「ひぅ……えっく、ひぐっ、ちゅぴっ、んふぁっ、れろっ、ひぅぅっ……せんぱい、せんぱいぃ……」
震えながら、恍惚とした表情で一色が口に纏わり付いた白濁液を舌で舐め取り、舌が届かない所は指で掬ってちゅぽっと指ごと咥えて舐めとる。開いた足を俺に絡ませるようにこすりつけながら行われるその行為は、あまりに扇情的で――。
「一色……もう、行くぞ?」
つい、気が急いてしまい、一色の返事も聞かぬままに竿に手を添え、亀頭を秘裂に当てがった。
「ひっ……!」
「え……」
一色の身体がびくっと震えたことに驚き、腰を止めて一色の顔を見る。さっきまでのような、いやがりながらも求めるような反応ではなく、本気で怯えているような……。
「あ……」
鏡を見た訳では無い。見た訳では無いが、それでも何となく分かった。
きっと今の俺は、今までの行為から考えればこのまま最後まで行って大丈夫だろうと、肝心な所で一色への心遣いを欠いて性欲を滾らせている、濁った獣の目をしている。
頭をいつもより強めにがしがしと掻いて、一色を見つめる。
「……わりぃ、ちょっと焦りすぎた」
言うと、一色がはっとして、困ったように眉根を寄せた。
「あ、や、そんな、違うんです、先輩が悪いんじゃないんです。あれだけおしおきしてくださいとか言っておいて、先輩が興奮しておサルさんモードにならないわけないですよね」
「おサルさん言うな……」
ぐうの音も出ねぇけど。
「そこまでは分かってたんです。だけど、その……あ、あはは、ここまで来て、いざ……となると、尻込みしちゃったんです。ほんと、情けないですよね、めんどくさいですよね、……ほん、と……」
「……一色……?」
一色が腕で目を覆う。小さく嗚咽の声が漏れる。
「……ご、ごめ、なさ……い……早く、先輩に全部あげたいのに……あげたいのに……なんで、こんなに怖くなっちゃうの……っ」
「一色……」
ひっく、ひっくと聞こえる一色の顔に手を伸ばし、温かな水を拭う。震える口元に気付き、胸がきゅんと締め付けられた。
俺は、この子に、何が出来る。
こんなに俺のことを思ってくれる、この、生意気で可愛くて強引で……本当に素敵な女の子に、何が出来る。
――必死で考えを巡らせると、ある一つの考え……言うべき言葉が浮かんだ。今の俺なら、この子にこの言葉を伝えたい。きっと今なら出来るし、この子にとっても必要な言葉だ。そう思える。
…………。
……………………。
………………………………。
「………………………………………………………………」
ああでも、恥ずかしい。もう超恥ずかしい。分かっちゃいるけど、本当に言うのか、俺。小学校の先生をお母さんと呼んだ時の2000倍くらい恥ずかしい。どうでも良い比較対象を持ち出しちゃうくらいには恥ずかしい。どうしよう、死んでしまいそうだ。分かってる、分かってるんですよ? 一色の為に今こそ勇気を振り絞って伝えるべきなんだって。ところがどっこい、今までこんな本気と言える言葉を弾みでも何でもなく確信を持って相手に伝えたことなんて無い訳ですよ。例えるならそう、今からやろうとしている行為は、はじめてのおつかいで「はちみつとバンダナと官能小説を買ってきて」というくらいの難易度だ。はちみつって何扱いなんだよ。調味料コーナー辺りかなと思って行ってみても置いてなくて、隣のホットケーキの素の横に置いてあったりするし。どんだけ曖昧な存在なんだよ。ホットケーキの扱いもよくわかんねぇし。バンダナなんてもはや大人でもどこに売ってあるか分からんぞ。思わずググったら100均で売ってるとか書いてあったけど近くに無い田舎ならどうすんだって話だよ。ダイソーが全都道府県にあったって、自宅の近くにあるとは限らん訳だ。結局服屋で「あの……バンダナってありますか?」と聞いてハンカチコーナーに連れて行ってもらったりする。極めつけは官能小説。何その指定。エロ本でもないんだ。本屋さんでR-18コーナーをチラ見するも一部しか見えず、散々迷って男性店員やおばちゃん店員に聞こうとするも、おどおどしている間に別用でそれらの人が目の前から居なくなり、最終的に若い女性店員に「あの……官能小説って、どこにありますか?」と聞くというセクハラ全開の行為になる訳だ。まあはじめてのおつかいをやる歳に依るんだろうけど。ていうか子供に官能小説買いに行かせるって前提がおかしいですかねおかしいね。
………………………………。
こんなどうでも良いことを全力で考えてしまうくらいには恥ずかしい。本当に恥ずかしい。死んでしまいそうだ。なんならこれから、何でもは知らない、知ってることだけ知っている委員長の中の委員長のパンチラシーンのごとく4ページ分の尺と同じくらいの長さで、この恥ずかしさをあの手この手で例えて、老若男女問わず俺のこの恥ずかしさに共感してもらいたい。
「…………」
流石に迷い過ぎた。一色は頬に添えられた俺の手を握って、「先輩……ごめ、なさい……」と今も消え入りそうな声で謝っている。
「…………」
ああ、もう。
こんな自分がイヤになる。
いい加減腹を括れ、比企谷八幡。
一色に添えていた手を離し、両手でばちんと頬を叩くと、一色が「ふぇ……?」と戸惑いながら首を傾げた。なんだそれ超可愛いな俺。
不自然極まりない回数の咳払いをして、一色の身体に覆いかぶさって抱き付いた。
「ふあぁ……?」
可愛らしい戸惑いの声を上げる一色を、目一杯優しく抱きしめる。その力を緩めて、おでこ同士をこつんと当てた。互いに目の逸らしようもない程の距離で、深く穏やかに息を吸って、躊躇いに躊躇った言葉を一色に伝える。
「いろは。好きだ」
「……………………へ?」
一色の……いや、いろはの時間が、面白い程ぴたりと止まった。
まだ言葉が飲み込めていないのか、頭の上に大量のハテナが浮かんで……あ、消えた。それと同時にいろはの顔が見る見る真っ赤になっていく。
「な、なな、え、せ、先輩、今、え、えええ……っ!?」
「そんなに驚くことなのかよ……ったく」
あのな、と、声音を柔らかくして言葉を続ける。
「だから、その……俺は、いろは、お前が好きだ。大切にしたい、大切にする、大切にしていく。……だから、その……そんなに全部やってくれようと、そんなに全部頑張ろうとしなくて良いと思うぞ。……ゆっくり、二人で、やって行けばいいんじゃねぇか、な……」
死ぬ程恥ずかしいどころかオーバーキルも良い所だが、それでもなんとか言いきった。恥ずかし過ぎてもはや3ヶ月程休暇を頂きたい。そしたら好きなラノベの次巻が軒並み発売されているだろう。
いろははどんな反応を返すのかと思っていたら、
「え……」
予想の斜め上を行く反応を見せた。
「あ、あぅ、あぅぅ……」
ぽろぽろと止めどなく溢れ出してくるのは、紛れもない涙。でも、今のこの涙はさっきと違って、きっと――
「うっ、うぇっ、ひっく、うあぁぁぁぁん……なんですか、なんなんですか、このタイミングでなんて、ずるいです、ずるずるです、うぇ、うぇぇぇぇぇ……っ」
「お、おい……」
いろはが声を上げて泣き始める。ずるずるに対してツッコんでいる場合ではなさそうだ。
ひっくひっくとしゃくり上げながら、俺の背中にきゅっと腕を回す。どうしようも無い程優しくて温かい肌の感触に、心が解けていく。
「ひっく……せ、先輩、えっく、ひっく、……好きです、大好きです、うえぇぇぇ……っ」
「……っ」
いろはのストレートな言葉に、胸を撃ち抜かれる。
「せんぱい、せんぱい、せんぱいぃ……っ」
「いろは……っ」
涙で潤んだ綺麗な瞳を見つめて、ゆっくりと唇を重ねた。
× × ×
「んっ、んふぅっ、ちゅっ、ちゅぴっ、ふむぅっ、ちゅぷっ、ふぅっ、んっく……」
何度も唇を交わらせ、舌を絡め合う。愛情を交換し合うこの行為は、至福とも言える時間だった。
「……ぷはっ、えへへぇ……せんぱぁい……大好きですぅ……」
唇を離しておでこをこつんと当てると、いろはが幸せ一杯の表情で微笑んだ。
あ、これあかんやつや。
死ぬ。
「そ、そうか……」
ちょっと待って、何このデレ具合。行動だけでなくはっきりと言葉で言われるとこうも破壊力が上がるのん?
目だけ必死に逸らして、高まった鼓動が静まるよう心の中で般若心経を唱えようとしたが、全く分からなくてすぐやめた。なんでチャレンジしようとしたのかって話だが、まあ動揺したからですよね。
俺の反応を見て、いろはがぷくっと頬を膨らませた。
「むぅ……先輩、わたし、先輩のこと、好きですよ、大好きですよ? 先輩はどう思ってくれてるんでしたっけ?」
「ぐぅ……っ」
いろはに視線を戻すと、それはもう楽しそうに笑っている。こ、こいつ……っ!
「言ってくれないと、ずっとこのまま離しませんよ」
「それはそれで……や、なんでもない、なんでもないから」
やめろやめろ、自分から言った癖に照れるな! 可愛いだろうが!
「……言ったらどうなるんだ?」
「え? んー……」
考えてねぇのかよ。
「……一生離さない、とか!」
にぱっと笑って言ってますけども。え、それって……。
「……お前が言うことなのか?」
プロポーズ的なやつにしか聞こえないんですけど。
「え? ……あ……えへへ……」
一瞬きょとんとしたが、俺の言葉の意図が分かったようだ。
やめろやめろやめろ! さっきより照れてんじゃねぇよ! ああもう可愛いなもう!
むう。
これは、逃げようが無いようだ。なんで逃げるんだって話だけども。
まだちょっと躊躇っちまうなぁと思い、頬をぽりぽりと掻く。うし、覚悟完了。
「……好きだよ」
「誰がですか?」
「うぐ……っ、お前が、だよ」
「どれくらいですか?」
「んぐぁ……す、すげぇ、ってくらい」
動揺しすぎて日本語が変になった。
「はい、じゃあそれを繋げると?」
何この授業?
「……ああ、もう……」
つくづく、この子には敵わない。そう思って笑いそうになったが、ここで笑ったらいろはからしたら訳がわからんと思うのでやめておく。
「お前のことが、すげぇ好きだよ。ほら、どう――」
言葉を最後まで紡ぐまでもなく。
いろはさん、顔が真っ赤っ赤。
「……そそそ、そうですか、ま、ままま、まぁ、合格点をあげましょう……」
耳まで真っ赤にして言う言葉じゃねぇだろ。すげぇ速さで目が泳いでんだけど。
「ま、まぁ、これから毎日言ってもらう訳ですから、そうすればいくら先輩と言えど慣れてくれることでしょうし」
「え」
「え?」
「毎日?」
「毎日」
「ほんとに?」
「だめなんですか?」
「俺死んじゃうよ?」
「死なせませんよ? 毎日言ってもらいます」
いろはさん、ザオリク使えるんです?
「ほんとに?」
「ほんとです」
「毎日?」
「何回言わせる気ですか」
「うぐっ」
だ、だめだ、このままでは……今後の人生に多大なる影響を及ぼす習慣を義務付けられてしまう!
「えっと、毎日は流石に……」
「先輩、毎日朝ご飯食べますよね」
「ん? ああ、それがどうしたんだ」
「そういうことです」
「だからそれがどういう――」
「慣れです、慣れ」
鬼か。
「じゃあお前、アレか、俺がこなれた感じで『いろは、好きだよ』とか言うキャラになっても良いってのか。気持ち悪いだろ絶対」
言うと、いろはの頬がぽっと朱に染まる。
「……ありですね」
「ありなのか……」
取り敢えず、明日以降この子がこのくだりを忘れてくれることを祈りつつ。
「……わかったよ」
「ほんとですか!? ……嬉しいな……」
「…………」
……忘れてくれることを……祈りつつ。
「……それじゃ、そろそろ……するか」
「……はい」
「もう一度言うけど、頑張らなくていいぞ? 2人でするんだから」
「はい。……先輩」
「ん」
「……大好きです」
「……おう」
このあまりに幸せな気持ちは、しばらく慣れそうにねぇなぁ……と思いながら、いろはと穏やかに抱き合った。
続く。
久しぶりのいろはすでした。
本番に行く前にガハマさんを書き終えようと思い間を空けていたのですが、気付けば2週間強。今までで一番の間でした。
今回の八幡の告白は「こんな感じで書きたいな」とかなり前から考えていて、ようやく書けました。案の定このくだりで丸々1話。次回からも引き続き甘々、かつエロが加速します。いろはす編は流石に50話まで行かずに終わりそうですが(近くまでは行きそう)、アフターももりもり書くつもりですのでそちらもどうぞお楽しみに!
いやはや、これだけ多くの方に読んで頂いているのは嬉しい限りです。思えば遠くへ来たもんだ。引き続き、よろしくお願いします。まだまだ精進。
「妹さえいればいい。2」を一昨日買って、もう読み終えました。この不思議でゆるいながらも気付けばがっつり読ませる感じ……すごいなぁと思います。キャラの魅力……キャラの魅力……考えさせられます。GEも読み始めたんですが、GJ部無印を思い出すキャラ構成がありがたいです。こういうやりかたもあるんですね。キャラの魅力……キャラの魅力……(再び)。
そういえば、ルミルミの話もちょこちょこ考えているんですが……イチャイチャな部分はそれはもうなんぼでも考えて書けるよなーと思いつつ、エロをどこまで書いたものかと考えています。あくまで自分が興奮を覚えるラインまで……と考えていて、ある程度は見定めているんですが……どうしようかなあ。考え中です。
今書いているゆきのん編やいろはす編が終わった後にぽんとルミルミ編が始まるかもしれませんし、ゆきのん・いろはす・サキサキ辺りのアフターが始まる可能性もあります。その辺はその時の勢いによります。さてどうなるやら。
何気にこの後書き、毎回1話の4分の1くらい書いてるんですよね。なんということでしょう。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!