ある晴れたヒウンタウンにて。
「……来ちゃった」
ドラゴンポケモン使いにしてイッシュ地方チャンピオン・アイリスは、日が差さないスリムシトリートで立ち往生していた。
彼女はチャンピオン衣装とも普段着とも違う、友人もであるカミツレが無理やり連れてこられたジョインアベニューで買ったワンピースを着込み、麦藁帽を被っていた。
理由はただ1つ。数日前に自分を助けてくれた青年・カレツが指定した待ち合わせ場所に向かうための変装である。
元々チャンピオンに就任したばかりなのもあって人々からの認識は低いが、アーティの居る街でもあるし、念のため着込んだのだ。
ジャガには「せっかくの休日だから、ヒウンアイスを食べに行く」と言ってある。涙を浮かべていた気がするが、気のせいだろうか。
「ここ……だよね?」
アイリスは手に持つ地図と今居る場所を見比べて確認し、確かに待ち合わせ場所がココであることを理解し、再度疑問で首を傾けた。
疑問に思いつつも目の前にあるコーヒーショップ「ダンデ・グライオン」の扉を開き……コーヒー特有の臭いに眉を歪める。
「いらっしゃいませ」
そこは路地裏故に薄暗くて狭いが、アイリスから見て「大人のお店だ」と思えるほどに清潔感のある、そして渋い趣向を持った店だった。
古い額縁に飾られた白黒写真の数々、著名人のサイン色紙、コーヒー専用の道具具がズラリと並んだ棚、そして静かにコーヒーを飲む客とコーヒーを入れるマスター。
「よう、嬢ちゃん」
そんな大人な雰囲気に呑まれていたアイリスに聞こえた事のある声が響き、ビクッと怯え出す。
帽子を取ってキョロキョロと視線を漂わせれば、そこに見覚えのある男……コーヒーを片手にアイリスを見るカレツの姿があった。
「カ、カレツさん……」
「ちゃんと来るとは偉いな。いい子いい子してやろう」
アイリスは思わず後退りするも、それよりも早くカレツが席から立って近づき、アイリスの髪をワシャワシャと撫でる。
力加減を考えていないからかグラグラと頭が揺れるので、鬱陶しそうにその手を払いのけた。
「こ、子供扱いしないでよ!」
「ムキになると余計に子供っぽく感じるな」
「ムキになっていないもん!」
どう見てもムキになって反論しているアイリスだが、カレツはニヤニヤと笑うだけ。思わず口をへの字にして睨んでしまう。
普段の……チャンピオンとしての自覚を持つアイリスならココまで乱れはしない。不安や恐怖、その他の感情で心がグチャグチャに成っていたからだ。
「カレツ、もしかしてだがその嬢ちゃんも?」
「ああ。危なっかしいが、才能のありそうなガキなんでな。『裏』へ招待する」
一時の怒りで気持ちがスッキリしたアイリスは、カレツの知り合いらしい、この店のマスターが自分を珍しそうに見ているのに気付いた。
歳はジャガと変らず、しかし優しそうな雰囲気を持つマスターがカレツと関係していると解ると警戒せざるを得ない。
「へぇ。こんな小さな子がカレツのお眼鏡に適うなんてね……にしてもそっくりだなぁ嬢ちゃん」
(……?誰にそっくりなの?)
この時、それぞれは知らなかった。
マスターが新チャンピオンでの存在を知っており、そのそっくりさんだと思っている事。
カレツが新チャンピオンの存在を知らず、マスターの言っている事に首を傾げている事。
そしてアイリスが、新チャンピオン・アイリスとは別人だと2人から思われている事に。
「……まぁいい。マスター、鍵を」
「はいよ。ではお客様方、ごゆっくり……とと。そうだ嬢ちゃん」
「?」
マスターから鍵を受け取ってさっさと行こうとするカレツを慌てて追いかけようとしたアイリス。
そこへ声を掛けられたので咄嗟に振り向くと、優しそうなマスターが少し真面目な顔をして少し硬直する。
「嬢ちゃんが何をしたかは知らないし、『裏』じゃ歳も理由も立場も関係ないから深くは聞かないつもりだったが……自分の言いたいことはハッキリいいな。でないとドコまでも流されちまうぞ」
言うだけ言い終えたのか、すぐにマスターは優しい微笑を浮かべて「ごゆっくり」と言ってコーヒーを淹れ始める。
マスターの言葉と淹れ立てコーヒーの香りで、アイリスは思い返された。自分は脅されており、悪い事をされようとしている事に。
ここは引き返すべきなのだろうが……アイリスはその事に躊躇を覚えていた。
「早くしろ」
「……う、うん」
カレツに急かされ、アイリスは止まろうとしていた足を再度進ませる。
アイリスの心臓が改めて脈動する。その原動力は不安であり……期待であった。
まるで新しい事への挑戦前のような新鮮な気持ち。あの夜の失態と痴態が忘れられない。
結局あの夜の後、オノノクスと和解できたが、お互いに色々と意識するようになった。
カレツの誘いについてもオノノクスに相談してみたら、彼も止めるようなことはしなかった。
―お互いに、
―――
マスターから受け取った鍵で奥の扉を開け、延々と続くような階段を降りた先には……混沌だった。
「な、なにここ?」
「
唖然と、そして顔を真っ赤にして呟いたアイリスに、カレツは答える。
表のコーヒーショップよりも薄暗く、そして淡く美しいライトに照らされた酒場のようなクラブでは、二つの人間に分かれていた。
一方は服を着込んだ人。これは当たり前だろうが、もう一方は違う―――裸或いは裸に近い格好をした人達だ。
裸の女が一本の鉄の棒に抱きつきながら淫靡な踊りをしたり、ミミロップのような格好をした女性が客に酒を配ったりしている。
そして大半の服を着た人達はそんな女性達を見て楽しみ、中にはセクハラまでしているが、される側はちょっと怒る程度で楽しそうに笑って返している。
よく見れば中にはサーナイトやミミロップといったポケモンも混ざっており、それらを愛人のように接する人達も居た。
そんな痴態の数々を恥ずかしそうに、しかし動物園を見て回る子供のような、興味津々と言わんばかりの目で見渡すアイリス。
「う、うわ、あの人、サーナイトにキスしちゃって……な、なにあのミミロップ、おっぱい大き……っ」
「うちで調教したポケモン、いわば愛玩用だ」
「ちょうきょう?あいがん?」
「それはいい。んなことよりお前が気に入るのは……あれだろ?」
興奮して見渡すアイリスの言葉に答える中、カレツはアイリスの頭を掴み、目的の物を示すように首を動かす。
アイリスは唐突に首を動かされたことに不快感を覚えたが、それは瞬時に記憶の彼方へと追いやった。
―なにせ一番目立つステージの上で、女性がクリムガンに犯されているのだから。
「あ、あっ!あ……ひ、ひぃ、ひぐぅぅぅっ」
「え、えぇぇぇっ!?」
アイリスは驚愕した。人前で性交を行っているという非常識より、本物の性交を目の当たりにしているという現実に。
10代後半ほどの女性は、全身を覆うボディスーツのようなものを着込んでおり、細身でありながらむっちりとした印象を与えられる。
しかし怪我でも負ったのか、顔の半分近くを包帯で巻かれ、傍には緊急時に備えてか医者とその助手らしき人物も居る。
しかし女性は四つん這いとなったままクリムガンの肉棒で秘裂を突かれ、背を逸らして悶えていた。しかも悦びの声を上げながら。
「あーっ、あーっ!気持ちいい、ぎもぢいいよぉクリムガンんー!もっと、もっとぉー!」
女性は顔に搔いた汗を撒き散らしながら、嬉しそうな表情を浮かべてクリムガンに懇願する。
クリムガンはそれに答えるように腰使いをより荒々しくし、己の肉棒を彼女の最奥へ貫かんとばかりに前へ突き上げていく。
そんな力強いセックスを目の当たりにしている観客達は魅了されているのか、ホォ……と吐息を零す。
アイリスも同じようで、先ほどまで動揺していたのが嘘のように落ち着き、いつのまにかステージに近づいて1人と1匹の様子をマジマジと見つめていた。
「……すごい……あんな大きいのが入っているなんて……オノノクスのより小さいけど」
もはや周りや自分の立場などは頭にない。あるのは目の前の行為を見ていたいという欲求だけだった。
女性の喜びよう。クリムガンの力強い腰使い。男根を飲み込み隆起する腹。それらに目が奪われていた。
「治り掛けってこともあって、あそこまで行くのに苦労したんだぜ?」
「治り掛け?……あ」
平然と楽しそうに見ているカレツを見上げてから、アイリスはあることを思い出す。
「思い出した。あの女の人、この間ソウリュウシティでクリムガンに襲われていたトレーナーさんだ」
「お前もソウリュウシティ出身だったか。あの女とクリムガンは互いに愛しすぎたんだよ……で、セックスしようとして痛い目に見た、と」
「……暴走しちゃったから?」
「お前のオノノクスはともかく、あのクリムガンは大人しい奴だからそうはならなかった。だが奴の特性は『さめはだ』だからな」
「あ……」
ドラゴンポケモンを好むアイリスだが懸念していた。幾ら大人しいといえど、人間が『さめはだ』に触れれば怪我を負うのは当然だ。
あのエリートトレーナーは、もしかして特性を知っていながら身を捧げようとしたのかもしれない。あの事件直後に涙を浮かべていたのも、その為か。
「あ、あ、ああぁぁぁっ!イク、イグっ、イっちゃうよぉぉぉ!」
唐突に女性の嬌声がワントーン高くなる。クリムガンの我武者羅な突き上げに揺れる体が小刻みに震え出す。
元々荒かったクリムガンの動きがより荒くなり、出来るだけ奥の方で突けるよう腰が小刻みに動いている。
歯を食い縛って耐える女性。吐く息に火が混ざるクリムガン。来るときを逃すまいと人々達―アイリスも含む―は瞬きも惜しんで見つめ続けた。
「ひ、ひぎ……い、イグぅ―――ッ!!」
叫びと同時にクリムガンの腰と女性の尻が密着し、1人と1匹が絶頂を迎えた。
女性は目を見開いて背を逸らし、クリムガンは男根から放たれる精を子宮に注ぎ込む。
腹部の膨らみが止まった頃になって、女性は幸せそうに惚けて力を抜き、クリムガンは大きな手でそっと彼女を地面に降ろす。
地面にへたり込んだ彼女は這い蹲って肉棒を抜き、ドボドボと精液を零しながらクリムガンの腹に這い蹲り、上へと目指す。
「はぁ……はひっ……はぁ……大好きだよ……♪」
女性は蕩けた顔で息を荒げるクリムガンを見上げ、背に手を回して鼻先に口付けする。
愛を伝えた彼女を称えるかのように人々は拍手を送られ、力尽きた彼女はクリムガンとドクターらによって運ばれていく。
ステージの奥に消えた彼女を見送った観客らが先ほどの行為を話題に華を裂かせる中、アイリスは呆然とその奥を見つめていた。
「……女が着ていたボディスーツ。あれはクリムガンの『さめはだ』から身を守る為のものだ。まぁエロい衣装でもあるけどな」
惚けているアイリスに言い聞かせるようにカレツは言う。
「それだけじゃねぇ。ポケモンを受け入れるための調教、ポケモンが大人しくヤる為の調教、事後のアフターケア、プライベートの保守……やることは沢山ある」
善事だろうが悪事だろうが、下準備と言う物は必要だ。物事の大きさ次第では些細な怠りで全てが終わることもある。
あのエリートトレーナーが良い例だ。本人らは良くても、周りに迷惑を掛けてしまった。
あの夜に魔が差したアイリスの取った行為は、下手をすれば自他ともに最悪の結果に真似ていただろう。
「……ここにいる奴らはな、表じゃ晴れない欲求を持つ悪者なんだよ」
―お前と同じ、な。
ぽん、と優しくアイリスの頭に手を添えるカレツは、まるで同胞を迎えるような視線をアイリスに向けた。
触れた手に我を取り戻したアイリスはカレツを不安げに見上げる。これからの不安で潰れそうだったから。
「今なら引き返せるが、念のため言うぜ……これは命令じゃない。問いかけだ」
カレツは其の場で屈んでアイリスと視線を合わせ……問いかける。
「お前も、あいつと同じ事をしてみたいか?」
その言葉を聞いたアイリスの脳裏に、一瞬で大量の情報や感情が流れ込んできた。
チャンピオンとしての立場。ジャガの優しさと厳しさ。子供が浮かぶ曖昧な正しさ。友人らの笑顔。裏切りと罪悪感。汚れと嫌悪感。自分の年齢。
それらの感情は全て、以下の感情で埋め尽くされた。
【憧れ】。【愛】。【欲】。【快楽】。【願望】。
そして彼女を動かした何よりの感情が―――。
「……教えて」
「何を?」
「
子供らしい【探究心】と【好奇心】、そして【隠し事をしたいお年頃】。
所謂『若さ故の過ち』というものである。
そういや人間がポケモンを犯すような小説って少ないですね。好みの2匹を愛玩用に出しちゃいましたが(笑)
人間♂×ポケモン♀の要素も含むべきでしょうか?(投槍)
次回、アイリスの陵辱がスタート!