「宝源祭まであと1週間です。総悟様にはこの3週間で日本の歴史についてはある程度復習して頂きましたので、後は儀式の作法を覚えて下さい」
いかにも「できる女」のオーラを醸し出している目の前に座る女。黒髪ロングを後ろに束ねピシッとしたスーツを着ている目元がちょいきつめな美人さんだ。
「聞いておられますか?」
キリッと俺に目を向けるのが可愛いらしくてつい俺はとぼけてしまう。
「ん?」
「ん?ではありませんよ。総悟様の一生に一度の行事ごとなのですからしっかりして頂きませんと困ります」
「分かってるって先生ー」
ふぅーとため息をつく彼女の名前は『
徹底的な知識確認と幾重にも行われる面接によって、教員免許試験の中でも最難関とされる男性教育免許を取得しているスーパーエリート様である。
だが生真面目すぎるきらいもあるので腑抜けの俺とは性に合わずこれまで何度か衝突してきた。
それでもやはり先生と生徒と言っても基本的には俺の方が優位の存在であるために自分をいつも曲げなきゃならないちょっと可哀想な人でもあるのだ。
(真面目な女の子の意見を突っぱねるのが楽しくて俺が単に意地悪してる部分も多々ある)
そんな彼女が気にしている、1週間後に行われる「宝源祭」とは一言で言えば「種まき祭」である。
精通が確認できた男子が確認の1ヶ月後にその男子が住まう地域担当の神社に赴いて、神官や公務員、議員、首長の前で射精をするというなんともふざけた祭りなのだが....
これは子孫を産む機会を与えてくれた神への感謝と元気な子を作れますようにという祈り、さらにはこれから精子提供を行うことで国家繁栄を担うという誓いを立てる意味があり、割と大事な神事でもあるのだ。
ちなみにこの国では政教分離はなされておらず、この行事の費用は国が負担することになっているそうだ。
あと1週間ということで祭りをなんとしても成功させたい山本先生はピリピリしているが、俺は祭りが近くなるにつれ少しナーバスになっているのであった。
だってみんなの前で射精しろっていうんだ。前世でやった尿検査の尿が入った検査容器を教室で取り出す時よりも10倍は恥ずかしいだろう。
「んーやっぱ先生、今日はもう勉強は終わりで。綾乃ちゃんももう帰ってきてるだろうし」
「総悟様、先ほど分かってるとおっしゃったではないですか。宝源祭まで1週間しかないのに...」
実は山本先生には心配性なところもある。それゆえ予定をピチッと決めたがる真面目さんなのだ。まぁ大抵俺の気まぐれで彼女が決める予定はぶっ壊れるのだが。
「どうせ先生の事だから学習スケジュールに予備日設けてるんでしょ?儀式も男はそんなやることないって言ってたじゃん。そんなに心配しなくてもちゃんとこなすから大丈夫だって」
「はぁ...それでは本日の残りの学習は明日へと回します」
「はーい。そんじゃあ先生お疲れー。帰るついでに綾乃ちゃん呼んできてー」
先生は「失礼します」と頭を下げトボトボと部屋を出ていく。ふっ、今日も勝ったな。
このように俺と先生は毎日のようにサボるか、勉強させるのかのせめぎ合いをしているのだ。
山本先生のパーフェクト勉強法に腑抜けた俺がどれだけ駄々をこねるかの勝負なのだが、先生は俺に勉強を押し付けても意味がない事を知っているので割と妥協してくれる。
まぁ80%くらいの力では勉強に取り組んでいるので先生みたいな完璧人間でない俺にしては頑張ってるほうだと思う。二人三脚で6年間頑張ってエリート教育について行ったのだから許してくれ。
そんなだらけた事を考えていると、コンコンコンっと控えめなノックの音が鳴り1人の女性が入ってきた。