紫煙を燻らす色呆け野郎 作:ユッケ
詳しい描写はありませんが、内容が内容なので、かなり不快に感じる方も多いでしょう。
ですので、要点だけ分かれば十分だという方は後書きをご覧ください。
第19話 〜俺の過去と今世の認識〜
「フゥ〜……。結婚、か……。」
タバコから立ち昇る紫煙が、鼻腔をツンと刺す。
あの後、俺は離れの
そしてブルマと共に朝を迎える事なく、そのままの脚で我が家へと帰っている所だ。
……本当なら、朝までブルマの隣に寄り添っていてやりたかったが、な。
「しかし、ブリーフ博士が覗いているのは分かっていたが……まさか、娘の処女喪失にまで興奮するとは、な。」
部屋の場所を聞いた時、ブリーフ博士のアソコはズボンの中で立派な姿を見せていた。
今夜はパンチーさんとさぞやハッスルする事だろう。
……ブルマには一回しか射精できなかったので、いささかヤり足りない俺としては羨ましい限りだ。
「だが、頼まれてもいないのにパンチーさんとはヤれないしな……。まぁ、夫婦仲が良くて何よりって所だろう。」
ブルマを寝かせた後、ブリーフ博士に今夜は泊まっていくようにと促されてはいた。
そのまま泊まらせてもらい、もしブルマが朝までに目を覚ましたら、もう一度ぐらいはヤれたかも知れないな。
……だが俺はどうしても、少し一人きりで考える時間が欲しかった。
「……ブルマの旦那が、俺でいいのか? こんなダメな男で?」
自分がブルマに釣り合うかどうか。
俺は、それを考えずにはいられなかったのだ。
現状の俺は、謎の声に貰ったチートだけで生きている。
好きなだけ女を抱いている癖にそれに見合う地位も無く、ましてや手に職すら持っていない。
そして……俺は家族という存在を知らない。
なんせ、俺は産まれてすぐ親に捨てられた、孤児だったのだから。
「家族って……どんな感じなんだろうな……?」
当時は親戚の家をたらい回しにされ、その間に様々な
そんな俺が成せる事は、敵対者を徹底的に叩き潰す事と、虐待された時に仕込まれた
こんな碌でもない人生を歩んできた俺が、本当に、家庭を持つという幸せの形を手にしてもいいのだろうか?
……そして何より、俺にはベジータとは違い、家族を守れるだけの強さが圧倒的に足りていない。
今のままでは、俺はブルマを守ってやれはしないだろう。
「強さが欲しい。……来るべき未来を、打ち破る事が出来るだけの強さが。」
もう、女とヤってばかりはいられないな。
目前に控える強敵、かのピッコロ大魔王が現れるまでに残された時間は僅かしかない。
とはいえ、ピッコロ大魔王は悟空が倒してくれる筈だ。
だが……この世界でも、必ず悟空が勝ってくれるという保証は何処にもない。
ならば、せめて勝てないまでも、ある程度太刀打ち出来る人間が居なければ決して安心など出来ない。
「……なら、俺がやるしかないじゃねぇか。」
俺ならば……俺のチートがあれば、それも決して無理な話じゃない。
もちろん先を見据えれば、ピッコロ大魔王相手にエネルギー吸収を使うべきじゃないのは分かっている。
しかし、死んでしまえば勿体無いなどと言ってられはしないのだ。
前世では理想の幸せを得る前に、あっけなく死んでしまった。
ならば、今世では必ず……
「覚悟、決めないとな……。ん? あれは……?」
そんな風に思いつめていると、繁華街を抜けた暗い夜道に不審な連中を見かけた。
何やら、複数の男達が小さな子供2人を連れ去ろうとしている様に見える。
子供達を両脇に抱えている男は下っ端だろうか。
恐らく、立ち位置からして中央に居る目付きの鋭い老人が連中の親玉だ。
……ここであの子供達を救わないようじゃ、ブルマの旦那になどなれはしない。
いや、救えなければブルマの旦那になりたい等と考える事すら烏滸がましいだろう。
「お前ら! その子達を離せっ!」
そう考え、思い至るままに俺は一足飛びに誘拐犯達に肉薄し、その勢いで急襲の拳を放つ。
「ッ! ヘブッ⁉︎」
子供達を抱えていた男に拳が突き刺さり、男の頬骨が粉々に砕ける。
そのまま殴った勢いで吹き飛び、それと共に子供達を手放した。
俺は、2人が地面に落ちてしまう前に慌てて抱き留め、誘拐犯達から離れた場所まで跳躍し、そっと降ろしてやる。
「大丈夫か? 怪我はないか? ……もう安心だ、俺が2人とも守ってやる。」
そう言って子供達の頭を撫でてやる。
よく見れば、2人共薄汚れた格好だ。恐らく孤児か何かなのだろう。よく似た顔立ちなので兄弟なのかもしれない。
……一見平和そうに見える西の都でも、やはりこんな闇が存在しているのか。
そんな事を考えながら、改めて誘拐犯達に視線を向ける。
暗さ故に、殴り飛ばした男の様子はハッキリと伺えないが、あのダメージではもはや立ち上がれないだろう。
「チッ、邪魔が入ったか! ……止むを得まい、計画は一旦中止だ。別の素体を探すぞ。」
そう言って、目付きの鋭い老人が撤退の指示を出す。
このままでは連中に逃げられてしまう。次の被害が出ないよう全員を捕まえなければ!
「待てッ! 俺が逃すと……っ⁉︎」
逃げ出した連中を追おうとするが、その直前に俺の脚に何かが纏わり付いている事に気付く。
下を見れば、両脚に子供達が2人してしがみついていた。
「うぅ……ぐすっ。……ずずっ。」
2人は泣きながら俺の脚に顔を押し付けており、ズボンに涙や鼻水が染み込んでいく。
俺としても怖い思いをしたこの子達を慰めてやりたいが、今はそれどころではない。
「は、離してくれっ! アイツらを捕まえないと……。」
しかしそう言っても、俺を離す様子は一向にない。
不意に、子供達の身体がぶるぶると震えているのがズボン越しに伝わってきた。
……これでは、振りほどけない。
「くそッ……。みすみす逃がした、か。」
最早、誘拐犯達の姿はもちろん、倒れていた男も居なくなっている。
今すぐ連中を追えば見つかるかも知れないが……このまま、怯える子供達をこの場に残してはいけないだろう。
「……まぁ、救えただけ良しとするしかない、か。」
救出成功を理由に、逃してしまった悔しさの落とし所をつける。
……俺は変わらなければならない。
ブルマに相応しい男にならなければ、己の幸せなど望んではいけないのだ。
こうして正義感のある行動をしていけば、俺はきっと変われるに違いない。
慣れない行動にかなりの違和感を感じるが、いつか、原作組のようなヒーローになれば、俺でもブルマに相応しい男になれる筈だ。
……その為にも、まず俺がすべきなのは、警察に2人を連れて行ってやる事だ。
慣れない正義感に戸惑っている場合じゃないな。
……この世界の警察なら、きっと大丈夫だ。
そう信じて、泣いている2人を抱き上げ警察署の元へと脚を進めた。
………………
…………
……
子供達を警察に送り届け、2人とは別の部屋で、担当刑事だという男に事の経緯を説明した。
手渡されたスチール缶のコーヒーを飲みながら事情説明を終えると、何故かその刑事の口から2人の厄介な経歴とやらを語られる事となってしまった。
「……スリの常習犯、ですか?」
「そうだよ。つまり、あのガキ共は救いようのねぇクズなんだ。兄ちゃん、無駄に助けて損したなぁ?」
「……無駄、ですか。」
2人はやはり孤児だった。
しかも6歳の幼児でありながら、既にスリや空き巣を繰り返していると言う。
以前、警察が預けた孤児院でも2人には手がつけられなかったようで、幾つもの施設をたらい回しにされているそうだ。
「……辛かっただろう、な。」
あの2人の苦労が、俺には痛い程に理解できてしまう。
誰も、信じられない。
誰も、助けてくれない。
きっと、これまで自分達の力だけで生きるしかなかったのだろう。
スリや空き巣は褒められた行為ではないが、生き延びる為には、そんな危険な事にまで手を染めるしなかったのだろう。
やっている事は明らかな悪事だ。
だがあの2人は、6歳という若さで、既に自分の境遇に立ち向かう強さがある。
……それに引き換え、俺は中学時代まで、周りの人間にされるがままに生きてきた。
相手の気が済むまで殴られ、蹴られ、搾り取られていた。
俺は、ドラゴンボールという漫画に出会わなければ自分の境遇に立ち向かう事は無かっただろう。
嫌々叔母や従姉妹の言いなりになって抱かされるのでは無く、格闘家になってから知った、自身から女を求めて抱くというあの素晴らしさに気付く事はできなかっただろう。
そう思うと、俺にはあの子供達が……自分の力だけで生きている2人が……まるで、太陽のように輝く力強い存在に思えた。
しかし……
「はぁ〜あ……ったくよぉ。アンタがあのガキ共を無闇に助けなきゃ、こっちとしても良い厄介払いが出来たんだけどなぁ? まったく、余計な事をしてくれたもんだ。」
刑事の口から放たれたその言葉で、俺の怒りが爆発しそうになる。
「あぁ? お前……今、何て言った? おっさん、もっかい言ってみろ。」
思わず手に力が入り、持っていたスチール缶がグシャリと握り潰される。
そして半ば残っていた中身が白い床を茶色く染めながら広がっていく。
「えっ⁉︎ あ、兄ちゃん……? きゅ、急にどうした??」
……この世界なら大丈夫ではないかと期待していたが、どこの世界でもやはり警察という組織は腐りきっているようだ。
集団で襲いかかる武器を持ったチンピラではなく、身を守る為に全員を拳一つで返り討ちにした俺が悪にされる。
俺に身寄りがないと知った刑事が、たかが点数稼ぎの為にいくつもの冤罪を被せてくる。
前世では、警察は権力で弱者を嬲るばかりで、本当に助けを求める者に手を差し伸べてはくれなかった。
それは、この世界でも同じらしい……。
「チッ、期待した俺がバカだった。……心底、胸糞悪い連中だ。」
立ち上がって、クズ野郎に顔を眼前まで近づけて睨みつける。
「ひっ⁉︎ ……な、何だよ? 殴る気か?」
俺が怒り出した事が予想外だったのだろう。
かなり狼狽えた様子を見せている。
もちろん全員が全員この男のように性根が腐りきっている訳ではない事は、俺だって分かっている。
だが、自身の器量を過ぎる力というモノは、容易く人の心を蝕んでしまう恐ろしさがある。
自分より弱い者を嬲る。
自分より劣る者を蔑む。
そうして勘違いした人間が、麻痺した心が、他人の幸せを悉くぶち壊していくのだ。
「……もういい。こんな所に連れて来たのが間違いだった。」
そう言って刑事を更に睨みつけ、握り拳を作りはしても、決して殴る事なくその場を後にする。
あのまま刑事と顔を合わせていると、危うく殴り飛ばしてしまいそうだったのだ。
その脚で、俺は迷う事なく子供達の元へと向かう。
あの2人をこんな腐った場所に置いていく訳にはいかない。
「……顔合わす前に冷静にならないと、な。」
2人の居る部屋に着く前に、ひとまず一服していこう。
暴力的になったままでは怖がらせてしまうかもしれない。
そう考え、歩きながらタバコに火をつける。
「フゥ〜……。やはり、原作のドラゴンボールとは違う世界なんだな……。」
少なくとも、原作に描かれていた中にあんな悪徳刑事は居なかった筈だ。
細部まで知っている訳ではないが、ドラゴンボールの世界は人の善悪が分かりやすく、明確に表現されていた。
「……まぁ、少年漫画にドロドロの展開など描かれる訳もないか。とにかく、この世界に対する認識を少し改めないといけないな。」
タバコを吸った事でいくらか冷静になってきた。
未だに怒りは消えてはいないが、もう2人に会いに行っても大丈夫な程度には静まっているだろう。
そう思いながら、最後の一吸いを深く肺に入れる。
「フゥ〜……。この世界なら楽しく生きていられる。これまでは、そう思っていたのにな……。」
最後に吸い込んだ紫煙。
それは、この世界に来て一番苦く感じられるものだった。
【要点】
・主人公が、ブルマと結婚するに相応しい男になろうと決意する。
・帰宅中に、誘拐されそうな子供2人を発見、即座に救出する。
・子供達を警察に連れて行くが、担当刑事の下衆な言葉に、主人公がキレる。
・転生した世界が、原作のドラゴンボールとは違う世界であると、認識を改める。
……かなり悩んだ末に、こんなダークな展開になってしまいました。ちなみに、これ以降は徐々にライトな展開にしようと考えておりますのでご安心下さい。
読者の皆様に楽しんで頂けるよう頑張りたいと思いますので、今後ともこの作品を宜しくお願い致します。
次回の投稿は、今週末の予定です。
2015/03/25
※主人公の口調を修正しました。
2015/03/27
※次回分の内容を見直す事にしました。
更に、新たに別作品を連載する予定なので、更新は来週末に延期させて頂きたいと思います。
勝手な話で誠に申し訳ありません。