※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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1.

「あう……」

 一色の、恥ずかしそうな、それでいてどこか心地良さそうな、甘い声が耳にふわりと響く。

 壁を背に座って、俺の股座に一色が背を預けるように座っていて、そんな彼女に首に左腕を回してきゅっと抱きしめ、左肩にあごをそっと乗せて、右手で彼女の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 ……うーん。

 今なら遠月学園の全敷地を均せるくらい悶え転がれそう。や、流石にそれは死んじゃうな。

 こんな体勢なので、一色はいくら恥ずかしがってもどこへも逃げられないでずっとあわあわとしている。慌てる一色さん可愛すぎてちょっと意味分かんないです。

 一色が右に顔を逸らせば俺が彼女の右耳をこしょこしょとくすぐって逃げ場を無くし、首を前へ曲げれば抱きしめる腕の力を強めて引き戻し、首を左に傾ければ互いの頬と頬が触れ合ってむにゅっとなり、後ろへ逸らせば口付けしてやる。

 どうだ、どう動いてもとっても恥ずかしいだろう、ふははは!

 実際やったのは右と前のケースだけだけどな! 左と後ろのパターンは恥ずかしくて俺が死んじゃうぜ!

 頼むから左と後ろのパターンは来ないでくれよ、いややっぱり来て、やっぱり来ないで……と複雑な気分で祈っていると。

「……はう……」

 わー。

 頬を自分からくっつけてきたよ、この子。

「……ん……」

 気持ち良さそうにすりすりしてくるなよ、可愛すぎるだろ。頬ずりしてやろうかあ! もうしてる。

「……んん……っ」

 だあぁぁぁあぁぁ! 唇こっち向けんな! 何して欲しいのか分かりやすぎる! 死ぬ!

 なんでしょう、もうこの子のことをどうにかしちゃっていいのかしら。思考回路は暴徒同然。今すぐ襲いたい……。

 と、まあ、そんなことを思ったりもするのだけれど。

 それ以上に、今こうやってベタベタしている時間が、死ぬ程恥ずかしいと同時にすんごい安らぐ。あとそれと同時に死ぬ程恥ずかしい。……うん、死ぬ程恥ずかしい。大事なことなので3回言いました。

 腕の中のわがまま姫様(奉仕精神が何気に豊か)の機嫌を損ねたくはないので、ちょっとというかすんごい逡巡した後、近付けられた唇にそっと口付けをした。

 

2.

 唇を離すと、一色の目がとろんとしていることに気付いた。

 なんかこの後すごい恥ずかしいことを言ってきそうな雰囲気。

 こういう予想は当たるもので、一色は幸せそうに蕩けた表情を謎の緊張で引き締めて、俺を見つめた。

「せ、せせ、せせせせ、す、すすすす、……」

 ……なに、なんかサ行っていうかsの子音が一色の口からすんごい勢いで漏れ出てる。

 ……何を言おうとしてんだ?

「おい、どうした、一色。さっきから――」

 俺が言い切らない内に、一色がやっとちゃんとした文を口にした。

「せ、せ、先輩。す、すすす、『好き』、って、いい、い、言ってあげても、い、い、良いんですよ?」

「…………」

 …………。

 この間、たっぷり5秒程。

 一色にとっては地獄のような長い時間ではないだろうか。 

 どうでも良いけど、なんで女の人って告白された時にオーケーだと思ってても1週間時間を開けたりするの? あの時間、男にとって地獄だからね? 自分の気持ちにクーリングオフが効く間に熟考を重ねてるの? それとも男にその時間を耐えて更に自分のわがままを耐え忍んでくれるか試してるの? 鬼にも程があるでしょ?

 話が逸れた。過去のトラウマの扉がもう人体錬成をした時ばりにぱっかーーーんと開いてた。

 で、八幡のアンサー、オープン!

「…………お断りします」

「なんでですか!?」

 目をむいてツッコまれた。ツッコミ兼怒り、って感じ。

 いや、そんなん、無理でしょ。だって、ねえ?

 驚きやら怒りやら悲しみやらで、一色の可愛らしい顔つきがくしゃくしゃと歪む。

「何でですか、え、本当にいやなんですか? う、うえ……」

「…………え」

 え、涙目?

「えっく、ひっく、ぐす……っ」

 え、え、え? うそ、ほんとに?

「お、おい、一色……っ」

「ひっ、ひっく、ひっく……」

 ぬあぁぁぁぁぁぁぁ!

 突然の泣きいろはすに尋常でない程慌てて、一色の頭を撫でながら言い訳をする。ぽふぽふ。

「待て、待て待て待て待て。ちがうんだ、一色。恥ずかしいから、恥ずかしいからなんだよ。今言われたら多分心臓が耐えられなくて死んじゃうと思ったからなんだって。だから泣くな、泣くなって。な? な?」

 超みっともねえ……。

 非常に失礼だけど、ウソ泣きとかだったら「なんだよー!」で済むんだけどなあ……なんて期待をしていたら。

「ぐすっ……ほ、ホントですか? ひっく、良かった……」

 目元の涙を袖でこしこしと拭って、一色がにぱっと笑った。

 その瞬間。

「…………っ」

「ふえっ、えっ、えっ、え……っ?」

 一色の戸惑いの声で、自分がたった今やったことに気付く。

 振り向いて微笑む一色があまりに可愛くて、気付いたら両腕でぎゅっと抱きしめていた。

 こんなことをしたら、いつもならば、ハッと我に返った瞬間に即座に平身低頭して謝り倒して全力で両腕を離して手の甲を壁にぶつけて悶絶するまであるんだけど、今は、今は。

「あっ……ん、もう、先輩ったら……甘えんぼさんですね……」

 俺の心情を分かったような分かってないようなことを言って、一色が俺の腕に優しく手を添える。

 肘の内側に首をくてっと傾けて「ふいぃ……」と温泉にでも浸かっているかのように気持ち良さそうな声を出したかと思うと、くりんと俺の方に向き直った。う、いやな予感……。

「先輩、わたしのこと泣かせちゃいましたね?」

「んぐぁっ……あ、や、まあ、その……」

「泣かせちゃいましたね?」

 なんで当事者しか居ない状態でこの聞き方するのん? 鬼?

 抵抗しようがねえよ……。

「……は、はい……」

 力無く答えると、一色がにんまりと笑みを浮かべた。やべえ、いやな予感がピーク。ピークだよ!

「それじゃ……わたしにちゃんと『好き』って言ってください」

「断る」

「早いですよ!?」

 食い気味の拒否に対して食い気味にツッコまれた。このタイミングの繊細さは刹那の見斬りを彷彿とさせる。あのゲームは伝説だぜぇ……。

「や、俺が言われるのだって恥ずかしさの限界突破は確実なのに、俺から言うとか絶対無理だろ。むりむり、死んじゃう。もっとシチュエーションがそれっぽくないと」

「今のこのシチュエーションで言えないとかどんだけなんですか……じゃあ、いつなら言えるんですか?」

 一色の言葉に、頭を抱える(心の中で)。

 ううむ。

 言わないという選択肢は流石に危険すぎるので、どこかで、しかも近いうちに……。

 ……ふと、一色から一方的に指定されるであろう今日1日の流れ――正確に言えば明日までの流れだが――を考えて、あるタイミングが頭に浮かんだ。

「今日の……夜、とか?」

 頭に浮かんだままに口走ったのだけれど、

「あ、あう、そ、そうですか……そうです、か……それならまあ……はわわわ……あうう……」

 耳まで真っ赤な茹でタコいろはす、略して茹ではすが出来上がっているのを見て、もしかしてこれとんでもないこと言ってんじゃないのかと今頃になって気付いた。ていうか茹ではすって何だよ。もはや全部気化してるわ。

 茹ではすは頬に手を当てて、首をきょろきょろさせて少し落ち着いたかと思うと、時折俺を見てわざわざ自分の顔の赤みをMAXに引き戻して、またきょろきょろして……という阿呆みたいな行動をとっている。超可愛いけど。お持ち帰りやでえ……そんな勇気無いでえ……。

「あうう……先輩、そういうとこほんとずるいです……ずるずるです……」

「や、俺なんも引きずってねえよ。その表現おかしいかんね?」

 俺のツッコミをまるで意に介さず(泣いちゃう)、一色はぽしょぽしょと独り言なんだか分からないことをしばらく呟いた後、ぴたりと動きを止めて俺に向き直った。

「……先輩、わたしは落ち着きを取り戻したいです。最近よくしてることをやれば落ち着くと思うんです」

「そんな変なことを言う時点でだいぶ落ち着いてると思うけ……ど……っ?」

 俺の返答も待たぬまま、一色はこちらに振り向いて目を閉じ、俺の太腿に手を添える。

 一色が目を閉じる直前、期待に満ちた瞳とほんの一瞬だけ見つめ合った。

 ……ああ、これは、多分。

 ここから先、互いにどろどろになるんだろうな。

 さっきまでは安心感が勝っていたので、まだ何とか抑えることが出来ていた欲求が、再び顔を出して俺の中で暴れ始めたのを感じながら、首を左に傾けて一色と唇を重ねた――。

 

 

 

 続く。




いろはす、もう1~2回続けて行きます。思った以上に進まない……!今日はもうおねむなので、早めに区切りました。
毎回、3000字以上書いたら後は区切りの良い所を狙って区切るんですが、最近は中々区切りがつかず、4000~5000字になっています。推敲にかかる時間を減らしたいなあ……。
ちなみに「思考回路は~」の部分は10巻で出たフレーズが好きすぎて、それを更に変えて書いてみました。言葉遊び楽しい。
「す、すすす……」の台詞は結構前から書こうとしていたので、やっと書けて嬉しいです。

アニメの12話はびっくりしました。11巻が発売延期になってから作り変えたりなんてとても間に合わないでしょうから、しょうがないですね。というか元々あそこまで進める予定だったということに驚きました。がんがん進めるスピード感には戸惑っていますが、ゆきのんの「バカ、ボケナス、八幡……」が聞けたから良しとしますw
2期は原作を読んだ上で見ていたので、12話は逆に「ああ、このさらりと流したシーンには多分八幡のこういう心の声が入ってるんだろうな、この辺りのシーンは原作ならヒロインのさりげない仕草をきちっと描写してるんだろうなあ」などと想像しながら見ることが出来ました。こういうのもきっと大事かなと。

1週間が終わりましたねー。週末に何かしら頑張らねばならないことがある方は頑張ってください。僕は適宜遊びます。平日に戦っていらした方はお疲れ様でした!


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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