ポケットモンスター Erotic Generation 作:破戒僧
私は、ジョウト地方エンジュシティ出身
ナオヤは、カントー地方ヤマブキシティ出身。
ナツメも、同じ。
そんな3人で……小さい頃、よく一緒に遊んでいた。
幼稚園から、トレーナースクールの初等部……と、常に一緒だった私たち3人は……ポケモン関連にしても、いつも一緒に遊んで、成長していった。
私のデルビル(今はヘルガーだけど)、ナオヤのポリゴン、そしてナツメのケーシィ……みんなでがんばって、いつか最強のポケモントレーナーになる! なんて大言壮語わめき散らしながら、がむしゃらにがんばってたっけな。
まあ……身近に、目標足りえる人が何人かいた、っていうのも……原因の一つね。
……しかし、そんな子供の他愛も無い夢物語だったはずの会話内容を……私達は3人共、それぞれ着々とかなえつつある。
私もナオヤも、それぞれイッシュ地方でチャンピオン級と四天王級の所までポケモンを育てた。
そして、ナツメも……正式な手順踏んだとはいえ、既存のジムを蹴落として、って形だけど……カントー随一の大きさのジムを統括するジムリーダーにまで上り詰めた。
……そんな風に、一路『高み』を目指して進撃していく私たちが、こうして再び出会ったのも……もしかしたら、必然だったのかも。
…………しかし、
この子とは……それ以外にも、一度きっちり話さなきゃいけない『因縁』がある……そのことを、私は、再会したこの時点で……失念していた。
☆☆☆
「びっくりしたわよ……まさか、あんたがジムリーダーなんかになってるなんてね……」
「あら、知らなかった? 一応、雑誌とかで取り上げられたりもしたのよ? ……まあ、イッシュ地方にいたんじゃ、見なくても無理ないか」
「かもね……でも、ホントにすごいじゃない。『カントー地方最年少でジムリーダーになった天才少女』って、あちこちで評判なんだって?」
「ふふっ、ありがと。まあ、ホントはもうだいぶ前にジムリーダー資格とってたんだけど……さすがに前例が無い年齢だから、ポケモンリーグの委員会もちょっとごたごたしてたみたい。似たような年齢のジムリーダーなら、ほかの地方探せばいるのにね」
そんな感じで、私とナツメは……適当に案内してもらった、ヤマブキシティのこじゃれた喫茶店でお茶している。
……こうして話すのなんて、ホントに久しぶりだから……ガールズトークが弾む弾む。
しかも、『ポケモン』という共通の話題があるもんだから、それもなおさら。
自画自賛になっちゃうけど、2人どちらも凄腕のトレーナーである者同士、思う所も似たようなところがあるし。
昔話や、私とナオヤが引っ越してからの話など……楽しげな笑い声の響き渡る会話は、途切れることが無い。
「そういえば、アイカはお父さんの仕事の都合で、イッシュ地方に引っ越したのよね?」
「そうそう。同じ頃、ナオヤもホウエン地方への引越しが決まって……でも、あの時ナツメってば、ばらばらになるのが嫌で大泣きしてたっけね~……?」
「ちょっ……そ、それは言わなくていいでしょ!」
「照れないでよ~、親友としては、別れを惜しんでくれるのは嬉しかったんだからさ。それに、大泣きしちゃったのは私も一緒だったし」
「……でもその後、ナオヤ君はまた引っ越して、イッシュ地方でアイカと一緒の町になったんでしょ? あの時はちょっと、仲間はずれみたいでさびしかったわよ?」
「そんなこといわれても、親が決めたことだったし……」
口元を尖らせたりしつつも、楽しい会話は続く。
そんな感じで話してる私達を……好奇の視線で見てる、カフェの他のお客さん達。
……まあ、町の超実力者たる『ジムリーダー』が、誰かもわからない女のこと親しげに、すごく楽しそうに話してたら、そりゃ気になるか……
……ま、私達は気にしないけど。
すると、そんな中、
「……そういえば、さ?」
「うん、何?」
私より一足先に、ケーキを食べ終わったナツメが……ふと、思い出したように言った。
「アイカ、てっきりナオヤ君と一緒に来ると思ってたんだけど……別行動だったの?」
「ああ、うん。アイツはアイツで忙しいみたいよ? ほら、実家が実家だし……一緒に集まれなくて、残念だった?」
「え? ああ、いや、そういうわけじゃないわ。ただ……うん、その……」
「?」
「……もしかしたら、あなたとナオヤ君が、さ……一緒に旅とかしてるのかな、とか思ってたから、ね……」
? 何?
さっきから……ナツメのセリフに所々引っ掛かりが感じられる。
……その様子に……私の脳内では、小さい頃に、ナオヤも交えた3人で遊んでた記憶の中から……それに当てはまるものが、ふと浮かんだ。
……そうだ、そういえば……前にも、こんなことが……
「……まあ、でも……ナオヤ君も忙しいわよね。仮にも『シルフ』の御曹司なんだし……たまの帰省にも、お見合いお見合いで大変だ、って聞いたわ」
「ああ、そうみたいね。そのへんも、私がアイツと一緒に旅するわけにいかない理由の一つ……ってわけ。いくらなんでも、お見合いの場に他の女がいたら、いくら断るの前提のお見合いでも失礼でしょ?」
「他の女、って……彼女とかでもないんだし、ちょっと表現極端じゃない?」
苦笑しつつ言うナツメ……って、あれ?
「うん? 彼女だよ?」
「は?」
「いや、だから、私。ナオヤの恋人」
「……え?」
きょとんとするナツメ……あれ、言ってなかったっけ?
ああ、そういえば……会話には出して無かったかも……私が、アイツと付き合い始めた、って……。
あーあー、そりゃ驚くのも無理ないわ。ごめんごめん。
「……えっ!? あ、アイカ……ナオヤ君と付き合ってるの?」
「あ、うん。ごめん、言ってなかったっけ?」
「ホントに!?」
「ホント……よ? イッシュ地方で、そこそこ冒険してから、ってタイミングで」
「……えええぇええっ!?」
突然、普段のクールかつキュートなナツメからは創造もできない感じで驚かれた。
おー……この子のこんな顔、なかなか見られないなー……貴重貴重。
小学校の頃から中途半端にクールが滲み出していたナツメだし……でも、そんなに驚くとこかな?
いや、自分で言うのもどうかと思うけど……年頃の男と女が、長いこと近所で仲良くしてたんだから、そういうことになるケースもままある……って予想できないかな?
や、まあ、昔仲がよかった幼馴染に対してそういうの考えろ、って言うのもちょっと変な気がするけど……でも、今のはいくらなんでも驚きすぎじゃない?
と、思ったら、なにやらナツメは神妙な顔をして……
「……そっか……そういうことだったのね……なるほど、だから私の予知夢でこのところ……なら、まさか……?」
……何をぶつぶつ言ってんのかしら?
や、あの……こんな真昼間から、カフェのど真ん中で、そんな……顎に手添えてコ○ン君ばりの思案顔……やるなとは言わないけど……ちょっと浮いてるわよ?
「でも、それならアイカは……友達として……でも、あまりにかわいそう……でも……いいえ、だからこそ私は……」
「もしもーし、ナツメー?」
「……はっ! ご、ごめんねアイカ、考え事してたわ……」
うん、知ってる。
するとナツメは……何か、決心を固めたような顔になって……
「アイカ……私は、あなたのことを友達……ううん、親友だと思ってるわ……」
……何、いきなり?
「……でもね、だからこそ……言っておきたいの」
「……ふーん……何を?」
「……あのね……」
一拍、
「……あのね……ナオヤ君は……私と結婚するの」
………………
………………はい?
え、ちょ……何言ってんの?
「え? ちょ……ナツメ? それ……どういうこと?」
「アイカ……あなたは、近い将来……ナオヤ君と別れることになる……。そして……ナオヤ君と結婚するのは……私なのよ…………ごめん」
いや、答えになってないんですけど……
……だから、さ……何言ってるの、って……
言い終わってから、ちょっと目をそらしてしまったナツメは……顔が赤い?
……えーと、つまり……?
「……ナツメも……ナオヤのことが……好き?」
「……! …………ええ……」
こくり、とうなずく。
……あー……そういえば……
小さい頃、一緒に遊んでた頃からも……ちょくちょく、そんな兆しがあったような……ナオヤと話したり、手つないだりして、時々顔が赤くなったり……
毎日、一緒に登下校してたし……
休日はほぼ毎日、お互いの家に遊びに行ってたし……
平日も、勉強会って名目で、放課後もあって一緒に宿題したり……遊んだり……
……や、それ全部……私にも、共通して当てはまるんだけどね……
今思えば……自分に正直じゃなかっただけで、私もあの頃から、ナオヤのこと好きだったんだけど……
……つまり、だ。
もう一度、今度は詳しく確認すると……
「……ナツメも……ナオヤが好きなのね?」
「…………ええ……」
……そっかー……
「小さい頃の気の迷いとか、そういうんじゃなくて……本気で、結婚したい……っていう部類の、『好き』……なのね……?」
「……ええ……!」
……そっかー……
「……それじゃ今のは……『私には負けないぞ!』っていう、宣戦布告……って意味なのね……?」
「……いや、それは違うけど」
……そっ……あれ?
「……え?」
え? 違うの?
いや、だって今……『私と結婚する』って……
わたしてっきり、昼ドラばりに『あんたから奪ってやるから!』みたいな感じで宣戦布告されたもんだと……
するとナツメは……
「いや、そうじゃなくて……それは、その……もう、決まってること、っていうか……確定事項なの。だから、アイカには、ごめん、って……」
「……いや、だからそれがどういうことよ?」
挑発? アンタなんか目じゃないわ的な?
……んー……さすがにそれはちょっと私も腹立つんだけど……? でも、ナツメってそんなこと言うような子じゃなかったわよね……?
「いや、そうじゃなくて……」
「……あ! もしかして……ナツメもナオヤとお見合いの予定があるってことか!」
あーあー! なるほど、それで『確定事項』か! なるほど……そりゃ、そういう言い方になるのも無理ないわ! お見合いって、お互いが基本、結婚する意思ありでやるもんだし。
ナツメ、ジムリーダーだもんね……そりゃ、将来有望な者同士、ナオヤのお父さん(社長)がくっつけようとするのも大いにありうるか。
でも、残念というか、その……ナオヤは、その『お見合い』、断るつもりで……っていうか、ナツメだけじゃなくて、他にも大勢とお見合いしてるのよ、ナオヤは。
……1つの例外もなく、全部断ってるけど。
だから、そういうことなら……
「いや、そういう意味じゃなくて……いや、お見合いの予定は確かにあるけど……私が言ってるのは『確定事項』として、私がナオヤ君と……」
「じゃ一体どういう意味なのよそれ!?」
つい取り乱してしまった。けど、仕方ないと思う。
あーもう、何なのよ一体!? ナツメ、まさかあんたホントに私のこと見下してバカにしてるんじゃないでしょうね!? 確定事項って何よ確定事項って……
「いや、だから……『予知』よ……『予知』……」
「……は?」
『予知』って……未来の出来事がわかるっていう、あれ?
……ああ、そういえば……ナツメの家ってエスパーの家系だとか何とか……それで、未来予知能力も使える……ってこと?
……その、予知能力が……どうしたっての?
「……見えるのよ……私とナオヤ君の、結婚生活が……」
「…………は?」
……見える?
……えっと……つまり、それって……
「私がナオヤ君と、結婚して……子供も生まれて……幸せな家庭を築ける未来……毎晩、夢に見るの。だから……」
「……もしかして、その『夢』があるから……?」
「ええ……だから、ナオヤ君と結婚するのは私……だからアイカは……」
「……アホらし」
「…………え?」
と、
神妙に話してたナツメが……いきなりきょとんとした。今の私のセリフで、かな? ……そんなに意外だった?
いや、でも……ねえ?
いくらなんでも……そんなこと、唐突に言われても……
「あ、アイカ……?」
「何?」
「……怒らない……の? 私、いずれ、あなたからナオヤ君を……」
「いや、それ以前に信じてないから」
「え?」
驚くナツメその2。いや、なぜ驚く?
いや、だってそんな『夢』で将来決定付けられても……そもそも私、そういう占いの類とか信じない方だしさあ……
私としては、そんな夢なんかでいちいち一喜一憂して(夢の中の幸せな新婚生活までは否定しないけど)、しかも私に対して罪悪感覚えるとか、ちょっとそれ忙しすぎじゃない?
というか、ナツメそれ信じてるの? マジ?
「う、占いって……私のはれっきとした『予知』で、そんな占いなんて不確かなものじゃ……」
「どっちも似たようなもんだって。ていうか、別に私、ナオヤと別れる気ないし……」
「で、でも予知夢で……それに、私だって結婚しない気ないし……」
「日本語変よ、それ」
っていうか……あんたそれ、あんたがナオヤと結婚するのを前提に話すな。あいつと結婚するのは私だから。
「やっ、そんな……わ、私がナオヤ君と結婚するのよ! 夢にもそう見たし……私もそう決めてるもの!」
「だからそこ勝手に決めるなって言ってんの! ナオヤと付き合ってるの私だし、この先何があろうと別れる気なんてないし、つかそもそも私は予知も占いも信じないの!」
ぶっちゃけ、ノロケだけど……私とナオヤはそんじょそこらのカップルとはレベルの違う絆で結ばれてる……っていう自覚がある。
プラズマ団関連で、何度も共闘して、死線もくぐったし……体の関係だって、数えくれないくらい持った。
さらには……まあ、私としては……『浮気は男の甲斐性』ってことで……多少の浮気なら、本気にならない限り容認する方向性である。
現に最近も、アララギ博士やマコモさん、フウロちゃんあたりが『借りて』るし。
まあ、ナオヤが魅力的なのは私が一番よく知ってるし……私自身、ポケモン相手にセックスしたりするもんね……お互い様ってことで。
……それでも、
「だからって……私だって、そんなの認めたくない! 私だって、ナオヤ君と結婚したい……っていうか、するつもりだもの!」
「……へー、言ってくれるじゃない……相変わらずのクールさだと思ったら、しばらく会わないうちに、随分とアクティブにもなってたみたいね……?」
……なるほど、
予知夢うんぬんはこの際置いとくとしても……彼女……ナツメが、ナオヤを好きな気持ちは、本物……ということらしい。
「わ、私っ……今度、お見合いすることになってるわ! そこで、きっとナオヤ君を振り向かせてみせるつもりだからっ!」
「残念でした……ナオヤにとってはそれ、父親に勝手に設定された、断るの前提のお見合いなのよ? 今までもそうしてきたし、そもそも私っていう女がいるもの!」
「そっ、そんなの、どうとでも……私、何ならその場で、ナオヤ君に抱かれたって構わないと思ってるんだから! 布団だって用意するつもりでいるしっ!」
「あ~らら、短絡的じゃなぁい? それに、仮にそれが成功したとしても、私なんてアイツにもう数えるのが疲れるくらいヤられてるわよ?」
「そのくらいこれから巻き返すわ! そのために、処女も何もかも今まで大事に取っておいたのよ……前も後ろも上も、私の『初めて』全部ナオヤ君に捧げるために!」
「ぐっ……や、やるわね……」
初物か……ううむ、中々に強力……!
ナオヤ、私はもちろん、博士とかマコモさんとか、フウロさんとかカミツレさんとか、基本的に経験豊富でオープンな感じの女の人ばっかり最近抱いてるからなあ……
処女の初々しい反応は、確かにぐっとくるかも……
……それ以前に……私の処女、デルビルにあげちゃったんだっけな……
いや、それ自体に後悔があるわけじゃないけどね……ヘルガーとなった今でも、私に色々な面で尽くしてくれてるし……
「そ、それに、何度も言うけど、私は『予知夢』で彼との明るい未来をもう見てるの! 結婚して、子供も生まれて……」
「だから! それを私は信じないって言ってんの!」
「ホントに当たるのよ私の予知夢! 昔から!」
「昔からって何よ、例えば?」
「例えば、その……ほら、アイカが賞味期限切れのお菓子食べてお腹壊して遠足いけなかったあの件! アレも私予知してたのよ?」
「なあっ!? ちょ……あれわかってたのあんた!?」
なら教えてよ事前に! あの時私、楽しみにしてた遠足行けなくてしくしくと枕をぬらしてたんだから!
「とっ……ともかく! 私はその『予知』を踏まえて、今後の人生プランまで組み立ててるのよ! ナオヤ君と2人の人生の!」
「私にはそんなもん要らないわね。行き当たりばったり、障害はその都度粉砕していくっていうスタイルで幸せになるんだから!」
「わっ……私なんて、もう子供の名前や進路まで考えてあるんだから!」
「甘いわね! 私なんてもう子供産んだわよ!」
「はっ!? なにでたらめ言ってるのよ!? アイカあなたまだ16でしょ!?」
「……でたらめ……だったらよかったんだけどね……」
弁明したいけど、まさかポケモンを産んだとはいえないしなあ……。
いや、勘違いしないでね? だからって何も変わらない。メイは私とナオヤの子供よ?
そしてナツメ、名前はいいけど、進路まできめてやりなさんな。自主性自主性。
……しかし、まあ……
「……お互い……退く気は無さそうね?」
「ええ……まあ、この展開は……『予知』するまでもなかったものだけれど……」
……正直、これは私も本気にならざるを得ない展開……だと、そう思う。
単なるセックスフレンドではなく、将来の伴侶、としてのナオヤをかけた……女と女の戦い。
そんじょそこらの女相手なら、負ける気なんて微塵もしないけど……今、目の前にいるこの美少女は……私にとっても油断できない存在だ。
同じ『幼馴染』であり……同じように、ナオヤのことをよく知っている仲。
ロングの黒髪に、精悍な顔立ち……とまあ、ルックスも、美女と言っていいそれ。
そして何より……
……同じ気持ちを抱いてるからわかる。
彼女……ナツメも……本気で、ナオヤが好きだ……と。
「……負けないわよ?」
「……そのまま返すわ」
……たった一言だけ、それだけの応答で……締めくくられた舌戦。
しかし、それだけで……事足りた。考えることは……同じだろうから。
……上等よ、ナツメ……久しぶりに会ったとこ悪いけど……あんたの望みはかなえてやれないわね……
ナオヤは……絶対に私と結婚するんだから!!
……さて、そうと決まれば……
……前哨戦がてら……『女』の戦いの前に、『ポケモン』の戦いで勝負させてもらおうかしら……?
そこであなたに勝って、まず白星つけて勢いを付けてあげるんだから……!
腰のベルトに装着してる、6つのモンスターボール……それをちらりと見せると、どうやらナツメも言いたいことがわかったらしい。
「……いいかしら? ジムリーダーさん……?」
「もちろん、OK……と、言いたい所なのだけど……」
…………あれ?
え? ダメなの? 何で?
てっきりここはこのまま、女の意地を賭けたポケモンバトルにつながっていくものだとばかり……
「……私としても、そうしたいんだけど……今、ちょっと立て込んでてね……」
「へー……何? 隣の格闘道場から、ジムの座奪還狙って挑戦状でも受け取ってるの?」
「いや、それはもうむしろ年中行事だから別に特筆するようなことじゃないわね」
「……あ、そう……」
師範さん、未練たらたらですね。
まあ、『男は一度決めたことは諦めない!』っていう観点から見れば、それも美学なのかもしれないけど……。
でも、それなら何でダメなの?
「……ジムリーダーは、ポケモンジムの責任者、って役割のほかに……所属する町の治安維持における役割も持ってるのは知ってるわよね?」
「? ええ、そうね……警察と協力したりするわね」
たしか、そうだ……プラズマ団に対して、アーティさんとかヤーコンさんとか……すごく積極的に動いてたっけ。
でも、それが?
「……この町周辺で……最近、『ロケット団』の活動が活発なのよ。それが、ちょっと看過できないレベルになってて……いざって時に備えてるの」
「あ、それで?」
「ええ……ジムはしばらく休業。悪いけど、挑戦はもう少し待って」
なるほど、それなら仕方ないか……
しっかし……ジムリーダー……結構大変なんだなあ……
そして、それをしっかりこなしてるナツメは、やっぱすごいなあ……
ともかく、そういうことなら仕方ない。
「わかった。……ああ、何か会ったら手伝うわ、連絡してね?」
「そうね……もしかしたら、そういう時も来るかもね」
そう、言葉をかわし……
少々、なんともいえない感じになった空気の中で……私とナツメは別れた。
……そう経たない未来に、また、会うことになるんだろうだけど……ね。