第14話 賢者
「そんな訳でパットン、俺様についてカラーの村まで来い」
「一体どんなわけなんだ……」
ランスが復興で大忙しのパットンの元を訪れての第一声だった。
ランスがパステルをシィルの元へ連れて行くには、当然ヘルマンを通る必要がある。しかし、パステルは情勢が安定するまでペンシルカウを離れることは難しい。なにせいまや結界は存在していないため、ペンシルカウを防衛するのはわずかな戦力の防衛隊と女王の呪いのみとなっているのだ。そんな中、女王がそう易々と里を離れるわけにはいかなかった。
それを解消するために、新たに王となったパットンをカラーの里に連れて行き、ヘルマンがカラーに害を与えないことを約束させるのがランスのとった策だ。
「ふむ、事情はわかった。まあ、カラーには個人的にも世話になってるし、新しいヘルマンの施策として悪くない。けど、いかんせん今は忙しい。ランス、もうちょっと復興の目処がついてからにしてくれないか?」
パットンとしてもランスの希望に沿うのは吝かではないものの、国としては課題が山積みであり、王であるパットンは文字通り寝る暇もなく仕事に追われていた。今でそんな状態なのに、余分な予定を加える暇なんてあるはずもない。
「だめだ。そもそも、一体誰のおかげで復興の目処なんてのんきな事言える情勢になったのだ? もっと英雄を敬わんか」
パットンの願いはランスによってあっさりと切って捨てられた。その上、断りずらい口上まで追加されてしまう。
ランスには高い報奨金を支払ったものの、国としての恩義は金銭で賄えるほど軽いものではない。恩に着せられてしまえばパットンに断る術はない。
「はぁ、仕方ない。わかったよ。時間がないからさっさと済まそう」
「がはははは、最初から素直にそう言っておけばよかったのだ」
こうしてランス一行はパットンを連れてカラーの森へと向かう。
「……ふむ、そなたが新たなヘルマン王となったパットン・ヘルマンか。なんじゃ? これまでのヘルマンが行ってきた無礼の数々を謝罪でもしに来たのか?」
ペンシルカウに到着したパットンをパステルは刺々しい態度で迎えた。
「まあ、それもある。他にもヘルマンが国として今後カラーに一切危害を加えないことを約束しに来た」
パットンはパステルの態度にも一切気を立てず、それどころか相手を鎮めるような雰囲気で話を切り出す。パステルにとってそれは少し意外だったのか、若干気後れをしていた。
「ふ、ふん、口ではなんとでも言えよう。しかし、ただでさえ富の少ないヘルマンではカラーの額はひどく魅力的であろう? 到底信じられぬわ」
カラーの額に輝くクリスタルは人間の魔力を飛躍的に高める効果があり、莫大な金銭的価値がある。国に余裕のないヘルマンにとっては非常に貴重な資源と言える。
「まあ、実際今俺も正式な手続きを踏んでここに訪問したわけじゃないし、あんまり信じられないのも仕方ない。だが……」
訝しむパステルにパットンはボリボリと頭を掻きながら続ける。
「俺は黒髪のカラーに育てられたもんでな。カラーに対してはクリスタルなんかより大事なもんを感じてるよ」
「黒髪のカラー、じゃと?」
パステルはパットンの言葉を反芻し、吟味するように少し黙る。
「……そうじゃったか。ヘルマン王パットンよ、お主はカラーに対して危害を加えることはせんと、そう申すのじゃな」
「ああ。後日正式な会談を踏まえて詳細を決めたいと思ってる」
「……そしてお主はわらわにあの男に付いて行け、とも申すのじゃな」
パステルは近くのカラー達にちょっかいを出しているランスを指差してそう言った。その顔はひどく嫌そうである。
「んー、まあうちの国の恩人だし、そうしてくれるとありがたいが、そこはあんたの意思に任せる」
「……なら行かん」
「ほーーーーう?」
ボソリとパステルが呟くとどこからともなくランスが現れ、嫌な笑みを浮かべてパステルににじり寄った。
「カラーの女王様は、昔俺様に里を救われた恩も忘れてそんな事をいうのか? 野蛮なヘルマンの王様ですら恩に殉じてこうして忙しい中、足を運んでいるのに? へえええええ、そうかそうか」
「ぐっ……」
ランスはパステルの気にしていることをぐさぐさと刺激した。
「リセット、どう思う」
「ママ、かっこ悪いよ」
「ううっ!!」
ランスの促したリセットの一言が止めになる。
「……行く。もうどこへでも行ってやる。好きにせい」
パステルは折れた。
カラーの里からパステルを連れたランス一行は、ラング・バウで待つ香やリックといったランスについて来た者達のところへ戻ってきた。
「香ちゃん、シィルの解呪の目処がついた。さっさとこんな寒いところはおさらばしてランス城に帰るぞ」
ランスはAL教を退けた後、コパンドンに連絡してランス城の復旧とシィルの運搬をさせていた。
「えっ、ヘルマンはどうするんですか?」
「もう魔人は追っ払ったし、どうでもいいだろう。ここは寒いからいい加減飽きた」
ランスは顔をしかめている。寒いのは苦手な上、色々大変な思いをしただけに、あまり長居もしたくないようだ。
「けど、まだ魔人の脅威がありますし、国も復興途中で防衛力も万全じゃありません。もう少し私達が留まったほうがいいと思うのですが……」
「そんなの、ここの奴ら自身の問題だ。俺様は関係ない」
ランスは自分の責任は自分で負うべきであるという考えであり、自分の興味のないことに対しては徹底的にドライだった。
「……で、ですが」
弱まった防衛力を好機と見て再度魔人の侵攻を許すことを懸念して、香は表情を曇らせる。
「まあまあ、ランス、別に軍は置いていってもよくないでござるか? 自由都市地帯まで軍と一緒にだらだら移動すると時間も余計なお金もかかるでござるし」
困る香に助け舟を出したのは例の如く鈴女だった。場の空気に敏感な彼女はいつもランスのブレーキとして活躍している。
「む、まあ、それもそうか…… 香ちゃんもここにいていいのか?」
「はい。むしろ魔人に攻められてまた遠征するほうが面倒ですし……」
香はランスの言葉に苦笑いで返す。
「ランスさん、すみませんが僕はゼスに向かいたいのですが……」
話がまとまりかけたところで割って入ったのはリックだ。ゼスにはリーザスの仲間達がいるので、その助力に向かいたいのだろう。
「別にいいぞ」
ランスは特に興味なさそうにそう答える。彼自身はヘルマンに軍を残すことに執着もない。
「じゃ、ちょっとシィルのアホを氷から出してくる。俺様がゼスの魔人を片付けるときには一緒に来るんだぞ、香ちゃん」
そうしてヘルマンでの問題を片付け、ランスはヘルマンを出た。
「おお、ちゃんと元通りだな。がはははははは、グッドだコパンドン」
「せやろ? ランスに言われてからいつランスが帰ってきてもええように大急ぎで作らせとったからな」
「ちょっとはマシなセンスで作り直しちゃえばよかったのに……」
ランスは修繕された自分の城を眺め嬉しそうに笑った。暴徒が雪崩れ込み火を放たれて廃墟と化していた城だったが、コパンドンと彼女の呼び戻したメイド軍団によって前以上に輝く城となっていた。
志津香は相変わらず見るだけで疲れるその城を眺めてボソリと悪態をつく。
「お帰りなさいませ、御主人様」
ランスを出迎えたのはランス城のメイド長、ビスケッタ・ベルンズだ。いつから主人の帰りを待っていたのか、メイド一同で以前のランス城放棄前と変わらずランスの帰還を迎える。
「うむ。帰ったぞビスケッタさん。久しぶりだな」
「はい。我々もこうして御主人様を再びこうして出迎える日を心待ちにしておりました」
ビスケッタは慣れない者なら見逃してしまいそうなほど微かな笑みをランスに見せる。彼女自身、一年半前のランス城放棄は自分の力不足を含めて大きな後悔だったのだ。
「がうーーー!!」
メイド達との再会を済ませたランスに飛び掛る一つの影があった。以前野生化していたのをランスが持ち帰った少女だ。通称キバ子である。
「おお、キバ子! こんな所にいたのか!」
「うっ」
キバ子はぐりぐりとランスに頭をこすりつけている。
「いや、元の森に帰っとったで。ランスが帰ってくるゆうから呼び戻してん」
そう言ったのはコパンドンだ。ヘルマンからランスの帰還を聞いていたコパンドンは、予めキバ子を呼び戻していたのだ。
「そうか、でかしたぞ、コパンンドン」
「うん! もっと褒めて!」
「よし、シィルはもう来てるな?」
「はい、以前と変わらない場所で安置されています」
ひとしきりキバ子を撫でると、ランスはシィルの部屋へと向かう。
「そうか、いくぞパステル」
「……わかった」
パステルはずんずん進むランスの後を付いていく。その後ろにはランスのパーティーも同じく帯同する。
ランスには嫌悪感を抱くものも、シィルに対しては悪い感情を抱くものは殆どいない。邪悪な男に誰より長く付き従いながらも、誰より清くあれる彼女を疎ましく思う者は稀有なのだ。
「ようやくこの鬱陶しい氷から出してやれるな。やれ、パステル」
「……これがシィル、か」
パステルは話に聞いていたシィルの姿を初めて見て少し驚きを覚えているようだった。悪魔のような男が異様に執着する呪われた女、という話を聞きながら小憎らしい生意気そうな女を想像していたが、氷の中に閉じ込められたきり身じろぎ一つしないその美しさには一瞬心を奪われた。
ランスという男が鬼畜であることは疑いようのない事実だが、ある種の真摯さがあることを表層心理では否定しながらも、心の奥底では認めるパステルだった。
「……始めよう。はぁっ……!」
パステルが手をかざすとシィルを覆う氷がみるみるうちに解けていく。
「おお! いいぞ、その調子だ!」
「……ぬぅっ!?」
しかし、パステルが顔をしかめると氷の解けるペースが遅くなっていき、やがて止まるとすぐに元の大きさまで戻ってしまった。
「おい!? 失敗してるじゃないか! しっかりしろ!」
「やっておるわ! やっておるんじゃが……!」
パステルは引き続き解呪を試みるも、また同じことが起こって失敗となる。
「……おい、何やってるんだ。早く氷を溶かせ、パステル」
ランスの言葉にパステルは少し黙った後、顔をしかめながら答えた。
「……無理じゃ。これはわらわには溶かせん」
パステルの返答にランスの表情が固まる。
「なんだと? お前はカラーの女王だろう? 呪いのスペシャリストじゃないのか」
「それは間違いなくそうじゃ。わらわ以上呪いに精通するものは地上にはいないといっていいはずじゃ」
「なら、はやくやれ!!」
ランスの怒声に余裕はなく、真剣にパステルを責め立てる。
「……この呪いは異常じゃ。誰がかけたものなのじゃ?」
「美樹ちゃんだ」
「現在の魔王です」
ランスの発言にマリアが付け加える。
「……そうか。このレベルの呪いなら納得じゃ」
「……おい、勝手に納得するな。どういうことか説明しろ」
パステルは眉間を押さえて気が進まないといった風に説明を始める。
「……魔王はわらわ達とは別次元の生き物じゃ。その存在は魔人が可愛く見えるほど強大であり、並び立つ存在は神くらいなもんじゃろう」
「ふん、魔王なんぞ大したことなかったぞ」
ランスは過去に二人の魔王と会ったことがあり、内一人とは戦いもした。
「ならその魔王は出来損ないか、やる気がないかのどっちかだったんじゃろう。話には聞いていたが、その氷を見て実感した。魔王は格が違う。少なくともわらわでは全く出力が足りん。それを溶かすのは不可能じゃ」
「…………」
パステルの説明を聞いたランスは、黙り込んで氷の中のシィルを見据える。
「……ふざけるな」
ランスは突然腰のカオスを抜き、氷に叩きつける。
「ふざけるな!! お前は奴隷の分際でどれだけ俺様に迷惑をかけるつもりだ!! 一体何年そうやってサボっている!! いい加減に出て来い!!!! お前は俺の奴隷なんだぞ!! 俺のものだ!! そんなところで休む権利なぞない!! そっから出て俺の為に働け!!」
怒りをカオスに乗せひたすら氷に斬りつける。多少の傷はできてもすぐに元に戻り、それをまたランスが傷つける。
しばらくそんな事を繰り返すランスに声をかけられるものは誰もいない。どんな言葉も今のランスを癒すことはできないだろう。
しばらくカオスを振るい続けるうちにランスの呼吸は乱れ、動きは雑になっていく。最後に大きく振りかぶって一際強く氷に斬りつけると、そのまま動かなくなる。
「はあ…… はあ…… はあ……」
部屋にはランスの乱れた呼吸だけが響き、重苦しい空気に場が支配されていたときだった。
「あの……」
そう言ってランスに話しかけたのはカフェだった。恐る恐るといった様子でランスに言葉を投げかけていく。
「ランス君はその氷を溶かす方法を探してるんだよね?」
「…………? そうだ」
カフェの問いにランスは俯いていた顔を上げ、不思議そうに答える。
「それ、ひょっとしたら何とかなるかもしれないよ」
「!! 本当か」
体ごとカフェに向き直ったランスは続きを促す。
「どうやるんだ!!」
「わ、私は知らないんだけど、やり方を知っている人を知ってるの」
「……なんだと?」
「私とカオスの古い知り合いなんだけどね……」
カフェの言葉にカオスが反応する。
「あ、あいつのことを教える気か!?」
「うん。……昔、私達と一緒に神の前に立って、この世の全ての知識を求めた人なの」
「全ての知識だと……?」
全ての知識が一体どれだけのものを指すのか、ランスには上手く想像できなかったが、なんとなくとてつもない量の情報を持っているのは分かった。
「名前はホ・ラガっていうの。今は世の中のことに興味を失っちゃってヘルマンの北の果てに住んでるんだけど、すごくたくさんのことを知ってて、ひょっとしたら力になってくれるかもしれない……かな」
カフェは段々と歯切れが悪くなるが、最後までランスに情報を伝えた。
「なんだかはっきりしないな。まあ、嫌がったら無理矢理言うこと聞かせばいいか」
「あー、なんだ、心の友、ホ・ラガのことなんだがな」
カフェの態度に疑問を抱くランスに、カオスが話しかける。
「なんだ? そういやお前も知ってるんだな」
「ああ、そうだ、あー、言い難い事なんだけど……」
カオスはあまり話したがらない。
「なんだ、気になるから早く言え」
「……おう、その、ホ・ラガはホモだ。ゲイだ」
「……は?」
ランスはカオスの言葉の意味が分からず思わず聞き返す。
「だから、ゲイなんだ。男が好きなの! 多分、心の友とかストライクゾーン入ってる」
「…………」
カオスの発言の意味が上手く理解できず、ランスは数秒黙り込む。
「はあああああああああああああああああああああああああああ!?」
ようやく思考が追いついたとき、絶叫を上げる。
「ほんとのほんとにか!? 殺したら女で生き返ったりしないのか!?」
「しないしない。だよな、カフェ?」
「うん…… 私この間会いに行ったけど、見た目老けてたのに相変わらずだったもん」
「そんな、馬鹿な…… ホモは嫌だ、ホモは嫌だ、ホモは嫌だ、ホモは嫌だ……」
ランスはショックのあまりぶつぶつと自分の世界へ入り込んでしまう。
「とは言ってもな、戦時下でのんびり他の方法を探すのはちょい難しいぞ」
「ぐう……」
カオスの言う通り、今の情勢ではおちおち迷宮に潜り込んで秘密のアイテムを探しに行くなんてことも難しい。
「いっそのことホ・ラガさんの好きにされたら? 今まであんたに好きにされてきた女の子気持ちが少しは分かるんじゃない?」
「やかましい!! お前は黙ってろ志津香!」
志津香の軽口に冗談じゃないほどランスは激昂する。ランスはホモとブスより恐ろしいものはないと本気で思ってるほどホモが嫌いなのだ。
「どうするよ? リスクはでかいけどなんとかなる可能性はかなり高いぞ?」
「うう………… くそっ、行く! 行ってやる! ただし、そいつが役に立たなかったら即殺す!」
「おー好きにしろ。儂も別に構わん」
「ちょっとカオス…… ランス君も喧嘩腰になっちゃだめだよ」
ランスが覚悟を決める横でパステルがさりげなく提案する。
「わらわはもう帰るぞ。一応ヘルマン王との話があるかもしれんからな」
「ああ、好きにしろ」
ランスも既にホ・ラガに目標を定めたため、あまり気にしていない。
「リセット、イージス、帰るぞ」
「うん。おとうさん、またねー」
「達者でな」
「おう」
こうしてカラー一行はランス城を後にした。
「そのホモはヘルマンの北の果てにいるんだったな、カフェちゃん?」
「うん。かなり寒いとこだったよ」
「またあそこに行くのか…… 寒いからもうあんまり行きたくないのに……」
ランスはヘルマンの寒さを思いだし、身震いをした。
「ビスケッタさん、コパンドン。俺はまたヘルマンに行く。城の事は任せたぞ」
「かしこまりました」
「任せとき! もうここを誰かの好きにはさせへんから!」
こうしてランス達は再びヘルマンへと向かう。
目的の塔はヘルマンのシベリアから北に行ったところにある。猛吹雪の中、ランス一行はその道を進む。
「さ、寒い!! 寒すぎるぞ!!」
事前に聞かされていたのでそれなりの準備をしてきたつもりであったが、それにしても寒い。それまでのヘルマンの町が温暖な気候に思えるほど寒かった。
吹き荒れる吹雪は一メートル先の視界をふさぐほど激しい。
「何で私までこんな所に来てんのよ……」
志津香はいつもよりも厚着をして、顔の殆どをマフラーに埋めている。炎系の魔法が得意な志津香が結界を張って、ある程度の気温を調節してくれていた。
「あ、ありがとうね、志津香。志津香が結界張ってくれないと行くのが難しそうで……」
実際、志津香は同行を嫌がったが、マリアが必死で頼み込んでどうにかついてきてくれた。
「……はあ、そうよね。こんな危ないとこマリアだけに行かせられないしね」
志津香はマリアの感謝を受け、やむをえないといったように溜め息をつく。
「カフェちゃん! まだか!?」
すでに極寒の中を一日近く進んでいる。そろそろテントを張って休むべき時間だが、ランスはできる限り寒い中で休みたくない様だった。
「も、もう少しだと思う……」
カフェは以前に一度来たことはあるものの、一人できた前回と違い、複数人で来ている今回では勝手が違うようである。
「ランス、目の前に何か見えるでござるよ」
「ほんとか!?」
しばらく進むと鈴女の見たものがランスの目にも入る。それは少し歪な形の塔だ。薄暗い吹雪の下、来るはずもない来客を歓迎するようにその入り口を開けている。
「おおっ、開いてるぞ! さっさと入れ!」
ランス達は大喜びで塔の中に駆け込む。その中はやはり薄暗く、螺旋階段が終わりも見えないほど続いている。気温は寒いものの、風も雪もないだけ外の数倍マシだった。
「長いなー。この先にいるのか?」
「うん。あともう一息だよ」
「よし」
ランスはカフェに確認を取ると、ずんずんと階段を上っていく。
「……長いな」
「あと少し! 頑張ろ!」
ランスは変わり映えしない光景に次第にうんざりとしてくる。
「……かなみ、前行け」
「やだ! 下から覗く気でしょ!」
「やかましい! お前に拒否権はない! いいから前に……!」
「ドア! ドアあったよ!」
ランスがかなみと口論をしていると、話を逸らすようにかなみが螺旋階段の終わりを見つけた。
「ちっ、まあいい、ようやく着いたか」
ドアを開けるとそこは山の中腹のような穏やかな気候と風景だった。外の気候が嘘のようにのどかな草原に、何らかの魔法が作用してるのか、青い空に白い雲も付いている。
「な……!? どこだ、ここは!?」
「着いたよ。ホ・ラガはその小屋の中にいる」
カフェの指差す先には山小屋のような赤い屋根の小屋がポツリと建っている。
「…………」
ランスはいよいよ恐怖の存在との対面を控えて、流石に緊張してるのか、黙り込む。
山小屋の前でランスがドアノブを引く。すると中から大型のわんわんが来客を出迎えるように尻尾を振ってやってきた。
「何だこいつ? ホ・ラガか?」
「いや、この子はヨーデル。普通にわんわんだよ」
ランスがびくびくしながら犬と接していると、小屋の奥から一人の老人がやってくる。
年老いているようで、それでも秘めたエネルギーを感じさせる人物だった。
「……お前が、ホ・ラガか」
警戒心たっぷりのランスに、賢者は微笑んでこう答える。
「このような辺境にようこそ。 この老人が貴方の役に立てますかな?」
はい以上14話でしたー
とりあえず一ヶ月以上待たせることがなくて一安心です。プロットどおりの展開だし、楽でした。
ルート分岐編はこれでおしまいです。滅茶苦茶早いですね。2話くらい行くかと思いましたが、書いてみたら1話分しかありませんでした。今後も予想外に早く終わったりすると楽でいいですね。
ここでルート分岐するのはホ・ラガの助言しだいでランスの行く末が決まってしまうと言う訳です。
次回から『果てし無き闘争』編に入る予定です。
以下解説。
黒髪のカラー
ハンティのこと。原作でハンティとカラーの里の関係性は不明ですが、反逆の鬼畜戦士ではカラーの里にも伝説として伝わってるものとします。
ビスケッタ・ベルンズ
ランスクエストで登場。ランス城のメイド長。常に無表情だが、不機嫌なわけではなく、表情を作るのが苦手だかららしい。ランス城の家事全般から旅のお供と夜のお勤めまで何でもこなす万能メイド。ランスがさん付けする数少ない女性キャラの一人。
キバ子
ランスクエストで登場。森の中で野生化してる強い少女がいるということでランスがセックスの為に迎えにいった。強い男性であるランス(というかランスのキバ?)に惚れて以来、良くなついている。スパルタンという職業は作者が全く使わなかったために反逆の鬼畜戦士での登場が大いに遅れた。
ホ・ラガ
鬼畜王ランスで登場。エターナル・ヒーローの一人であり、魔法の技能レベル3の一人。三超神のプランナーに対面した人間の一人であり、その犠牲者でもある。彼は神に全知を与えられ、世界の仕組みに至るまで全てを理解した。しかし、全てを知ったがゆえの気力の喪失によって再起不能となる。エターナル・ヒーローのリーダーであるブリティシュに心の底から惚れこんでおり、当時のパーティーに入ったのはブリティシュに誘われたからというのが大きいらしい。
補足設定
ランス城の修理はランスがヘルマンに行く直前にコパンドンに手紙で依頼してました。そこらへんssにしようかと思ってたのですが、話の内容がランスが手紙出して、それを受け取ったコパがキバ子迎えに行って終わりという短い内容になりそうだったので、やめました。