線。

 その欲望を肌で受け止めるたびに、スキルの作用で子宮の奥が甘く疼いてしまったあの屈辱の痺れが、今もなお下腹部の奥底に熱い澱となって渦巻いていた。

 晒で締め上げた胸の内側は、まだ微かに熱を残しており、歩くたびに硬く尖った先端が布地に擦れて疼く。

 太腿の内側がじわりと熱く、愛液の湿り気が布地に染み出しているのを感じながら、私は馬車に乗り込んだ。

 

(……だが、父上だけは……父上だけは、分かってくださるはずだ)

 

 私にはそれだけが最後の頼みの綱だった。

 幼少の頃から、薙刀の長柄で掌の皮を何度も剥き、血豆を潰しながら鍛錬に励んできた私を、誰よりも近くで見てきた人だ。

 女だてらに万夫不当の将軍を目指し、武門の誉れを掲げてきた私の魂の研鑽を、武人である父上が知らぬはずがない。

 馬車に揺られ、郊外のシルフィード子爵邸に帰り着いた私は、外套を脱ぎ捨てる間もなく執務室の重い扉を押し開けた。

 

「父上! 戻りました、アリアです――」

 

 執務机の向こうに座っていた父――シルフィード子爵は、書類から顔を上げると、彫りの深い厳格な相貌をピクリと震わせた。

 すでに大聖堂からの急使が届いていたのだろう。その手には神殿からの封書が握られていた。

 

「……聞いたぞ、アリア」

 

 父の声は、いつも戦場で号令を下す時と同じように低く、冷徹だった。

 

「愛欲の女神の、最高寵愛……クラス【娼婦】だと」

 

「父上、あれは何かの間違いです!」

 

 私は思わず机に縋りつくように身を乗り出し、必死に言葉を絞り出した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「私は軍を率いる将軍となるべく、命を削って鍛錬を重ねてまいりました! 薙刀を極め、インナーマッスルを鍛え、声を枯らして号令を訓練した日々を、父上もご存じのはずです! 神託の鑑定は、私の武術の理合を勝手に歪めて解釈しただけにすぎません! どうか、軍部への推挙状を――」

 

「黙れ、アリア」

 

 冷ややかな一喝が、私の言葉を断ち切った。

 父は感情の籠もらない目で私を真っ向から見据え、深く息を吐き捨てた。

 

「間違いなどあるはずがない。神の眼差しは絶対だ。……そして、斯くなる上は方針を変える」

 

「……は……?」

 

「武門としての役目は、レオナルドに果たしてもらおう。お前が戦場へ出る必要はもはやない」

 

 レオナルド――私の二歳年下の異母弟だ。

 幼少の頃から体躯に恵まれず、薙刀を振るう私の背中をいつも悔しげに睨みつけていた弟。

 私の苛烈な稽古の足元にも及ばず、剣の腕では私に一度たりとも勝てたことのない軟弱な男だった。

 その弟に、シルフィード家の武門の看板を背負わせるというのか。あのような未熟者に?

 

 動揺する私を見据え、父は立ち上がると、無骨な軍靴の音を響かせて机の前へと歩み出た。

 父の瞳に宿るのは、戦場を駆けることしか頭にない生粋の「戦さバカ」の冷酷な光そのものだった。

 己の武功と領地の軍事力、それだけを信仰して生きてきた男の眼差し。

 

「よいか、アリア。戦場で刃を交えること能わぬ者に、前線を踏む資格などない。だが――いくさとは剣戟のみで動くものではないのだ」

 

 父は無慈悲な声で、氷のように硬い現実を叩きつけてきた。

 

「戦を支えるのは兵站だ。兵力であり、輜重であり、食糧だ。我が領のような小領主が前線で武功を立て続けるには、大領主や王族、近隣の諸侯からどれだけ兵を、物資を、便宜を引っ張り出せるかにかかっている。愛欲の女神の最高寵愛ともなれば、病の憂いもなく、男を狂わせる極上の肉体と術が約束されている。……これほどの後方支援の駒が他にあるか?」

 

「こ……駒……!?」

 

「そうだ。戦神の武技も放てぬ貴様が戦場で槍を振るうことなど、我が軍にとってはもはや何の益にもならん。だが、その身体で大貴族や王侯の懐に潜り込み、我が軍のために千の兵と万の兵糧を引きずり出してくるというのなら、話は別だ。娼婦としてその身を捧げ、我が軍の後方支援を完璧に充実させろ。それがお前の、武門の娘としての最後の役目だ!」

 

「父上……! 本気で、本気で仰っているのですか!? この私に、男へ媚び諂い、躰を売って兵を乞えと……!?」

 

「戦に勝つためだ! 我が軍の血脈を繋ぎ、領地を守るための手段を択ぶ暇など武門にはない! 娼婦としての役目を果たせぬと言うなら、我が軍に不要な出来損ないとして即刻勘当し、叩き出すまでのこと!」

 

 父の怒号が執務室を揺るがした。

 

 「万夫不当の将軍になれ」と幼い私の手に薙刀を握らせたのは、他ならぬこの父だった。

 だが、その男にとって私は最初から愛すべき娘などではなく、ただ「戦の道具」に過ぎなかったのだ。

 戦場で使えぬと分かった瞬間、今度は兵糧と援軍を引き出すための肉の盾として売り払おうとしている。

 胸の奥で、何かが音を立てて砕け散った。

 

 父の冷徹な視線が私の身体を値踏みするように滑るたび、下腹部の奥が小さく疼いた。

 まだ欲情の色はないはずなのに、スキルがわずかに反応し、子宮のあたりが熱を帯びて重くなる。

 

 (……っ、こんな時にまで……!)

 

「……下がれ、アリア。今すぐ娼婦ギルドへ向かい、男の扱いを叩き込んでこい」

 

 背を向けた父の姿を、私はもはや仰ぎ見ることはできなかった。

 蹌踉と執務室を出た私の耳に、忍び笑いのような甲高い声が飛び込んできた。

 

「――おほほほほ。まあまあ、お聞きになって? なんて素晴らしい吉報なのでしょう」

 

 廊下の曲がり角から姿を現したのは、派手なドレスに身を包んだ義母だった。

 亡くなった私の母――前妻の面影を色濃く受け継ぐ私の容姿を、日頃から「薄気味悪い」「生意気だ」と蛇蝎のごとく嫌っていた女。

 

 だが今の彼女の顔には、これまでに見たこともないほどの下品な満面の笑みが張り付いていた。

 義母は優雅に扇子を広げて口元を隠し、目を細めながら、ねっとりとした視線で私を上から下まで値踏みするように眺め回した。

 

「愛欲の女神の最高寵愛ともなれば、病の憂いもなく、極上の房中術が約束されますわ。貴族社会におきまして、これほど引く手数多の価値ある娘は他におりませんことよ。我がシルフィード家のような吹けば飛ぶ小領主にとりまして、大貴族……あわよくば王家へ太いパイプを築く千載一遇の好機でございますわね」

 

 パチン、とわざとらしく扇子を鳴らし、わざとらしく胸元を覗き込むように視線を這わせる。

 

「娼婦ギルドでみっちりと殿方を悦ばせる修練を積まれ、我が家に莫大な利益をもたらす良き嫁ぎ先を見つけていらっしゃいな。アリアさんのような極上の身体なら、山のような結納金が積まれるはずですもの。……ああ、忌々しい前妻の血筋なんて反吐が出るとばかり思っておりましたけれど、最後にこのような形で我が家に尽くしてくださるなんて、本当に親孝行でお利口な娘さんですこと」

 

「……母上、無礼な口を慎んでいただきたい」

 

 奥歯を噛み締め、低く唸るように告げた私に対し、義母は嘲るように喉を鳴らした。

 

「無礼? あら、おかしなことを仰いますのね。神託公認の娼婦風情が、この家の女主人に向かって何を威張っていらっしゃいますの? せいぜい娼婦ギルドで殿方をお喜ばせする技を磨いていらっしゃいな。家のために、その綺麗な身体をたっぷり使っていただきませんとねえ」

 

 嘲笑を残して優雅に去っていく義母の背中を見送りながら、私は固く握りしめた爪を手のひらに食い込ませた。

 血が滲むほどの激痛すら、胸を灼く屈辱には遠く及ばない。

 

 その時だった。

 

 ゾクッ――と、背筋の芯を撫で上げるような、生温かい痺れが走った。

 下腹部の奥が、ぎゅっと熱く収縮する。

 

(な……に……っ!?)

 

 【愛欲の視線受容(パッションレセプター)】。

 男の性欲を肌で受け止め、ステータスに変えると同時に、自らの肉体を強制的に疼かせる娼婦の呪い。

 息を呑んで振り返った私の視線の先――廊下の薄暗がりの中に、二歳年下の異母弟、レオナルドが立っていた。

 

「……レオナルド?」

 

 名を呼んでも、弟は答えなかった。

 稽古のたびに床に叩き伏せられては、悔しげに唇を噛んで私を睨みつけていた弟。

 

 劣等感に凝り固まり、私を避けていたはずの少年が、今は全く別の、どす黒く濁った瞳で私を見据えていた。

 その視線は、私の顔から、固い晒に押し込められた豊かな双眸、引き締まった腰、そして足元へと這うように動いていく。

 呼吸が荒く、鼻腔を膨らませ、ズボンの前立てを無意識に右手でまさぐっている。

 

(この男は……私の弟は、何を……!?)

 

 肌を通じて流れ込んでくるのは、純粋な、そして底知れず歪んだ性的興奮だった。

 

 ――自分より遥かに強く、誇り高く、見上げるしかなかった姉が、男に跨がれ、嬲られる公認の牝へと堕ちた。

 

 その事実を頭の中で反芻し、私の艶やかな黒髪を乱され、白磁の肌を汚され、喘ぎ狂う姿を妄想して、下半身を猛烈に滾らせているのだ。

 

 弟の視線が胸の晒の上を這うたび、内側で硬く尖った乳首が布地に擦れて甘い電流が走る。

 腰のくびれを舐め回すような視線を感じれば、骨盤が勝手に小さく震え、子宮の奥が熱く疼く。

 太腿の内側を値踏みするように見下ろされるだけで、秘部がじゅわりと熱く濡れ、愛液が布地を伝って落ちていく感触がはっきりとわかってしまう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ひっ……!」

 

 弟の放つ生々しい欲情を受容してしまい、私の肉体は勝手に熱を帯び、膝の力が抜けそうになる。

 全身の筋肉に力がみなぎるのと同時に、下腹部の奥が甘く収縮し、熱い疼きが波打つ。

 

(っ……弟の、視線で……!)

 

 吐き気と戦慄が全身を駆け巡る。

 なのに、身体は弟の歪んだ欲望を忠実に受け止め、秘部を熱く潤ませ、乳首を硬く尖らせてしまっている。

 

 信じがたい吐き気と戦慄が全身を駆け巡った。

 敵も味方もない。

 

 外には私を肉玩具として買い取ろうとする第二王子エドワードが待ち構え、家の中には兵站の道具として私を売り払おうとする父、利権の道具として値踏みする義母、そして私の陵辱を妄想して発情する弟レオナルドがいる。

ここには、私の居場所など微塵も残されていない。

 

 この家に一秒でも長く留まれば、私は武人としての誇りも、魂も、全てを泥水の中に引きずり倒されてしまう。

 

「……私の心に宿った剣は、折れてなどいない」

 

 震える唇から、血を吐くような呟きが零れ落ちた。

 下腹部の熱い疼きを意志の力で抑え込みながら、私は弟の卑しい視線を薙ぎ払うように踵を返し、自室へと駆け戻った。

 

 飾り立てられたドレスも、装飾品も要らない。

 手元に残すのは、幼少より我が身と共にあった愛用の薙刀と、最低限の路銀だけだ。

 

 自室で荷物をまとめながらも、晒の内側で疼く胸と、太腿の内側を伝う熱い湿り気は消えなかった。

 一歩踏み出すたびに、スキルが残した熱が下腹部を波打たせる。

 

 私は夜の帳が下りるのを待たず、誰にも見送られることなく、生まれ育ったシルフィード子爵家の門を蹴破るようにして飛び出した。

 

 〜 続く 〜

 

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