「どうもー、青葉です。瑞鶴さんにお伺いしたいことがありまして」
その声を聞いて、瑞鶴は振り向く。ぴらり、と一枚の写真が出てきて、ひっ、という短い声が出た。
「……提督とお付き合いされてるんですか?」
興味津々という様子で聞く青葉に、天を仰いで、そして一言。
「……うん」
そうとしか答えようがなかった。顔が、熱い。
思い返せば、二人で映っている写真が無いから、という理由でプリクラを撮りに行ったのが間違いだったのだろうか。男子禁制のところに30近い男が入るのかよ。と抗議の声を上げていたことを思い出して、うん、まあその通りでしたね、という感想が出てくる。青葉に見られていたことに気付かなかったとは、うかつだった。
どこまで行ってるんですか、と聞かれて、さらに瑞鶴は顔を赤くする。ああ、そうだ。昨日あんなことをやったんだ、と。むろん、瑞鶴はそれをしゃべるほど口は軽くなかった。
『染み』
「……もー。提督さん、どうしてこんな仏頂面……」
そう言われて、周りの視線を気にしながら、瑞鶴の方を向く。
少し色の抜けた、灰に近い黒髪の少女が、下唇をとがらせて、切れ上がった目から抗議の視線を注いでいる。髪を頭の両サイドで結い、細い肩にそれが注いでいて、ふとよからぬことを考えそうになるほどだ。
「だってそりゃ……苦手なんだよ、こういうところは」
「ふーん」
そう言いながら、手帳のようなものにそれを張り付けているのを見て、ふう、と軽く息をついた。視線の端に桃色の髪が目に入り、わあ、という声が聞こえたが、話しかけたら殺すぞ。と視線で語る。青葉も女の子してるんだなあ、などと思ったりもしたが。
「……ところで、なんで撮ろうとか言い出したんだ」
「んー……艦娘になる前のこういうの、燃えちゃったし……また撮ろうかなって。そんな気分になったの」
そうか、と短く返す。戦争ってやつは嫌だねえ、と考えてはいたが、しかし。
「……暗くなってきたな。帰ろうか」
外を見れば、日が落ちて街灯がちらほらと点きはじめる。ナトリウムランプの光が注ぎ始める、夜との境。そう思いながら、立ち上がると、袖をつかまれた。
「……まだ、早いじゃない」
濡れた唇を見て、ごくり、と男は唾をのんだ。
「……勢いで来てしまったが、しかし……」
言いながら、腕を組んで、しばらくした後に頭を垂れる。どうしたものか。そう思いながら、ふと脱衣所を見ると、瑞鶴のショーツが目に入り、白か。と思わず益体もないことを考えた。
ぱちん、というゴムが肌に当たる音がして、思わずそっちを向くと、ツインテールをほどいて、後ろで髪をまとめ直した瑞鶴が、顔を出している。
「……一緒にお風呂、はいろ」
消え入るような声を聞いて、ああ、うん。などと生返事を返す。何の音だったのか。と考えて瑞鶴を見てみれば。
「……なんで水着着てるの?」
「……恥ずかしいのよ」
ふい、と顔をそむける。白いプリントのロゴがはがれている。紺色というよりも水色に近いそれは、胸元のあたりだけ少し色が違い、若干濃い。ネームを剥がした跡なのだろうか、と考えて、むっとした表情をして、背を向けて歩いて行く。それにしても、わざわざスクール水着を持ってきてたのか。と妙な感情が浮かんできた。
彼女の背を見ると、白いゴムのような肩紐から、背中が大きくOの形に開いているのを見て、ぞくり、とした。そのしろい皮膚の下にのぞいた骨格の細さに、思わず唾を飲む。女性ではあるはずなのに、少女のように細く、手折れそうにも思える。
「……やっぱり、男の人は胸が大きい方がいいの?」
むすっとした表情で、瑞鶴は言う。口を開くのも面倒だったので、強引に抱きしめ、唇を奪い、舌を入れる。歯に行きあたり、こわごわとした様子で瑞鶴は舌を絡めはじめる。お互いの唾液が混ざる音がし、唇を離すと、青いスクール水着に唾液が垂れ、染みを作る。一瞬光り、吸収されて色が失せるのを見て、ぞく、とした。
「……えっと、その……」
「瑞鶴『が』好きなんだよ」
一言、そう言った。顔を赤くするあたり、相変わらず初心な奴だ、と思わず考えるが、しかし。シャワーから水を出し、瑞鶴がお湯の温度を確かめ、そしてこんなのでいい、と聞いてくる。ああ、と生返事をする。
「……わ、私があらおっか?」
「……い、いや、自分で洗える。それに、脱がなくていいのか」
「……う、うん……」
正直、脱がないで欲しいです。そう言いたいのを、自制心を働かせてこらえた。
ちらちらと、視線が下に向くのを感じる。
「……えっと、その……。い、痛く無いの?」
「いやまあ、それは……」
シャワーでお互い気まずい空気を感じながら体を洗う。水着に水が当たるたびに光を浴びててらてらと光り、そして水が止まれば水色から濃い青に近い色に変わり、そして足を伝って水が落ちていく。それを見ていると、欲望が膨れ上がっていくのを意識してしまうがために、目をそらす。風呂場の椅子に座っているこっちが何とも言えない空気である。
「……えっと、その……」
瑞鶴の声。チラチラとこちらの「もの」を見ては、何かを言いづらそうにしている。す、と腰をかがめ、そして「もの」に手をあてがい、咥え、ちろちろと舐める。
「……お、おい……」
あの瑞鶴の口の中の熱を感じ、そして舌が稚拙ながら蠢く感触。気持ちいい、と言うよりはしてはいけないことをしているような感覚を覚える。
瑞鶴の白い肌、濡れた唇の間から、赤黒い肉がのぞき、それを見て「汚している」ような感覚を覚えるのだ。正直言って、気持ちいいかどうかで言えばあまり気持ちよくはないが、不安そうにしているのを見ると、ぞくぞくと背筋に何者かがはいあがってきた。
前後に頭が動き、空いた背中からのぞく腰をくねらせ、唾液のねばる音をさせながら、瑞鶴は不安そうにこちらを見上げてきた。頭を撫でながら、5分ほどそれをしていると、ぷあ、と声を出して、瑞鶴が口を離す。
「……えっと、気持ちよく、無かった……?」
不安そうにこちらを見て、問う。口元はぬれ、ふう、ふう、と荒く息をつく。
「……いや、その。驚いたんだ。だからまあ」
「……なんかその、こうすると喜ぶって聞いたから……」
「うれしいのは確かだけど、うん」
まあ、誰がそんなことを言い出したのかをいずれ聞くにしても。気持ちいい悪い、ではなく、嬉しかった。それだけと言えばそれだけではあるが、えへへ、と唇をぬらぬらと光らせながら笑う彼女の顔を見て、引き倒し、のしかかる衝動を抑えるのに苦心した事だけは、確かだった。
続きは皆様の心の中にあります。