ポケットモンスター Erotic Generation 作:破戒僧
アイカとカリン。
ただ陵辱し、辱めを与えるだけでは、ロケット団の望む形に堕とすことは出来ない……そう判断したアテナが考えた、新たな調教のプラン。
これまでと全く違う種類のアプローチによってそれぞれを陥落させるというその計略は……いよいよ、仕上げに入ろうとしていた。
☆☆☆
今日もいつもと同じ、苦痛から逃れるために腰を振る恥辱の日々が始まるのだと考えていたアイカ。
しかし、今日彼女を待っていたのは……目を疑う光景だった。
「……何よ、コレ……!?」
場所は、いつもの部屋。
いつもの台のギミックは片付けられており、変わりに、何の変哲もない普通のいすが、部屋の中央に置かれていた。
そしてそこには……見知った顔の少年が座らされ、ズボンのチャックを開けて……中から勃起した肉棒を露出させていた。
そしてそれを、ロケット団のしたっぱと思しき女団員がくわえこみ、幸せそうに奉仕していた。
紛れもなくそれは、自分がこの世で一番愛していると胸を張っていえる少年……ナオヤその人だった。それを目の前にして、混乱をわかりやすく表情に浮かべるアイカ。
そんな彼女に、後ろから忍び寄ってきていたアテナがささやく。
「紹介するわ。我らロケット団の新しい『幹部』……ナオヤ君よ」
「はァ!?」
叫ぶような、悲鳴に近い声で聞き返すアイカ。その顔に、瞳に、最早冷静さと呼べるものは微塵も見て取れない。
当然だろう。何一つわけがわからないのだ。
突如目の前に突き出された、思い人が悪の組織の下っ端に奉仕されているという現状。しかも、したっぱの顔は幸せそうだ。
そしてアテナは、ナオヤのことを新しい幹部だと言う。
さらに、ナオヤの状態、そして表情……それらがより一層、現状の不自然さを際立たせていた。
椅子に縄か何かで縛り付けられていうというのであれば、その上で目隠しなり猿轡なりされているというのであれば、それはただの拉致監禁現場だろう。しかしそのような措置は一切見られず……しかもナオヤは、うつろな表情を浮かべている。
「ホラ見て? もうファンの団員が出来て、あんなことされちゃってるのよ。彼、大人気」
「何で……? え、何が……一体……」
混乱がピークに達し、無意識にアイカは、アテナに目で説明を求めていた。
アテナはそれを受け、言われなくても、といった様子で説明を始める。
「なぜナオヤ君がここにいて、こんなことになってるのか……聞きたいのよね。なぜ彼が、ロケット団の幹部になることになったのか……」
「……私を人質に、脅したの?」
それならば、納得は一応出来なくもない。
ナオヤのトレーナーとしての実力はアイカを上回る。チャンピオン級と言っていい。
戦力としては申し分ない。ロケット団が欲しがるような人材でもあるはずだ……が、
「まさか! いくら彼が優秀でも、怒りを買って身内に爆弾を抱え込むようなマネはしないわよ……彼は、自分から進んで私達と組むことに決めたの」
「嘘よ! 何でナオヤがそんなこと……」
「あら、さびしいこと言うのね……あなたのせいなのに」
「!?」
「……内容は教えられないけどね? 私達はナオヤ君に、そしてシルフカンパニーそのものに、取引を申し出たのよ。アイカちゃんを人質にして」
強張るアイカの顔。しかし今、人質として取り込まれたという説は否定されたのではなかったか……
「あなたを人質にしてナオヤ君を『勧誘する』ことはしないって言ったのよ。私たちが要求したのは別のこと。そしてその交渉の場で、ナオヤ君とそのお父さんに、私はあなたのレイプ映像を見せた……前回よりもさらに凄惨な目にあっているあなたの映像をね」
言いながらアテナはいつものタブレットを取り出し、アイカによく見える位置に持ってくる。そこに移っていたのは……レイプによる辱めのみならず、鞭の苦痛をもその身に刻まれ、弱弱しくおびえきった自分の姿。
「コレ見たら誰でも思うわよねえ……いくらなんでも、これじゃあなたは長くは持たないって。これ以上続けさせたら、心が壊れちゃうかも……って。
ことは一刻を争う、前回みたいに仲間を集めて助けてたりしたら間に合わない……これを見たナオヤ君は、あなたを助けるために要求を呑むことをお父さんに懇願した……が、シルフカンパニーの頭目としての責任があるお父さんは、それを拒否した。
人質がいるとはいえ、私達悪の組織に屈してしまえば、大幅なイメージダウンを始め、色々と会社そのものに不利が起こるものね……そこを考えて、苦渋の決断をしたのよ。
しかしナオヤ君にしてみれば、自分の最愛の彼女を見捨てる決断をされたわけ……そして、ここから先が私達も予想外だった。ナオヤ君はなんと、自ら父親を、シルフを裏切って私達に情報を渡したの。あなたを助けるためにね」
「…………ぇ?」
「まさかここまでしてくれるなんて思わなかったわ……私達のプランでは、短期間でとはいえ、それなりに精神を追い詰めて社長さんの方を屈服させる予定だったのに、まさかナオヤ君の方が動いてくれるなんて。よほど愛されているのね……あなた」
微動だにせず、アイカはアテナの言葉を聴いている。
「でもその結果、シルフカンパニーは大混乱に陥った。当然、その元凶となったナオヤ君はシルフ上層部を敵に回し、追われる身となり……ここに身を寄せたの。私達としては、予想外の事態にちょっとだけ責任も感じてたし、喜んで保護させてもらったわ。そしてその後、ナオヤ君と私達は……取引をしたの」
「取……引……?」
「ええ。彼を幹部として迎え入れることで一定の強い権限を持たせ、それによってあなたの身の安全を保証する代わりに……将来、シルフカンパニーを私達ロケット団に差し出すと」
「……!?」
「正確には、シルフの御曹司であり、ロケット団の幹部でもあるナオヤ君がシルフカンパニーを継ぐことで、実質的にシルフを我々の支配下に置く、ってことなんだけどね。ま、その頃にはナオヤ君なら、最高幹部くらいになってるかもしれないけど。今はナオヤ君はシルフから追放状態だけど、裏で色々とやれば、他に適当な後継者もいない上、内部情報も山ほど確保できてるあそこに彼を出戻らせることくらい簡単だわ。そして……」
一拍、
「アイカちゃん……彼はこれら全て、あなた1人のためにやってのけたのよ。自分の全てを捨てて、あなたを選んでくれたってわけ……」
……聞こえているのだろうか、
すこしアテナはそう不安になりながらも、先ほどから茫然自失といった感じで視線を空中にさまよわせているアイカを見下ろしていた。
一応、こっちを見てはいる。しかし、焦点はあっていない。
つじつまがあっているアテナの説明は……アイカの精神をガリガリと削っている。
「でもさすがに彼、心への負担が大きすぎてあんな感じになっちゃったのよね……だから、本来ならあなたと感動の再会をさせてあげたかったんだけど……彼自身の心の傷が癒えて、心の整理がつくまでは無理ね。だから……ちょっとだけよ」
言うなりアテナは、アイカの腕を取って支えながら、今までにないほど優しく抱え上げて……うつむいているナオヤの前に運んだ。
「……あんまり長くはだめよ。冗談抜きに彼の心に負担がかかるから」
口調も、いつもと違って真剣……いや、神妙とすら言えそうなそれだ。
何もかもが目の前の事態に現実味を帯びさせる中……アイカは口を開くことが出来ない。
が、
「……大丈夫」
先に口を開いたのは、ナオヤの方だった。
「心配しないで、アイカ……僕なら、大丈夫だから」
その言葉に……ナオヤを見上げるアイカ。
目の前にあったのは……うつろな目をして、しかし精一杯浮かべたような弱弱しい笑みを顔に貼り付けた……ナオヤの姿。
「……ねえ、ナオヤ」
「何?」
「……私、迷惑じゃない……? あなたから、全部奪っちゃったけど……あなたにすごく、つらいことさせちゃったけど…………これからも……」
「……」
「これからも、あなたの隣にいていいかな……?」
「……うん、ずっと一緒にいて…………アイカ」
その後、更に二言三言、言葉をかわした後……アイカは部屋を出た。
歩きながら、アイカにアテナが話しかける。
「……正直ね、私も今回ばかりはあなたに同情してるのよ。自分が原因で自分の大切な人が全てを失うなんて、女として最大級の苦痛だもの」
「……」
うつむいたまま、応えないアイカ。
「……ねえ、アイカちゃん。これは提案なのだけど」
アテナも、アイカの方は見ずに……淡々と話す。
「もしよければ……あなたもこのまま、ロケット団に身を寄せてはどうかしら? こんなことになってしまった彼を、そばで支えられるのは……あなたしかいない気がするの。私達のために働けなんていわないわ。でも……ナオヤ君のそばにいてあげてほしいから。いつも、いつまでも……ね」
☆☆☆
その十数分後、アテナは部屋に戻ってきていた。
アイカは、すでに送り終えた。
ただし、今までいたあの地下倉庫ではなく……コガネシティの一角に用意した、賓客用の快適な居住区に。
そこに送ったということが……先にアテナがかけた問いに、アイカがどう応えたのかというそもそもの答えだった。
そして、部屋に戻ったアテナの顔は……彼女本来の残虐さが全面に出た笑みになっていた。
その視線の先には、ナオヤがいる。椅子に座ってくつろいだ姿勢で、アテナの戻りを待っていたらしい、ナオヤが。
そのナオヤは、アテナのその笑みを見て自分も笑みを浮かべると……おもむろに、あごの辺りに手を引っ掛けるようにした。そして……次の瞬間。
びりぃっ、とその顔の皮が剥ぎ取られ……中から、チョウジタウンの基地にもいたロケット団幹部の顔が現れた。
変装して、今までナオヤになりきって演技をしていた、ラムダの顔が。
「上手くいったみたいだな、アテナ」
「ええ。完璧よ……堕ちたわ、あの子」
心底嬉しそうな、底冷えするような笑みを浮かべるアテナ。
その表情に、そこから読み取れる感情に、味方であるラムダすら寒気を覚える。
「さて……残るは姉の方ね……」
☆☆☆
そのさらに数時間後、
今度アテナが見下ろしているのは……愕然とした表情で、うつろな瞳で虚空に視線をさまよわせる、カリンだった。
今まで、決して短いとは言えない監禁生活にも耐えていたカリンだが……それまでとは打って変わって感情を、動揺を隠しきれていない。
あのアイカと並んで犯されていた時以来の、鉄面皮が剥がれた顔だった。
何をされたかといえば……別に輪姦されたわけでも、鞭で打たれたわけでもない。
ただ……数時間前、アイカとナオヤ(ラムダ)が顔を合わせたときの映像を見せられただけだ。
ただし、カリンに見せられた映像は……一部、音声が加工されていた。
アイカとナオヤのやり取りはそのままだ。しかし、その後のアイカとアテナのやり取り……本当は、取るに足らない世間話程度の話だったそれが、挿げ替えられていた。
カリンを追い詰める目的で、その部分は何度もリピートされている。
『……お姉ちゃんのせいだ……!』
「…………っ!」
びくっ、と、身を震わせるカリン。
期待通りの反応に、アテナは満足そうな笑みを浮かべる。
「私が、あんなビデオに騙されなければ……捕まらなければ……ナオヤは、あんなことにならないで済んだのに……! あんなビデオなければ……あんなものなければ!
――あんなもの、お姉ちゃんが作らなければ!!」
耳から飛び込んでくるその言葉に、カリンはわなわなと震える。
客観的に見れば、少しおかしい言葉。
たしかに、あんなものを作っていた……言ってみれば、脅しのネタになるような過去をわざわざ残して配布していたカリンに、全く非がないとは言えないだろう。
しかしだからと言って、しどろもどろの口調でも、カリンをここまで責めるのはどうか……ロケット団すら予想できなかった悲劇、責任がどうこう、誰が悪いということでもない。
それに、誰より悪いのはそれを悪用したロケット団なのだから。
しかし、
そんな、少々乱暴な理屈でも……このアイカの心の叫び(偽)が、この目の前の美女に限っては……大打撃になるということを、アテナは知っていた。
「……い、いや……」
狼狽するカリン。聞きたくない、とでも言う風に、首を横に振る。
しかし、拘束服で腕が固定され、耳をふさぐことは出来ない。
目を逸らしても、容赦なく耳から流れ込んでくるアイカの叫び。
『どうしてこんなことになるのよ……ナオヤも私も、幸せになりたかっただけなのに!』
『お姉ちゃんにはわからないわよ……私は別に、地位も名誉も欲しくなかった。平和に、ナオヤと仲良く暮らせればよかった……それが、こんな……!』
『……お姉ちゃんなんか、顔も見たくない……!』
「やめてぇえっ!」
叫ぶカリン。その目には……涙。
息を荒くするカリンの様子に、アテナは計画の成功を半ば確信する。
素人が書いた三文小説のように、脈絡が明らかにおかしい、無理矢理な形で吐露される、カリンへの怒りと憎悪……の、加工音声。
しかし、焦るカリンはそれに気付く気配すらない。
これには理由があることを、アテナは知っている。何せ、この反応を狙ってこの作戦を実行したのだから。
カリンの弱点……それは、人との繋がりに飢えていること。
幼い頃……それこそ、カレッジにいたころよりもずっと前から、カリンは才女だった。
同世代にポケモンに関する才能で並ぶものはおらず、優秀な成績を、学友にも教師にももてはやされる日々。一件、孤独とは無縁に見える日々だった。
しかしその実、優秀すぎる自分は、他人から一歩距離を置かれていることも、彼女は悟っていた。
そんな彼女にも、何の遠慮も気苦労もなく付き合える相手も何人かいた。
親友と呼べる女友達もいた。休日にはどこかに皆で遊びに行ったり、年相応に羽目をはずしてやんちゃな火遊びに手も出した。
学生時代には恋人もいた。それなりに深い関係になり、体も重ねたことがあった。
しかし、運命はその繋がりすら、カリンから奪う。
成績の違いによる周りとの評価・扱いの差。露骨に態度を変える教師の存在が原因で仲がこじれ、絶縁することとなった友達がいた。
当事付き合っていた男性がカリンに惚れてしまい、自分から離れていった。それをうらんで彼女から離れていった友達がいた。
付き合うことに気負ってしまい、疲れ……カリンの元を離れ、他の、自分にもっと近い女性との付き合いを選んだ恋人がいた。
どれも、ほとんど理不尽なまでの過程で訪れた、絆の断裂。
しかしそのつらさ、どうしようもなさは、カリンの心に深く刻まれている。理不尽に訪れたがゆえにこそ、よけいに。
そして今、もっともカリンが失うことを恐れている絆。
それこそが……血のつながった実の妹、アイカ。
自分がどれだけはっちゃけても、どれだけ有名になっても、何も気にすることなく受け入れていくれる最愛の妹。ゼロ距離で何の遠慮もなく互いに接することが出来る存在。
カリンのもとにたびたび訪れた心の傷。
それをいつも癒してくれていたのは、テレビ電話越しのアイカとのバカ話だった。
……そのアイカが今、無理矢理な理屈だろうと何だろうと、自分を拒絶しようとしている。自分から離れていこうとしている、この状況。
(耐え難いでしょう……? あなたの心の支え。最後の砦……そう言っても差し支えないわ、彼女という存在は。それに気付けたのは幸運だったわ……最初の姉妹揃った陵辱の時にね)
あの時のことを思い出すアテナ。
あの陵辱の際、アテナの意識に引っかかったのは、カリンとアイカの強烈な意志の強さを秘めた瞳……だけではなかった。
カリンが、アイカが捕らえられた責任の一端が自分にあると聞かされた時、そしてアイカを目の前にした時の、表情の変化。
怒りや悲しみ、憎しみを予想していたアテナだが……カリンの顔に浮かんだのは、困惑と焦り、そして恐怖。アイカに嫌われるのでは、という不安。
そこから導き出した……アイカという大弱点。アテナはそれに気付いた時、勝利を確信して高笑いしたほどだ。
しかも今回、アテナはカリンにもう1つ、その焦りを『罪悪感』によって助長するための仕掛けを、最初から施していた。
それは、ドロドロに犯され、鞭で打たれまでしている妹・アイカと違い……自分は何もされていないこと。表の顔として働いてもらう、いわば賓客扱いだという立場ゆえに、自由はなくとも、アイカと180度違う丁重な扱いを受けている事実。
妹はあんな目にあっている。なのに私は安全な部屋で、ぬくぬくと一日を過ごすだけ。
何の苦痛も辱めも受けていない。アイカは、今にも心が砕け散りそうな責め苦にさらされていたというのに。
……こんなところまで、自分には、『立場や地位の違い』が付きまとうのか。
それに気付き、そんな思いがカリンの脳内に浮かぶのは……時間の問題。
(このまま眺めてるのも面白いけど……ちょっとこれ見た感じ、予想以上にショックが大きそうね。このままだと壊れちゃうかも……仕方ない、もう仕上げちゃいましょ)
目の前で目に見えて狼狽するカリンを眺めていたアテナは、その傍らにしゃがみこみ、アイカの時と同じようにささやく。
「ねえ、カリン……アイカちゃんに謝らせてあげましょうか?」
「え……?」
「このままお別れなんて、あなたも嫌でしょ? だったら、彼女にちゃんと謝れば、許してもらえるわよ……大丈夫、さすがに私達も、それを邪魔するほど鬼じゃないわ」
「…………」
うつろな瞳のカリンに、止めを刺すようにアテナが言う。
「このままお別れなんてことになったら一生後悔するわよ? まずは話さなきゃ……絶対に諦めちゃダメ、何をしてでも、彼女との関係を修復するのよ……」
(そう……そしてその手段は唯一つ。あなたも彼女と同じように、私達ロケット団に協力すること……。アイカちゃんの今の唯一の望みであり幸せは、ナオヤ君の役に立つこと。これからロケット団に身を置くナオヤ君の役に立つために、アイカちゃんはロケット団に協力する。そしてあなたもまた、アイカちゃんに嫌われたくないから、ロケット団に協力する……ふふっ、最高のハッピーエンドね)
アテナは立ち上がり、別室で見ている部下に合図を出す。
すると部屋の扉が開き……そこから、
「……カリンお姉ちゃん」
「…………っ! アイ、カ……!」
事前にアテナに、『上手く言ってカリンをロケット団に、自分に協力させてね』といい含められているアイカが、部屋に入ってきた。
アテナは、後は何もしなくても終わると確信して……部屋を後にする。
部屋に、2人の……壊れかけの姉妹を残して。
☆☆☆
その更に数時間後。
監視モニターには……寝間着のようにゆったりとした、着ていて何もストレスもない普通の服を与えられ、それに身を包んだアイカとカリンが……抱きあって眠っている。
片方はこれから姉と共に、最愛の少年のために働けることに安堵して、
もう片方は、最愛の妹に嫌われる心配がなくなったことに安堵して、
最後に残った幸せを逃すまいと必死にあがいた先にたどり着いた先が、今のこの光景。
眺めるアテナは、満足そうにほほえむと……その上司に、任務完了の報告を入れるため、通信端末をいじり始めた。
「けどアテナ様……大丈夫なんですか?」
モニターを操作していた下っ端が、ふいに訪ねる。
「あら、何が?」
「2人を陥落したのはいいっすけど、肝心要のあのアイカって娘を篭絡するのに使ったナオヤに関しては、ラムダ様の変装なんでしょ? それがばれたら、一気に滅茶苦茶になっちゃうんじゃ……」
「心配は要らないわよ。会う機会を少なくする理由なんていくらでも付けられるわ。あの2人の力が在れば、私達はそう遠くない未来、カントーもジョウトも裏から制圧できる。その過程で本物のナオヤ君を捕えて、こっちはこっちで調教してしまえばいいのよ」
「……そんなに上手く行きますかね?」
「大丈夫よ、彼女達を人質にすれば。それに篭絡事態はもっと簡単だわ……アイカちゃんが言ってたもの。ナオヤ君は……」
一拍、
「もてるけど初心でヘタレだから、女性経験はアイカちゃんと、ヤマブキシティにいるナツメちゃんくらいしかないんだ、ってね」
☆☆☆
アテナは気づかない。
アイカとカリン、モニターの向こうにいる2人の、閉じられた目。
それにかくれた瞳が……2人とも、『あの目』になっていることに。
アテナは気付かない。
『作戦』は、成功などしていないことに。
アテナは気付かない。
ナオヤとの邂逅の時、不審さを覚えたアイカが何気なくかわした会話の意味に。
『……落ち着いたら、さ。一緒に暮らそうね』
『そうだね……一緒に暮らそう、アイカ』
『私と……そうだ、どうせならナツメも一緒にさ』
『ナツメも?』
『うん。だって……私のほかに唯一、ヘタレのナオヤが手をつけた女の子だもん……ナツメもさ、一緒に連れて行こうよ、これから……』
『そうだね……3人で一緒に、幸せになろうね』
(……私の旦那様はもっと節操なしなのよ、ばーか……)
アテナは気づかない。
アイカとカリンを会わせたあの瞬間、計画が砕け散ったことに。
2人が捕まるよりもずっと前……チョウジタウンの一件の直後、
今後何かあった時に備えて、あらかじめアイカがカリンに、
『私がお姉ちゃんを『カリンお姉ちゃん』って名前付けで呼んだら、何かしら裏があるって合図だからね』
……と伝えていたことを知らないのだから。
「……で、どうするお姉ちゃん」
「どうもこうもないわ。今は耐えて……けど後で絶対、あのケバ女けちょんけちょんにしてブタ箱にぶちこむわよ」
「了解……あら? それ……割とすぐに実行できそうよ?」
アイカの視線の先では……平らなはずの部屋の天井が、うねうねとうごめきだしていた。