「じゃ、次は…あたし、行くね!」
「おう、任せた」
②由比ヶ浜結衣。
「こほん…じゃあ、行くね?」
おお、意外とそれっぽい雰囲気が出てる。頑張れメロンヶ浜さん。
「あたしの友達の友達から聞いた話なんだけど…」
で、出たー!俺がよく使ってその都度見破られる奴ー!
って言うか友達の友達から聞いたって。それもうネットで見たって言ってくれた方が潔いよ。
あ、でも雪ノ下はもうチワワってるな。早くね?雪ノ下チワワに改名しとく?
「ある男の人が、タクシーに乗ったときのこと。
その日は仕事が遅くなって終電も無くなったからって、タクシーで帰ることになったのね。
それ聞いてあたしはもったいない!って思ったんだけど、会社の経費で落とせるらしいから安心したの」
え、今後半お前の感想?急に私情を挟むんじゃねえよ。話が訳わかんなくなるぞ。
小町も『ほえ?』って顔になってるし。
にしてもほんとこいつ主婦みてえだな…良いお母さんになりそうだな…。
…暖房効きすぎじゃね?
「そこから家まではタクシーで30分くらい。タクシーの運転手さんはその人が疲れてるのを察して、最低限の会話に留めてくれてたの」
雪ノ下、頑張って由比ヶ浜を見てるな。ぷるってるけど。
「10分も経った頃かな…少しうとうとして、ぱっと目が覚めたら…助手席に、いつの間にか人が乗っていたの」
平塚先生が『ひっ!』と声を上げた。あれ、俺に近付いて来てる?
「乗っていた、と言うよりは、まるで初めから居たかのようだった。声を上げそうになったけど、運転手さんを驚かせてはいけないと思って声を出さずにいた。
助手席に居る人は女の人だったみたいで、真冬なのに白いワンピースを着ていた。
…シートベルトも、していなかった」
おおう、それっぽい。俺もぞくぞくしてきた。ってあれ、平塚先生が俺の左腕に抱き付いてる?
胸元小町に左平塚…。
なんで女の人って皆して柔らかくて良い匂いすんの?
平塚先生はタバコの匂いがした方がまだ冷静になれた…!
「運転手さんに聞いてみようとしたら、『お客さん、温度大丈夫ですか?私一人だと基準が分からなくなるもので』なんて言われて、質問するタイミングを失った。
今の言葉で自分にしか見えていないのだと分かると、もう目を閉じて見ないフリをするしか無かった。それでも、気配は確かに感じる。暖房は効いているのに、身体の震えが止まらない」
小町・平塚ペアの震えも止まらない。って言うか先生の涙目可愛いな…。
「…それでね、それでね!?」
…あれ、話がラストに向かって来たのか、由比ヶ浜のテンションが若干上がり始めた…?
あれ、怪談でこのテンションの上げ方は危険な気が…。
「その女の人が、ゆーーーっくりと振り向いて笑いながらこう言ったの!
『…私のこと、見えるの?』
って!!ちょー怖い!!」
…うわぁ…。
めっちゃ静かになっちゃったよ。
恐怖の余韻、と言うよりはむしろ、皆して俺同様に「うわぁ…。」ってなってるからだな。
途中までは良かったのに…。
最後らへんで、感情が先走って怖くなくなっちゃうパターンになっちゃった…。
居るよねこう言う人。
「…あ、あれ…?こ、怖くなかった…?」
おいバカよせ、傷口に塩を塗るな!
「…ど、どーーーん!」
引きつった笑顔で俺を人差し指で差してきた。笑うセールスマン?
なんでだ。悪あがきにすらなってねえ。
ほら、余計場の空気が変ななっちゃった。
塩どころかブート•ジョロキア塗っちゃったよこの子…。
…まあ、今の妙に可愛かったけど…。
「あ、あっれー?あっれー?おっかしいなあ…」
顎に人差し指を当てて首を傾げている。頭の上にハテナが3つくらい見えるな…。
うん、おかしかったのは最後だけだった。惜しかったよメロヶ浜さん。
「…ふう、最後で白けて良かった」
「先生ひどい!?」
「そうですねー最後でだだすべりでしたね!」
「小町ちゃん!?笑顔で言わないで!」
由比ヶ浜が泣いてる。うわーんって。俺も悲しい。
「では、次は私が行こう。私の話は怖いぞ?ふふふ…」
「先生…噛ませ犬感がもうげぼらぁっ!?」
…食い気味に鳩尾に拳ぶち込みやがった…へへ、容赦ねえ…なあ…。
ちなみに小町はまだ俺に引っ付いている。あったかいから良いけど。
③平塚静。
「これは私が実際に体験した話だ。不幸の手紙と言うのを知っているか?」
「ああ、今で言うチェーンメールの類ですよね?『~人に同じ手紙を出さないとあなたは不幸になります』みたいなやつですっけ」
「前にうちのクラスでも流れたね」
以前、職場見学のグループ分けの話が出た頃、葉山率いるトップカースト組の男子3人の悪口を言ったメールが出回ったことがあった。そのときの何とも言えない不快感は今でもはっきりと覚えている。
…俺にメール回って来てねえけど。泣いてない!泣いてなんかいないんだから!
…あの時は、犯人を突き止めずに問題を解決ってか解消してたから…今頃になって犯人が誰か気になって来た…。
「そうだ、私が小学校くらいの頃に流行ったのだが…それが、ここ数年再び出回るようになったのだ」
「え…マジですか?先生みたいに大人に対しても?」
「そう、大人に対しても…と、言うよりも、大人に対してのみ出回る手紙と言ったところだ」
「大人に対してのみ…出所が気になりますね。子供の間でならイタズラだと分かりますが、大人の中でとなるとまたタチが悪いですね」
雪ノ下が顎に手をやり、真剣な顔になっている。
確かに、大人が行うとなれば当然足が付かないようにしている可能性が高い。何とも面倒な話だ。
「…それは、どう言った内容なんですか?」
「ああ、まず従来の不幸の手紙とは違い、他の人に回さなくてはいけない等と言う文言が無いのが特徴だ。
内容は一見極めてまともに見えるのだが、その実一部の者にピンポイントで心に傷を負わせると言う非常に悪質なものとなっている」
「うわ…厄介ですね。具体的にどんな内容なんですか?」
「それはな…」
平塚先生の話を聞く5人全員が、ごくりと息を呑む。
幽霊の怖さとはまた別の、得体の知れない恐怖。
小町も俺の服を握る手にきゅっと力を込めている。
「…『私たち、結婚します』と言う言葉から始まる手紙だ…」
…うわぁ…。
めっちゃ静かになっちゃったよ。
さっきの由比ヶ浜の時とは違って、悲哀と憐憫の情がリビングに溢れちゃってるんですけど。
雪ノ下、目を瞑って顔を背けないで。『くっ…!』って顔、余計に傷付けちゃうから。
由比ヶ浜、困ったように眉をひそめながら『先生、諦めないで!』って感じで胸の前で両手でガッツポーズを取らないで。余計に悲しくなるから。
先生、どこ向いてるの?目が虚ろだよ?先生、先生?…先生!
やばい、視界が滲んで来た。
周りがお通夜状態になっていると、川崎が平然とした顔でぽつりと言った。
「あー、先生どんどん周りに先を越されてるんですねー」
「!?」
うおいぃぃ!?川崎さーん!?何言ってくれちゃってんの!?
お前バイトのことで平塚先生に呼び止められた時もそんな感じで切り捨ててたけどもー!
ほら、先生風化した。先生風化したよ!
「…うっ、ひぐっ…もう、やだぁ…」
…子供っぽく泣く先生が結構可愛い…。
こんなの、出会ったばっかの男の人に見せることまず無いもんなあ…。
誰か!早く!俺が貰っちゃう前に!
何時の間にか、小町は俺の胸から離れて先生の背中をさすってた。由比ヶ浜も。流石やでえ。
…涙が…止まらねえよ…。
続く。
由比ヶ浜の話は、「ニンゲン観察バラエティ『モニタリング』」の企画で行われていたドッキリを参考に致しました。
微エロまで行くのは次々話くらいになります。それまで短めのゆるゆる感をお楽しみくださいませ!
お気に入り数が200を超えた上に、R-18小説週間ランキング2位にランクインされた事にに驚愕しております。本当にありがとうございます…!!
まだやり方は探り探りですので、どうか温かく見守って頂ければと思います。
今回のようなどたばた系のエピソードの他に、川崎とのエロエロエピソードも考えています。骨組はもう出来ているんですが、仕事終わりに書いている都合上どうしても執筆ペースを上げられないので、気長に待って頂けると嬉しいです。欲張って他の小説と並行して書き始めてしまったのもあり、中々…!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!