※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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1.

 翌日。

 集合場所である駅前で、何の気なしに周りを見回して、時計を見る。

 現在時刻は朝9時20分。

「早すぎた……」

 どちらにせよ早めに来るつもりではあったが、妙に気が急いてしまって、気が付いたら集合時刻の40分前に着いていた。周りを見ると、お昼時に比べればまだそこまで人の往来も無い。

 何が楽しくてこんな寒い中……と思ったのだけれど、空を仰いでみると今日は良い具合に日の光が差していて、そこまで寒さを感じることがなかった。2月くらいに暖かい日があると「小春日和だねー」と言いがちだけど、あれ誤用だからね? 晩秋から初冬にかけて使う言葉だからね?

 一色が来るまでどうしたものか……と思っていると。

「うおっ……?」

 不意に、視界が真っ暗になった。

 妙に暖かい感触に、目の周りが覆われる。

「だーれだ?」

 …………。

「俺の知り合いにこんなしょうもない事をする人がいた覚えは」

「だーれだ?」

 …………。

 叩き潰された……。

「さあてね……誰でしょうねえ……」

 とぼけていると。

「だ~、れ、だ~……?」

「うおっ……!? おい……っ!」

 俺の目を覆っていた手から一部の指だけ位置がずれ、恐らく小指と思われる指が俺の口の両端を引っ張ってきた。

 一歩間違えば激エロなイベントになる! とか期待してしまった自分をぶん殴りたいのだけど、単純に口を左右に引っ張られた。

「うふっ(うぐっ)……い、いっひひ(一色)……!」

「え~? 何て言ったんですか~?」

 小悪魔を通り越した悪魔の嘲笑が耳元で聞こえる。

 や、この子、マジで。

 何やってんの?

「早く答えないとぉ……」

 ものすごい意味ありげな口調で、中途半端な所で言葉を切る。

 …………。

 ……何だよ! 早く答えないと何なんだよ!?

 何かもう色々限界だったので、口に突っ込まれている指を引っこ抜く。

「一色だろ、一色!」

 言って振り返ると、一色がにぱっと笑った。

「正解でーす! もー、先輩、分かるまで時間かかりすぎですよー」

「いや、んなもん、最初の手の感触ですぐ……あ」

「あ、え、え? 手の……あ、そ、そうです、か……」

 一色が急に慌てたように目をきょろきょろさせ、頬を赤らめる。

 …………。

 自爆した。

「にしても早いな? もしかして俺より先に来てたか?」

「んー、どうでしょー」

 なんでそこ曖昧にするの? いつ如何なるときも自分が持っている情報の半分までしか渡さないの?

 しかし、一色の顔をよく見ると、鼻が赤くなっていることに気付いた。

 ……まあ、あんま根掘り葉掘り聞かれるのも癪かもしれない。

「ま、スタートが早い分には構わねえわな。行くか」

「はーい」

 元気よく返事をすると、少し前屈みになって敬礼をして、きゃるんと笑った。何その可愛い仕草?

 時刻は9時25分。集合時刻の35分前。

 巻きにも程があるけれど、とにかくデー……お出かけ、スタート。

 

2.

 歩き始めた瞬間、いきなり腕に抱き付かれた。

「いや、なんでだよ……」

「いや、なんでですか……」

 呆れ気味の質問に呆れ気味の質問で返された。

 や、流石にそんな、のっけから、ねえ?

 全力で戸惑っていると、一色は腕を組んだまま指をあごに当てて何か考える仕草をした。

 そしてパッとこちらを向くと、

「なんですか先輩のくせにデートの雰囲気に上手いこと合わせて手を繋いだりちょっと抱き締めちゃったりききききキスしちゃったりとかあわよくばその先のこととかする気だったんですかすいませんそんなこと先輩のペースでされたらわたしの心臓が持ちませんからわたしのペースでやらせてもらわないとってあれ私何言ってあわわわわ」

 …………。

 一色いろは、大混乱である。

 実にメダパニ。

 なんか慌て方のテイストがどんどん変わって行くな、こいつ……。

 まあ、俺たちの関係性が変わって行ってるんだから、それも当然か。

「はいはい、分かりましたよ。行くぞ、ほら」

 頭をぽんぽんと撫でると、頬を膨らませてむーと唸られた。

「先輩の癖に……生意気です」

「後輩の癖に……生意気です」

 ほぼほぼオウム返しをして、頭をくしゃくしゃに撫で回す。

「きゃーっ! ちょっと、まだ序盤、きゃーっ!」

「うっせ、調子乗るからだ」

 その後しばらくこのやりとりが続いた。がうっ! とか言われて手に噛み付かれなくて良かった……。

 

3.

 一色に連れられて行った先は映画館だった。

 以前のデートで来た時は、俺の別々に映画を見るという提案が何故か流されて、結局卓球をやったんだけれど……。

「先に言っておきますけど」

 入った瞬間、釘を刺すような口調で一色が切り出す。

「映画です。別々に見るのは問題外です。見るのはあの映画です。良いですね?」

 にっこり微笑まれた。

……全部がっちがちに決められてた。ここ何処の東ゴルトー?

 と思ったけど、実際そんな独断でもないか。

「おう」

 抵抗しても難なので、大人しく従うことにする。

 どんな映画なのかとパンフレットを手に取ってみる。

「……おおう……?」

 変な声が漏れてしまい、一色に怪訝な顔で見られる。

①ラブロマンス

②結構濃厚な予感

③上映期間終了間際

 こんな感じ。

 よくよく思い出すと、一時期CMでよく見た気がする。

「公開された最初の頃はかなり売れたみたいなんですけど、今はどうなってるか分かんないんですよねー」

「へえ。ま、行ってみるか」

「はーい」

 腕を組んだままのため、のろのろとチケット売り場へ向かう。恥ずかしいし動きにくいし恥ずかしいし恥ずかしいから振りほどきたい……。

 

4.

「……マジか」

「うわー、休日なのにすごいですねえ」

 上映期間の終わり際だし、休日とは言え朝一の上映に滑り込んだというのも考慮しても。

 びっくりするくらい、人が少なかった。

 カップルと思しき人たちが最前列近くに1組、入り口近くの壁際にもう1組居るだけだ。

 え、なにここ、本当に千葉なの? 田舎のレイトショーじゃないんだから。

「……よし、よし」

 隣で一色が何かを確認するかのようにぽしょぽしょと言ったように思えたのは、気のせいだろうか。

「先輩、こっちですー」

「え、でもチケットだと、え?」

 チケットを見て真ん中のやや前の方くらいだな……などと見当を付けていたら、一色に腕を引っ張られた。

 俺を引っ張ったまま、彼女は階段をとんとんとテンポ良く登って行く。

「人少ないですし、どこに座っても大丈夫ですよーきっと」

 言いながら、一色が連れてきたのは入口とは逆サイドの壁際最後列の席。他の客ともかなりの距離が空いている。

 …………。

 ……なーんか怖いんですけど……。

 言いようのない不安に囚われていると、一色がむすっとした顔で覗き込んで来た。近い近い、顔が近い!

「先輩、早くー。先輩は奥の席です」

「お、おう、おう」

 オットセイみたいな声を出しながら、奥の席に押し込まれた。

 座ると、クッションにより僅かに腰が沈み込む。

 一色に抱き付かれていたせいかこの時点で妙に疲れていたようで、腰を落ち着かせた途端にふいーとジジ臭い声が自然と漏れた。

「なんですかもー今の声。ポイント低いですよ」

 一色が俺の仕草を見てくすっと笑い、辛口の批評をしながら隣に座った。

 しかも、座ると同時に既に、俺が肘掛に置いている左手を握っていた。

 いや、お前マルチタスク過ぎんだろ。どこの掟上さんだっつの。

「や、お前、まだ明るいのに……」

「あれー、暗くなったらいいんですか?」

 にまーっと意地悪な笑みを浮かべる一色。

「うぐっ……」

 くそ……好き放題に弄ばれている……!

 しかも今気付いたけど、ここだと俺は一色と壁に挟まれてどこにも逃げられないな。

 逃げる想定をしてる時点でおかしいんだけど。

 その後、映画が始まるまでの15分程はひたすら取り留めの無い話をしていた。

 その間、一色は握った手をしきりにさわさわと動かしてきて、なんかもう手玉に取られていた。死ぬ程恥ずかしいんだけど。

 緊張の為手汗をだらだらかいてしまい、「何ですかもー汗すごいかいてるじゃないですか。気持ち悪いなー」などと罵倒されたのだけれど、そうは言いつつもその後一度も手を離そうとしない事に気付き、何この子もしかしてすげえ優しいんじゃねえのとか考えて一人で死ぬ程悶えた。

 流石にその身悶えする様は本気で引かれた。それでも彼女は手を離そうとはしなかったけれど。

 

5.

 映画が始まった。

 開始1分の感想。

 やられた。

 濃厚なラブロマンスの予感……はしてたけど、冒頭が濡れ場ってどういうことだ。

 そのシーンが数分で終わった後も、度々抱き合ったりキスしたりするシーンを連発する。

 ストーリー自体は良さげなんだけど、その色っぽいシーンのインパクトのせいで内容が全く頭に入って来ない。

 でも、内容が頭に入ってこない原因は、何よりも。

 隣に座っている一色の雰囲気が、明らかに変わったことだと思う。

 映画が始まる前と比べて、明らかに彼女の手が熱い。

 過激なシーンが入る度に、「わ……うわ……わわわ……」と可愛らしい声を漏らして、その度に繋いだ手の指をもじもじさせる。

 スクリーンの光に照らし出される彼女の横顔は妙に色っぽくて。

 ふと、彼女と花火を見たらどんな気分になるのだろうかと、そんなことを考えた。

 色々などきどきがごちゃ混ぜになったまま30分程経過して、ようやく映画の中身も落ち着いてきた。

 彼女の様子も落ち着いてきたようだし、これでしばらくは安心だな……などと思っていたが。

 その認識は、完全に間違っていた。

「……おっ……?」

 不意に、彼女が身体を寄せ、俺の肩に頭をぽすっと乗せた。

 肘掛邪魔なんだよ! と反射的に思ったけど、それは理不尽すぎましたね、ごめんなさい。

「先輩……」

 ぽそっと、囁くように、俺を呼ぶ。

 その声音に、ひどく鼓動が浮ついた。

「どうした」

 言って、彼女の方をちらりと見た瞬間に固まった。

 彼女が、首をこちらに向けて潤んだ瞳で真っ直ぐに俺を見つめていたからだ。

 ……ああ、これは、だめだ。

 やばい。

「……先輩」

 もう一度、俺を呼ぶ。

 ……いや、もうちょっと何か言えよ。俺の判断に任せ過ぎだって。俺の自主性の無さ舐めんなよ! 

 でも、ここで自主性の無さを主張しても後々ろくなことにならない。決断はお早めに。

 彼女が、一色が、目を細め、顔を少し傾ける。

 スクリーンの光が、彼女のあどけない顔をうっすらと照らし出す。

 彼女とは逆側に顔を傾け、ゆっくりと唇を近付けた。

 

 

 

 続く。




いろはすでした。明日もいろはすで行きます。
場面場面に合わせて、適宜連投して行きたいと思います。多分やって2連投までですが!

40万UA突破しました!!!皆さん、いつも本当にありがとうございます!!!
これからも何卒宜しくお願い致します(^^)
PVを見ていると、結構繰り返し見て頂いていたりもするのかなと思いました。嬉し過ぎます。

最近少しだけ読書のペースが落ちていた為か、昨日は狂ったように本を読みふけっていました。今日は読むのも書くのもそれなりでした。
むん。
どんどんペースを上げて、エネルギーを循環させたいところです。

今書いているクオリティからもう一皮二皮剥けたいなーともがいている途中です。もっと多くの方に楽しんで頂きたーーーーい!!
オリジナルをもっと書き進めたら色々見えるものもあるはずだと思うので、まずは頑張ってみます。何にせよ、書き切らないと。

再び1週間が始まりますね。っていうか6月だーーーーー。
頑張りましょう。
ご感想、お待ちしています。通りすがりの方もぜひ。辻斬り的に突発的に褒めていってください。今のはただの本音です。


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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