12月20日
千莉がパリの留学から帰ってきた。
二ヶ月ぶりの再会だ。
実は出会って早々に千莉に抱きつかれたのだが、千莉はそのまま顔をこちらに近付け――
御園「んっ、ちゅ……」
筧「っっ!」
御園「はん……くふぅ、ちゅっ……んんっ……」
千莉はこちらの驚きを物ともせずにこちらを求めてくる。
これまでの歳月を埋めるかのようにそのまま舌でこちらの粘膜を味わうように口内をすみずみまで舐めはじめる。
唇の柔らかさ、舌と舌の触れ合う感覚はこの上なくエッチに思えた。もうキスだけでクラクラしそうだ。
千莉「はんっ、ちゅっ、じゅる、はうっん……んちゅっ、はぁんっ」
そのまま段々とキスは激しさを増していき、顔にかかる吐息の熱さがそれを物語っている。
千莉は唇や口内だけでなく、体を擦りつけ体全体の触れ合いを堪能し尽くそうするが――
御園「んっ、っはぁ、はぁ。京太郎さん?」
千莉を優しく引き剥がす、熱っぽいような顔で見つめてくる。
近くから視線が交わるだけで体が熱くなる……千莉もそんなほてりを感じているのが、彼女の吐息からも伝わってくる。
筧「千莉、えーっとだな……」
キスでぼんやりとしてしまい上手い言葉が出ないので、代わりに周りを見るように顔を振る。
千莉は忘れてしまっているようだが――ここは駅の入り口だ。
周囲を歩く人だけでなく――少し離れた場所にある改札の駅員さんにすら、かなり驚いた顔で見られており――
正に往来のど真ん中という場所で、四方八方から視線が突き刺さる。
御園「へ?……す、す、すいません先輩。こんな所で。」
顔はお互い真っ赤になっているだろう、顔から火が出るとはこの事か……
筧「お、俺は嬉しいけど。とりあえず、ここから離れよう。」
御園「は、はい。早くここから離れましょう。」
千莉の燃えるように熱くなった手を握ると、早足でその場を後にした。
千莉「京太郎さん」
筧 「千莉、どうした?」
千莉「先輩。」
いたずらをする時の顔で、もう一度俺を呼ぶ。
千莉「ふふ、京太郎さんを呼んでみたかっただけです。」
そう言いながら、腕に引っ付いている千莉。
千莉は帰国してからこの方、ずっとこの感じでベタベタだ。
筧 「その服初めて見るな、あっちで買ったの?そういう可愛い服着ても似合うよ」
千莉はいつもの格好と少し違って、柔らかな雰囲気の可愛い淡い青色の服だ。
整った顔立ちの美人なので、なんでも似合ってしまうのが千莉だ。
自分はファッションにはとんと疎いため、興味を持つように出国前に少し怒られたばかりで詳しくはないが。
千莉「ありがとうございます、パリでお世話になったオペラの先生から頂いたんです。
筧 「服を貰えるのか、凄いな。」
芸能の世界は花などのプレゼントはよくする印象があるが、千莉ほどの実力なら服を貰うのも少しはあることなのかもしれない。
千莉「凄く面倒見の良い先生で、音楽の指導だけでなくパリを案内して頂いたりと生活面でもお世話になったりと良くして頂きました。 ……女性の先生でしたが。」
最後に少しニヤリと顔する千莉。
筧 「それは良かった、先生に気に入られたんだな。」
別に他者からの誘惑とかそういうことで心配する事は無かった
千莉「良かったです、先輩。」
向こうであった出来事を色々と話してくれる千莉。
千莉は向こうに友達もでき、歌の面でも良い経験が出来たようだ。
筧 「あの千莉がこんなに立派に……」
千莉「もう、なんですかそれ……別に、そんなに変わってませんよ。」
少し恥ずかしそうに膨れた千莉だったが、留学して一皮剥ける事が出来たようだ。
二人の久しぶりの時間を楽しんだ。
――――
学校へ到着したあと音楽家の先生に挨拶を終わらせのち、部室の前に着いた。
千莉「久しぶりなので、嬉しいけどちょっと緊張します。」
筧 「みんな、千莉が帰って来るの待ってたんだから、喜んでくれるよ。」
少し緊張している千莉に部室に入るように促すと、ノックをする。
千莉「失礼します、御園です。 ただいま帰りました。」
白崎「どうぞー」
少し素っ気ない白崎の声が聞こえ、中に入る。
白崎・桜庭・高峰・鈴木「お帰り!千莉ちゃん!」
クラッカーの音と共に、笑顔で千莉を迎えてくれるみんな。
千莉「わっ」
鈴木「千莉~~~」
手を広げて胸に飛び込んでくる鈴木を千莉は受け止める。
千莉「もう佳奈ったら。」
高峰「千莉ちゃん、海外行ってたせいか雰囲気が大人っぽくなったような。
筧 「俺も会ったときはちょっと驚いたよ。」
鈴木「あの千莉がこんなに立派に……」
千莉「佳奈、それ京太郎さんと被ってるから。」
鈴木「えっ、ホント!? ごめん千莉~」
ジト目で睨む千莉と大げさに謝る鈴木、二人のじゃれ合いをスルーして桜庭は話す。
桜庭「二ヶ月とはいえ、海外での留学だからな。本場はやっぱり凄かったか?」
千莉「はい、初めてパリに行ったわけでは無いのですけど。第一線でオペラをやっている方々にも指導頂いて、勉強になりました。」
白崎「はあ~、やっぱりすごいね。千莉ちゃんは。」
鈴木「ふふ、千莉は図書部の最終兵器ですからね。」
千莉を自分のことのように誇らしげに語る二人。
桜庭「行く前にはたった二ヶ月だなんだと言ったが、御園が居ないと物足りない感じはあったな。」
少し落ち着いた声でそう話す。
白崎「私も向こうで元気してるか心配だったよ~、玉藻ちゃんなんか「御園が居ないと部内の会話が少し物足りないな」とか言って、千莉ちゃんの席を時々見たり心配してたんだよ。」
白崎は似てない桜庭の声マネをどや顔でする。
千莉「ふふ。白崎先輩も桜庭先輩も心配してくれて、ありがとうございます。」
桜庭「み、御園は可愛い後輩だからな、当然だ。」
少し顔を赤らめて恥ずかしそうにして桜庭は言う。
鈴木「え~、千莉だけじゃなくて私もですよね、桜庭さんっ。」
桜庭「ああ、鈴木もかわいいかわいい。」
鈴木「私だけおざなり!」
千莉「もう、佳奈ったら何と戦ってるの」
鈴木「いやこれ、大事な事だからね!」
千莉と鈴木の一年生コンビがぎゃあぎゃあと騒いでいる。
図書部でよくみた風景だ、二ヶ月ぶりに図書部が全員揃ったのだと改めて感じる。
桜庭「それより御園、筧と会ったときはどうだったんだ?彼氏との感動の再会じゃないか。」
意地の悪い笑みを浮かべる桜庭。
千莉「別に普通です、お互いに再会の挨拶をしたぐらいです。」
筧 「いや、千莉は走って抱き――」
千莉「京太郎さん、嫌いになりますよ。」
千莉の丹精な顔で軽く凄まれてしまう。
高峰「千莉ちゃん、恥ずかしがりやなのは変わらないのな。」
桜庭「あと尻に敷かれてるな筧は。まあいい、男子が居ないときに御園から聞き出せばいいだろう。」
千莉「もう、強引なんですから……」
高峰「俺もその話聞きたいなー、男ってこういう時損だよな。」
女子が喧しく騒いでる間に、わざとらしく嘆く高峰。
筧 「大丈夫だ、俺も聞けないぞ。」
高峰「だってお前、当事者だし。」
身も蓋もない会話だった。
千莉の土産話が一段落つき、小康状態になった頃。千莉が皆に訪ねる。
千莉「図書部の活動はどうですか。そろそろクリスマスですし、忙しいみたいですが?」
桜庭「ああ、帰国前にも少し連絡したが。」
年末はイベントのシーズンだからか、図書部には大量の依頼が来ているのでそれなりの仕事は受けることになっている。
中でも、24日のクリスマスイブには演劇部主催の劇を中心とした催しもあり、図書部は主に会場運営のサポートとイベントの宣伝を担当している。
桜庭「というわけで、御園は筧と一緒に演劇部の催し担当が主な仕事だ。帰国したばかりだし、仕事は少な目にしておいた。」
千莉「すいません、忙しい時期なのに。」
桜庭「なにこの時期だ、カップルを忙しくさせたら馬に蹴られて死んでしまうからな。これでも少し忙しくさせてしまっている位だしな。」
高峰「どんな恐ろしい世の中だよ。」
桜庭「このくらいの配慮、当然だ。」
ありがたいが、凄まじい乙女理論だった。
――――
千莉「京太郎さん、今日は私の家に行きませんか?今日は家でゆっくりしたいです。」
皆でパーティーをしたあとの帰り道。
現在午後6時、もう12月なので真っ暗だ。
筧「今日は色々あって疲れてるし、ゆっくりしようか。」
ちなみにパリから日本へのフライト時間はおよそ半日で、時差は8時間となっている。
機内で睡眠を取ったりと調整したみたいだが、時差ボケと長時間のフライトは中々辛そうだ。
千莉「すいません、先輩。久しぶりに一緒なのに」
そう言ったあと、「ふぁあ……」と小さなあくびをする千莉。
いつも以上に女子達はかしましかったし無理もない。
筧 「これからは毎日好きなときに会えるよ。」
千莉「ふふ、会いたい放題ですね。」
嬉しそうに微笑むが、いつもよりふわふわとした感じの千莉だった。
ネーミングセンスがない!(挨拶
久しぶりの投稿ですが、またまた大図書館の羊飼いです。難産でした。千莉は大図書館では一番好きなキャラですので、気合が入りすぎたのではとか一瞬思いましたが確かではありません。
二話目はエッチのみです(ここ重要
執筆状況的に次は土日までには上げられるかなという様相ですので、よろしくお願いします。