チート召喚勇者男性妊娠現代転生もの 作:さくらんぼ
アーク様と婚約しました!!!
夢みたい!!!!
勇者として召喚され、魔王を倒したら裏切られて殺され、転生して今度は魔王になった私ですが、ついに人生の春がやってきました。
しかも、相手はアーク様である。
白髪碧眼の超絶美青年。頭脳明晰、魔法の才能も素晴らしく、現在は天空島に新しい国を作ろうと奮闘している未来の国王様。
そして何より、私の大好きな人!
その人と! 結婚!!!!
「……トール」
「はい!」
「そろそろ行こうか。母達を待たせてしまうね」
「そうでした!」
私達は、王国から脱出したばかりだった。
アーク様は王宮で堂々と独立を宣言し、王様の切り札だった毒のカプセルまで摘出してみせた。ただし、周辺の肉ごとの取り出しだったので、かなりの重傷だったらしい。
私のポーションで傷は治ったけれど、さすがに疲れているだろう。
「アーク様、今日はもう休んでくださいね!」
「ありがとう。でも、母達の様子だけは確認しておきたいんだ」
「もちろんです! それが終わったら休んでください!」
「……うん。そうするよ」
アーク様が笑った。そして、ごく自然に私の手を取った。
ひゃっ……恋人繋ぎ!
婚約者になった途端、アーク様が積極的になっている。
嬉しい。とても嬉しい。
でも、心臓に悪い!
◇
アーク様のギルドキャッスルはまだ出来てないので、私のプレイヤーハウスに呼んだ。
白い城を中心に、庭園や森、湖が広がる巨大な島だ。プレイヤーハウスでも、領地としては十分だと思う。客室も大量にあるし、食堂や浴場、図書室なども完備している。
便利! 現実化した分、管理が大変だけど、一部はシステムが担ってくれる。ただし、何でも自動というわけでもない。食材や消耗品の補充は必要だし、人力でなければできない仕事もある。
一人暮らしなどしようものなら、とても掃除しきれない広大な場所という事もあり、あっという間にゴミ屋敷になってしまいそう。
移住希望者を回収したら、一旦武さんの天翼国(名前決まった)に仮住まいしてもらって、それからアーク様の天空島を作って、移動する人は移動するという事になった。アーク様と私は、しばらくはプレイヤーハウスに滞在。
身の回りの世話はアーク様が用意した人達がしてくれる事になっている。
アーク様のお母様をまず治療し、王宮から連れ出した方々に城の主要施設と客室を案内した。
「……ここが」
お母様が、窓の外を見つめていた。
金髪のスラリとした線の細い美しい女性である。
顔立ちはアーク様と似ている。アーク様と少しタイプは違うが、とにかく美人だ。
ただし、私を見る目は冷たい。
うん。知ってた。
「母様。こちらがトールです」
「……存じております」
お母様は、私を見た。
「息子を、そして私を助けていただいたことには、感謝しております」
「いえいえ!」
「……ですが」
お母様の声が低くなった。
「私の息子は、あなたに差し出されたのでしょう?」
この辺はなぁ。アーク様は捧げられたとか、金で買われたとか、どうしても言われると思う。それは避けられない。
「母様」
アーク様が、静かに声をかけた。
「その話は、私から説明するよ」
「……説明?」
「王家が私に命じたことと、私が自分で決めたことは違うんだ」
お母様は、アーク様を見た。
「……何を言っているの?」
「私は、トールと婚約した」
「…………」
沈黙。
お母様が、ゆっくり私を見た。怖い。
ガラス玉のような瞳。美人が怒ると怖い。
「国に脅されての事でしょう」
「違うよ」
「本当に?」
「私からも求婚したんだ。トールが二十歳になったら結婚する」
「それは、城をもらえるから?」
「否定はしない。トールは財産家だし、私に多くのものをくれた。その魅力を否定したら、嘘になる。でも私は、トールの心のありようにも惹かれている。母様の心配しているようにはならない」
お母様は、しばらく黙っていた。そして、深く息を吐いた。
「……少し、休ませてください」
「もちろんだよ」
アーク様が頷いた。
お母様は、私から目を逸らした。
うーん。これは、長期戦ですね。
◇
客室を出た後、アーク様は小さくため息をついた。
「……すまないね、トール」
「いえいえ! 仕方ないですよ!」
お母様からすれば、息子を魔王に差し出した王家が憎いだろうし、差し出された先の魔王が私なのだから、複雑な気持ちになるのも当然である。
私だって、もし自分の子供がそんな目に遭ったら怒る。
むしろ、怒らない方がおかしい。
「時間をかけて、分かっていただきましょう!」
「……ありがとう。それに、母様は既にトールに甘えているよ」
「そうですか?」
「うん。今までは逆らうなんて考える事すら出来なかったから。ああ言いながらも、本当はトールがひどい人じゃないってわかってるんだと思う」
「それならいいです。それとアーク様! 今日は休んでください! 大変でしたから」
「……そうだったね」
アーク様が笑った。私は、アーク様を客室へ案内した。
広い寝室。柔らかな寝台。大きな窓。
窓の外には、美しい庭園が広がっている。
「……ここが、私の部屋?」
「はい! 気に入らなかったら、模様替えもできますよ!」
「……十分すぎるほどだよ」
アーク様は、部屋を見渡した。
そして、私を見た。
「……トール」
「はい!」
「……少し、抱きしめてもいいかな」
「もちろんです!」
アーク様が、私を抱きしめた。
幸せで昇天しそう。頭の中は絶叫である。
「……ありがとう」
「いえいえ!」
「……本当に、ありがとう」
アーク様の声が、少し震えていた。
私は、アーク様を抱きしめ返した。
「もう大丈夫ですよ!」
「……うん」
「これからは、好きなことをしてくださいね!」
「……そうだね」
アーク様が、私の髪に口づけた。もうもうもうっ アーク様! 幸せ。
でも、今日は休んでいただきたい。
「それじゃあ、私は失礼しますね!」
「……もう行くのかい?」
「はい! アーク様はお疲れでしょうから!」
アーク様が、少し残念そうな顔をした。
うっ でも、駄目です。今日は休んでください!
◇
翌日。
アーク様は、武さんと私を会議室へ呼んだ。
「改めて、話したいことがあります」
アーク様は、私達の前で深く頭を下げた。
「王国が、あなた方にしたことを、心からお詫び申し上げます」
私は、思わずアーク様を見た。昨日も謝ってくださったのに。
アーク様は、静かに続けた。
「トール。君は勇者として召喚され、利用され、命を奪われた。武殿も、王国から討伐の対象とされていた。王族の血を引く者として、謝罪させてほしい」
武さんは、しばらく黙っていた。
そして、口を開いた。
「……謝罪は受け取る」
「ありがとうございます」
「だが、お前がしたことじゃない。王家の罪を、お前一人で背負う必要はないぞ」
「……はい」
アーク様が、顔を上げた。私は、アーク様の手を取った。
「私も、もう謝っていただきましたから!」
「……うん」
「それに、これからはアーク様が幸せになる番です!」
アーク様が微笑んだ。
「……そうだね」
武さんが、私達を見て笑った。
「まあ、何にせよ、独立おめでとう。これからが本番だな」
「はい。よろしくお願いいたします」
アーク様は、改めて頭を下げた。その表情は、昨日よりもずっと晴れやかだった。
◇
そして、建国作業が本格的に始まった。
各種族の代表者達との協議は、既にかなり進んでいる。
森の管理権。鉱山の所有権。税率。自治権。法律。防衛。
そして、移住の順番。
決めなければならないことは山ほどある。
でも、アーク様は楽しそうだった。
「まず、移住する人達の住居を優先しようと思うんだ」
「はい!」
「城や行政施設は後からでも整えられるけれど、住む場所がなければ困るからね」
「なるほど!」
私は、システムの設計画面を開いた。巨大な立体地図が、会議室の中央に浮かび上がる。そこには、これまでの協議で決まった地形が表示されていた。
森。山。湖。川。草原。農地。鉱山。
そして、城。城は利便性の問題から中央ではなく国の端に建てられる事になった。
「まずは、こちらの住宅地からですね!」
「うん。エルフ達は森の近くを希望しているし、ドワーフ達は鉱山の近くがいいそうだ。獣人達は、草原に近い場所を希望している」
「はい!」
「ただし、各種族を完全に分けてしまうと、交流が難しくなる。市場や学校、公共施設は、皆が利用しやすい場所に置きたいんだ」
「なるほど!」
アーク様が、地図の中央を指さした。
「この辺りと城の前、外周域五ヶ所に、大きな市場を作れないかな。当面は城の前しか使わないだろうけど、未来の為に準備はしておきたい」
「できますよ!」
私は、設計画面を操作した。
市場。広場。道路。倉庫。そして、公共施設。
どんどん国らしくなっていく。楽しい!
◇
建国作業は、思った以上に忙しかった。
各種族の代表者達が、次々に希望を出してくる。
エルフは森を広くしてほしいと言い、ドワーフは鉱山を増やしてほしいと言い、獣人達は広い草原を求めた。
竜族は、飛行するための空間が必要だと言う。
ドリアッドは、特別な樹木を植えたいらしい。
全部叶えたいところだけれど、未来のことも考えないとだし、公平性の問題もある。
アーク様は、毎日会議を開いて調整していた。私は、その隣で設計画面を操作する。武さんも、魔族の代表として参加している。
いやあ。国づくりって大変ですね。
でも、アーク様は楽しそうだった。王宮にいた頃より、ずっと生き生きしている。それが、私には何より嬉しかった。
◇
そんなある日のこと。
私は、アーク様に呼び出された。
「トール。少し時間をもらえるかな」
「もちろんです!」
「……ありがとう。実は、君に渡したいものがあるんだ」
「おお!」
アーク様が、小さな箱を取り出した。美しい木箱だった。表面には、繊細な彫刻が施されている。
「……開けてもいいですか?」
「もちろん」
私は、箱を開いた。
中には、美しい指輪が入っていた。
白銀の台座。青い宝石。そして、細かな彫刻。
「……婚約指輪?」
「うん。ドワーフの職人に頼んで作ってもらったんだ」
アーク様が微笑んだ。
「君が以前、婚約指輪が欲しいと言っていただろう?」
「……はい」
「だから、どうしても渡したかった」
私は、指輪を見つめた。
綺麗。アーク様の眼の色。アーク様が私の為に……。
「……ありがとうございます」
私は、少し泣きそうになった。
アーク様が、優しく私の手を取った。
「……つけてもいいかな」
「はい!」
指輪が、私の指に収まった。
ぴったりだった。
婚約指輪! アーク様からの婚約指輪!!!
実感と喜びが私の中で急速に大きくなっていく。
「……似合っているよ」
「ありがとうございます!」
私は、指輪を眺めた。
幸せ。幸せすぎる。
◇
アークは、トールの指に収まった指輪を見つめていた。
ドワーフの職人に依頼した、特別な指輪だった。
白銀の台座には、二人の名前を刻んである。
青い宝石は、私の瞳の色に合わせて選んだ。
ちょっとした独占欲だ。
そして、指輪の内側には、小さな魔法陣が刻まれている。
離れていても、互いの無事を確認できる魔法だ。
トールが帰還魔法を使うとき、この魔法がどこまで役に立つかは分からない。
それでも、何か形に残したかった。
自分が、トールを愛しているという証を。
「……トール」
「はい!」
「……改めて、結婚してくれるかな」
「もちろんです!」
トールが、満面の笑みで答えた。
アークは、胸が温かくなるのを感じた。
幸せだ。
こんなに幸せでいいのだろうか。
「……ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます!」
トールが、嬉しそうに指輪を眺めている。その姿が、あまりにも愛おしい。
アークは、思わずトールを抱きしめた。
「……大好きだよ」
「私も大好きです!」
トールが、抱きしめ返してくれる。
……可愛い。本当に、可愛い。
胸の内が幸福でいっぱいになり、アークはトールの髪に口づけた。
◇
その夜。
私は、アーク様と一緒に夕食を食べていた。
「……アーク様」
「何かな?」
「婚約指輪、ありがとうございます!」
「気に入ってくれたなら、嬉しいよ」
「はい! 大切にします!」
私は、指輪を眺めた。何度眺めても幸せでいっぱいになる。
「ところで、トール」
「はい!」
「結婚式は、どうしたい?」
「おお!」
私は、顔を上げた。
「結婚式!」
「うん。君が二十歳になったら、正式に結婚しようと約束しただろう?」
「はい!」
「だから、そろそろ準備を始めたいと思ってね」
アーク様が微笑んだ。
「……君は、どんな結婚式がいい?」
私は、少し考えた。
結婚式。
アーク様との結婚式。夢のようだ。
「……アーク様と一緒なら、何でも嬉しいです!」
「僕もだよ」
「でも、せっかくなら、皆さんに祝っていただきたいですね!」
「うん。僕もそう思う」
アーク様が頷いた。
「武殿や、各種族の代表者達にも来てもらおう。それから、母にも」
「……お母様、大丈夫でしょうか?」
「……まだ、少し時間が必要だと思う」
アーク様が、苦笑した。
「でも、僕の結婚式だからね。きっと、来てくれるよ」
「そうだと嬉しいです!」
私は、アーク様の手を握った。
「……アーク様!」
「何かな?」
「二十歳の私の誕生日に、結婚式をしてくれませんか!」
アーク様が、目を丸くした。
「……誕生日に?」
「はい! 最高の誕生日プレゼントになると思うんです!」
アーク様が、少し考えた。そして、嬉しそうに笑った。
「……いいね。そうしよう」
「やったー!」
私は、アーク様に抱きついた。
今この瞬間、世界で一番私が幸せ。
◇
それから、結婚式の準備が始まった。会場は、私のプレイヤーハウスの城。招待客は、武さんと各種族の代表者達、それから私達の友人達。衣装は、アーク様とお揃いの礼服。指輪は、婚約指輪とは別に、結婚指輪を用意することになった。
とっても本格的!
私は、毎日わくわくしていた。
アーク様も、忙しい仕事の合間を縫って、準備を進めてくれている。
そして、ついに。
二十歳の誕生日まで、あと一ヶ月となった。
「……アーク様!」
「何かな、トール」
「楽しみですね!」
「……うん。私も楽しみだよ」
アーク様が、優しく微笑んだ。
私は、指輪を眺めた。
アーク様からもらった婚約指輪。これから、結婚指輪も増える。
そして、二十歳になったら。
アーク様と、正式に夫婦になる。
こんなに幸せでいいのだろうか? 私は、アーク様に抱きついた。
「……大好きです!」
「……僕もだよ、トール」
アーク様が、優しく抱きしめ返してくれた。
私は、心の中で叫んだ。
早く二十歳になりたい!!!
こうして、私達は結婚式の日を心待ちにしながら、幸せな婚約生活を送っていたのである。