ポケットモンスター Erotic Generation 作:破戒僧
「エンジュシティよ、私は……やっぱやめよ」
「いや、やるんなら最後までやりなよ。かえってみっともないよ」
「大丈夫よ、ここ地元なんだから皆私のことはわかってるから。結構突拍子もないこといきなりやる娘だって」
「それもどうなの」
「ここが、お母さんが生まれた街なんだ……」
と、いうわけで、やってきましたジョウト地方は『エンジュシティ』!
私ことアイカの生まれ故郷です! 家は引っ越す時に引き払っちゃったからもうないけど、懐かしいなー……この景色、この空気!
向こうに見えるのは、これまた懐かしいスズの塔!
いやー、昔を思い出すなあ。門番してるお坊さんの目を盗んで不法侵入して、天守閣近くまでいってお弁当食べたっけ。めっちゃ怒られたけど。
「そりゃ怒るでしょ……」と呆れるナオヤはおいといて、どうしよう? あの頃のご近所さんにあいさつ回りでもしようかな?
でも、若干だけど町並み変わってるから大変そうだなー……。景観はともかく、家の建ってる場所とか、ところどころ。
昔より家が少なくなった気がする。人口が都会に流れちゃったのかな? やれやれ、最近は誰も彼も都会へ行きたがる……便利ならいいってもんでもないだろうに……
「何年寄りくさいこと言ってんのさアイカ……それよりどうする? マツバさん今ジムリーダーやってるみたいだけど、挨拶してこっか?」
「そうね。ついでにバッジせしめて行きましょ、メイ」
「おーっ!」
「おい……」
☆☆☆
道すがら、メイに私たちがマツバさんと出会ったときのことを聞かれた。
先に話したナオヤは、普通に親同士が仲がよくて、その縁で知り合ったという。
私とマツバ兄……現ジムリーダーであるマツバさんの出会いは、まだ私たちがこのエンジュシティにいた頃にさかのぼる。
そう、あれはちょうど今日みたいに、どんよりと空が曇って青い部分がほとんど見えない日のこと……
「私がマツバ兄のむき出しの背中に溶けたロウソクを垂らしたのが始まりだったと思う」
「ちょっと待って!? 何その話!? 何その出会い!? 初耳なんだけど!?」
ぎょっとしたナオヤが、普段のナオヤからはちょっと想像できない感じの迫力でもって迫ってきた。うぉう、びっくりした!
「いやびっくりしたのこっち! え、アイカ何してマツバさんと出会ったの!?」
「だからそれを今から説明するんでしょうが」
発端はお姉ちゃんだ。
あの日私は、当時JCだったお姉ちゃんに、『今から思春期男子に青春の黒歴史を作ってやりに行くわよ!』と誘われて家を出た。
「ごめん、ツッコミ疲れそうだから放棄するね」
好きにせい。
……おほん、続けます。
その時お姉ちゃんが私を連れて行ったのが、何を隠そうマツバ兄の家だったのである。
アポ無しでいきなり女子高生と幼女(私ね)がたずねて来たもんだから、マツバ兄の家の人びっくりしてたなー。無論、マツバ兄本人も。
『あらあら、ついに息子にも彼女が出来たのかしら?』『あはははは、ありえないですよ』『あ、あらあら、そうなの……』なんて楽しげに家の人と話してたっけ、お姉ちゃん。
その後、さも仲のいい友達であるかのように見せかけた後――まあ、実際にある程度は仲よかったみたいだしね――部屋に上がりこんだお姉ちゃん。と私。
しばし雑談するお姉ちゃんとマツバ兄。その間、私は気まぐれに……という感じに見えるように、とことこと部屋の中をあちこち走り回っていた。
『こらっ! もー、落ち着きのない子ねー。ごめんねマツバ君』なんてお姉ちゃんに怒られながら。
そして、自然な流れで始まるポケモンバトル。当然部屋じゃせまいから、庭でやることになって……その見学のために一緒に庭に出ていたのに、いつの間にかいなくなる私。
気付かれないようにマツバ兄の部屋に戻り……ガサ入れを開始。
探す場所は、直前におねえちゃんから指示されていた『ベッドの下』『タンスの裏』『机の中』『本棚の去年以前の教科書・参考書のカバーの下』の4箇所。
さっき私が無造作にとことこと部屋の中を歩き回った際、マツバ兄の視線や、じっと見てないとわからないくらいの微妙な動揺、焦りなんかをじっと観察していたのだ、お姉ちゃんは。
そしてそこから、私が近づいたら困ったような仕草を見せた場所……すわなち見られたら困るものがある場所を割り出した。
そこを調べた結果……あった。
思春期男子の、秘密が。
ベッドの下……えっちな本
タンスの裏……えっちな本
机の中……18禁ゲーム
本棚の(略)……えっちな本(新品)
そこまでやって、一度私は外に戻る。
ちょうど、お姉ちゃんの勝利で一試合目が終わる所だった。3VS3の試合だから、まだ2試合ある。
タイミングを見計らって、私はお姉ちゃんに駆け寄り……耳打ちでガサ入れの成果を素早く報告。そしてお姉ちゃんは立ち上がり、『何だろう?』という顔になっているマツバ兄に向かって、
『ねえ、この子トイレ行きたいらしいんだけど、場所どこかしら?』
『ああ。それなら……』
と、あたかも今の耳打ちが私のトイレ要求だったかのようにして疑念を払拭。
そして姉さんは、私の背中を押して『行ってきなさい』と言うふりをして、これまた耳打ちで、素早くその物品の処理方法を告げる。
トイレなどには行かず、部屋に戻った私は、お姉ちゃんの指示通りにマツバ兄の『お宝』を処理しにかかった。その当事は意味のわからなかった『黒歴史』とやらを作るために。
……いや、ホント。ただのイタズラだって聞かされてたから。
そして、指定された『仕込み』を終了させた私は、何食わぬ顔でバトル観戦にもどり……ころあいを見計らって、『お母さんからメールきたー、大至急帰って来いってー』とおねえちゃんにつげ、庭から部屋に戻ることなく直帰する。以上だ。
その帰り道、私はお姉ちゃんにこう聞いた。
「ねえお姉ちゃん、あれってどんなイタズラなの? あれでマツバお兄ちゃんびっくりするの?」
「そりゃもちろん。家庭内ギクシャクしてどーしようもなくなるくらいびっくりするわよ! ……ま、ちょっと外道な気がしなくもないけど、遅かれ早かれ親には気付かれる内容のものだからね……ふっ」
しかし、全てを終えた私の脳内に残っていたのは、疑問ばかりだった。
お姉ちゃんの指示通りに何かの裏工作をきっちり行ったものの……その当時の性知識では、それが何を意味するのかまではわからない内容のものばかりだったからだ。
えっちな本が恥ずかしいものだということ自体はわかる。でも、それらをあんな感じにああしておいたり、あんなものをあそこにああして置いておくことに何の意味があったのかがわからなかった。
具体的には、やったことは4つだ。
1つ目。部屋に戻り、まずマツバ兄のえっちぃ本のうち、ある程度の厚みがあるものをいくつか選んで……カーペットの下に敷くようにして隠した。
掃除をしようとしてカーペットをずらしたりどかしたりすると気付くだろう。
2つ目。同じくえっちな本の中から、比較的サイズの小さいものを2、3選び、そのままトイレに行き、壁についている物置棚に、トイレットペーパーの陰になるように置いておいた。パッと見わからないけど、トイレットペーパーを換えようとすると気付く位置だ。
3つ目。お姉ちゃんに預かった香水の容器をポーチから取り出し、中身をマツバ兄の部屋のあちこちに散布した。合計10回ちょっとくらい。
しかし、容器の中身はもともと入っていた香水じゃなかった。あのビンはお姉ちゃんが中身を全部使った後の空き瓶で、友達に頼んで作ってもらったオリジナルの香水が入っていたらしい……粟の花の匂いがする香水だそうだ。
それをベッドの上やカーペットの上に散布した。
あと、ゴミ箱の中にも何回かシュッとした。
花粉症だというマツバ兄が鼻をかんだのであろう、丸まったティッシュ(乾いてカピカピ)が大量に入っていたのを覚えている。
4つ目。お姉ちゃんが隠して持ち込んで、ベッドの陰に隠して置いておいたゲーム店の買い物でもらうレジ袋を、よく見える位置に置いておく。
中身は18禁ゲームだった。タイトルは『キレイハナと少年 ~禁断の愛は種族を超える~』。
そして5つ目。
帰り際に、マツバ兄のお母さんとこんな会話をしておいた。
『あの……雑巾ありますか? えっと、お部屋でお菓子こぼしちゃって……』
『あらあらいい子ね。いいわよ気にしなくて、おばさんが掃除しておくわ』
……そして、私達は……帰宅した。
数年後、それなりの性知識を身につけた私は、その時のことを思い出して……こう思った。
……あれは全て、鬼畜の所業だったのだ、と。
「……あれ? お母さん、ローソクのくだり出てきてないよ?」
「あ、うん、ごめん、勘違いしてた。あれは別の日だった」
「こんなエピソード何個もあんの!?」