※この作品はR-18です。

チート召喚勇者男性妊娠現代転生もの   作:さくらんぼ

15 / 15
アーク様と日本への転移

出産しました!!!

可愛い! めちゃくちゃ可愛い!!!

白髪碧眼の、アーク様によく似た赤ちゃんである。ちっちゃいお手々も、ふにふにのほっぺも、何もかもが可愛い。

 

アーク様は泣いた。

 

それはもう、めちゃくちゃ泣いた。

 

「……ありがとう、トール。本当に、ありがとう」

「こちらこそありがとうございます! アーク様に似て、とっても可愛いです!」

「君にも似ているよ。ほら、目元が」

「ふおおおお! 可愛い!!!」

 

 ちなみに、魔王の子供は成長が早い。妊娠期間も短かったし、生まれた子供も人間より早く成長するらしい。

 武さんからは、お祝いと一緒に育児についての資料が届いた。

 大変ありがたい。

 

 アーク様は赤ちゃんを抱っこしては幸せそうに微笑み、私を抱きしめ、また赤ちゃんを眺めている。忙しい人である。

 

「……トール」

「はい!」

「もう一人欲しいね」

「早い! まだ生まれたばっかりですよ!」

「ふふ。そうだね。まずは、この子を大切に育てよう」

 

 アーク様は、赤ちゃんの小さな手に指を握らせて、うっとりと微笑んだ。

 

 幸せ。とても幸せ。

 

 でも、そろそろ帰らなければならない。

 

 日本へ。

 

 私の故郷へ。

 

◇

 

 帰還準備は、既に大詰めを迎えていた。

 

 天華国と天翼国の住民には、改めて移住の意思確認を行っている。日本へ渡れば、元の世界へは戻れない。天空島の外へ出るにも、日本政府との取り決めが必要になるだろう。

 

それでも移住するか。

 

それとも、この世界に残るか。

 

 当然、残る人もいた。

 故郷を捨てられない人。家族と離れたくない人。魔力が失われても、この世界で生きていくと決めた人。私は、その選択を尊重した。

 だって、私だって日本に帰りたいんだもの。

 故郷を大切に思う気持ちは、よく分かる。

 もちろん、魔力が失われたら生存が難しい種族もいる。そういう人達には、できる限り説明して、移住を勧めた。それでも残るというなら、仕方ない。

 私は全員の人生に責任を持てるわけじゃないし、持つ気もないのである。

 

「……これで、ほぼ全員の確認が終わったね」

 

アーク様が、書類を閉じた。

 

「はい! あとは出発するだけですね!」

「そうだね。天華国の行政も、しばらく私が不在でも回るように整えたよ」

「さすがアーク様!」

 

私は拍手した。

 

アーク様は、以前よりもずっと仕事を人に任せるようになった。各種族の自治を認め、行政官を育て、必要な権限を分配している。

 

大変素晴らしい。

 

なお、最初の動機は私とイチャイチャする時間を増やすためだった。

 

愛の力って偉大ですね!

 

「それで、トール。帰還について、もう一度詳しく聞かせてほしいんだ」

「もちろんです!」

 

◇

 

会議室には、アーク様と武さんがいた。

 

私は、システム画面を開いた。

 

「まず、天空島をアイテムボックスに収納します! 天華国、天翼国、それから私のプレイヤーハウスですね」

「住民ごとか?」

「はい! 収納中は時間が停止しますから、皆さんには一瞬の出来事です」

 

 武さんが頷いた。

 

「それで、お前は地球へ転生するんだな」

「そうです!」

「……で、俺達はいつ出られる?」

「私がアイテムボックスから取り出した時です!」

 

私は胸を張った。

 

「つまり、転生した直後でも取り出せるのか?」

「はい! 赤ちゃんでもシステムは使えますから!」

 

 武さんが、微妙な顔をした。

 

「……赤ん坊に国の命運を預けるのか?」

「…………」

 

 あっ。

 そう言われると、非常にまずい気がする。

 アーク様も、真剣な顔になった。

 

「トール。君が幼い間に天空島で何か問題が起きたら、どうするんだい?」

「えーと……」

「君が魔法を使えたとしても、赤ん坊の君に政治的な判断や責任を求めるわけにはいかないよね」

「……そうですね」

 

 そもそも、日本政府との交渉はどうするのか。

 赤ん坊が突然天空島を出現させたら、大騒ぎである。

 いや、成人してからでも大騒ぎだろうけど、赤ん坊よりはマシだろう。

 

「……では、成人してからにしましょうか」

「それがいいと思う」

 

 アーク様が頷いた。

 

「日本では、何歳で成人するんだい?」

「二十歳にしましょう!」

 

法律上の成人年齢とは別に、私達の再会の目安としては二十歳がちょうどいい。

自分の判断で動ける年齢だし、ある程度の教育も受けられる。

 

「……二十年か」

 

 アーク様が、少し寂しそうに呟いた。

 

「でも、収納中は時間が止まりますから! アーク様にとっては一瞬ですよ!」

「……そうだね」

 

 アーク様は微笑んだ。でも、何か考え込んでいる。

 

「……それに、幼い君と一緒に暮らすのは、少し問題があると思うんだ」

「問題ですか?」

「うん。君は私の伴侶だけれど、赤ん坊から育てたら、息子のように思ってしまうかもしれないだろう?」

 

なるほど。

 

光源氏計画は危険!

 

「確かに! せっかく夫婦になったのに、親子みたいになったら困りますね!」

「そうなんだよ。君の成長を見守りたい気持ちもあるけれど、私は君の夫だからね」

 

アーク様が、私の手を取った。

 

「二十歳になった君と、また夫婦として会いたい」

「はい! 約束です!」

 

武さんが、何とも言えない顔で私達を見ていた。

 

「……まあ、本人達が納得してるならいいが」

 

◇

 

「では、二十歳になるまでに、何を勉強しておきましょうか!」

 

私は、張り切って相談した。

 

「大学まで行った方がいいでしょうか? それとも大学院?」

「……大学院まで行くと、二十歳を過ぎるよね」

「そうですね!」

 

アーク様が、少し考え込んだ。

 

「必要な学問なら、再会してから一緒に学びたいな」

「一緒に?」

「うん。君の故郷の知識には興味があるし、私も学びたい。そもそも、国の運営に必要な専門知識を、私達だけですべて修める必要はないだろう?」

「なるほど!」

「必要なら専門家を雇えばいい。君も私も、専門家の意見を理解して判断できれば十分だと思うんだ」

 

おお、合理的!

確かに、私が医者や法律家や建築家になる必要はない。

それぞれ専門家を雇えばいいのである。

 

「では、バイトをするか、料理と掃除と服飾を勉強したいです!」

「……料理と掃除と服飾?」

「はい! 家事能力はあって困らないので!」

 

アーク様が笑った。

 

「君らしいね」

「アーク様にも美味しいものを食べていただきたいですし、お洋服も作ってあげたいです!」

「それは楽しみだね。可愛い君を食べるのは好きだよ」

「アーク様ぁ」

 

イチャイチャイチャ。 武さんがまとめた。

 

「……それなら、二十歳で再会しよう」

「はい!」

「それ以上は、待ちたくないからね」

 

 アーク様、寂しがってくださっている!

 

「私も早く会いたいです!」

「……それに」

 

アーク様が、少し目を細めた。

 

「君が私の知らないところで、誰かに言い寄られるのも困る」

「えっ」

「大学院卒業の年齢なら、結婚を考える人も増えるだろうし、君に好意を寄せる人が現れるかもしれないだろう?」

「ふおおおお! 嫉妬ですか!?」

「もちろん」

 

 アーク様は、にっこり笑った。

 

「私の大切な伴侶だからね。悪い虫がつく前に迎えに行きたいくらいだよ」

「アーク様ぁ!」

 

 私は感激して抱きついた。

 武さんが咳払いした。

 

「……話、終わったか?」

「はい!」

 

◇

 

さて。

ここで、非常に重要な問題がある。

キャラクリエイトである。

そう!

転生するなら、キャラクリエイトができるのである!!!

私が勇者として召喚されたときも、ゲームのアバターを利用していた。

そして、魔王になった今も、ゲームシステムの一部を使うことができる。

今回の帰還魔法では、魂を地球へ送り、転生先の肉体を新しく作る。

その際、キャラクター作成画面を利用できるのだ。

つまり!

自分好みの外見を選べる!!!

 

「……アーク様!」

「何かな?」

「キャラクリエイトしましょう!」

 

 私は、システム画面を開いた。

 目の前に、立体的な人体模型が現れる。

 髪の色。瞳の色。顔立ち。身長。体格。

 そして、性別。

 

「……これは」

 

アーク様が、目を見開いた。

 

「次の人生の外見を、自分で決められるんですよ!」

「……凄いね」

 

 アーク様は、興味深そうに人体模型を眺めた。

 

「……君は、どんな姿になりたいんだい?」

「うーん。どうしましょう!」

 

 私は、画面を操作した。

 今の私は赤毛赤眼で、ほっそりした体格だ。

 結構気に入っている。

 でも、せっかくなら、もっと格好よくなりたい。

 

 アーク様に、もっと好きになってもらえるように!

 

「……アーク様!」

「何かな?」

「どんな姿が好きですか!?」

 

アーク様が、にっこり笑った。

 

「どんな君でも好きだよ♡」

「ふおおおお! ありがとうございます!」

 

私は感激した。

 

アーク様は、私の肩を抱いた。

 

「……でも、せっかくだから、少し触ってみてもいいかな」

「もちろんです!」

 

私は、操作権限を渡した。アーク様が、人体模型を眺める。

アーク様はまず、髪の色を変えた。

元々日本人として転生予定なのだから黒だったのだが、茶髪っぽい黒からカラスの濡れ羽のような黒へと変わった。

瞳も黒。

顔立ちは、東洋的なものに。

すっきりとした目元。通った鼻筋。涼しげな表情。

おお。

塩顔イケメン!

でもどこかで見たような?

 

「……アーク様、こういう顔がお好きなんですか?」

「うん。とても綺麗だと思うよ」

 

 アーク様は、真剣な顔で調整を続けた。

 肩幅が広くなる。胸板が厚くなる。腹筋が割れる。

 腕にも筋肉がついた。

 おおおお。

 

 マッチョ!

 

 しかし、アーク様はそこで止まらなかった。

 

「……少し違うな」

「えっ?」

「筋肉が多すぎる。もう少し細い方がいいね」

 

 肩幅を少し狭くする。腰を絞る。胸筋を調整する。

 腕の筋肉も、太くなりすぎないように整える。

 さらに、脚の長さや首の太さまで調整し始めた。

 

 ……アーク様?

 あ、あの。あくまでも参考程度で、特にマッチョは持ち主の努力もないと維持できないんですけど……。仕方ない。アーク様の理想の伴侶の姿を目に焼き付けて訓練しよう。お嫁さんなんだから美容に気をつかわないとだよね。

 それにしてもアーク様、めちゃくちゃ真剣ですね?

 

「……アーク様、すごくこだわりますね!」

「せっかく君の体を作るんだから、最高に格好よくしたいだろう?」

 

 アーク様は、涼しい顔で答えた。アーク様も男よのぅ。

 でも理想の姿がたおやかな美女じゃなくて、イケメンマッチョなんですが……。

 夜のアーク様を思うとちょっと意外だ。今までアーク様が好きだって言ってくれたえっちな服シリーズ、これ似合わないよ?

 

「……このくらいかな」

 

 完成した人体模型を見た。

 黒髪黒眼。東洋的な塩顔の美青年。適度に筋肉がついた、引き締まった体格。

 しかし、全体的には細身の美しさを保っている。

 推しキャラのマイワンアンドオンリーだった。

 まじで?

 

「アーク様! すごいイケメンですけど、大丈夫? 私に気をつかってます? 本当にこれに勃つ?」

「以前見せてもらった絵の中で、変わった雰囲気の魅力的な外見だと思ってね。英雄の親友っていうのもいいかなって」

「アーク様がいいならいいですけど」

 

私は、人体模型をぐるぐる回した。

どの角度から見ても推しキャラのカプ相手である。

 

私が推しキャラと結婚して推しキャラになる……?

はっ つまり成り変わり……!?

私はアーク様の様子を見た。

 

あ、これめちゃくちゃ好みなんだ。

とても満足そうに眺めている。

 

なんだか少し腹が立ったのでアーク様をつねった。

落ち着け、これは浮気相手じゃなくて私なんだ。

やはり私は推しキャラ成り変わりだった……?

 

◇

 

アークは、完成した人体模型を見つめていた。

完璧だった。

かつてトールが描いた、英雄の無二のパートナー。

東洋的な顔立ちの、精悍な美青年。

筋肉はあるが、太すぎない。肩幅と腰の細さのバランスも素晴らしい。

そして、何より。

この姿のトールを、自分が抱きしめられる。

自分より強そうな男を、自分の腕の中に閉じ込める。

 

……素晴らしい。

 

アークは、内心で満足していた。

トールは、そんなアークの思惑など知らず、嬉しそうに人体模型を眺めている。

 

「アーク様! こんなに格好よくしてくださってありがとうございます? ちゃんと転生後の私に惚れてくださいね。体型の維持大変そうですけど、頑張りますから!」

「どういたしまして。それは心配ないよ。絶対好きになる」

 

アークは、微笑んだ。

どんな君でも好き。

それは本当だ。

だが、自分好みの姿になってくれるなら、なお嬉しい。

しかも、トール自身が喜んでいる。何の問題もない。

 

……本当に、何の問題もない。

 

アークは、心の中で満足げに頷いた。

 

◇

 

「それでは、次は能力設定ですね!」

 

私は、画面を切り替えた。

マッチョにしたので、戦士タイプにするか魔法戦士タイプにするしかない。

魔法戦士タイプでいいか。

適当にステータスを割り振り、完成!

私は、迷わず決定ボタンを押した。

そもそも、転生先に倒すべき魔王はいないのだし。むしろ私が魔王だし。

 

「楽しみだね」

「本当に」

 

そして、出発の日。

天華国と天翼国の住民達は、それぞれの島で待機していた。

収納中は時間が停止する。

私が二十歳になって天空島を取り出すまで、皆さんには一瞬の出来事である。

もちろん、アーク様も、武さんも、子供も。

皆、私のアイテムボックスの中で待つことになる。

 

「……トール」

 

 アーク様が、私の手を取った。

 

「……二十年後だね」

「はい!」

「……約束だよ」

「もちろんです!」

 

私は、アーク様を抱きしめた。

 

「二十歳になったら、すぐに取り出しますから!」

「……うん」

 

アーク様が、私に口づけた。

 

「……愛しているよ」

「私も愛しています!」

 

私は、子供を抱きしめた。

可愛い。大切な、大切な私達の子供。

 

「……またね!」

 

私は、アーク様に子供を預けた。

 

そして、天空島を収納した。

 

天華国。

 

天翼国。

 

プレイヤーハウス。

 

すべて、アイテムボックスの中へ。

 

最後に残ったのは、私一人だった。

 

私は、かつて奪った魔法陣の中央に立った。

 

荷物も人も全部アイテムボックスにしまってある。

時限式の魔法陣の完全破壊装置もセット済み。

よし!

 

勇者召喚の魔法陣を解析し、改造した送還魔法を発動する。

 

「……それでは!」

 

私は、大きく息を吸った。

 

「日本へ帰ります!!!」

 

魔法陣が輝いた。

 

眩しい光が、私を包み込む。

 

そして。

 

世界が、反転した。

 

◇

 

そして。

私は、日本で生まれた。

新しい体。

新しい人生。

でも、記憶はそのまま。

魔法も、ゲームシステムも、アイテムボックスも、全部ある。

そして、二十歳になったらアーク様と、また会える。

 

私は、小さな手を握りしめた。

 

……ふふふ。

 

待っててくださいね、アーク様!

 

今度こそ。

 

日本で、家族みんなで幸せに暮らしましょう!!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。