現在、スードリ10は魔物の大群が集いつつあるらしく、ヘルマン軍もミネバ、パットンの区別なく総力で向かう体勢を整えていた。
それとは別にランスとリーザス赤の軍、JAPAN軍は魔人討伐のための作戦を立てていた。
「スードリ10攻略は激しい抵抗が予想されるため、我々JAPAN軍にも出撃の要請が来ました」
JAPANの将軍が集う軍議で先頭に立つのは香だ。
「しかし、戦いは殆どヘルマン軍が行ってくださるそうです。JAPAN軍は町に残る敵の掃討に当たります。これは、スードリ10攻略後のバボラ戦を想定して戦力の温存を優先した布陣となってます。スードリ10攻略後、我々はすぐにバボラの来襲に備えることになります。バボラの撃破方法についてはマリアさんから説明があります」
香は話を切ってマリアに視線を移す。マリアは原稿を手に話を始める。
「前回の戦いでわかりましたが、バボラを仕留めるには圧倒的に火力が不足していました。相手は城のように大きな鬼ですから、いくらランスの攻撃でも一撃では到底殺しきれません。そこでリックさんはご存知でしょうが、ゼスで使った固定砲台、チューリップ2号『マレスケ』をここまで運び入れました。その砲弾を頭部に命中させればたとえバボラでもひとたまりもないでしょう」
マリアの頼もしい言葉に場が沸いた。
「とはいえ、巨大なものですので私達、カスタムの技術者達が組み立てるのにも多少時間がかかりますし、組み立てたら移動もできません。そこで、バボラ迎撃用の戦場を決めました。スードリ10から少し離れた平野です。スードリ10攻略後、バボラ迎撃用の戦力はそこに集まって交戦準備を整えてください。バボラ襲来後、前回と同じくランスに無敵結界を破ってもらい、他の部隊でバボラを足止めしてもらいます。マレスケは照準も時間がかかるため対象が動き回っていると外れる可能性が高くなりますから…… 以上がマレスケによるバボラ撃破のプランです」
マリアは話し終えると着席し、代わりに香が立ち上がった。
「今回は迅速さが重要になります。スードリ10を攻略後、各員直ちに持ち場に着くように。以上で軍議を終わります」
将達はそれぞれ自分の部隊に指示を伝えるため散っていく。
今回、ランスは軍議に口を出さず傍から傍観していたのは特に理由を感じなかったからだ。忙しそうな将軍達を見てあくびを一つすると、ランスに香姫が話しかけてきた。
「あの、兄様はどうしてパットンさんではなくミネバさんに味方したのですか?」
ヘルマンの動向は一国の主として無関係ではいられない香なりの心配だった。
「別にどっちだっていいだろう。俺様にはヘルマンがどうなろうが関係ないからな。ミネバの方が俺様をよく理解した報酬を出してきやがるからそっちについただけだ」
ランスにとってはそうでも香にとってはそうだとは限らない。パットンの人柄は王として信頼に当たるものがあるが、ミネバのそれはランスを挟んだところで信じきれるものではない。
「で、でも、最初にお兄様を支持してくれたのはパットンさんです!」
「ふん、そんなことはどうでもいい。大事なのは……」
すると、二人の会話を聞いていたようなタイミングでミネバがランスに話しかけてきた。
「余裕そうだね、ボウヤ」
「ババアか。今回は俺の出番が少なそうだからな」
少しすねた様子のランスだった。
「前の戦も見たけど、中々JAPANの軍も強いじゃないか。正直、極東の島国なんか眼中になかったけど、こんなかわいらしい子がトップでもよく訓練されてて驚いたよ」
香を見ながらJAPANの軍を褒めるミネバ。香は眉間に皺を寄せながら彼女の人となりを見極めようとしている。
「ふん、当然だ。俺様の部下どもだからな」
ランスの言葉にミネバは微笑んだ。
「ふふ、ヘルマン第4軍にクリームって女がいてね。結構上玉だよ」
「お?」
ミネバの言葉にランスは興味を引かれた。
「今回魔人を倒してくれたらボウヤに紹介してあげるよ」
「おおお! 本当に美人なんだな!?」
「保障してやるよ。だから頑張んな」
「がははは! 香ちゃん、こういうのがグッドな気遣いだ」
「に、兄様……」
香はあっさりと篭絡されるランスを見て言葉を失う。ランスに話し終えるとミネバはその場を去っていった。
「うへへ、ヘルマン中の女を抱く日も近いな……」
「…………」
後に残ったのは馬鹿な発言をするランスと危機感に押し黙る香だけだった。
「今までの勝利は敵の油断した脇腹を突いてとったようなチンケなもんだ! 今回は敵さんも相当ガードを固めてるよ! そこを崩してこそあたしらにとって本当の勝利へつながる! あんたら、気合入れな!」
出陣の直前、ミネバからその配下への檄が飛ぶ。数万を超えるヘルマン軍の緊張感は高まり、戦闘の準備は整った。
「スードリをあたしらの手で取り戻すんだ! 行くよ!!」
この言葉を機にスードリ攻略戦の火蓋が切って落とされた。
強大な魔物の軍にも怯むことなく、屈強なヘルマンの兵が立ち向かっていく。大陸で最高峰の兵を持つと言われるだけあり、明確な指揮系統を持った状態のヘルマンは圧巻であった。
「これがヘルマンの実力、と言うやつですか。空恐ろしいものがありますね。香様もよくご覧になってください。あれが世界最高峰の白兵戦力です」
戦況を見て直江愛の発した言葉だった。ランス率いる軍団を少し離れ、今は一部の者達がスードリを一望できる丘の上でこの戦いを眺めていた。
「世界最高峰……ですか」
「体格の平均がJAPANやリーザスとは比べ物にならない大きさですな。ランス殿がJAPANに来たときに援軍としてヘルマン軍に出てこられたらJAPANで対抗できるものは殆どいなかったでしょうね」
愛の横で同じく感想を述べたのは真田透琳だ。その発言の裏には武田騎馬兵ならば対抗できるという自信が見えていた。
「敵として対峙すると実感します。リーザスの練兵の目標は彼らに対抗しうるものだからこそ高い能力を持てているのです」
リック・アディスンもヘルマンの兵の力を褒める。常に間近でヘルマンを見ていた彼だからこそ言えることだろう。
「指揮官の采配もすばらしい。正面からの白兵戦で彼らに対抗するのは厳しいでしょう」
透琳がそう言うタイミングを見計らったかのように戦況が乱れる。魔軍は崩れ始め、徐々に待ちの中への進入を許し始める。
「均衡が崩れましたね。こうなればそろそろ私達の出番です。陣に戻りましょう」
三人が陣に戻っていく中、魔軍は敗走を始めるのだった。
「よしっ! ようやく俺様の出番だな! 行くぞお前ら!」
ランスは待ちに待ったとばかりにスードリに駆けていった。後ろには謙信を始めとする仲間達もついてくる。
「ランス兄様に遅れないでください! 全軍前進!」
香も号令をかけて軍を前に進めた。殆ど魔物の去っていったスードリを奪い返そうとJAPANとリーザスの軍が一気に町の中に雪崩れ込んだ。
「数が減ったとはいえ敵は魔物だ! 油断せず集団で立ち向かえ!」
愛の言葉通り兵達は必ず自分達の数が多くなるように魔物に立ち向かっていった。そんな中、ランスは敵を切り倒しながら進んでいく。目標は例のごとく魔物将軍だ。
「何が出るかな~ がはははは」
戦場でランスのかもす空気だけが異常だった。そんな雰囲気で敵の数が多いところへと一目散に向かっていった。
「そこかなー? がははははは! とーーーーー」
ランスが放つカオスの一振りで敵は木っ端のように散っていく。その様子を見て戦姫は舌を巻いていた。
「前から強かったがここまで強くなっているとはな。やはり彼に同行していればよかったか……」
「おーいるいる! お前ら散れ! ランスアタタターーーック!」
魔物将軍を見つけたランスは一振りでその取り巻きたちを吹き飛ばした。
「クッ……!」
「死ねーーー!」
苦し紛れに放った鉄球をあっさりとかいくぐって魔物将軍を脳天から叩き斬る。真っ二つに割れた腹からは見事美少女が出てくるのだった。
「よっしゃ、大当たりー! 可愛いお嬢さーん、大丈夫かー?」
「ん、う……」
ランスが少女の意識の有無を確かめるとかすかな反応を示した。
「よしっ、無事だな。じゃあ俺様は寒いからどっか家の中入ってこの子を頂く。後は任せたぞー」
少女を抱きかかえ、ランスは近くの民家へ駆け込んだ。中で魔物と遭遇したのか、少し暴れる音がしたがすぐ治まった。
「まったく、こういうところも相変わらずだな」
戦姫は呆れた様子でひとりごちた。
「じゃあ鈴女が香姫のところに報告してくるでござる。あとよろしくー」
鈴女は素早い身のこなしで音もなくランスのパーティーから消え去った。少しの沈黙の後かなみがつぶやく。
「よろしくって……あれを?」
ランスが入った民家では戦闘とは違う振動が漏れていた。
「と言うわけで魔物将軍を倒したからもう大勢は決したでござるよ」
鈴女は本陣に待機する香姫にランスたちの報告を終えた。
「分かりました。後方のマリアさんにマレスケの搬入をしていただきます! 合図の法螺を吹いて下さい!」
後方のマリア率いる技術班ではその法螺を聞いて皆が一斉に移動を開始した。マレスケはうしに引かせたトラックを五台も使用するためにその速度は落ちる。
「移動急いでー! いつバボラが攻めてくるかわかんないんだからねー!」
スードリ内のJAPAN兵も法螺を聞いて決められた行動をとる。
「種子島家はバボラ迎撃のための陣を作りに所定の場所へ向かえ! 足軽隊はその警護に当たるように! その他の部隊は町の中の掃除を一刻も早く終わらせて陣の設営を手伝え!」
真田透琳が確認の指示を周囲に下し、兵たちもそれに応えてそれぞれの役割にあたる。
「あーあ、合図来ちゃったよ……」
法螺の音を呆然と聞くのは見当かなみだった。ランス達の役目はバボラ襲来に備えて持ち場で待機のため、そこまで急いでもやることがないが早く行くのに越したことはない。
「あの人が出てくるまで待つしかないだろう。私はそこらへんで魔物でも刈っている」
戦姫も諦めたような表情で近くの魔物とJAPAN兵が集う広場に入っていった。民家の振動はいよいよ早まり、そろそろ一回目は終わりそうな雰囲気だ。何回続くかはランスにも分からないのだが。
「め、目、痛い……」
バボラは醜く裂かれた目の傷を押さえながら進む。
「あれは敗走してきた魔物たちか…… ふん、もう落とされたのか」
バボラの肩に乗ってそういったのは逆立った頭髪を持ち、常に帯電した男だった。常人ならば触れただけでも感電するだろうが、バボラはその巨体ゆえの鈍さから何も感じていないようだ。
「んあああ…… あそこにあ、あいつ、いる……」
バボラは残った片目で地平線にわずか浮かぶその町を見据えた。
「ら、ランス……」
その表情は恐怖か悲しみか、はたまた怒りか。脳の小ささのせいでうまく顔を使えなくなった巨人のそれはとにかく歪んでいた。
「がはははは! すっきりしたー!」
民家からランスが出てきたのは三回終えた後だった。
「もう合図鳴ったわよ! 急いで!」
かなみがランスを促した。もう合図の法螺から随分たつし、周りは魔物討伐も終わったらしく、人気が殆どない。戦姫も帰ってきていた。
「わかっているわ。行くぞ」
大分遅れてランスが到着したときはランス軍ほぼ総出で陣の設営に当たっていた。
「ランス兄様! 斥候がこちらに向かうバボラを確認しました! あと一時間ほどで到着するそうです! 急いで準備してください!」
ランスの元に駆け寄った香は慌てた様子でそう言った。
「もうか。思ったより早かったな」
「きっと兄様のことを脅威と認めて待機していたのでしょう」
彼らの想定ではバボラの襲撃までおそらく早くても一日はかかるだろうと考えられていたが、実際にはスードリ奪還戦の開始から4、5時間しか経っていない。
「今は種子島家の人にもマレスケ組み立てを手伝っていただいて、ヘルマン軍にも陣の設営をお願いしてます。準備完了はおそらくバボラの到着と同じ頃になると思われます」
「……ふん、面白くなってきたじゃないか。予想通りいく戦いなどつまらん。こうじゃないとな」
ランスの大きな口がにやけた。
「ちっ、またか」
一時間後、ランスは再び山県の背にしがみつきながらてばさきに跨っていた。
「ぼやくな。乗れるようにならなかった……」
「うるさい! 悪いのはあの魔人だ!」
機嫌が悪そうにランスが怒鳴った。
「兄様、マレスケの準備には今しばらく時間がかかるようです。申し訳ありませんが、それまで時間を稼いでください」
「がはははは、あんなのろまなんぞ楽勝でとめてやる。まあ期待していろ」
ランスがいつもの調子で大口を叩くと、外からバボラの唸り声が響いた。
「んあああああああ……」
「ふん、頭悪そうな声だ。いくぞ」
「応、振り落とされるなよ!」
山県は手綱をさばいててばさきを駆けさせる。雪を巻き上げてばさきは一直線にバボラへと向かう。
「頑張ってください!」
後ろからは香の声援が聞こえた。
バボラ迎撃用の陣から少し離れ、ランスと山県を乗せたてばさきがバボラを目前にすると、その周囲に無数の雷が降る。
「ぬおっ!?」
驚いて暴れるてばさきを必死に山県が抑える。
「なんだこれ!? バボラに魔法なんて使えたのか!?」
ランスも動転していると、バボラの肩から一人の男が降りてきた。
「貴様がランスか。随分活躍しているようだな」
「誰だお前は!?」
ランスの問いには答えず、男は掌から雷を放つ。
「降りろ!」
山県はランスを振り落とすと、てばさきもろとも雷を食らった。
「がああああああっ!!」
「ぐえっ」
雷を受けた山県がてばさきと共にその場に崩れる。ランスは不恰好に地面に落ちたものの、大した傷は受けていない。
「てめえっ!!」
ランスの怒りは雷を放った男ではなく、自分を振り落とした山県に向いていた。地面に伏せる山県に目を向けるとやけに辺りが暗い。
「飛び退けーーーーー!!」
山県の声を聞いて瞬時に危険を感じ取ったランスが無意識に飛び退く。すると、それまで山県とランスのいた場所に巨大な足が落ちてきた。バボラの踏み付けだ。
足が地面に着くとともに、目の前で爆弾が爆発したかのような衝撃と膨大な雪の飛沫がランスを襲った。
「んなっ……!」
「は、外した……」
バボラが足をどかすと、山県の居たところに大きな血溜まりと、元が何だったのかも判然としない残骸があった。
「お、お前ら……」
怒りに震えるランスを見て雷を放った男が少し感心したように言う。
「生きてたか。しぶといな」
「許さん!!!」
男に向かってランスは猛然と駆け、カオスを振り下ろした。男も剣を抜いてランスの斬撃を受け止める。
「魔剣カオス、使い手も一流か……」
「心の友! こいつは魔人だ!」
「分かってる!!」
カオスは男の正体を告げる。雷を纏う魔人レイだ。鍔迫り合いになったのも束の間、レイの体からは雷が漏れる。大した被害を与えるものではないが、体が一瞬緊張する。
「グッ……!」
ランスが怯んだ隙にレイは大きく後ろへ跳んだ。
「まずいぞ!」
「うるさい! 分かってると言ってるだろう!!」
カオスの言葉にランスが怒鳴るとすぐに後ろへ下がった。そして、またしてもバボラの足が落ちてくるのだった。間近に降りた衝撃にランスの体が一瞬浮いた。
(ちっ、まさか二人同時に来るとは、面倒なことになった)
ランスが少し考えていると、後ろから仲間達が駆けつけた。
「ランス大丈夫!? 山県さんは!?」
まず声をかけたのはかなみだ。
「……あれだ」
ランスは先ほど踏まれた地点を首だけで示した。
「…………!」
驚いて言葉を失う一同。バボラの足が上がるとランスは身構えて叫ぶ。
「レイも来てる!! 俺様が結界を破ったら奴の足を止めろ!!」
言い終えるとすぐさまレイに駆けて行き、一合、二合と剣を合わせていく。激しい剣戟の合間にリックが仲間達に声をかける。
「剣の腕ならランスさんの方が上です。均衡が崩れたらすぐに戦えるように準備をしてください」
その言葉通り、ランスの剛剣にレイは押され始める。
「甘いわ!!」
ランスはレイの隙を突いて浅くではあるが、その体に剣を入れることに成功した。同時に結界の破れる音がしてレイの体に血が滲んだ。
「ちっ!」
レイが片手を離すと強力な電撃を放つ。しかし、それはランスに届くことはなく、予め割り込む準備をしていたサチコに防がれる。
「くぅっ!」
手にした盾では電撃を防ぎきれず体にダメージが通る。レイに謙信が斬りかかるが、電撃にランス達が怯んだ隙にレイはすぐさま後ろへ飛び退く。
「バボラ!!」
バボラはレイが退くのを待っていたらしく、すぐさま足を下ろした。
「まずいっ」
ランス一人ならまだしも、そこには電撃に痺れて動けないでいるサチコがいた。
「お前ら、支えろーーー!!」
ランスの言葉に反応を見せた仲間達はとっさにバボラの足の下に飛び込む。
ここでランスを死なせるわけにはいかない。ランスが逃げないなら身を挺してでも守らなければ人類に勝ち目はなくなるのだ。
「ぐぅっ!!」
サチコを除く全員がバボラの踏み付けを支える体制で迎え撃つと、驚くべきことに踏み潰されることはなく、バボラの足が空中で止まった。世界屈指の高レベルを誇る人物が集うだけあり、一瞬バボラの重さにも耐えたのだ。
「あ、あ……」
サチコは自分が招いたその光景に絶句していた。
「……くっ、サチコ! 俺様の召使の分際で手間かけさせやがって! お前もいつまでも臭い足を乗っけてんじゃねええええ!!」
ランスが深くカオスをバボラの足裏へ突き刺すが、反応はない。巨体ゆえの鈍さで全く痛みを感じていないようだ。
「ちくしょう、マリアアアアアアア!! 早くしろーーーーー!!!」
その声が届いたのか、天に轟く様な爆音が戦場に響いた。バボラは何も気付かないまま顔面をマレスケの砲弾に撃ち抜かれ、絶命した。着弾の衝撃でバボラの体はゆっくりと後ろに傾き、ついには倒れた。
周囲には雪煙が巻き上がり、それが収まった後にはランス達とレイが残る。立っているのはランスとレイの二人だけで、他の者達は皆地面に倒れるか、跪いていた。
「ハァ、ハァ…… こ、殺す……!」
依然闘志に瞳を輝かすランスにレイは内心怯んだが、それを表面に見せることはしなかった。
「……ふん、今の貴様らを殺すのは容易いが、万全を期す必要がある。次ぎ会う時が貴様の最後だ」
それだけ言い残し、レイはその場から消えた。
「……ちっ、負け惜しみを」
ランスも目の前に敵がいなくなって気が抜けると、すぐに尻餅をついて地面に座り込んだ。
兵士達が駆け寄る音が聞こえる。ランスはさっきの女の子とのセックスは三発ではなく二発に抑えておくべきだったと後悔しながらまどろみに身を任せた。
「おおお、兄者、なんで死んでしまったんじゃあ!!」
ランスがどれほど意識を失っていたのか定かではないが、目を覚ますと山県の残骸の近くで馬場彰炎が人目を憚らずに泣いていた。
「兄者は、兄者はまだJAPANに必要な人だったのに……!!」
ランスはそれをただ無言で眺めている。
「ボウヤ、よく無事に戻ったね」
ランスはその声を聞いて傍にミネバがいたことにようやく気付いた。あたりを見回すとリックやかなみなど、ランスとともに戦った者達が担架で運ばれていた。
「……奴を手厚く葬ってやれ」
「ああ、JAPANで葬式はやるだろうが、ヘルマンでも国を救った英雄として祭るよ。立てるかい?」
ミネバがランスに手を差し伸べるが、ランスは必要ないと押しのけて立ち上がった。まだバボラに踏みつけられたダメージが残っているのか、その足元は覚束ない。
しかし、そんな頼りない足取りで一歩一歩進んで行くのだった。
「ようやくあの魔人をぶっ殺せたから今日は祝勝会だ。いいな」
「ああ、もちろんさ」
ランスは振り返ることなく自らの足でスードリへと向かう。
はい以上8話でしたー。
なんかすごいことになっちゃいましたね。作者はヘルマン編のプロットがかなりいい感じに仕上がったこともあり、かなり浮かれた気分でこの話を書いていましたが、まさか山県さんが死ぬことになるとは思っておらず書き上げた今驚いてます。
ぶっちゃけバボラは他の魔人戦までのつなぎとしか考えておらず、そんな気楽さが出陣前のランスの台詞に現れてて面白いですね。
ちなみにプロットではこんな感じ
するとマリアがマレスケのことを思い出し、それでバボラを倒すことを提案。急遽組み立てる。
バボラをマレスケにて撃破後、
バボラさん、一行も使わず死んでます。
というわけで次回から魔人戦も本番、正直作者はヘルマン編書き終わった後燃え尽きちゃわないか心配なくらい盛り上がる場面へと入ります。ハードル上げまくって内心ビビッてますが、皆さんの期待に応えられるよう頑張ります。
以下解説。今回少ない。
マレスケの組み立て
マレスケに関してはランス6後、マリアがカスタムでパーツだけ組み上げておいていざという時に向けて備えていた、という設定です。じゃあなんで戦国で使わなかったんだって話ですが、目を瞑ってください。
クリーム・ガノブレード
鬼畜王ランスに登場。登場キャラで屈指の優秀な軍師キャラだが、上司のネロ・チャペット7世とそりが合わずその実力を発揮できずにいた。ランスの元で働くことでその力を存分に発揮することになる。ただし、ネロの軍は意外と強く、クリーム捕獲に手間取るとネロの工作にはまって殺されてしまう。作者は普通に気付かず死なせてました。
補足設定。
またしても作者が描写を忘れてましたが魔人に占領された町でも普通の人間は結構生きてます。というのも、人類の数が減りすぎると勇者のシステム上魔人どころか、下手すれば魔王や神でも殺せる力を手にしてしまうために魔人が意図的に人間の殺す数をコントロールしてます。
とはいえ治安は最悪。家を出て魔物に会えば殺されても文句は言えませんし、魔物も人間にあったら積極的に殺しにかかります。
そんな訳で人間は殆ど占領された町を捨ててどっか避難してます。JAPANも難民を受け入れるくらいだから結構深刻な問題になっているようです。