チート召喚勇者男性妊娠現代転生もの 作:さくらんぼ
大変残念なお知らせがあります。
飛空艇を出したことが、王都で大騒ぎになっています。
いや、まあ、そうだよね。王都のすぐ近くに、巨大な空飛ぶ船が突然出現して、魔族を百人ほど乗せて飛んでいったんだもん。騒ぎにならないわけがない。
でも、全部バレてるなら、あんま隠す意味ないしね。
こっちは学園なんていつ離脱してもいいんだし。
こっちの正体を隠せていたら学生生活も意味があったけど、バレてるなら敵に見せてもいいものしか見せてもらえないわけだし、敵の監視下にいるわけだし、意味ないんだよね。アーク様がいるからいるってだけで。
「トール。少し話がある」
「はい! 何でしょう、アーク様!」
そう、このウルトラ美形のアーク様がいればね!
「……君の飛空艇のことなんだけどね」
アーク様が、困ったように微笑んだ。
ああ、今日も美しい。白髪の髪も、宇宙のような青い瞳も、少し呆れたような表情も、何もかもが素晴らしい。
「王都では、魔王が軍勢を率いて攻めてくるという噂が広まっているよ」
「ええー!? そんなつもりないですよ!」
「分かっているよ。でも、王都の外に百人近い魔族が集まっていて、そこへ巨大な飛空艇が現れたんだ。王国軍が警戒するのも当然だろう?」
「うーん……。確かに」
私は腕を組んだ。
魔族の皆さんは、家畜や種子を運んでいただけなんだけど、遠目には軍隊に見えたのかもしれない。
「……ちなみに、飛空艇は他にもあるのかな?」
「今度の休みに一緒にデザイン考えましょうね。一度デザインしたら変えられないので、よく考えて検討しましょう。日本に行ったら気軽に地上と行き来されても困るので、必要時にレンタルって形になります。それは武さんも同じです。故郷に火種を持ち込みたいわけではないので。あと、俺も使います」
「私があの船を……楽しみだ」
アーク様はそれ以上追及しなかった。
さすがアーク様。聞いていいことと悪いことの区別がついていらっしゃる。
言外にそれ以上話すつもりはないというのを把握したのだろう。
「王家も君に事情を聞きたがっているようだけど、どうするつもりだい?」
「聞かれたら答えますよ。お引っ越しの準備ですって」
「……それだけ?」
「それだけです!」
アーク様は小さく笑った。
「……君らしいね」
◇
王国軍からの問い合わせは、思ったより早かった。
昼休み、学園の応接室に呼び出された私は、軍服姿のおじさん達と向かい合っていた。
「先日、王都近郊に出現した巨大な船について、お伺いしたい」
「はい」
「あれは、あなたの所有物ですか?」
「そうですよ」
「……どこで手に入れたものですか?」
「私が最初から持っていた物です。出自は把握していたでしょう?」
「勇者としての記録にはありませんが」
「隠してましたから。殺して誘拐した相手に対して当然の対応でしょう?」
おじさん達が顔を見合わせた。怒ってないわけないだろ。
「……あの船は、空を飛ぶのですね?」
「報告聞いてませんか?」
「……どの程度の距離を飛行できるのですか?」
「関係ないでしょう」
「……武装は?」
「拉致犯に教えるとでも?」
「……乗員は何名まで?」
「さあ?」
「…………」
おじさん達が疲れた顔になった。
でも、仕方ないじゃないですか。飛空艇の性能なんて、軍事機密みたいなものですよ。簡単に教えるわけにはいきません。
「……では、何のために魔族を乗せていたのですか?」
「移住の準備ですよ。そろそろ故郷の日本に帰る予定なのですが、魔王は魔力の生産種族でもありますからね。魔族達、魔力に依存した生物は魔力がこの世界から無くなったら生存できなくなる可能性があります。だから、希望者は故郷に連れて行くことにしました」
「……故郷に帰られると。どうやって?」
「いうと思います?」
「その際に、船ごと運ぶと」
「いいえ? 天空に置いてある島ごと運びます」
「天空島は貴方のものだと!?」
「そうですが」
「……あんな大きな物を運ぶなんて! いや、勇者の時もそんな話は聞いてない」
「勇者時代に隠しておいたんですよ。殺される事はわかってましたし、空間魔法に保存した財産は死ねばその場に現れてしまいますからね」
「なるほど」
おじさん達は目を光らせた。ふん。魔道具化してない空間拡張バッグはそうなるが、システムのアイテムボックスは転生後も保持される。
こう言っておけば、果実が成るのを待って、帰還に協力的になるだろう。帰還が失敗すると思われている事は知っている。
全てが明らかになるのは、私が帰還の儀式を行なって転生した後の事ということだ。
そして、一人が口を開いた。
「……その移住には、我が国の人間も参加できるのでしょうか?」
「人間は魔力なくなっても死なないし、いても利点ないから要らないかな」
「…………」
「魔族とか、エルフとか、獣人とか、ドワーフとか、魔力がないと滅びそうで役立ちそうな人や動物や植物だけ」
「劣等種族を人間より優先すると?」
「宝石とまではいかないけど、ありふれた石ころより綺麗な石でしょ。人数も連れてかない。お土産だし、大勢連れて行って問題を起こされても困る」
「アーク様は良いのですか」
「アーク様は綺麗なハーフエルフでしょ。連れて行く価値はあるよ」
おじさん達が、今度こそ完全に黙った。
◇
その日の夕方、王宮では、緊急会議が開かれていた。
「魔力がこの世界から無くなるのを承知で去るだと!?」
「はい。魔王はそのように発言しております」
「不可能ではあるが、何と邪悪な企みよ……!」
「しかし、魔王の財産は莫大です。それに、死ねば空間魔法が解かれて財が得られるとか」
「勇者の時はそんな報告は無かったが」
「事前に殺されると知って準備していたとの事です」
「小癪な……!」
大臣達は騒然となった。
巨大な飛空艇。そらに浮かぶ島。勇者召喚した王国が当然に得ていたはずのもの。
今代の勇者は初めから邪悪だったらしい。
「……しかし、帰還の儀式が行われればそれらは持ち主を失う。そこを接収すればよい」
一人の貴族が呟いた。
「何処に出てくるか、誰が確保するかが問題だ。空に浮かぶ島など、住人がそのまま独立を宣言するやも」
「魔王に譲渡を求めては? 手の者を潜り込ませて不慮の事故を待つより確実だ」
「忌々しいことに魔王は王国を逆恨みしておる。難しいだろう」
「アーク様がいる。アーク様に捧げさせよう」
「それは良い!」
アークを通して魔王を支配できれば、飛空艇も、天空に浮かぶ島も手に入るかもしれない。
「アークは邪魔になったら殺せばよい。身体に毒を埋め込んでおる」
「流石は陛下です。アーク様に魔王は骨抜きだそうで」
「所詮は下賤な魔王よ」
大臣が次々に追従した。
「では、引き続き近づけさせろ。魔王の力を、我が国のために使わせるのだ」
「御意」
そして、別の貴族が手を挙げた。
「陛下。天空島の移住についてですが、我が国からも早期に人を送り込んで置いたほうが良いでしょう」
「そうだな。それもアークに手配させておこう」
アークに、王宮の魔の手が伸びようとしていた。
◇
さて。
王国のことはさておき、私達は移住者の勧誘を始めることにした。
まずはエルフ!
アーク様がハーフエルフなので、エルフの皆さんとは話がしやすいかもしれない。
というわけで、休日。
午前中に船を作った私達は、出来たての船で早速エルフの森へ向かった。アーク様はさぞかし上機嫌になるかと思ったが、浮かない顔をしている。移住計画に横やりが入れられているのだという。アーク様の腕の見せ所ですね! というと、そうだねと笑ってくれた。困ったら相談してねと伝えておいた。変な人を故郷に連れて行くのは困るとも。アーク様は分かっていると請け負ってくれた。
エルフの森は、美しかった。
巨大な木々が空を覆い、木漏れ日が地面を照らしている。森の奥には、樹上に建てられた家々が並んでいた。そして、その中心には長老達が集まっていた。飛空艇で行ったら長老達が自主的に集まってくれたのだ。
「……魔王が、我らに何の用だ」
長老の一人が険しい顔で言った。
「移住のお誘いです」
「……移住?」
「はい! 私、日本に帰る予定なんですけど、魔王の地位ごと持っていくので、この世界からは時間を掛けて魔力が無くなっていくでしょう。もしかして神様とかいるならまた魔王を作ってくれるかもですけど。それで、魔力が必要な皆さんにも私と一緒に私の故郷に行くか、こちらに残って新たな魔王の設置を祈るか魔力のない世界に頑張って適応するか選んでいただければと」
「…………」
長老達が固まった。
「……魔王の座にありながら異世界に行く」
「はい」
「……それは、我らに死ねと言っているのと同じではないか!」
「だから、移住のお誘いに来たんですよ?」
私はにっこり笑った。
長老達は顔を見合わせた。
その横で、アーク様が静かに口を開いた。
「まず、移住先をご覧になりませんか?」
「……移住先?」
「はい。魔王トールは、天空に浮かぶ島を用意しています。そこには、皆様が望む環境を作ることができます」
「……望む環境?」
「森でも、湖でも、山でも。初期の移住者であれば、土地の位置や広さについても希望を出せます。一からトールが島を創造するのです」
長老達がざわめいた。
「……それはもう神なのでは?」
「実際にご覧いただくのが一番でしょう。既にトールが作った島があり、旧魔王が支配しております。希望があって合意があれば、そちらに住んでもいい。その島も日本に持っていきますから」
アーク様は微笑んだ。
「見学会を開きたいと思っています。もちろん、見学したからといって移住を強制することはありませんし、残りたければ残ってもいい。あくまでもこれは救済処置で、移住したい人だけ受け入れます。強制ではありません。あっ故郷に戦争仕掛けないことは約束してもらいます」
長老達はしばらく相談していた。
やがて、一人が口を開いた。
「……見学だけならば、構わぬ。若芽を向かわせる」
「ありがとうございます!」
やった! 第一歩だ!
◇
見学会は、大成功だった。
エルフの若者達を連れて魔王の天空島へ転移すると、皆さん、しばらく口を開けたまま固まっていた。早めに国名決めてほしい。
「……空に、島が……」
「……あれは、城か?」
「……森まであるぞ……」
「なんて広い。大陸ではないか!」
ふふふ。
驚いてる驚いてる。
でも、まだまだこれからですよ!
「こちらが、魔族の皆さんの移住先です!」
私は武さんのギルドキャッスルを案内した。
山脈。森林。湖。平原。農地。牧場。
まだ建物や生活用品は足りないけど、土地だけなら十分に用意してある。
「……これを、魔王が作ったというのか?」
「はい!」
「……どれほどの年月をかけて?」
「設計は数時間ですね!」
「…………」
若者達が黙った。武さんが横で苦笑していた。
「俺も、最初は信じられなかった」
「……前魔王陛下」
「久しいな。元気そうで何よりだ」
若者達は固まった。若者というが、私が勇者だった時には現役だったっぽい。そういえば前世ではエルフに会ってなかったな。そういえば、武さんが生きていること、まだ知られてないんだった。
まあ、いいか!
「それで、こちらがアーク様の国になる予定の土地です!」
私は設計画面を開いた。
まだ真っ白な地図。中央には城だけがある。
ここから、皆さんの希望を聞いて、土地を作っていくのである。
「まず、エルフの皆さんは、どんな森がいいですか?」
「……森?」
「はい! 木の種類とか、広さとか、川の位置とか! 一回それで稼働したら簡単には動かせませんから、慎重にお願いします!」
「……自由に決められると? 肥沃な大地も?」
「高い設備とかもあるので、なんでも全部叶えますとは言えませんけど。あーでも、これ無償は問題ですね。お気持ちで負担にならない範囲でお礼の品や税金くらいは欲しいかも」
「税金徴収システムもあるしな。了解した。それと、俺を眷属にしろ。それで序列の問題は解決する」
「ただな方がおかしいしね。でもあとで揉めると嫌だから最初にきちんと決めよう。税金や負担の限度も。後で暴君が出ないようにね」
「了解。これも話し合い参加できるのは初期メンバーだけね。当然」
エルフ達は顔を見合わせた。
「……本当に、我らの望む森を作ってくれるのか?」
「もちろんです! ただ、後から大幅に変更するのは大変なので、最初によく考えてくださいね!」
「税金沢山取ったりしないか?」
「その辺は初期メンバーと武さんとアーク様と相談ですね」
すると、若者達が突然、真剣な顔で相談を始めた。
「……参加はします。規模については相談させてください。あと期限ください」
「半年後に説明会します。その後半年掛けて話し合いましょう」
「了解した。何人まで参加できる?」
おっ前のめり。
いいですねぇ。
皆さん、やる気になってきましたね!
◇
それから、休日ごとに勧誘の旅が始まった。
ドワーフの山。獣人の集落。ドリアッドの森。そして竜族の住処。
毎週、アーク様と一緒に各地を巡り、移住説明会の招待状を配り、希望者には天空島の見学会を案内した。
最初は警戒されることも多かった。
でも、実物を見せると、ほとんどの人が前向きになった。
なにしろ、現在の世界は人間種が強い。
エルフも、ドワーフも、獣人も、魔族も、それぞれに事情を抱えている。
人間の国に従属している集落もあれば、土地を奪われて追いやられた種族もいる。そんな人達に、自由に暮らせる新天地を用意すると言えば、興味を持たないわけがない。
しかも、初期参加者は土地を選べる。
希望する環境まで作ってもらえる。
そりゃ、参加したくなるよね。
「……トール」
「はい!」
「移住希望者が、予想以上に増えているよ」
「いいことですね!」
「……そうだね。ただ、受け入れ体制を整える必要がある」
「アーク様、お願いします!」
「……君は本当に、私に任せる気なんだね」
「もちろんです! 相談にはいつでも乗りますけどね」
アーク様は苦笑した。でも、その顔はどこか楽しそうだった。
◇
一ヶ月が経った。
そして、また大変なことになった。
今度は、私の小説が大流行していた。
嬉しい!
私、元々創作が好きなんですよ。頑張って書いた空間スキル向けの話の数々。その全てに出てくる、白髪碧眼の美青年。空間魔法の天才。
あらゆる攻撃を空間障壁で防ぎ、瞬間移動で敵を翻弄し、作品によっては空間切断も使って強敵を倒す。
巨大な城を手に入れ、自分の国を作る物語も勿論書いた。
もちろん、アーク様をモデルにしている。一部推しキャラもいるけど。一応この話はフィクションですと書いてある。名前は推しキャラの名前で統一した。アーク様には創作の英雄だと説明もした。アーク様は喜んでくれて、イメージもしやすかったらしくみるみる成長した。
「……トール。私は本当は自分が好きじゃなかったんだ」
「アーク様」
「でも、私に似た彼を好きになって、自分が凄く好きになれた」
「おお! そうです。客観的に見て貴方は魅力的なのです」
アーク様が私の机に本を置いた。
「……でも、私は君に彼よりも私のことを好きになってもらいたい」
「ひょっ」
「頑張るね」
アーク様健気で可愛すぎか。
萌し分けないけどそんなところもそっくりなんだ……。なんなら推しキャラの方が健気なんだ……。
それでも、アーク様自身を見ようと思ったのだった。
アニメキャラに対抗できてる時点で凄いと思うけどね!
◇
小説は、予想以上に広まった。
最初は学園の生徒達が読んでいたのだが、あっという間に王都から国中へ、そして他国へ。
白髪碧眼の美青年が、空間魔法で無双する物語。
しかも、その主人公が実在する人物にそっくりだということで、大騒ぎになったのである。
天空島と飛空艇での活発な活動もそれに火をつけた。
「ねえ、あの主人公って、アーク様じゃない?」
「絶対そうだよね!」
「空間魔法って本当に使えるのかな?」
「トール様が教えてるって噂だよ!」
「えっ、本当に!?」
「本当に空に浮かぶ城に住んでいるのかしら」
学園でも話題になった。
アーク様は、どこへ行っても小説の話をされるようになった。そしてめちゃくちゃモテるようになった。魔王の私とのあれこれとか政治のあれこれとか飛び越えて告白されたり、私に喧嘩を売ってくる娘が増えたのである。
そして、ある日の昼休み。
「……トール」
「はい!」
「君の小説のせいで、私のところに決闘の申し込みが来たんだけど」
「えっ!?」
「空間魔法の使い手として、ぜひ手合わせしたいそうだよ」
「……誰です?」
「騎士科の上級生」
「それはまた剛毅な……空間魔法手加減出来ないのに」
アーク様の空間魔法は、まだ習得途中である。
でも、空間障壁は使えるし、瞬間移動も練習している。空間断裂は魔力の含んだものは難航中。でも通れば大体殺してしまう。
そもそも、アーク様は空間魔法が無詠唱で使えるというだけで詠唱すれば他の魔法も普通に使えるし有能だ。剣だって使える。負ける要素がない。
「……何か罠を使いそうなんです?」
「いや。でも勝っても負けても一枚噛ませろとは言われそうでね」
「あ~。断っても角が立つし面倒ですね」
「……そうなんだよ」
「私が出ます?」
「……いや。単なる愚痴だ。これくらい自分で捌く。こうして見ると、貶されるのは簡単だね。好きだと言ってくるほうが怖い」
「無能な味方は一番怖いって言いますしね。味方を装う敵、フレネミーって言葉もありますし」
アイドルのファンがアイドルと接した異性を攻撃しまくるとかあるあるだしね。
今更アーク様の派閥に入ろうとする人もいる。無理だって。
「まあでも卒業まで後五年、頑張るよ。やることが沢山あってとても楽しいよ」
「それは良かったです」
さすがアーク様! 推しキャラと同じ社畜要素も! 頑張れ〜!
◇
その夜。
アークは自室で、もう一度小説を開いた。
主人公は、強大な力を持っている。誰にも屈せず、自分の意思で道を切り開いていく。そして、最後には自分の城を手に入れる。アークは、その物語を何度も読み返した。
自分に似ている。当然だ。自分と日本の英雄を混ぜてモデルにしたのだから。
けれど、決定的に違うところがあった。
物語の主人公は、屈さなかった。
最後まで戦った。羨ましかった。
「……トール」
アークは小さく呟いた。
あの人は、自分にこうなってほしいのだろうか。
強く。誇り高く。誰にも屈しない存在に。
そして、自分の城を持つ王に。
アークは本を閉じた。
窓の外には、月が浮かんでいる。
明日も学校がある。
次の休日には、また勧誘の旅に出る予定だ。
説明会の準備もある。日本語の習得もある。
英雄ほどではないが、本当に忙しい。
でも。
「……楽しいな」
アークは微笑んだ。
これまでの人生で、こんなにも未来が楽しみだったことがあっただろうか。
自分のために勉強し、自分のために働き、自分のために国を作る。
その隣には、いつも楽しそうに笑う魔王がいる。
「……君は、本当に困った人だよ」
アークは本の表紙をそっと撫でた。
そして、机の引き出しに大切にしまった。
決して諦めたくない宝物が、また一つ増えたのだった。