まず、現状を整理したいと思う。
川崎が妹に面白い話、具体的には怖い話をしなければいけないので何か案が欲しいと言う相談を受けて、雪ノ下の家で怪談大会を開くことになった。
で、今。
俺の左腕には川崎(巨乳、泣くと可愛い)、右腕には由比ヶ浜(巨乳、おバカで可愛い)、胸元には小町(ぺったんこ、超可愛い)、背中には平塚先生(巨乳、綺麗だし意外と可愛い)がくっついている。
…なんだこれ?
…なんだこれ?
2回言ってしまった。
そんで、雪ノ下は今さっきまで自分で話していたのもあるが、まだ俺にくっ付いて来てはいない。
…自分で『まだ』って言ったことにびっくりだ。戸塚、何かごめん。
「…そんじゃ、最後は俺だな」
俺のターン。
⑥比企谷八幡。
…と、その前に。
まずは言っておかないといけない事がある。
「雪ノ下、大丈夫か?」
「?何が?」
俺の質問を唐突に思ったのか、雪ノ下が首を傾げる。まあ、そりゃそうか。
「いやなに…今から話す話は、本当に怖いから…そこに一人で居るのはあんまりかなって思って…。
まあ雪ノ下が大丈夫って言うならこのまま始めるんだけど」
「ま、ま、ま、待ちなさい。そ、そんなに…?」
不安げな声を漏らした。そりゃそうだ。
ここで、もう一度念を押す。
「ああ、本当にやばいぞ。正直、心配だ。だから、あんまり無理はすんなよ」
最後の辺りで、少し口調と表情を柔らかくした。どうだ俺の微笑みは!
「…今の表情、気持ち悪い」
…このアマぁぁぁ…!俺が興奮するまで泣かせてやろうか!捕まる!後ろに先生が居る!
「…でも、そこまで言う…なら…」
ぽそっと呟いたかと思うと、自分の下に敷いていたパンさんのクッションを抱え、すくっと立ち上がった。
そして、俺の目の前、小町のすぐ横に座ると、俺の右の袖をきゅっと掴む。
「…これなら…安心する、かも…」
そう言って、自信無さげに俺の顔を見上げた。
え、何この破壊力?
小町、この光景を見て全力でにやにやすんのやめて?由比ヶ浜さんがこれ見て俺への乳圧を更に強めてるから。
本当に!やめておくれ!右腕がやさしさに包まれちゃう!
「この状態…まあ、これでも良いか。由比ヶ浜、照明を一つ暗くしてくれるか?」
「えっ…ちょ、ちょっと、ここに来て暗くすんの?」
「雰囲気をとことん作りたくなってな」
最初はどうなるかと思ったけど、どうやらこのメンバーだと俺以外は皆びびりみたいだ。
…こうなると、せっかくだから全員泣かしてみたくなってくる。鳴かせないよ、泣かすんだよ。
前者は鬼畜すぎるからね。
「それじゃ、行きまーす」
「はい、お兄ちゃんどうぞー」
流石だぜ妹。余裕綽々に見えて、実は既にめっちゃビビってるけど。
「これはある50代半ばの男性が実際に体験した話。
男性がまだ20代の若い頃、彼は京都に住んでいた。
その当時は仲の良い先輩がいて、よくその人と一緒に飲みに行っていた」
皆俺にくっ付いたまま、話の成り行きを見守っている。
「ある日、いつもの様に飲み歩いていると、一人の女性と出会い意気投合した。クラブで働いていると言う女性だった。
初対面とは思えない程話が弾み、その女性が『今晩泊まりにおいでよ。もう一人女の子を連れて来るからさ』と提案して来た」
胸元にいる小町から『きゃっ!』と言う茶化すような声と、背中にくっついている平塚先生から『良いなあ…』と言う声が聞こえてきた。
泣いた。
「そしてその晩は、男女の組み合わせで2部屋に分かれて、一晩を過ごした」
由比ヶ浜が小さく『はわわ…』と恥ずかしそうに言う声と、平塚先生が『…良いなあ…』と悲しげに言う声が聞こえて来た。
…泣いた。
「その女性は男性と一晩過ごした後も度々男性たちを遊びに誘い、4人で大阪のホテルに泊まったり、色んなことをして遊んだ。
…それからひと月ふた月経った頃だろうか。ある時、男性の家に警察官が訪れた」
川崎が小さな声で『えっ…』と呟き、身を竦める。
「警察官は『この女性をご存知ですか?』と言って、一枚の写真を見せて来た。
その女性は、男性が飲みの席で出会い、一緒に泊まったりして遊んだ女性だった」
雪ノ下が青ざめた顔で、袖を掴んでいた手を俺の手に乗せた。俺が緊張すんだけど。
「男性はその質問に対して知っていますと答えると、警察官は今度は『この女性はこちらに来ましたか?』と聞いてきた。
記憶を遡ったものの、遊んだのは大阪のホテルに泊まったときが最後で、その後は会っていないどころか連絡も取っていなかった。当時は携帯も無かったから、当たり前と言えば当たり前だったのだが。
男性は不安になり、この女性がどうしたのかと警察官に尋ねた。
警察官は、
『実はこの女性、働いているクラブのお客さんの男性にお金を借りていまして。
それが返せなくなり、その男性を殺してしまったんです』
と、暗い瞳で告げた」
小町が『ふぐぅっ…!』と小さな声を上げて、抱き付く力を強めた。嬉しいけど…この後が心配だなあ。
「…そ、それで、どうなったんだ…?」
平塚先生が、俺の肩に乗せた手を震わせながら聞いて来た。
「はい。…警察の捜査力は凄くて、『あなたは、~の時期に彼女のお部屋に遊びに行っていましたね?』と聞いてきた。
時期も場所も完全に一致していたため、男性は『はい、行きました』と緊張した面持ちで答えた。
そして、警官は男性に言った。
『ちょうどその時、押し入れの上に、死体を隠していたんです』
」
「~~~!!!」
誰の悲鳴も上がらなかった。息を吸いながら出す、恐怖に染まった小さな小さな声だけが漏れた。
全員が怖がるのかは分からないなんて思っていたんだが…見ると、皆一様に、今まで以上に俺に顔を押し付けてぶるぶると震えている。
雪ノ下はいつの間にか、小町同様俺の胸元に顔を埋めていた。
雪ノ下の口から、小さく『うう~…うう~…』と泣きそうな声で呻くのが聞こえる。
…やりすぎたかな。
遅いけど。めっちゃ遅いけど。
ものすごく罪悪感が湧いた。
マンションの防音がしっかりしているためか、リビングには時計の針の音しか聞こえない。
『この後、女性はちゃんと捕まりました』と言う結論まで話そうとしたのだが、このくだりは話したところで彼女たちの恐怖を緩める要素にはなり得ないと判断して、話すのをやめた。
代わりに、出来るだけ皆の頭をぽんぽんと撫でてやった。
平塚先生の頭を撫でるのは躊躇したんだけど、いざやってみると凄く素直に応じてくれた。
こう言う面をもっと出してってくれればなあ…男なんて容易く…あれ、もしかして俺、今日平塚先生にどんどん攻略されてる?
10分程経っただろうか。
ようやく皆顔を上げ始めた。
俺はさっさと頭を切り替えて、この後どうするかを考えていた。
明日は休みとは言え、時計の針はもう21時を示していた。
「この後どうする?もう遅いし、解散するか」
俺が言うや否や、小町が口を開いた。
「…はあああああ!!?この状況で!?お兄ちゃん以外が怯えきってるこの状況で!?」
何かもう、口を開く前の表情が既に「はあああああ!!?」って言ってた。物凄い剣幕。
「あ、いや、でも、遅かれ早かれ解散しなきゃいけないだろ?それならまだ早い方が…」
俺があたふたしながら言葉を紡いでいると、右の袖が2方向に引っ張られた。
何事かと思って横を向くと、雪ノ下と由比ヶ浜がまだまだ怯えた表情のまま、首をふるふると横に振っている。
…猫と犬からのおねだり…。
激しい煩悩が頭を過ぎり、首を物凄い勢いでぶんぶんと振った。そしたら二人にビビられた。ごめん。
どうしたものかと悩んでいると、小町がピンと閃いた顔をした。
「そうだ、このまま今日は皆で雪乃さんの家に泊まりませんか!」
「…はあ!?」
思わず変な声を上げてしまった。
雪ノ下は『ほえ?』と言う顔で首を傾げている。可愛いなもう。
「お兄ちゃんの責任でもあるんだよ!て言うかもう全部お兄ちゃんのせいだ!責任取りなさい!」
「待て待て待て、言い方に語弊しか無いぞ。養育費どんだけ発生すんの?」
「発想が卑猥だよ!ごみいちゃんのバカ!ボケナス!八幡!」
「いやだから八幡は悪口じゃねえだろ」
お正月ぶりに聞いたぞ、この罵倒。
ふとその時のことを思い出して雪ノ下の方を向くと、あの時と同様にぷるぷると肩を震わせて顔を背けていた。
そして小さな声で
「バカ、ボケナス、八幡…ぷ、くく、やっぱりこれ…」
と囁いている。
よっぽどお気に召したのね…。
でもまあ、こんな罵倒でも元気を出してくれるならお安い御用だ。
…俺の心がすり下ろされてるからやっぱお安くはねえや。
「皆で泊まるって言うなら、ハードルが下がってやりやすいかもな。雪ノ下は大丈夫なのか?」
「ぷ、くく…はあ、おかしい…。…あ、そのことね。大丈夫よ。来客用の布団も用意してあるから…何か文句でもあるの?」
こいつ、ぼっちの癖にそんなもん用意してんのかよ…と思ってたら心を読まれた。全力で目を逸らします!
「あ、じゃあさー、せっかくならゆきのんの寝室で皆寝ようよ!ゆきのん、一緒に寝よ!」
由比ヶ浜がすごいナチュラルに百合って来た。百合ヶ浜め。
「あ、じゃあ私もご一緒したいですー!」
え、小町も?百合谷小町?
「っつか、俺は別室で良くねえか?」
「そ、そそ、そうだよ!こいつが同じ部屋に居たら、何されるか…!」
川崎が顔を真っ赤にして俺を指差して来た。うっさいわ!ナニすんぞ!
「大丈夫だよ、川崎。私が比企谷の隣に寝よう。…少しでも変な動きを見せたら、抹殺のラストブリットを喰らわせてやろう…」
平塚先生が手の指を曲げ、ごきんと言う音を立てた。
…女の人が出す音じゃないと思うんです、それ…。
結局、雪ノ下(百合ノ下)と由比ヶ浜(百合ヶ浜)と小町(百合谷)がベッドでくんずほぐれつ…じゃない、仲良く一緒に寝て、俺と川崎と平塚先生が下に布団を敷いて寝ることになった。
俺たちは川の字で寝ることになったんだが…何故か俺が真ん中になった。いや、ほんとに何で?
小町に命じられるがままに動いて、気付いたらこんな風に…。
なんやかんやでお泊まりが決まると、雪ノ下だけでなく皆も安心したようで、そこから日付が変わるくらいまでわいわいと楽しく過ごした。
ちょっとした折に怪談をぶっこもうとしては平塚先生に殴られ、小町に罵倒され、雪ノ下にすごい冷たい目で見られて心臓が止まりかけ、ぶっ倒れたところで川崎のパンツ(やっぱり黒のレース)を見てしまい派手に蹴られ、由比ヶ浜に膝枕されて頭を撫でられた。
…由比ヶ浜だけ天使に見える…だと…?
ちなみに。
川崎が大志に泊まる旨を連絡していると、伝言で『お兄さんによろしく言っておいて下さい』と伝えられたので、川崎の電話を即座に奪い取って大声で『俺はこれから、小町含めお前が高校に上がってからもまともに交流することはまず無いであろう可愛いくて綺麗な女性たちとお泊まりだ。羨ましいだろう。悔しかったら二度と小町に近付くな、羽虫が!』とまくし立てて言って電話を切った。意味が繋がってなくとも取り敢えず罵倒出来たことに満足していると、川崎に思いっきり胸ぐらを掴まれた。超謝った。これがカツアゲだったら俺超ジャンプして超ちゃりちゃり言わせてる。
でも、川崎も含めて皆顔が赤くなってた。なんでだ?
そして、布団を敷いて皆寝る準備をして、無事に就寝。
うとうとして、意識が途切れる直前まで雪ノ下の『ちょ、ちょっと、由比ヶ浜さん、小町さん、やめなさい…!』『えー、いいじゃんこれくらいー!』『そうですよー!せっかく同じベッドで寝るんですからー!』と言う、今までで一番の百合百合しい会話が聞こえてたけど気にしない。
…雪ノ下の貞操は大丈夫なんだろうか?
2時頃、ぱっと目が覚めた。
慣れない環境と言うこともあるのだろう。両脇に女性が居るし。
むくっと起き上がり、寝ぼけ眼で薄暗い部屋を見渡す。
ベッドの上の3人は、すーすーと寝息を立てている。
…結局、小町も由比ヶ浜も、雪ノ下に超密着してる…。
ベッドよりも目線が低いこちらからでも、雪ノ下が寝苦しそうにうーんうーんと言って寝返りを打ち、その度に手持無沙汰になった小町か由比ヶ浜のどちらかが手をわきわきとさせた後に再び雪ノ下の背中をがっちりホールドする様子が見えた。お気の毒に…。
ふと、川崎と平塚先生が居ないことに気付いた。すぐ横の毛布はもぬけの殻になっている。
どうしたのだろうと思い、もう少し辺りを見渡すと、俺から数m離れたところで、二人が座って何か話しているのが見えた。
おお、あの二人でこんな時間に何を話すんだろう。気になる。
俺はそちらを極力見ないようにしながら、耳をそばだてた。
「いやー、酎ハイってそんな美味くないんですねー…ヒック」
「ははは、もう酔ったのか?まあ今日が初めてのようだし、しょうがないな。私は梅酒で…ヒック」
「なんすかもう、先生らって酔っれるじゃらいれすかー」
「なんら川崎、ろれつがまわららくらっれるぞー(回らなくなってるぞー)?」
…おい先生。マジか。
しかもがっつり酔ってんじゃねえか。
なんか小さい時に、夜中に目を覚ましたら親父とお袋が部屋に居なくてリビングまで探しに行ったら、晩酌をしてそのままものすっごいがっつりキスしてる場面を目撃した時のことを思い出しちまった。
…糸…引いてたな…。
トラウマの話はまあ良い。
二人して酔い方がもう…ダメなOL感が半端無いな…。
先生は年齢的にまだしも、川崎、お前…。
と、心の中でツッコミを入れまくっていたら、気付くと二人をガン見してしまっていた。
べろべろの二人が不意にこちらを向いて、俺と目が合う。
「あんんれ~~~?そこに居るのは…もしかして、比企谷くんではありませんか~?」
「ああ、ほんろらあ(ほんとだあ)、比企谷ら~…」
何で先生が敬語なんだよ。もう訳分からん。
…あれ、二人がこっちに四つん這いで寄って来た。
二人とも寝るためにラフな格好にしたせいか、体勢的に胸の谷間がめっちゃ強調されてやばい。
いや、そんな事より。
何で二人とも、俺の方に向かって来てんの?
続く。
八幡の話は、「人志松本のゾッとする話」を参考に致しました。ありがとうございます。
書くのが楽しくなって勢いで書いていたら、昨日までより長くなりました。
次からようやくエロです。2場面あります。
昨日「あと2~3話続きます」と書いたんですが、今日ももう一度。
あと、2~3話続きます。内容が増えました←
エロ描写は、とにかくがっつりと書こうと思っています。
順番が前後するんですが、このエピソードを書き終わるか終らないかくらいに、前回と前々回のエピソードの後日談を書くつもりでいます。エロのネタが浮かびました。
先週の土曜から始めたのに、もうお気に入りが300を突破…しかもUAがとんでもないことに…嬉しい限りです。
俺ガイルの人気、えぐいですね。
楽しく、どたばたとエロを書いて行きたいと思いますので、どうか皆さん、気楽にお楽しみ頂ければと思います。あわよくば癒しとして読んで頂ければ!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!