※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(3)

「おお……」

 店内に入るなり、感嘆のため息が漏れた。 

 スイパラには初めて入ったのだが、なるほど、これは天国だ。

 色とりどりのスイーツやパスタが所狭しと並べられている。パスタは恐らく糖分ばかり摂ってげふんとなったときの口直しを兼ねているんだろう。

 ……血が騒ぐぜぇ……。

 ……は、いかん、中二病が再発するところだった……! 再発したら命(社会的な)は無いってお医者さま(小町)に言われたんだった。

 スイーツを眺めながらどういう戦法を取ろうか考えていると、めぐり先輩がその様子に気付いたらしく、とててとこちらに寄って話しかけてきた。

「比企谷くん、甘いの好きなんだ?」

「ええ、まあそうですね」

「良かったー、もし嫌いだったらどうしようかと思った」

 言って、めぐり先輩がにぱっと微笑む。

 …………。

 ……や、昨日の時点で俺の意見を全く聞くことなく4人で決めて予約とってましたよね? まあ雪ノ下や由比ヶ浜は俺が甘党だと知ってるだろうから、それを基に判断したのだと信じたい。うん、信じる。信じよう。信じたい。

 

        ×  ×  ×

 

 テーブルについて、まずは各々が食べ物を取りに出かける。

 全員が席を離れるのは避けたいので、初めは俺とめぐり先輩が留守番を務めることになった。

 女の子4人が三三五五に散っていく様を見ながら、ぼんやりと窓の外を見る。

 テーブルの上で手を組み、その上にあごを乗せながらめぐり先輩が楽しそうに女の子たちを遠目に見ている。

「うーん、こういうの良いなー、とっても楽しい。これからもっと楽しくなるだろうし。うん、今日は良い日だ!」

 鼻唄でも歌い出しそうな程上機嫌なめぐり先輩を見て、思わず頬が緩む。

「そうっすね。俺は小町が居るので取り敢えずこの場は大丈夫そうです」

「あはは、小町さん次第なんだね……」

 うぐ。

 めぐり先輩に苦笑させてしまった。

 ちなみにめぐり先輩は基本的にみんなを苗字で呼ぶのだけれど、「比企谷くん」と「比企谷さん」ではどうにも分かりづらいので、小町だけ名前で呼んでもらうことにした。うーむ、めぐり先輩に名前で呼ばれるなんて……光栄に思え、妹よ。

 遠征組をちらりと見たら、由比ヶ浜がいつも通り雪ノ下に抱き付いてた。うん、今日もゆりゆりしいですね。

 一色は嬉々とした表情でスイーツを選んでいる。あいつと由比ヶ浜は実に分かりやすくJKJKしてるな。雪ノ下は異端で小町は天使。

 しばらくすると4人がぱらぱらと戻ってきたので、今度は俺とめぐり先輩が席を立った。

 

        ×  ×  ×

 

「ほわぁー、ほんとにたくさんあるねー。これは食べ甲斐があるぞー!」

 めぐり先輩がトレイを持って、ふんすっと気合を入れる。

「先輩、こういうとこ来ないんですか?」

 聞くと、めぐり先輩はショートケーキを見てむむむと唸りながら、ゆっくりと俺に目を向けた。

「うーん、たまには来るんだけどねー。どうしても、ほら、体重とか気にしちゃうから、あんまり行けないんだよね……」

 言って、めぐり先輩がちらりとお腹に目をやる。

「失礼かもしれないですけど、先輩、全然太ってるように見えないですよ? そんなに気にしなくて良くないですか?」

 ほんと、女子の「太ったー!」に対して男子が「や、どこかだよ……」と思う率は異常。男子っていうか俺な。やだ、俺男子の代表になっちゃった!

 俺の意見に対して、めぐり先輩はたははと力無く笑う。

「あー、よく聞くねーそれ。うーん、何て言うかなあ……わたしもそうなんだけど、女の子がそういうことを言うときって、大抵部分的な所を言ってると思うんだよね。見た目では分かんなくても、『二の腕がー!』とか、『お腹周りがー!』とか、そういうピンポイントな悩みが多いと思うんだ……」

 後ろに行くにつれてめぐり先輩の口調が暗くなる。その視線は今自分で挙げた部位に向けられていた。ご、ごめんなさい……。

「そ、そうですか、なんかすいません」

 すごすごと謝ると、いやいや大丈夫だよーとめぐり先輩がぶんぶん手を振った。やだ何この仕草超可愛い。

「だからこそ、こういうときは沢山食べたいんだよね! それで帰りは大股早足で帰るんだ!」

 わざわざ一旦トレイを置いて、腰に手を当ててむんっとやる気に満ちた表情をした。

 あー。

 なんだろう。

 この人を見てると、自然と元気になるなあ……。

 毎朝出かけるときに、晴れ空の下ベランダで布団を干すめぐり先輩を見たい。もちろんエプロン着用で。やべえ、すぐにでもCMのスカウトが来るぞ。洗剤とかの。

 こんな感じで、めぐり先輩と他愛も無い談笑をしながら、皿にケーキやら何やらを取り分けてほくほくしながら席に戻ると、何やら空気が重くなっていた。え、なんで?

 見渡すと、既に着席している4人の視線が一様に俺とめぐり先輩に注がれている。

「むー……」

 由比ヶ浜が唸っている。お前ちょっとフグフグしすぎだぞ。毒入ってんの?

「…………」

 雪ノ下さん、無言の圧はあかん。八幡、潰れ死んでまう。

「伏兵がさらに……」

 一色、何を言ってはりまんの? 鋭い目つきで見つめてくるのやめてね?

「お義姉ちゃん候補がもう一人……大奥……」

「おいこら小町、やばげな単語を呟くな」

 目をキラキラさせてる小町にだけ、声を出してツッコんだ。

 この様子を見ていためぐり先輩が、またもくすくすと楽しそうに笑う。

「比企谷くん、やっぱりモテモテだね」

 ほんわかとした笑顔で言うと、めぐり先輩はぽわんと笑みを浮かべた。

「ま、眩しい……!」

 何故か小町が両手を翳して呻いた。何だお前……。

 

        ×  ×  ×

 

「むむむ……これ、美味しいな……後で作り方調べよっかな……」

 口にしたケーキを見つめ、一色が思案顔をしている。

「一色さん、お菓子作りが趣味なんだったっけ? こういうのも作るの?」

 めぐり先輩が楽しそうに質問をすると、一色がきりっとしたまま顔を上げた。

「そうなんですよー。美味しいのに出会うと家で作れないかなーって考えちゃって……」

 言って再びむむむと唸る一色に、由比ヶ浜が食いつく。

「あー、分かる分かるー! 美味しいの食べると自分で作りたくなるよねー!」

「由比ヶ浜さん、周りの人間の為にも、それは思うだけに留めてちょうだいね」

「ゆきのんひどい!?」

「結衣さん、ご友人やご家族と険悪になりたくなかったら実行はしないでおく方が無難かと……」

「小町ちゃんまで!? なんでー!?」

 由比ヶ浜が笑顔でちょっと狂った事を言い出したので、方々からツッコミと言う名の罵声が浴びせられる。良いぞ、もっとやれ。殺戮兵器を奉仕部から産み出す訳にはいかん。絶対に!

 みんな思い思いにスイーツを食べながら、雑談が続けられる。

 ふと、この布陣を見たとき、多人数でのお喋りに明らかに慣れてなさそうなヤツがいるなあ……と思ってちらと見やると、そいつとちょうど目が合った。

「……なにかしら?」

「……や、なんでもないです……」

 こえぇよ。あと怖い。

 なんだよこいつ、俺の悪意を読んだのん? 悪意って言っちゃった。

「あなたも人のことは言えないと思うけれど」

「え、なに、お前俺の心読めるの? なんなの? 俺のこと好きなの?」

 言うと、雪ノ下は動きをぴたりと動きを止めて目をむいた。

「……え……」

 ごくごく短い言葉を発すると、一瞬顔が赤くなったように見えたが、すぐに俯いてしまって何が起きたのか分からなくなった。

 ……俺、なんか変なこと言った?

 事態を呑み込めずほけーっとしていると、急に横から圧力がかかってきた。

「ヒッキー、なにゆきのんのこといじめてるの!」

 オカン登場。メロン登場とも言える。

「や、別に……ていうか」

 近い。

 由比ヶ浜さん、勢いでやっちゃったのか知りませんけども、腕に思いっきり乳圧が……!

「? どしたの?」

 や、気付けよ。お前の乳だぞ。

 妙に熱い顔を必死で逸らしていると、

「……あ」

 由比ヶ浜がようやく状況に気付いた。

「ご、ごめん……」

「や、大丈夫……」

 もっとして良いよー! とか死んでも言えないしね。

 俺と雪ノ下と由比ヶ浜がいつの間にか真っ赤になって俯くというバカさ極まる状況になっているのを見て、一色がケーキから目を離して何やら膨れっ面をしている。今日はフグ祭りだね! 比企谷、冬のフグ祭り! 誰の為の祭りだよそれ。

「むー……なーんか悔しいですね……そうだ、先輩」

「え、なに、なに?」

 ずいずいっと寄ってくる一色に、並々ならぬ恐怖というか緊張を覚える。

「今雪ノ下先輩と結衣先輩が真っ赤になってるのって何でですか? 教えてください。わたしも……」

 や、「わたしも」じゃねえよ。連続乳圧とか何それ死んじゃう。

「んー、理由ったってなあ……」

「いいから教えてくださいよー。耳打ちで、耳打ちで! ね!」

 すんごい楽しそうに一色が耳を近付けてきた。俺が吸血鬼もどきじゃなくて良かったな、こいつめ。もしそうだったら今頃その耳をべろんべろんに舐め回されてるところだぞ。

「……しゃあねえなあ。えーっと……」

 雪ノ下が真っ赤になった理由は分からないので、取り敢えずどんな台詞を言ったのかを伝え、それに加えて由比ヶ浜が真っ赤になった理由も教えた。

 ごにょごにょ。

「…………っ!」 

 伝えた途端、一色がぴーっとやかんが沸く音がしそうな勢いで真っ赤になった。

「あう……」

 小さく唸ると、両頬を手で押さえて俺の横から離れていった。なんだったんだあいつ……。

 そんな俺の様子を見ていた小町が、やれやれとため息を吐く。

「お兄ちゃん、タラシだねえ……お義姉ちゃん候補が増えるのは良い事だけど!」

「いや、なんでだよ。俺そんな変なことしたか? 俺が堂々と可愛いと言ってるのは小町だけだぞ」

 あと戸塚な。

「……ん?」

 いつもの流れで言ったつもりだったんだけど、小町の顔が妙に赤い。

「……はわわわわ……」

 妙に慌てた表情を浮かべている。

 え、なんでなんで?

「……し、しまったああ……兄妹だからって油断してた……捻デレお兄ちゃんに攻略される……ひん剥かれる……」

「最後、最後」

 俺鬼畜すぎるだろ。15年一緒に過ごした上でのイメージがそれなの?

 茹でノ下と茹でヶ浜と茹ではすと茹で谷小町(突然のフルネーム)を眺めてなんなんだこの状況は……と思っていると、めぐり先輩が目を見開いてほえーと間抜けな声を出した。

「比企谷くん……タラシだねえ」

「いや、なんでですか」

 そんなににこにこしながら言わないで……。ただでさえ先輩だからって接し方を未だに測りかねてるのに……。

 や。

 測りかねてるのは先輩だけじゃなかった。多分小町と戸塚以外に対しては全員測りかねてる……。

 

 

 

 続く。




めぐりんでした。
このスイパラでのくだりはしばらく続くので、のんびり空間を楽しんで頂けたらと思います。
ものっっっすごく、徐々に徐々に進みます。流れは結構出来ているんですが、実際書いて投稿するまでかなりのタイムラグが生じるかと思います。予めご了承下さい。

UA600000突破しましたーーーーー!!!
いつもありがとうございます。引き続き頑張りますのでどうぞお楽しみ下さい(^^)

ああ、1週間くらい休みがあったらなー。
一気に20~30話分くらい書き溜めるのに。
そんな欲求ががが。
書きたいままに書いているのもあるんですが、毎日書いているのにどの話も終わらない終わらない。げふん。連載中のものも含めて、今の所めぐりん以外の全ヒロインのアフターを考えているもので、追い付かないったらありゃしない!めぐりんは書いている内に方向性が見えてくるかと(^^)

平日が終わりましたね。休みの方は一緒にのんびりしましょう。何かある方は頑張って下さいませ(^^)

それでは明日、またこの時間、この場所で!
ご感想、がんがんお待ちしております!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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