紫煙を燻らす色呆け野郎 作:ユッケ
次回の説明回を挟んでから主人公が手を出し始めます。
プロローグ
ドラゴンボール。
世界中で愛された漫画だ。
当然俺こと
何しろ俺は、そんな彼らに憧れた末にプロの格闘家になってしまった程だ。
デビュー戦の試合でTVに出て勝利した時なんかは女にモテて、女好きの俺としては格闘家は天職とさえ思えた。
とはいえ、それ以降プロの世界で活躍する事は少なかったが……。
しかし、イマイチな成績しか残していない俺にも大きなチャンスがやってきた。何故か。TVに出ずっぱりなイケメン有名選手との試合が決まったのだ。恐らくは有名選手のイメージ戦略の踏み台として選ばれたのだろう。
だが、わざわざ負けてやるつもりはない。
俺は試合に向けてタバコも酒も、女もやめて、必死になって来る日も来る日特訓した。
しかし、いざ試合が始まれば一方的なワンサイドゲーム。殴りたい放題で、あの時の俺はまさしくサンドバッグだった。
(やっぱり……理想にはなれないんだな。)
そう思いながらリングに倒れ伏した俺を見たレフェリーが医者を呼び、すぐにやってきた医者の焦る声を聞きながら意識が遠のいて行った。
それが、俺の記憶にある最後の場面だった。
………………
…………
……
「という訳で、死んでしまったお前にはヤムチャの代わりとして転生して貰う!」
「……いや、意味分かんねぇよ。」
目覚めた俺が目にしたのは真っ白な空間だった。
俺以外は何も存在しない、足元すら認識出来ない不思議な場所で、いきなりそんな事を言われたのだ。姿も見えない相手に意味不明な話をされても理解出来る筈がない。
「だーかーらー! 僕の管理する次元にある、ドラゴンボール世界のヤムチャが死んじゃったの! 誰か代わりが居ないとダメなんだよ!」
「……あんたが誰だか知らないが、まずは落ち着いて話を聞かせてくれないか? 今のままじゃ何が何だか理解出来ない。」
俺はギャーギャーと喚いていた謎の声に事情を説明してもらい、何とか相手の意図する内容を理解した。
謎の声の話を要約すると、こうなる。
①謎の声が管理する次元には、原作のドラゴンボールと同じ歴史を歩む世界がある。
②しかし、死ぬ予定じゃなかったヤムチャが流行病で病死してしまった。享年15歳。
③死亡時期は原作開始前で、原作開始時にヤムチャが居なければ歴史が大きく変わってしまう。
④歴史が変わり過ぎると徐々に世界が崩壊し、他に管理している並列世界も連鎖崩壊してしまう。
⑤なので、俺がヤムチャの代わりに悟空達の手助けをする。
……と、いう事らしい。
「まぁ、色々言いたい事はあるが話は分かった。……それで? 具体的に俺は何をすればいいんだ?」
「簡単だよ、ピラフ城で大猿になった悟空の尻尾を切るだけでいいんだ!」
「……ん? 尻尾を切るだけ、か?」
「うん、切るだけ。 まだあの世界は存在自体が安定してないから、あのタイミングで原作が狂うのは困る! 何としても大猿の尻尾は切らないと地球崩壊の余波で世界までもが綺麗さっぱり消滅しちゃうからね!」
「そ、そうか。確かに世界が崩壊したら不味いな。……でも、ヤムチャだって尻尾を切った他にも活躍してなかったか?」
「活躍? うーん……、活躍らしい活躍はこれしかないけど?」
……この扱いはヤムチャが可哀想だ。
しかし、そういう俺もほかに活躍した場面を思い出せない。敢えて言うなら、悟空に心臓病の薬を届けた事ぐらいだろうか? 他は咬ませ犬もいい所だったしな……。ヤムチャは何気に好きなキャラクターなのだが、否定しきれないのが辛い。
「ま、まぁそれは置いといて。俺がやるのはそれだけなのか? 他には何か無いのか?」
「別にないよ? 敢えて言うなら、君が主要キャラを殺したりしても歴史の流れが原作から離れすぎたりしなきゃいいんだ。んー……っと、後はどこか適当な所で生きていれば何しても良いんじゃないかな?」
俺は大猿悟空の尻尾を切れば御役御免、か。
って事はそれさえやり遂げれば、残りの人生はドラゴンボールの世界で好きに生きれる……??
「なぁ、ちょっと良いか? 本当に俺が転生するとしてだ。つまりは原作の大まかな流れさえ壊さなかったら、俺はその世界で何をしても良いのか? 俺が敵キャラを倒したりしても問題ないのか?」
「うん、大猿以降なら構わないよ。 もし敵と戦うのが嫌なら、僕が宇宙船あげるから好きな惑星を探してそこに住んでも良いけど?」
「う、宇宙船? ……まさかとは思うが、あんたに頼めば他にも貰えたりするのか?」
「あ、ちなみにサイヤ人にはなれないよ? ヤムチャは地球人だから地球人限定だね!」
「何っ⁉︎ サイヤ人はダメなのか⁉︎ それなら、戦闘力を最強クラスに強くしたりとかは……?」
「それもダメ! 万が一強くなりすぎた君が主要キャラをいっぱい殺しちゃったら原作が大きく変わっちゃうもん!」
「そ、そこをなんとか‼︎ そうならない様にするから‼︎」
「ダメ!」
「頼む‼︎」
「ダメったらダメ!」
幾ら頼んでも、俺の要求は通らなかった。
しかし押し問答の末、謎の声は俺の出した妥協案を渋々受け入れた。
・エネルギー吸収能力【3回限り】
手助けするにも強さが要る。修行しても大猿の尻尾を切れる保証がないし、向こうの世界で生き残れないかも知れないからと何とかこの能力を受け入れさせた。たった3回しか使えないが、使い所を間違えなければ何とかなるだろう。
・住居を兼ねたレーダー付き宇宙船
タイミング良く大猿の場面に遭遇出来る保証がないから、 と宇宙船に任意の人物を探すレーダーを付けさせた。オマケに、快適な生活の為に各種設備を宇宙船に設置させる事も約束させた。
・原作の味方キャラの初期好感度up
悟空の仲間達に妨害されたら尻尾を切る事は難しくなるから、と俺に対して初対面で好印象を抱く様になった。これで悟空達みたいな超人と敵対する事なく向こうの世界で生きて行けるだろう。
「全くもう! これ以上はダメだからね!」
「ああ、これだけ貰えば十分だ。ありがとう。」
出来れば敵キャラ全てを倒せるぐらいに圧倒的な強さが欲しかったが、大猿に瞬殺されないであろう最低限の【戦闘力:100】を貰った。
チートを貰った上に、これだけの戦闘力を引き出せただけでも御の字だろう。あまり欲張りすぎて、何も貰えなくなるよりは遥かに良い。
「それにしても、最後のアレは何に使うの? 別に原作が変わるわけじゃないから、あげても問題はないんだけどさ?」
「強くなる前に襲われでもしたら堪ったもんじゃないだろ? ただの保険、それだけだ。」
「ふーん……。ま、いっか。」
・原作に居ない人物の友好度MAX【一度限り】
原作41巻までに描写の無いキャラを味方に出来るという、とんでもない力を手に入れた。
そう、
この力を得られたのは僥倖だろう。何故かは知らないが、意外にも謎の声は映画の存在を知らなかったのだ。もしかしたら、これから過ごす世界には映画のキャラクターは存在しないのかもしれない。だが、万が一にもいた場合は最高の力と言える。それに、映画のキャラクターが居なくても、描写の無いモブキャラを従えられるだけでも有意義な力には変わりない。
「さて、そろそろ行ってもらおうかな! それじゃあ向こうの世界で頑張ってね!」
「ああ、しっかり役目を果たしてみせる。」
そうして、俺はドラゴンボールの世界へ旅立った。
主人公はクズです。
今後の展開次第ですが、基本的に欲に振り回される馬鹿野郎なのできっと皆様に嫌われる事でしょう。