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1.
冬のある日。
今日も奉仕部の部室はヒーターのおかげでぽかぽかぬくぬくである。
一度修理に出してからは、この子は快調そのものだ。
「ね、ね、ゆきのん。今度ここ遊び行ってみない?」
「あ、ちょ、ちょっと、由比ヶ浜さん、話は聞くから、もう少し離れて……」
今日も由比ヶ浜も雪ノ下のゆるゆりコンビは絶好調である。
なんかもう、由比ヶ浜ももう少し強引に行ったら、雪ノ下を押し倒せるんじゃないかって最近割と真剣に思ってる。ゆるゆりが進化してがちゆりになるにゃわーん。
「あー、その店、わたしも行ってみたいんですよねー。と、いう訳です、先輩」
「いや、何がどういう訳なんだよ……」
ていうかそもそもなーんでこいつがいるんですかね……。
一色は、まるでここに居るのがさも当然であるかのように居座り、俺の質問に対しても『はぁ?』と言わんばかりの勢いで小首を傾げている。くそ、腹立つけど可愛いなこいつ……。
「あ、そうだ」
一色がぽんと手を叩く。
「今日は生徒会のちょっとした仕事があるんでした」
「じゃあなんでここに居るんだよお前」
すると一色は頬をむーと膨らませて俺を睨んでくる。
「残りちょっとしかない仕事で、わたしが居残って終わらせることが出来るような仕事なんですよー」
「ならちゃっちゃと終わらせてくればいいだろ」
「それが、わたし一人だと微妙に今日中に終わらないんですよねー」
「それ言ってることおかしいだろ……あ。……おい、まさか」
瞬間的に、自分の顔が青ざめるのが分かる。
「なので、雪ノ下先輩、結衣先輩、先輩をお借りしていいですか?」
一色はきゃるんっと笑って、図々しくお願いしてきた。
や、俺の意志はどこ行ったの?
二人を見ると、ぴたりと動きを止めている。
え、どういう状況?
「一色さん」
「は、はいっ」
雪ノ下の冷たい声音に、一色は跳ねるように背筋を伸ばす。
仲良くはなったけど、未だにこの辺は慣れないのね……。
「比企谷くんは奉仕部の所有物だから、あまり頻繁に貸出はしたくないのだけど」
「え、なに、俺って人の扱いを受けてなかったの? 部員名簿に載ってる? 大丈夫?」
言うと、雪ノ下が首をくりんっと傾げた。妙に可愛いからやめろよそれ……。
「……備品欄、かしら?」
「おい、人を椅子や机と一緒にすんじゃねえよ」
「あら、ペンよりは値段は張ると思っているわよ?」
「ねえ、俺が椅子や机を例として挙げた後になんでわざわざペンを引き合いに出すの? 俺は椅子や机未満なの?」
「…………」
「なんか言ってくれよ……」
泣くぞ。
「まあ、比企谷くんの価値の議論は時間の無駄だから置いておくとして」
置くなよ。俺の人生とかプライドとか色んなもんがかかってんだぞ。
「比企谷くんを貸し出すのは、気が乗らないわね……」
「はわわわわ……」
雪ノ下の、言い方はそれなりに遠回しなものの、明らかに冷たく拒絶していることが分かる声音に、一色が震えあがっている。
負けないで! いや、ごめん、やっぱ負けて!
「むむむ……」
一色はこめかみに指を当てて難しそうな顔をしている。なーんかやな予感がするんですけど……。
数秒後、一色はぱっと目を見開いて何かを閃いたような表情をしたかと思うと、突然わざとらしく俺に流し目を送り始めた。やばい。超怖い。怖可愛恐い。
「はぁ……卓球」
「うぐっ……!?」
えらい最近の記憶にあるワードが、一色の口から漏れ出た。
「はぁぁ……ラーメン……」
「うぐぅっ……!?」
記憶がどんどんとはっきりしていく。まずい、雪ノ下と由比ヶ浜が訝しげにこちらを見ている。
「はぁぁぁ……カフェ……」
「うぐぅぉっ……!?」
こ、こいつ……!
フリーペーパー作成の時に俺を脅す材料に使ったデートの件を、ここでまたぶり返すだと……!?
雪ノ下と由比ヶ浜は、俺と一色がカフェで一緒に写ってる写真を見ちゃってるから、最後のカフェという単語を聞いたことで、その前の卓球とラーメンが何を意味するのかを察しが付いたようで、二人してぎぎぎと首をこちらへ向けてきた。
雪ノ下はもう、雪女。うん、雪女。殺さないで! 雪の城を作って引きこもって!
由比ヶ浜は眉をひそめてむむーっと唸っている。やばい。吠えられる。侵入したのがバレる!
まずい。これは、非常にまずい。
一色を見ると、もう「お前の運命は私が握っているのだよ」顔をしてやがる。超腹立つ……。
とにかく、この場に居ては取り返しがつかないことになる。多分20分後くらいに、全身噛み跡だらけの俺の凍死体が見付かる。俺の死に際、苛烈過ぎない?
「と、取り敢えず、一色、廊下出るか、廊下! な!」
「ひゃっ!?」
馬鹿みたいに取り乱しながら、一色の背中に手を添えて教室を出る。一色が何やら変な声を出したけど気にしない。
「ちょ、ヒッキー!?」
「…………」
二人の方を一瞬見て、ごめんと手で謝りながら教室のドアを閉めた。
雪ノ下さん、その沈黙超怖いです……。
「ふぅ……まったくお前は……って、一色?」
一色を見ると、さっきまでとは打って変わって、顔を赤くしてしおらしくなっていた。え、なんでなんで?
俺から目を逸らしたまま、もじもじとしている。
「……いきなり触るのは……ちょっと、どきどきするんでやめてもら……」
ぴたっと言葉と動きを止めると、一色がものすごい勢いで俺を振り返る。
「はっ! もしかして今わたしとスキンシップを図ることで距離を縮めるなんて安直なアプローチをしてたんですがそういうのはもっと流れを作ってからやってもらわないとこっちとしてもリアクションに余裕がなくなっちゃうしなんかもうとにかくごめんなさい」
…………。
「……いや、その、悪かった……」
最後、ごめんなさいって言うまでの繋ぎ雑になってない?
ふいー、ふいーとわざとらしく息を整えると、一色は再びくるりと振り返る。
「それじゃ、生徒会室に行きましょう」
「お、おう……」
もう、手伝うことが決定してた……。
2.
静かな生徒会室に、俺がパソコンのキーボードを打つ音と、一色がさらさらと書類に何かを書き込んでいる音がひたすら響く。
……本気でガチの、雑用☆
いや別に、一色と二人でおしゃべりする期待感とかそんなの芥程も無かったけどね?
なんか純粋にこき使われてる感が否めないんですけど……。
取り敢えず、作業しながらでも何か話さないと間が持たない。というか俺のメンタルが持たない。
キーボードを打つ手を止め、パソコンの画面に視線を集中させたまま話を切り出す。
「あー、なんだ、一色、ちゃんと仕事してんだな」
「……なんですか急に?」
ごみを見る目で見ないでよぉ……。決死の話題提起をはたき落とさないでよぉ……。
「いや、今やってる仕事とかもそうだし、生徒会始まってから今までお前たちがやってきたこともちょこちょこ見てきたけど……頑張ってんだな」
「……あ、その……どうも、です……」
一色にしては珍しい、歯切れの悪い返事だ。
見ると、遠くを見ながら手で顔をぱたぱたと扇いでいる。
まあ、取り敢えず間を繋ぐことは出来ただろう。うん、きっと出来た気がする。
パソコンの画面に視線を戻して、再び黙々と作業を始めた。
隣でぽそりと「急に言うなんて……」とかなんとかって聞こえたけど、何のことだか分からないし、独り言だろうと思い聞き流すことにした。
続く。
長くなったので、大体半分で一旦切りました。ここまでだと動きがあまり無いので、予定を変更して明日いろはす編をもう1話上げようと思います。
いろはす編は今までで一番じっくりとした展開になりそうです。非エロ・微エロ・どエロそれぞれの話数が結構なことになりそうなので、気長ーーーにお見守りくださいませ(^^)
感想の返信が滞っております。すみません!
しかし、感想は欲しい!←
今日のは今までで一番じゃないかと言うほど展開がゆっくりなので書きづらいかもですが。
今までの話もだいぶたまってきたので、過去のエピソードのご感想も大歓迎です。超お待ちしてます。
タグにさりげなくはるのんとめぐりんを追加しました。書きます。
<ここから超余談。俺ガイルと直接は関係が無いです>
今週のジャンプを読んだのですが、ニセコイの展開に「遂にかぁぁぁ……」となりました。このサイトで小説を書くきっかけになったのがニセコイのマリーだったので、何かもう胸が詰まります。
基本的に僕がここで書くのは、「読んだ人が安心して悶えることが出来るイチャイチャ&エロ」なんですが、そういう風に書くようになったのはニセコイの原作でやきもきしたからなんですね。もちろん、ニセコイが、マリーが好きだからこそのやきもきなんですが。
なので、胸が詰まった分のエネルギーをここで思う存分発散させたいと思います。
そんな理由のため、この小説の更新が止まることはしば~~~らくありません!w
完全に私的事情なお話でした。書こうか迷ったのですが、ちょっと書いてみました。
これを読んだせいで素直に楽しめなくなったじゃねえかこらぁっ!って方がいましたら、そんな不満を爆散させる勢いでイチャイチャ&エロを書くので、どうぞご安心くださいませ←
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!