ポケットモンスター Erotic Generation 作:破戒僧
「いいぞベイベー! 逃げる奴はロケット団だ! 逃げない奴はよく訓練されたロケット団だ! ホントコガネシティは地獄よね、フゥーハハァ―――ッ!!」
「やられたらやり返す! やられてなくてもやり返す!! 身に覚えがない奴にもやり返す!!! だれかれ構わず……八つ当たりよッッ!!」
自分で言うのもなんだけども……今現在、蹂躙、という以外に形容しようのない大破壊がこのホテルの中で巻き起こっている。
犯人、私。あとお姉ちゃん。
そして、それぞれの相棒であるヘルガー×2。
ロケット団やそのポケモンを蹴散らすのはもちろん、見境なしの無差別攻撃でホテルの壁や床ごとぶち抜いてぶち砕いて壊して回っている。そりゃもう、凄まじい勢いで。
壁をぶち抜き、天井を、床を崩落させ、
セキュリティシステムを破壊し、エレベーターを焼き落とし、
耐火シャッターを焼き尽くし、防火扉を融解させ、
とにかく何もかも焼き払って進む。後に残るのは灰と燃えカスばかりなり。
そんな、自重ゼロ、鬱憤晴らす目的100%で大暴れしてる状態なので、後ろから聞こえるメイの慌てた声なんかもあんまり頭に入ってこなかったりする。
「ちょっとお母さんにカリンおばさん!? いくらなんでも怖し……あ、いや、壊し過ぎだってば! ホテル崩れるよ!? 腹立つのはわかるけど、もうちょっと落ち着いて……」
「いいのよこんなホテル、あっても腹立つだけだし、どうせ邪な目的にしか使われないんだから!」
「いやそういう問題じゃなくて……ってか純粋に危ないんだってばぁ! あーもう、お父さんも電話なんかしてないで止めてよ! このままじゃお母さんとカリンおばさんがこのホテル瓦礫の山にしちゃうよ!?」
「――よし、じゃよろしく頼むよ(ピッ)。いいよアイカ、思いっきりやっちゃって。この後ここの土地とか全部シルフで買い上げてマンション建てるから」
「だめだ、お父さんも暴走モード入ってる! てかこんな時に何新しいビジネスプラン立ち上げちゃってんのこの御曹司!? ジョウト地方進出の第一歩!?」
なんかメイ、しばらく見ない間にツッコミ鋭くなったわね。
ともあれ、旦那様の度量と財力により本格的に手加減する理由がなくなったので、解体作業よろしく上の階から下の階へと、1階ずつ順番に、しかし迅速に下りながらホテルを消毒していく。汚物は消毒的な意味で。
……っていうか、派手に炎タイプの技使って暴れすぎたせいで、防火扉とかシャッターがほぼ全部閉まっちゃってて時間ロスするわね……ちょっと自重しときゃよかった。
すると、3分の2くらい下った所で、階段の下から……聞き覚えのある声が聞こえてきた。
部下を叱責しながら逃げていると思しき、女の声が。
それを聞いた直後、私とお姉ちゃんは視線を交わらせ……それだけでお互いの役割を確認し終えると、即座に動いた。
☆☆☆
勝ちの決まった戦いのはずだった。
いやそもそも、戦いだとも思っていなかった。
自分の与える苦痛に、快楽に喘ぎ、己の無力さを呪うことしか出来なかったはずの妹と、その妹を失うことを何より恐れる姉。
……調教を経て肉奴隷に成り下がった彼女達を、自分達の新たな手ごまとして周知させるだけのはずだった。
しかし現実は……今正に、自分は、そしてロケット団は窮地と呼ぶのも生ぬるい、絶体絶命の危機に追い込まれている。
(バカな……完全にあの2人の心は堕ちていたはずなのに! しかも、明らかに外部と連絡を取り合ってこんな作戦まで……くっ、一体どこで狂ったというの!? 調教は完璧だった、これは確かだわ……あのおびえ方は演技じゃない。じゃあその後!? ラムダの変装に気付かれた!? でもそんなそぶりは……それとも姉が何か吹き込んだ? いや、カリンはカリンでギリギリだったはずだし、その時見た不安な様子も演技じゃ……)
走りながら幾度思い返そうとも、答えはでてこない。
「――っ、またなの!?」
走っていたアテナの眼前に、コレまで何度も見た鉄の壁が立ちはだかった。
付近の階における火災などに反応して閉まる、防火シャッターが。
その隅の方についている通路用扉を開けながら、アテナは悪態をつく。
「さっきから何度も何度も……何なのよ、これは!? 降りるのに邪魔で仕方がないわ! 警察の連中が催涙ガスでも使って、それに反応したの!?」
「い、いえ、そのような様子はありません……ただ……」
「ただ、何よ!?」
「う、上の階におびただしい数と規模の熱源反応がありまして……おそらくポケモンか、相当に強力な銃火器類を使って制圧作戦を開始しているのかと……」
「なっ……!? ほ、他の階層の火災警報設備が作動するくらいの規模で!? ありえない……火炎放射器でも持ち出さない限り、そんなこと……」
「火炎放射器じゃなくて『かえんほうしゃ』よ、ばーか」
――ボゥォオオォォッ!!!
「「「!!?」」」
突如……目の前にまたしても見えてきていた防火シャッターが、反対側から火炎を吹き付けられたことによって赤熱し……アテナたちの目の前で溶け落ちた。
吹き付ける、それだけで火傷しそうな熱風にさらされて驚愕している一同の眼前に……その炎を押しのける形で、1匹のヘルガーが姿を表す。
そして、すっかり溶けてなくなってしまったシャッターの向こうには……ジョウト地方ポケモンチャンピオン・カリンが仁王立ちで立っていた。
「やっほー、おばさん。そんなに急いでどこ行くの? 随分慌ててるみたいだけど」
「っ……! カリン……!」
と、その直後……今しがた通ってきたばかりの、後ろのシャッターにも異変が起こった。
こちらは、向こう側からのとんでもない威力の爆発によってひしゃげ、引きちぎれ、吹き飛んで転がった。そしてやはり、高熱によって一部が溶けてしまっている。
その向こうから現れたのは……やはりというかアイカ。そして、相棒のヘルガー。
「……っ、あなたたち……っ!!」
「ありゃ? 思ったより余裕無さそうね……マジで追い込まれてる感じ?」
「みたいね。まあ、無理ないけどねえ……前後から焼死が迫ってきてるわけだから」
軽口を飛び交わす2人姉妹が醸し出している空気とは対照的に、アテナは、かみ合っている奥歯がひび割れんばかりに顎に力を入れ、ギリギリと歯を食いしばっていた。
「よくも……こんなふざけた真似してくれたわね、あなたたち……っ!」
「わー、この時点ですでにすごい負け犬感」
「虚勢を張る余裕すらないみたいだものね……ま、だからって容赦なんてしてあげないけど。絶対に」
「それは同感」
「バカにして……っ! ふん、まあいいわ……今回はどうやら失敗だったみたいだけど、この借りはいつか必ず返させてもらうから……。私を、そしてロケット団を虚仮にしたこと、後悔させてあげるわよ……」
「あら、何そのセリフ? まるで私達2人から逃げられるつもりでいるみたいに聞こえるんだけど……頭大丈夫?」
「はっ、見くびらないでくれるかしら? チョウジタウンの基地じゃ後れを取ったけど、あいにくだったわね……今日は私も、万が一のことを考えて最強メンバーをそろえてきてあるのよ!」
アテナは、腰のホルダーに装着しているモンスターボールを見せつけながら言い放つ。
もっとも、アテナの言う『万が一の事態』とは、今のこのような状況ではなく……何らかの外部からの攻撃やスパイの侵入などといった、やむを得ず戦闘を行う可能性、程度の認識だったが……それでも、彼女の最強の6匹をそろえてきていることに違いはなかった。
ゆえに、アテナは今自分が言ったことに、自分で微塵も疑いを持っていない。
たしかに、四天王級のアイカとチャンピオンであるカリンを同時に相手取るのは至難だとはわかっているが、こちらには10人以上の部下もいる。そして自分のポケモンは、特に強い6匹をそろえてある。
ならば何を恐れる必要がある……と。
最悪、部下を囮にすれば、自分だけなら逃げ切れると……信じて疑っていない。
……もっとも、そんなものはただの希望的観測、と呼ぶのもおこがましいほどの低レベルな願望に過ぎなかったと、数十秒後には悟ることになるのだが。
「はぁ……おめでたい頭を持ってある意味幸せね……じゃはっきり言ったげるけど、私もアイカも、あんたたちは1人たりとも逃がすつもりは無いわよ」
「ふん、調子に乗っていればいいわ……私はあなたの「そもそも、あんたこの状況がすでにとんでもなく不利なことになってるんだ、ってわかってる?」……何ですって?」
自分のセリフをさえぎってぴしゃりと言い放たれたカリンの言葉に、アテナは疑念を僅かに顔に浮かべる。
「今この状況……あんたに不利な要素がざっと5つあるわよ? 1つ目……あんた達は、私達2人を同時に相手しなければいけないこと」
「……ふん、たかが2人でしょう? こっちは10人以上……」
「2つ目……私達2人がかなり怒ってること」
またしてもさえぎり、カリンは続ける。
お前の話など聞くつもりはない、とでも言うように。
「3つ目……ここは高層ビルである上に、私たちがあなた達を前後で挟み撃ちにしてること。つまり……逃げ場がどこにもないこと。そして4つ目……私達のヘルガー、よく見て御覧なさい? 普通と違うわよ?」
「? 何を……」
そこまで言って言葉を止めたアテナは、そこにいたってようやく気付いた。
前後を固めている2匹のヘルガー……その首もとに、それぞれ何かがついていることに。
前方にいるカリンのヘルガーの首元。
そこには首輪がついていて……光灯の光を反射して虹色にきらめく、丸い宝石のような何かがぶら下がっていた。よく見るとその中心部に……揺らめく炎のような図形が見える。
さらによく見ると、それと似たような形の宝石のついたブレスレットを、カリンが手首につけている。
そして、後ろにいるアイカのヘルガーの首もとには……同じように首輪がついていた。
ただしその見た目は、カリンのヘルガーの首輪とは全く違い、機械の首輪だった。大きくは無いが、メカメカしい外見がそれに疑いを持たせない。
宝石などはついていないようだが、こちらはこちらで一体どういうものなのかまったくわからない。
2匹のヘルガーの2つの首輪。
アテナはそのうち……カリンが持っている1つの方だけに、心当たりがあった。
「……っ!? まさかそれは……最近カロス地方で見つかって注目され始めた……!?」
「そーゆーこと……ついさっき届いたのよ。専門機関に作成を依頼してた、私とヘルガーの取っておきのアイテムがね……」
そして、カリンは腕のリング――メガリングを見せ付けるようにして、
「ヘルガー!! メガシンカ!!」
直後、
虹色の光に包まれ……カリンのヘルガーが、『メガヘルガー』に『メガシンカ』した。
伸びた角を始め、より強力に、より禍々しく変わった眼前のヘルガーの姿に……アテナは、冷や汗をたらりと流していた。
「ふふっ……聞いたことくらいはあるみたいね? 『メガシンカ』……私もヘルガーも普段は使わないんだけど、今回は特別に見せてあげるわ」
「はははっ、お姉ちゃんド本気ね、かわいそ」
「あら、そういうアイカだって……ナオヤ君からそんなとんでもない……公式戦じゃ反則確実の外道なアイテムまで貰って使おうとしてるくせに」
「まあね……じゃ、そろそろ始めない? 時間があるわけじゃないし……時間かけるのもバカらしいし」
「同感ね……行くわよアイカ」
「ええ、お姉ちゃん」
――直後、
ポケモンを出し、一応は臨戦態勢で待ち構えていた、アテナ含むロケット団たちに、前後から……灼熱の炎が殺到した。
コガネシティ決戦編、続きます。