紫煙を燻らす色呆け野郎 作:ユッケ
本来なら、男は女性の機嫌を保つ為に最大限の工夫をしなければなりませんが……この世界にまでそれを持ち込むのは勘弁して貰いたいです。
現実世界でも、こんなに簡単ならいいのですが……。
第13話 〜可愛い誘惑、男の頼み〜
「あのヒロイン役の女の子可愛かったわねぇ。私もあんな風に素敵な男の人とドライブしてみたいわ〜♡」
ブルマはよほど劇が気に入ったのか、2人でレストランに来てからずっとその話をしている。
即興のデートプランだったが、喜んでくれたなら何よりだ。
しかし、目の前に俺という男が居るのに劇の彼氏役を話題に出すあたり、やはり恋に恋する女の子のようだな。
……少し、からかってやろうか。
「俺もエアカーを持っているが……そうか。ブルマはああいう美形の男とドライブしたいのか……。」
俺はそう言って、やや影のある笑顔を向けた。
するとブルマは、慌てて両掌を左右にブンブン交差させながら訂正してくる。
「あ、違うのよ! 私もドライブしたいなーって思っただけで、タケルが嫌なんじゃないの。……あら? ねぇ、嫉妬したの?」
「まぁな。俺じゃ役不足なのかと思ったよ。」
「そ、そうなの? うふふ……そっか、妬いたんだぁ。私って罪な女ねぇ♡」
からかうつもりだったが、ブルマの自己愛を刺激する結果に終わってしまった。
まぁ、ブルマにはそれを裏付けるだけの美貌があるから文句はないがな。
……しかし、随分と話し込んでしまった。
窓の外は夕日も沈んで、あたりに夜の帳が下り始めている。
そろそろブルマを帰らせないと、これ以上は俺の愚息を食い止められる自信がない。
「日も沈んだな。ブルマの両親も心配するだろうし、そろそろ家まで送って行くよ。」
「ぁ……。そ、そうね……、じゃあお願いしようかしら?」
残念そうな様子のブルマと共にレストランを出る。
ブルマの家まで歩く道中も、劇の話題でかなり盛り上がって終始楽しそうにしていたが、家に近づくに連れて口数が減っていく。
そして無事に着いた頃には、ブルマは黙り込んでしまっていた。
「今日は楽しかった。ブルマとデート出来て嬉しかったよ。」
「わ、私もっ! ……ねぇ、またデートしてくれる?」
「……いいのか? なら、また2人で何処か行こう。次のデートは何時が良い?」
「明日っ! ……からは学校があるし、1週間先になっちゃうわね……。」
「また来週か。なら、ブルマに逢えるまで楽しみに待つよ。」
「っ、そうね! 私も楽しみにしてる!」
「待ち合わせは今日と同じ条件にしよう。それじゃあ、またな。」
そう言ってその場を去ろうとする。
しかし振り向いて歩き出そうした時、ブルマに呼び止められた。
「……待って!」
不意に、頰にチュッと啄むようなキスをされる。
俺が驚いて固まっている間に、ブルマは顔を真っ赤にしながら家の庭を走り去って屋敷の中へと帰って行った。
……危なかった。
これが密室だったら襲わない保証は無かった。
「……頼むから、次も堪えてくれよ?」
そう愚息に向けて小さく呟いた。
若干、元気になっている愚息がどうして? と言わんばかりにムクムクとサイズを増してズボンを押し上げてくる。
最大まで硬化している訳じゃないが、街中でテントを張っている男なんてただの変態だ。
やむなくベルトの脇を掴んで隙間を作り、服の中で愚息の頭を覗かさせ、首の下辺りをベルトで抑えながらウエストサイズを一つ絞ってキツく縛り付ける。
バックルの裏で愚息が苦しそうにしているが、テントを張っている姿を見られるよりはマシだ。
しばらくそこで我慢していてくれ。
……しかし愚息がこんな調子では、次のデートでも堪えてくれるか分からないな。
次のデートでは、ある程度愚息の鬱憤を晴らしてから待ち合わせに向かうとしよう。
手を出さないようにと今後の方針をそう決め、タバコに火を付けて欲情した気持ちを落ち着かせてやる。
「フゥ〜……。チチに頼んでみるか? ……いや、その後でデートに向かえる気がしないな。」
紫煙が視界の中ででゆらゆらと立ち昇る。
その視界の端に、手招きする50代の男が写り込んだ。
ブルマが入って行った家の敷地にいるその男は、どうやら俺を呼んでいるらしい。
「あれは……っ!」
間違いなく、ブルマの父親であるブリーフ博士だ。
もしかしてデートした事について釘を刺されてしまうのだろうか?
……仕方ない、甘んじて受け入れよう。
携帯灰皿にタバコを入れ、大人しくブリーフ博士の元に足を運ぶ。
「俺に何か用でしょうか?」
「……君はブルマと付き合ってるのかね?」
「いえ、ブルマさんとはデートさせて頂きましたが、付き合ってはいません。」
「そうか、付き合ってないのか。……ならちょうどいいかな。ちょっとウチに入ってくれる?」
……説教でもされるのかも知れないな。
そう思いつつ、広い庭の中を進んで行くブリーフ博士の後をついて行くと、やがて離れのような場所にたどり着いた。
そして離れの中に案内され、置かれていたソファに座るよう促された。
「ブルマの恋人なら辞めようと思っていた。いやー、まだ付き合ってなくて良かったよ。」
「……? あの、話が見えないのですが?」
「それなんだがねぇ、ちょっと君に頼みたい事があるんだよ。」
「……頼み、ですか?」
どうも予想とは違い、説教を喰らう訳じゃなさそうだ。
だが、ブリーフ博士の頼みとは一体……。
「その前に、君は成人しとるかね? タバコを吸っていたからそうじゃないかと踏んでいるんだが……。それともヤンキー?」
「確かに成人していますが……それが何か?」
「おー、そうかそうか。こりゃ好都合だ。それに人柄も悪くない。見込み通り、安心できそうな感じだね。」
……話をすればする程、余計分からなくなるな。
成人してないと都合が悪く、人柄が良くないと安心出来ない……?
ブルマと付き合っていたらこうして頼んでくる事は無かったとすると、どうもブルマ関係の頼みでもなさそうだ。
「……どうにも、要件が見えません。一体、俺に何を頼みたいのでしょうか?」
「あまり大きい声で言う訳にも……ちょっと耳を貸してくれないか?」
俺は言われるままにブリーフ博士に耳を向ける。
……そして耳を疑うような、俄かには信じがたい頼み事をされた。
「ほ、本気ですか⁉︎ 本気で、それを俺にしろと?」
「頼む。初対面でなんだが、安心して頼めそうなのは君しか居ない思っている。嫌かもしれないけど、この老いぼれの為だと思って受けてくれないか?」
「……本人はこの頼み事を知っているんですか?」
「もちろんだとも。ブルマも16歳になった事だし、そろそろ彼女の望み通りにさせてやりたい。この老いぼれでは何の役にも立てんし……どうか代わりに頼まれてはくれないか?」
……ブリーフ博士は真剣らしい。
しかしそれはどうなんだ? 少なくとも、今すぐ俺に決められる内容じゃあない。
「少し……考えさせて頂けませんか?」
「わかった。……もし受けてくれるなら、また明日この場所に来てくれるかな? 君が直接入って来れるよう手配しとくから。」
「……はい、分かりました。」
………………
…………
……
俺は我が家に帰り、そのままベッドに倒れこんだ。
まさか、あんな事を頼まれるなんて……ブルマとデートした時はこうなるなんて考えもしなかった。
「……明日か。」
ブリーフ博士の真剣な眼差し。
あれは確かな家族愛を感じさせる、強い男の眼差しだった。
「あれほどの誠意ある眼を見せられたんだ……それを断るなんてのは男が廃るな。」
俺も男だ、受け入れよう。
……だが、一度受けると決めたなら、しっかりとその役目を果たしてみせないとな。
……ブリーフ博士のキャラがイマイチ分かりません。
我ながら、この作品の登場人物はキャラ崩壊が激しいですね。