※この作品はR-18です。

ランス 反逆の鬼畜戦士   作:てるゆき

13 / 16
第12話 決戦

 かなみは戦況の説明を走りながらランスに行うこととなった。彼の到着を待つ者のことを考えれば、もう時間を作ってゆっくりと話している時間はないのだ。

「謙信ちゃんが……」

 ランスが自身の行く先を睨みながらそうつぶやいた。誰より素直にランスを慕っていた謙信が反旗を翻して敵に付いたのだ。たとえ精神を操られているのだとしても、それは易々と受け入れられる事情ではない。

「ちっ、後でオシオキしてやる」

「…………」

 そのオシオキはランスなりの照れ隠しだった。それを行うことで相手も自分も気を使うことなく接していけるようになるのだ。

 やがて、ランス達は香の居るJAPAN陣営に到着した。

「香ちゃん!」

「兄様! 良かった、呪いが解けたんですね!」

「がははは、もう大丈夫だ」

 ランスは喜ぶ香の頭を撫でながら力強く笑った。

「香ちゃん、俺様がケッセルリンクをぶっ殺すからあいつのとこまで行けるように部隊を集めろ」

「はい! 陰陽師隊と弓、鉄砲隊で敵の数を減らした後、武士隊で突撃をかけます! 兄様、準備に少し時間がかかりますので少し休んでいてください」

「いや、俺はもう十分休んで元気が有り余っているのだ。部隊を編成する間少し謙信ちゃんのとこに行ってくる」

 ランスの言葉に香は一瞬顔を曇らす。謙信のいる辺りは最前線。病み上がりのランスの調子がどれほどのものなのか、それ次第では非常に危険だ。

「……わかりました。今の謙信さんは味方の言葉に耳を傾けず、非常に危険です。どうか、よろしくお願いします」

「がははは! 問題ない。俺に任せとけ」

 

 戦姫のレベルは52。ヘルマンに渡り、研鑽を積みながら魔軍との修羅場を潜り抜け辿り着いたレベルは人類で最高峰のそれだった。

「これが、軍神か……」

 刃を交えつつ苦笑を漏らした。彼女は想像の比ではないほど強かった。ランスとの生活でただでさえ高い才能限界をさらに高め、逃亡生活の中で数多の強敵を切り伏せ、辿り着いた境地がレベル90。

 恐るべきことに、生来の真面目な性格ゆえに圧倒的なその技巧はさらに磨かれ、早々右に並ぶもののない強さとなっている。いや、最早人間に敵など居ないのかも知れない。

 戦姫と共に戦うアルカネーゼとサチコのレベルがそれぞれ45と68。勝つことは十分容易に思えるが、謙信の圧倒的な強さは彼女らに勝利はおろか一瞬の油断すら許さない。

 サチコは信じられないほど重いその剣を必死に防ぎ、サチコの作り出してくれた隙に乗じて戦姫とアルカネーゼが打ち込むも、謙信はあっさり防ぎ、入ったと思えば狙ったように(事実そうなのだろう)紙一重で避けた。

「こっちは、三人でいっぱいいっぱい、なのに、そっちは、息も切らさない、んだね……」

 アルカネーゼは肩で息をしながらそんな事を言う。

「ふふっ、いっぱいいっぱいなら少し休んでてもいいぞ? 私は一息つく時間を作ってやる余裕くらいならある」

 戦姫は汗にまみれながらもそんな軽口を叩いた。当然ただの強がりに過ぎない。彼女にだって余裕はない。

「はっ、冗談!!」

 アルカネーゼは口元に笑みを浮かべてハンマーを振り回した。

 謙信は黙ってそれを避け、返す刀でアルカネーゼに斬りつけた。

「させませんっ!」

 そしてサチコがアルカネーゼと謙信の間に割り込んで謙信の斬撃を防ぐ。サチコの力が無ければ、恐らく戦姫とアルカネーゼ合わせて十合も持たずに謙信に倒されていただろう。

 また、戦姫とアルカネーゼがいるからサチコ一人に謙信の攻撃を集中されずに済んでいるのだ。絶妙なバランスの上に成り立っている攻防だが、それは容易く崩れた。

 謙信が攻撃をサチコに防がれること前提で放った。ただでさえ重い斬撃はサチコの軽い体を宙に浮かせ、体のバランスを崩させた。

「きゃあっ!」

 サチコは足をもつれさせて体勢が崩れた。謙信は狙って作り出した隙を見逃すはずも無く、サチコとの間合いを詰める。

「…………っ!!」

 戦姫もアルカネーゼもその踏み込みの速さについていく余裕はない。当然だ。謙信はそうなるように戦いを長引かせ、彼女達を疲労させたのだから。

 謙信の一振りをろくに構えずに受けた盾のひろし君はあっさりとサチコの手を離れ、持ち主に無防備な姿を晒させた。

 そのまま謙信は素早く振りかぶって袈裟切りに振り下ろした。

「……あ」

 サチコは掲げられた刀を見て自身の死を確信した。謙信の刃は簡単にサチコの体を両断するだろう、と。

 サチコが目を閉じて自分の死の訪れを待つと、肉を切られる感触の代わりに目前で激しく金属が弾きあう音を聞いた。

「コラーーーーーーーーーーーー!!!」

 直後、周囲には聞きなれた怒鳴り声が響いた。

 サチコは目を開けると、呆然とした顔で声の主を見つめる謙信が目の前に居た。そして、サチコも謙信の視線を追うとそこには彼女が必死で救おうとした男、もう何度も彼女の命を救ってくれたランスが、こちらに向かって猛然と走ってきた。

 謙信は素早くその場から飛びのき、少し離れたところに刺さっている彼女の刀を抜いた。

「今本気で殺そうとしてたな!? 俺の女同士で喧嘩するな!!」

 ランスはサチコのすぐ横に刺さったカオスを引き抜きながら謙信に向かってそう言った。

 ランスは信じがたいことに、振り下ろされる謙信の刀にカオスを投げつけてその刃を弾いたのだった。

「ランス……敵……!」

 謙信はそうつぶやいて眉間に皺を寄せた。それは今まで見たことのない彼女の表情だった。

「ちっ、どうやら本当に俺のことが分からんようだな。お前ら、手を出すなよ。俺と謙信ちゃんの一騎打ちだ」

 周りの者達を下がらせてランスが構えると、謙信がすぐに走ってくる。

 一合。刀とカオスが激しく交わる。

 謙信はランスの腕力に逆らわず、その衝撃を逃すようにくるりと回る。ランスはそれに釣られて少し体が泳ぐが、強引に踏み出した足ですぐに体勢を立て直した。

 二合。回転の力も加えさらに重くなった謙信の刀とそれを上回るランスの剛剣が噛み合った。

「ふん!!」

 今度は衝撃を回転して逃せないように、謙信の重心ごと鍔迫り合いながら大きく押しのける。軽い謙信の体は少し浮きながら強制的にランスとの間合いを取らされる形となった。

「がはははははは! 前はくるくる回られて面倒だったから、今度は調子に乗らせんぞ!」

「いいぞいいぞ! 今度は心の友も負けてない!」

 大笑いするランスをカオスも絶賛する。一方謙信は少し顔をゆがめて右手を頭に添えていた。

「……今、度……?」

「そうだ。俺様と謙信ちゃんは前にJAPANで一回戦ったのだ。あの時は誰かにコサックさせられたせいで俺様が負けちまったがな」

「だからあんたが勝手にやったんじゃろ」

 謙信はランスの言葉を振り切るように駆け、再びランスに斬りかかる。

 謙信の刀はランスに襲い掛かるが、振り下ろされたそれをランスは紙一重に捌いて、今度は謙信の体を大きく泳がせた。

「いつまでも俺がいいようにやられると思うなよ!」

 ランスはがら空きの謙信の襟を右手で掴むと大きく持ち上げて、地面に叩き付けた。

「ぐっ!!」

 謙信の刀を足で踏みつけることで押さえつけ、完全に謙信の動きを制した。

「がはははははは! あの時とは反対の体勢になったな!」

 ランスの言うあの時とは、謙信とランスが初めて刃を交えたときだった。その時はランスが負けて地面に倒れこむことになったが、今度は謙信を押さえつける形になった。

「いいか謙信ちゃん。忘れてるようだから教えてやるが、君は俺様にべた惚れだったのだ」

「惚れ……」

 謙信は苦悶に顔をしかめた。なにか内から湧き上がる痛みを堪えるような表情だ。

「わ、私は……」

「俺に惚れまくってて最初は罠かと怪しんだが、よくよく考えればこの大英雄のランス様に惚れないほうがおかしいのだ。だが、あのキザ野郎のケッセルリンクになんかされて記憶を操られちまったんだな」

「…………」

「俺の女があんな奴に屈するなんて情けない。この戦いが終わったらオシオキだ」

「…………!」

 その時、謙信の瞳から大粒の涙がぼろぼろと零れた。彼女は何故そんなに涙が溢れる不思議で何度も拭うが、一向に治まる気配が無い。

 瞬く間にぬれた自身の手を見、涙で手袋にできた染みが目に入ったとき、謙信の脳裏に一つの光景が浮かび上がった。

 いつもの如く戦場を単騎で駆け抜けていたとき、織田の敵将、噂の異人と遭遇した。確かに強かったが、この軍神には敵わずにすぐ勝敗は決した。この男を殺せば戦が終わる。戦いをお互い最小限の被害で終わらせるはずだったその剣は振り下ろされることは無かった。

 その男の顔を見て、強い意思の篭った瞳を見て、野生的な鋭い牙を見て、謙信の心臓はそれまで生きてきた中で最も高鳴った。

 殺すという考えはすぐに消えうせ、その男に馬乗りになった自分の姿にいたたまれなくなって逃げ出した。

「……思い、出した……」

 初めて芽生えた恋慕の情、囚われていたぶられるところだった自分を救ってくれた恩、初めて抱かれたときの幸福感。湧き上がろうとして彼女の頭に痛みをもたらしたのも、不意に零れた涙のわけも、全て彼女の記憶の仕業だったのだ。

「そうか。ようやく思い出したか」

 そう言った男はいつものように大笑いせず、どこか安心したように口角を上げた。

「私は、あなたのことが、心から好きだ……」

 だから、この涙はこんなに熱いのだ。

「おう、知ってる」

 ランスは謙信に手を差し伸べて、立つように促す。

「私は、あなたの傍に居てもいいのだろうか……?」

 謙信はランスの手を取った。

「当然だ。謙信ちゃんは俺の女だからな。嫌だと言っても俺の傍に居るのだ」

 ランスは謙信の手を引いた。

「……はい。私は、あなたの傍にいよう」

 謙信はランスに並び立つ。直後、周囲のJAPAN兵士達が一斉に咆哮を上げた。

「軍神様が帰ってきたぞーーーーーーー!!!」

「我らの味方に戻って下さったーーーーーーーーー!!!」

 兵士達の指揮は目に見えて高くなっていく。立て直すことは無理だと思われていた情況は、その吉報の後押しを受けて徐々に好転の兆しを見せ始める。

「がはははは、さすが俺の女。周りも活気づいてるぞ」

 ランスはあたりを見渡した後、謙信に向き直った。

「さて、ケッセルリンクの野郎を叩き潰す。謙信ちゃんも来るんだ」

「……はい!」

 そう答える謙信の瞳はそれまでの虚ろなものではなく、確かな意思の篭ったものになっていた。

 

「ひどく迷惑をかけたようだ。すまない」

 謙信はJAPAN軍の陣営に入ると香と直江愛に向かってそう言った。

「いえ、無事に戻れたのならそれでいいんです」

 と、言うのは香だ。

「その通りです。勝子も重症を負いましたが、一命は取り留めましたし、なにより謙信様は魔人の手により操られていたのですから、気に病むことはありません」

 愛もそう言って謙信を慰めた。

「ありがたい…… 勝子は折を見て見舞おう」

「謙信ちゃんのことはもういいだろう。で、ケッセルリンクのとこ行くのはどうなったんだ?」

 ランスが面倒臭そうに聞いたとき、丁度その場にパットンとリックが現れた。

「おお、本当に復活したんだな! 良かったぜ!」

 ランスの様子を一目見てパットンは大いに喜んでいた。

「当たり前だ。で、どうなんだ香ちゃん」

 ランスは早くケッセルリンクに怒りをぶつけたいのか、急かすように香にことの進捗を再び尋ねた。

「はい、現在ケッセルリンクはヘルマン軍の担当する場所に居ます。あちらの戦力的にもそこが本命らしく、敵軍の質が高いです。JAPANの武士隊だけでは突破は困難ということで、ヘルマン、リーザス軍にも協力していただくことになりました」

「そういうことだ」

「我々も力を尽くします」

 香は現状の説明と作戦を説明していく。

「敵軍突破後、兄様はケッセルリンクと交戦。これを必ず撃破していただく必要があります。再び敗れるようなことがあれば私達に今の戦況を覆すだけの力はもうありません」

「ふん、任せておけ。前のは不意を突かれたんだ。ちゃんとやれば俺は負けん」

 ランスの答えと共に一同は微笑む。

「頼むぜ、この一戦にこれからの戦いの行く末がかかってるんだ」

「誰に向かって物を言っている。楽勝に決まってるだろ」

「はは、そうだな。信じてるぜ、隊長」

 パットンは相変わらず頼もしいランスの様子に思わず笑った。

「行きましょう。もう私達に残された時間はかなり少ないです」

 リックがそう促し、ランス達は歩き出す。

「じゃあ、ちゃっちゃとヘルマンを取り返すか」

 

 魔軍との前線から少し下がったところに突入部隊に選ばれた精鋭達が集まっていた。到着したランス達の中からパットンが一歩前へ出て兵士達に激を飛ばす。

「みんな、よく集まってくれた。決戦の前だ、堅苦しい話はしたくないが、言っとかなきゃならんことがある。いいか、お前らの仕事は俺達をケッセルリンクの前まで連れて行くことだ! それ以上はしなくていい! これはいちかばちかの玉砕じゃねえ! こっちは大英雄のランス様とJAPANの軍神様が復活した! ケッセルリンクと戦えば絶対に勝てる! だから頼む、俺達を奴のところに行かせることを最後の仕事だと思って全力で戦ってくれ! 勝ったらまたみんなで上手い酒を飲もうぜ!!」

 パットンの激励にその場に集った者たちは大いに湧いていた。

「ずるいぞお前! 俺様にもなんか言わせろ!」

 ランスもずかずかと前に出てパットンに負けじと声を張る。

「いいか雑魚共! お前ら下っ端兵士じゃ束になってもケッセルリンクの野郎にゃかすり傷もつけられん! だがこのランス様は違う! 前はちょいと油断したが、俺様は二度とあんなことにはならん! 俺様が本気になればあんな奴ちょちょいとやっつけてやる! 大船に乗った気分でいろ! がははははははは!」

 ランスの大口に兵士達は黙り込んでしまう。こんな人間に任せて大丈夫なのかと、そんな空気すら漂う。その様子を見てパットンは小さく笑ってランスの後にしゃべる。

「こんな奴だが、こいつはただのホラ吹きとは違う! 全部本当にできるくらい強いんだぜ!? 間違いなく大船さ!!」

 パットンのフォローに場の空気も持ち直し、ランスはカオスを抜いて天に掲げる。

「行くぞお前ら! これでかったるかった戦いを終わらせてやるぜ!!!」

 おう、と兵士達は大声で答え、その答えに満足したようにランスは笑って戦場へ向かった。

 

 突入部隊の先頭はリックとヒューバートの率いる部隊だ。強力な個人戦闘能力を持つ二人の部隊はリーザス、JAPAN、ヘルマンの連合軍の中でも最高峰のものだった。

「俺に続け! ヘルマンはヘルマン人の手で守るんだ!! 他所からの助っ人にばっか頼ってるんじゃねえぞ!!」

「魔物相手にも我々の力は通用する! 今までの戦いを無駄にするな! ここが正念場だ!」

 勇ましく戦う二人に鼓舞されその部下の士気も高揚する。その熱は後方のJAPAN軍やランス達にまでも伝播していた。

「がははは! いいぞ、楽チンだ!」

 魔軍を切り裂く形で突進していく部隊の中、ランス達は力を温存して進んでいく。

「謙信さん、ケッセルリンクとはちゃんと戦えそう?」

 マリアがそう聞いたのは、呪いの影響を受けていないか確認するためだ。

「問題ない。……ケッセルリンクは私を無理矢理使徒にすることもできたはずだが、そうはしなかった。呪いか、催眠術かは分からないが、私の記憶を封じて命令に従うよう仕向けただけだった……」

 謙信は深く考え込むようにしてそう言った。ケッセルリンクがローゼスグラード侵攻にすぐ取り掛かれなかったのは、謙信の洗脳に時間をかけたためだ。洗脳後の精神状態なら使徒にすることも可能だったはずだが、そうはしなかったのだ。

「おねーちゃんには呪いかけられてなかったよ?」

 マリアと謙信の話を聞いてリセットもそれに参加してきた。

「そ、そうなの?」

「うん。特別な能力がなきゃ呪いは自力じゃ解けないんだよ」

 そう言われて思い返してみれば、ランスの禁欲モルルンも拘束モルルンもどれだけ本人が抗おうとも自力で解呪はできなかった。マリアは一つの考えに至る。

「ケッセルリンクは謙信さんを本気で縛るつもりがなかったの……?」

 フェミニストという一言で済ませていいのか疑問が、いずれにせよマリアにとってケッセルリンクを殺しづらくなる理由が一つ増えた。ただでさえカラーの保護を宣言しているだけあり、戦いづらい相手なのにさらに引け目を感じさせる結論だ。

「関係なーーーい!」

 一行の先頭でランスが叫んだ。どうやらマリア達の話を聞いていたらしい。

「奴は俺様に歯向かい、俺の女に手を出した。これだけでもう殺すには十分だ!!」

 ランスの瞳に迷いはない。ただケッセルリンクへの怒りに燃えていた。

「そろそろ着きそうらしい! ぼちぼち喋んのをやめたほうがいい!」

 パットンがそう呼びかけたとおり、ケッセルリンクがいると思われる場所はすぐ近くのようだった。

 ケッセルリンクを発見した場合、突入部隊はそれを包囲するように展開し、ランス達が集中して戦いに臨めるように動く手はずだ。

「……! まずいっ!! みんな散って!!!」

 志津香が突如血相を変えてそう叫び、それのおかげでランス達は何かの接近に気付いてそれを回避する。

 それはいつぞやの志津香が放ったのと同じように、敵の集団を突き抜けて目標ごと大量の敵を殺す最強クラスの魔法だった。しかし、それは志津香の白色破壊光線ではなく、何者かによる黒色破壊光線だった。ランス達は致命的な被害を受けずに済んだものの、一般の兵士達は甚大な被害を被ったようで、黒色破壊光線の術者とランス達の間には道のようにぽっかりと人の消えた隙間ができていた。

「……ナギ……!」

 術者はナギ・ス・ラガール。志津香の胤違いの妹だ。

「待っていたぞ、魔想の娘。決着をつけてやる……!」

 ナギはむき出しの殺気を志津香にぶつけていた。

 その横にはランスが憎んでいた男が立っている。

「本当に復活したのか、ランス。本当に悪運の強い男だ」

 ケッセルリンクは表情一つ変えずにそう呟いた。

「よくも俺様の女にちょっかい出してくれたな。今度はきっちり殺してやる」

 ランスは腰のカオスを抜きながらそう言った。

「よっしゃリベンジだ、心の友! 儂も頑張るぞい!」

「おう、手抜くなよ! 行くぞ!!」

 ランスはケッセルリンクとの間にできた道を真っ直ぐ駆けた。

「全軍! 作戦通り魔人を囲め!」

 ランスの動きに反応してリックが周りに指示を飛ばす。ナギの魔法で崩れた陣形を建て直し、できる限りランス達の戦いに邪魔が入らないようにしなければならない。

 徐々に部隊も機能を取り戻し、その形を整えていく。とはいえ、リックは先頭を離れるわけにはいかず、ケッセルリンクとの戦いに参加できそうになかった。

「ケッセルリンク様の下へは行かせない!!」

 駆けるランスを邪魔するようにケッセルリンクの部下のラバーズが続々と押し寄せてきた。突入部隊がその機能を完全には取り戻していない以上、ランス達への妨害はなくならない。

「ちっ! 邪魔だ、どけええええええ!!」

 ランスがカオスを振り回してラバーズをなぎ倒していきながらずんずんと進む。人類で最高峰の戦力は魔軍の精鋭でも妨害は容易ではなかったが、ケッセルリンクまで後50メートル程のところで正面の敵が不自然に散開した。

「!! またよ、避けて!!!」

 再びナギによる黒色破壊光線の攻撃が行われた。ランス達は志津香の言葉通りに回避行動をとり、体勢を立て直したときには既に敵が先ほどの破壊光線の射線上を埋め尽くしていた。

「くそっ、面倒くさい!」

「魔法攻撃の気配は私が察知する! みんなは私の言葉に従って!」

 ランスの悪態に反応したわけではないのだろうが、志津香が攻撃の探知を引き受ける。

 そのおかげでランス達は攻撃に専念でき、時折襲い掛かる遠距離攻撃にも大して気を散らされることなく対応できるようになった。

 しかし、ケッセルリンクに近づくにつれ、敵の質と密度が高くなる。包囲するはずだった味方達は敵の必死の抵抗にあって思うように包囲網を敷けずにいた。

 ランス達も段々と進行が遅くなっていた。

「ああ、鬱陶しい!! いっそのことランスアタックで一気に吹き飛ばすか……!」

「待ってランス! ケッセルリンクと戦うまで体力は温存しとかなきゃ!」

 憤るランスをマリアがなだめる。

「こう数が多くちゃ余計に疲れるぞ!!」

「……ランス、突入メンバーを決めて。残りのメンバーで何とかランスが入る隙を作って、ケッセルリンクと戦ってる間もランス達に邪魔が入らないように守るから」

 かなみがそうランスに提案すると、マリアがそれに続ける。

「私もそれに賛成! そうするんなら謙信さんとサチコちゃん、志津香にカフェさんは絶対連れて行って! 戦力のバランスを考えてもそうしたほうがいい!」

 抜群の戦闘力の謙信にランスとの逃避行を共にして膨大なレベルを持つに至ったサチコ、唯一の回復役のカフェと高い魔法攻撃力の志津香。それは確かに魔人妥当の為に必要な戦力だ。

「……よし、今マリアが言ったやつは俺について来い! 他の奴らは俺達の通る道を作れ!」

 ランスが指示を出すと全員それに従って動く。中には止むを得ずといった表情の者もいたが、それでも共通の目的の為に結束した。

「みんな! 敵の足を止めて!!」

 先頭を行ったのはミルだ。大量の幻獣を召喚し、ラバーズ達の動きを封じる。

「これで仕留める! 火丼の術!!」

「行きます! 業火炎破!」

 かなみとランは攻撃力は低いものの、範囲の広い攻撃で確実に敵を弱らせる。

「おとーさん、勝ってね!」

「リセット、集中するんだ。敵も手練だ」

「うん!」

「あてなもばんばん撃つれすよー ばんばん」

 リセットとイージス、あてなの三人が敵を狙い打って数を減らす。

「チューリップは世界一なんだから!」

「魔人と戦う機会はひとまず譲ろう。次は私も参加する。だから勝ってくれよ?」

「アニキ! ザコはアタイらに任せなーー!!」

 マリアが三式弾を放って敵の防御を薄くするとそれを見逃さずにすかさず戦姫の槍とアルカネーゼの戦槌で強引に道をこじ開ける。

「今よ! ランス!!」

「よっしゃああああああああ!!」

 かなみの呼びかけにランスは応え、作られた道を一気に駆けた。敵の群れを抜けたその先には待ち望んだ敵の姿があった。

「がはははははははは! 来てやったぜ、ケッセルリンク!!」

「その下品な笑いもここでおしまいだ」

 ケッセルリンクとランスは向かい合い、遂にその戦いが幕を開けた。




 はい以上12話でしたー。
 週一に戻す宣言した直後にいきなり一日遅れかよ…… 自分でもあきれてます。
 本当は謙信どうにかしたら12話終わろうと思ってたんですが、大スランプに陥り地の文とかもう自分でもなに書いてるのか良くわからなくなり、目標のとこまでなんとか書き上げるも、ただでさえキリが悪いのに文字数があんまりにも少なく、そのまま続行。結果一日遅れと相成りました。申し訳ないです。
 こんだけ苦しんで出来がこれだとさらにきついものがあります。いや、ほとんど読み返してませんが……
 ともかく次回でヘルマン編を終わらせたい…… 何とかいい形で……
 そしたら新章突入です。短いけどランス君にとって大事なお話になるでしょう。



 以下、解説。

 コサック
 ワルツのようにくるくる回る謙信の攻撃に対抗してランスが当時編み出した新必殺技、ランスコサック。直後馬乗りになられてランスは負けた。

 禁欲モルルン
 ランスクエストに登場。ランスがパステルにかけられた呪いで、その効果はレベル35以上の女相手でなければセックスできなくなり、しばらくセックスしないとホモになるというもの。ランスはセックスできない絶望で一回自殺しかけた。

 ランスアタックで一気に吹き飛ばす
 ランスアタックは登場のたびにその形態を少し変えています。6以前のは敵単体にしか効きませんでしたが、戦国ではなんと100人くらいは余裕で吹き飛ばせるくらいの威力になっています。しかもただ単に思い切り斬りつけてるようなタイプと地面が爆発しているタイプと某烈風拳のように衝撃が地面を伝わるようなタイプの3種類存在しています。反逆の鬼畜戦士では爆発タイプでしたが、大規模戦闘と個人戦で技の種類が変わってることにしてください。大規模戦闘では烈風拳、個人戦では爆発タイプを使ってます。範囲は前者が広く、後者が威力に優れます。鬼畜アタックも同じようにタイプが切り替わってます。だからBSさんが生きてたんですね。多分。

 三式弾
 ランス6に登場。いわゆる散弾。だったはず。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。