下着姿になるために、一色がゆっくりと起き上がる。
とろんとした目つきではあるが、それでも視線は俺の目から外さない。
あまり、意識してやっているとは考えづらい。恐らく無意識なのだろう。
――だからこそ。
意図しない、考えない、無意識でやっているからこそ、その視線は。
――俺の劣情を、狂おしい程に煽ってくる。
「…………」
……?
一色が、ベッドから起き上がって女の子座りになると、右腕で身体を抱いて動かなくなってしまった。
……ああ、そうか。
なんで、と聞く必要は無いだろう。
結局のところ、恥ずかしいのだ。
そんな一色を見て、敢えて俺からは――
「…………」
――何も、言わない。
何か言うでも、凝視するでもなく、ただ、見る。
一色の顔を、見る。
「……うう……」
沈黙に耐え兼ねたのか、一色が泣きそうな声を上げた。可愛い。
「どうした?」
ここで何も言わないのも難だなと判断して、質問をする。白々しさ全開だけど。
「……ううう……」
身を捩って、引き続き呻く。可愛い。
うーん。
ちょっと、イジメてみようかな。
「……昼寝前は、自分から見せてこようとしたくせに……」
ざくり、と指摘のナイフで刺してやると、一色がぴくっと動き、泣きそうな顔になる。
「……だって、あれはわたしから攻めてたから……」
「……お前なあ……」
なんて後輩だ……。
斜め上の天井を見上げて頬をぽりぽりと掻き、顔の向きをそのままに視線だけを一色に向ける。
「へー、じゃあ俺から指示されると、脱げなくなっちまうくらい恥ずかしいんだな。まったく……」
挑発するような言葉で煽ると、一色がばっと顔を上げた。その表情には焦りが滲んでいる。
「な……そ、そんなこと――」
「だったら」
一色が顔を真っ赤にして反論しようとするのを制して、口を挟んだ。
「……俺が脱がせるか」
「え……」
一色の身体が、ぶるりと震えた。
実際、最初は一色が脱ぐのを見るのも一興と思っていた。
しかし、いざこうやって躊躇しているのを見ると、せっかくなら俺が脱がせて、更にその羞恥心を煽って恥じらいに恥じらう一色を見てみたい、あ、間違えた、男として、先輩として、一色にあまり恥をかかせないようリードしてやりたい気持ちになった。やばい、心の声の中で更に本音がだだ漏れになっている。
「……で、でも、流石にこれくらいは自分で……」
驚きの声を上げてから数秒間で、俺に脱がせられる光景をイメージしたのだろうか、一色は急に毛布で身体をばふっと覆い、顔の上半分だけ覗かせてもじもじとして、小動物のような目をこちらに向けた。何この可愛い生き物? 叩いたらボーナスポイントもらえるかなあ。
まあ。
取り敢えず。
「おりゃ」
ばふぉっ、と。
「うきゃぁっ!?」
俺が毛布を剥ぐと、一色は変な声を出した。まだ服着てんのになんでそんな恥ずかしがるんだよ……。
「ううう……先輩にひん剥かれるぅ……」
「…………」
さっき俺に下着を見せると言った事をしっかり忘れたのか、わざとらしく身体を縮こまらせている。
「はわわわわ……」
縮こまりながらも、なんか、わざとらしく俺をちらちら見てくる。
……なんかこいつ、明らかに楽しんでない? 緊張してんの? 遊びたいの? どっち? ……大方、緊張しまくってるのを、こういうおふざけで紛らわせたいんだろうな。流石にそこを指摘したらマジで泣いちゃいそうなのでやめておこう。
……まあ、一色がそういう態度で臨むのならば。
――それはそれで、こっちにも考えがある。
一瞬だけ俯いて、目をゆっくり閉じて、気合を入れた上でゆっくりと目を開ける。
……よし。
比企谷ルパン、再出勤です。夜這いの次は脱がせます。
まあ、実際やるなら――
「動くな」
「え……」
――本気で、ひん剥いてやるけどね。
× × ×
動きを止めた一色の下へとにじり寄る。
一色は俺の声音から、俺の(変態としての)真剣さを感じ取ったらしい。
顔を強張らせながらも、決して逃げようとしない。
「あ、あう……あうう……」
微かに口元を震わせながら、涙目で俺を見る。
緊張と、不安と、――期待とを滲ませて。
……この子のこの表情は、どうしてこうも俺の気持ちを高めてくれるのだろう。
「じゃ、まずは上からだな。……めくるぞ?」
言って、一色のセーターの裾を掴むと、びくりと震えた。
「……はい……」
上気して、頬を朱に染めたその顔は、たまらない色っぽさを宿している。
くいっ、と。
一色のセーターをずり上げていくと、やがて双丘に行き当たった。
その時だけ、セーターを更に引っ張って、その丘を乗り越えると――可愛らしい、ピンク色をした、フリル付きのブラが姿を現した。
「…………っ」
一色は顔を背けて、ふるふると震えている。
たまらない。
ブラに彩られた一色の胸も、そして、恥ずかしがる一色の仕草も。
……たまらない。
――ここで、敢えて何も言わず、何もせず、10秒程の間を空ける。
その間にする事はと言えば、、ただただ一色の胸を見るだけの簡単なお仕事です。なんかバイトの募集広告みたいになった。
その間を不思議に思ったのだろう、一色がちらりと目だけこちらに向ける。
「……あ、あの――」
「はい、両手を上げて!」
「え? あ、はいぃひゃあああああ!?」
また変な声が漏れた。
一色の戸惑いに割って入るように指示を出し、混乱極まる中何とはなしに俺の指示通りに腕を上げた所を、俺がぺろんと全部剥いでやった。
一色の上半身を包む衣服が、下着1枚になった。
「……う……わ……」
呼吸をするのを忘れてしまう。
俺は、今まであれだけ色々しておきながら、まだ下着姿を拝めていなかった。
その焦らしもあってか、――ネットや本で散々見慣れた、コンビニに行けば平然と雑誌の表紙を飾っている筈の、見慣れた筈の――下着姿が。
これ以上無い程に、可愛く、色っぽく、美しく見える。
俺が感動で打ち震えている中、当の一色はというと。
「……わたしは何も見えない……わたしは何も見えない……」
両手で顔を覆って、ぶつぶつと訳の分からない事を言っていた。
ちょっと可愛すぎたので、ぽふぽふと頭を撫でた。その間も一色は現実逃避を続けていた。なんだこいつ、超可愛いな。
× × ×
「さて、次は……」
言って、スカートの裾に手をやった、その刹那。
「はわーーーーー!」
「え」
がしっ、と。
ほんのコンマ数秒前までは顔を手で覆っていた一色が、妙に真剣な顔で俺の手を押さえ込んでいた。手に込められた力が割とマジ。意外と力あるなこいつ……。
「せせせせ先輩……わたしですね、今日は、その、アレです、その、あの……ス、スカートの調子が、わ、悪くって……」
「…………」
…………。
……テンパりすぎて、絶望的な言い訳を始めやがった。
なんだよスカートの調子って。万物の声に耳を傾けられるのかよ。それどこのロジャーさんだ。ていうかスカートの調子が悪いとどうなるんだよ。なに、急にホックが外れたりすんの? 何そのラッキー・結城・イベント。
ううむ。
一色がこれだけおバカ丸出しの事を言うのは極めて稀、というより、初めてかもしれない。
……この状況は、楽しまなきゃ損だな。
俺はにやりと笑うと、スカートに添えた手に力を込める。
「そうか、じゃあ脱がせてスカートを休ませてやらなくっちゃな……!」
俺の八百万信仰半端ねえなと思いつつ、スカートのホックの位置を探ろうとする。
しかし、一色の抵抗も半端ない。
「そ、そうですね、今日一日頑張ってもらったら、明日休んでもらうことにします……」
なんか2人がかりで、社員の勤務時間の調整をしてるみたいになってる。
「むむむむ……」
「むむむむ……」
…………。
ううむ。
なんか、この展開おかしくない?
だって、下着姿になるのを了承したのは、今目の前で俺と唸り合いしてるこの子自身だよ?
ううむ。
……全ては恥ずかしさが故、か。
……ちょっと、強気に行くか。
「一色」
「ひゃいっ!?」
目を見据えて、強めの口調で一色を呼ぶ。
「……いつまで抵抗するつもりだ?」
冷や水を浴びせ掛けるような低い温度の声音で言うと、一色の目が泳いだ。
「あ、う、そ、その……」
「俺に下着姿を見せてくれるんじゃなかったのか?」
「そ、そうです……けど……」
なんだか一色さん、泣きそう。ちょっちょやりすぎたかしら。
「……ふう。……ほら」
軽く息を吐き、一色を抱き寄せる。
「ふあ……?」
一色が甘えた声を出す。心底安心したような声だ。
軽く抱きしめて、一色とおでこをこすこすと擦り合う。
そして、そこから、
「……ちゅっ、ちゅぴっ、ちゅるっ、はむっ、あむっ、ちゅりっ、ちゅりゅっ、ちゅっ……」
一色に軽く唇を重ね、彼女と舌を緩やかに重ね合い、そこから唇や舌を何度も咥える。
ゆっくりと押し倒そうとすると、一色は抵抗することなく俺を受け入れて、そのまま仰向けに倒れ込んだ。
「ふあっ、ちゅるっ、あふっ、せんぱ……んふうっ、ふむっ、ちゅるっ、ちゅるるっ、んはぁっ、んん……っ」
意識をぐちゃぐちゃに混濁させるような濃厚なキスではなく、その2歩手前くらいの、愛情をゆっくり確かめ合うような、穏やかなキス。
下着姿になるというだけでも、よほど緊張していたんだろう。
一色の身体を包んでいた強張りが、ゆっくりと解れていった。
× × ×
「……ぷはっ。……どうだ?」
気付けば夢中で互いに口付けを楽しんでいた。いかんいかん、病みつきになるところだった……や、もう、ぶっちぎりで手遅れだな、俺ら。
俺の問いに、一色がこっくりと頷く。その拍子に、亜麻色の髪の毛先がふわりと揺れて、甘い香りが鼻腔をくすぐった。
「……はい。……お願いします」
仰向けのまま、手を胸に重ねて、一色が目を細める。
「じゃ……行くぞ」
今度はゆっくりとスカートのホックを探す。
そして金属の感触を見付けると、それをゆっくりずらす。
かちっ、という音と共に、一色のやや短めのスカートが緩んだ。
「……腰、浮かせてくれるか」
言うと、一色が小さく肩を竦めて、くいと腰を上げる。
それに合わせて、ついにスカートを一色の細い肢体から剥ぎ取った。
続く。
今回あった出来事:いろはすが下着姿になった。
今週から新しい会社で働き始めたこともあり、ちょっと今日はあまり余裕がありませんでした。そういう状況ならそういう状況なりに楽しもうということで、「服を上下1枚ずつ脱ぐだけのシーンを引っ張ったらどんな感じになるのか」というのを試してみました。これ、いろはすだからこそ書けるシーンだなーと思いました。もっと色っぽく書きたかった……。このシーンを書いたことで、自分の実力不足を痛感しました。精進します。
流石にここで止めて他のヒロインに行くのは難なので、もう1~2回連続でいろはす編を更新します。週末はいろはす三昧で。濃厚に行きますぜ。
前話の後書きで小説の情報について募集したのですが、何人かの方から情報を頂いております。本当にありがとうございます(^^)! 引き続きお待ちしております!
ご感想、メッセージ、評価等々お待ちしております!
それでは、1週間お疲れ様でした!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!