※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(6)

 それからしばらくして。

「……それでね、そのとき優美子が――」

 今は由比ヶ浜が、楽しそうに三浦や海老名さんの話をしている。あんまりはしゃぐなよ、揺れてるぞ? あ、やっぱり揺らしててほしいです。どうぞロデオのごとく。

 雪ノ下はそんな由比ヶ浜を穏やかに見つめている。うん、百合百合しい。はしゃいではないけど、はしゃいでも揺れるものはないぞ? あれ、なんで雪ノ下がこっち見てるんだろう、おかしいなあ……。

 結局あの後、俺の恋バナはうやむやになって流れた。めぐり先輩がもたらした混乱のおかげだろう。ありがとうございますと言うべき……なのかどうか。

 そして、そんな感じでたくさん話した後(主に小町と由比ヶ浜と一色が)、めぐり先輩がティーカップをことりとテーブルに置いた。

「そろそろ出よっか? だいぶ話し込んじゃったね」

 言われて時計を見ると、スイパラの制限時間が迫っていた。

「えー、もうそんな時間ですか? あっと言う間ですねー……」

 一色が驚いて、残念そうにため息を吐く。

「まあ、70分制限だしな。こんなメンバーで話してたら、すぐに終わっちまうだろ」

 お開きモード全開で言うと、由比ヶ浜がうーんと唸った。

「あ、じゃあ、この後皆でもう1軒くらいどう?」

「…………」

 きみはどこの大学のサークルの人なのん?

「俺は無理だ、すまん」

「早いな!? なんでさ!?」

「いや、その、アレだ。この後色々アレだから」

「あなた、指示代名詞を使い過ぎでしょう……」

 まずい、雪ノ下も参加してきた。説得力0で勢いだけが取り柄の、あるいは勢いすらない言葉は冷静なツッコミに弱い。勢いすらないってもう何なんだよって話だけど。

「いやこれはその、アレだ、これから迎えるであろう大学生活や社会人生活において必須であろう、二次会を断る能力を養うのに必要なトレーニングというか……」

「ごみいちゃん……ちょっとクズっぷりが過ぎるよ……」

「先輩……流石にドン引きです……いつも引いてますけど……」

 年下コンビからのアッパー連打。2HIT! ていうか一色、いつも引いてるの? え、ほんとに? なんか俺にキモいと言われた時の材木座の気持ちが少し分かった気がする。やっぱあいつのことはどうでも良いや。

「ヒッキー……」

 おいやめろ、そんな犬が悲しんでるような目で見るな。ちょっとエサあげたくなっちゃうだろうが。

 由比ヶ浜の目線から逃れようと猛烈に首を逸らしていると、由比ヶ浜が小さくあっと声を漏らした。

「そう言えば……さっきの恋バナの時、なーんか大事な事を忘れてた気がする……」

「…………」

 まずい。

 どうしよう、この場で下手に俺が発言しても余計に記憶を想起させてしまう。どうしよう、超どうしよう!

「あ、確かにそうですねー」

 一色まで考え始めた。やばい、誰か助けて!

「あ、そ、そうだ、ほら、もう70分経つぞ。ほら、早く出ないと」

「あ」

「あ」

 俺が焦って声を上げた瞬間、由比ヶ浜と一色が同時に俺を見た。や、ほんと同時。こんなシンクロ率高かったの君たち?

「ヒッキーの……恋バナ……」

「先輩の……面白トラウマ」

「待て、ちょっと一色がひどすぎるぞ」

 トラウマと言った時点で既に罵倒してんのに、面白ってフレーズを付けんじゃねえよ。何かすげえ愉快な柄の虎と馬みたいじゃねえか。なんだろう、身体の側面にコボちゃんの4コマとか描いてあるとかかな。

 逃げたいという願いしか抱けないままに、じりじりと後ずさる。ちなみにこの会話をしながらも後片付けをしていて、もう立ち上がって歩き始めそうです。それでもこの子たちは逃がしてくれません。僕のステータスに「まわりこまれやすい」を追加したいです。

 

       ×  ×  ×

 

 以下、会計をめぐり先輩がやってくれている間、及び外に出ようと移動している間、及び外に出てからこの後どうしようかというぐだぐだタイムでの会話。依然、俺への追及は続いている。

「大丈夫ですよー先輩……すぐに楽になれますから……」

「こえぇよ。なんなの? 俺を尋問する為に生まれてきたの?」

「良いからお兄ちゃん、早く言っちゃいなよー。どうせ大した話じゃないんだから」

「え、小町ちゃん、事情をがっつり知ってる君がそれ言うの? 俺が枕を濡らしてたのを気遣ってくれたときあったよね?」

「? なんでヒッキーが枕を濡らすの? 何かこぼしたの?」

「由比ヶ浜、お前そのボケちょっとひどすぎるから、ちょっと花畑牧場で修業して出直してこい」

「誰が牛だ!?」

「あら、比企谷くんこそ修行が必要ではないの? 良いお寺を紹介するわよ? まずチベットの……」

「まずってなんだ、まずって。複数紹介してくれんのかよ。せめて国内にしろよ。いや、国内でもいやだけど」

「…………」

「あなたの目と性根の腐敗を治して直すには、国内だけでは中々骨が折れるわ。だからまず目の治療及び修正でアメリカに、そして性根を叩き直して生まれ変わる為にインドへ行きなさい。そしてついでに特殊な呼吸方法を身に付けてきて、1度息を吸ったら1日呼吸しないでいられるようになってくれれば、地球の為にも私の為にもなるわ」

「それただのお前に媚びる為の治療じゃねえか。俺どんだけお前にぞっこんなんだよ」

「え、あ……え……?」

「え、何、俺なんか変な事言った? なんで雪ノ下が顔赤くしてんの?」

「先輩、絶望的にキモいです」

「おい一色、俺を泣かせにかかるんじゃねえよ。北風と太陽の話を知らねえのか。俺は逆風に強いからな。北風なんかじゃ泣かねえぞ」

「なんかよく分かんないけど、ヒッキーはなんだかんだでいつも頑張ってるもんね。あたしはちゃんと見てるよ」

「突然の太陽だと!?」

「お兄ちゃんが一生懸命なのは妹である小町が一番見てきているのです!」

「太陽が2つだと!? どこの銀河系だここは!? やめろ、泣いちまうだろ!」

「…………」

「という訳でお兄ちゃん、ほら早く恋バナしてよ」

「話の方向転換下手すぎるだろ。片方の太陽が消滅した上にカーブを曲がり切れなくて横転した気分なんだけど」

「先輩、よく分かんないこと言っててキモいですよ。早く恋バナしてください」

「ここで北風だと!?」

「ヒッキーの話聞きたいんだけどな……だめ?」

「やめろ! 俺を揺さぶるな!」

「…………」

「うー……あれ、ゆきのん、ずっと俯いてどうしたの? 顔赤いよ?」

「雪乃さん、まだやられてたんですか……お兄ちゃんの捻デレ攻撃に……」

「なんかやな名称を付けんじゃねえよ」

「もー、ゆきのんはかわいいなー!」

「はっ! 結衣さんの百合攻撃が!」

「やめろやめろ、俺と由比ヶ浜の変な部分を同列に並べるな。引きこもりたくなる」

「そんなに!? ヒッキーひどい! キモい! ばか! キモい!」

「もう1つの太陽も消えた……あと語彙が貧弱……」

「…………」

「先輩も往生際が悪いですねー。あんまり話さないと生徒会の仕事増やしますよ?」

「太陽が2つとも消えた後に北風が強くなっただと……!? あとなんで俺がもはやただの生徒会役員になってんだよ。お前が俺に仕事を振る権限はねえよ」

「比企谷くん、奉仕部の備品がどうして生徒会の備品も兼任するようになっているのかしら? 勝手なことはしてもらっては困るわ、備品のくせに」

「備品の兼任ってなんだよ。会議の時だけ使われるホワイトボードか俺は」

「先輩はホワイトボードなんて大それたものじゃないですよ。良くてポインターですねー」

「お前ポインターの開発者及び生産している皆々様に謝れ。良いじゃねえか、ポインター」

「ぽいんたー……」

「由比ヶ浜、由比ヶ浜、由比ヶ浜? まさか知らない訳ないよな? ちなみにポインターは片仮名だぞ? 漢字じゃないぞ?」

「わ、分かってるし! ばかにしないでよ!」

「…………」

「じゃあこれは読めるか? 『魑魅魍魎』」

「え、何それ……本当にあるの? そんな漢字」

「俺にこんなかっこいい漢字を開発する能力はねえよ」

「由比ヶ浜さん、ヒントよ。『比企谷くん』」

「すげえナチュラルに俺を妖の類で括るんじゃねえよ」

「うーん、ヒッキーかあ……キモい……うーん……」

「太陽が消えたかと思ったら、今度は北風に化けた……」

「由比ヶ浜さん、ヒントを付け加えると、『あびきょうかん』ではないわ」

「俺を傷付ける為だけのヒントはやめろ。俺はそんな悲惨でもねえし救いも求めてねえよ。ちょっとリアルな感じやめろよ」

 ――と、まあ。

 俺たちが取り留めもなく喋り続けていると(俺はほぼツッコんでしかいないが。あと由比ヶ浜は最後は結局唸るだけで終わった。雪ノ下が小声で答えを教えると「え、なに? ちんみ……珍味? もうろう……朦朧?」などと言って雪ノ下を絶望させていた。なんだ珍味朦朧って。ただの食当たりだろ、それ)、ずっとその様子を見ていた城廻先輩が手をぱちんと叩いた。

「はーい、そろそろこの辺で終わりにしようか。外寒いし、風邪引いちゃうよ? 比企谷くんは自分の恋バナはしたくなさそうだし、実際わたしたち女子に囲まれたら中々疲れちゃっただろうしね。ほら、お開きお開き!」

 ――と、それから。と、めぐり先輩が言葉を繋いで、笑顔でみんなを見渡す。

「……今日は、本当にありがとう。すごく楽しかった。また近い内に、……わたしが卒業する前に、同じメンバーで、この会を開いても良いかな?」

 めぐり先輩の言葉に、皆心を打たれたのだろう。もちろん、俺もだ。

「はい! ぜひ!」

 元気な女子3人がはきはきと答え、俺と雪ノ下がこくりと頷いた。

 皆の返事を聞いて、めぐり先輩が心から嬉しそうに笑みを浮かべて、うんうんと頷く。

 ――そして、突然。

「よし、それじゃー解散! いよーおっ!」「え?」「え?」「え?」「え?」「え?」

 「え?」の5連鎖(セリフで言えば「ブレインダムド!」だ。隕石に変化するくらいの連鎖である)をガン無視しての。

 ――ぱんっ!

 一本締めだった。

 正確に言えば、皆慌てて対応したため、めぐり先輩から数瞬遅れてばらばらに手を叩き、ぱぱぱぱぱぱんっ! と爆竹みたいな音がした。何この力の抜ける終わり方?

 

       ×  ×  ×

 

 駅に向かっていると、気付いたら周りにめぐり先輩しかいなくなっていた。

 所謂神隠しである。

 ちげえよ。

 一人ノリツッコミならぬ一人ボケツッコミ。なんだろう、一人で野球のノックをしてキャッチした時の達成感と虚しさを思い出した。

 他の4人はいつの間にやらどこかに遊びに行っていた。めぐり先輩は誘われはしたが、用事があると言って辞退していた。

「…………」

 隣をちらと見やると、

「ふんふふ~ん……」

 よほど楽しかったのだろう、めぐり先輩は楽しそうに鼻唄を歌っている。可愛い声だなあ……。

「…………」

 …………。

 や。

 それより。

 緊張しすぎて、無理。

 なんで俺、完全にめぐり先輩と二人っきりになってんの? 何のイベント? めぐりんルートが開放されたの? 究極の癒しとデトックスを求めるルートなのん?

「あー……先輩、あいつらに付いていかなくて良かったんですか? 断ってたようですけど……」

 この場の空気をなんとか繋ごうと、場繋ぎの達人である俺が本気で動く。うそ、そんなスキルない。俺のスキルは言葉を発する度に場の空気だけでなく空間まで断絶させる奥義・絶影断絶無双(スベリヤサーン)だけだ。何それ悲し過ぎる。

 めぐり先輩は俺の質問に一瞬目をぱちくりさせて、んーと可愛らしく首をひねる。

「そうだね、それでも良かったんだけど……なんか今日はのんびりして、さっきまでの楽しい時間を反芻するのもありかなーって。比企谷くんは無いかな? そういう風に、一人でのんびりしたいときって」

 めぐり先輩の問い掛けに、歩きながら腕を組んで深々と頷く。

「ああ……分かります、すごく。むしろ俺は一人でのんびりしたい時しか無いですね」

「あはは……比企谷くん、いっそ清々しいね」

「え、ええ、まあ……」

 むう、苦笑いされた。

 なんか申し訳ない。

 反省はしつつも一切フォローも出来ずにいると、「そういえば」とめぐり先輩が振り向いた。

「比企谷くんは、真っ直ぐ家に帰るの?」

「え、ああ、いや……今日は元々、この後本屋に寄るつもりでした」

 俺が答えると。

 めぐり先輩は「そっかー」と言いながら、何やら思案顔。

 あごに人差し指を当てて、空を見上げるようにしながらぽとぽと歩く姿はなんとも可愛らしい。

 やがて、何かを決めたのか、ぱっと笑顔を咲かせて俺を見る。

「わたしも行っていい? わたしも買いたい本あるんだ」

 ほーん? なんだってー?

「え、でも……」

 遠慮全開の俺の声を意に介さず、めぐり先輩は話し続ける。

「それに、比企谷くんともう少し話してみたいなーと思ってたんだ」

「や、でも、それなら全員でそのままどっかに行けば良かったんじゃ……」

「比企谷くんが疲れてたのは事実でしょ? 結構ぐったりしてたもんね」

 うお……バレてた。

 確かに、楽しいには楽しいんだが、実際問題として、結構バテていた。家で過ごすときの200倍くらい体力使うんだもん。俺家でどんだけエネルギー使ってないんだよ。

「大丈夫、わたしもはしゃぎたくて同行する訳じゃないから。比企谷くんと話すなら、静かに過ごしてのんびり出来るかなって。……あ、なんか後付けみたいな理由ばっかりだね、ごめんね?」

「…………」

 めぐり先輩の表情から、先輩が何の裏も無く本音で話しているのが分かり、俺が何も言えずにいると。

 でも、とめぐり先輩が続ける。

「比企谷くんとお話してみたいっていうのは本当なんだ。面白い子だなっては思っていても、普段話す機会が全然無かったし。……だめ、かな?」

「うぐ……」

 ず、ずるい! たたっと小走りで俺の前に回り込んで、正面から俺の顔を覗き込むように首を傾げてきての上目遣いとか! 小町にされたら2万円くらいお小遣いあげちゃって破産するまである。

 ……うぐおお……別に断る理由は「気まずいから」くらいしか無いから、これ以上跳ね除けるのは罪悪感ががが……。

 ふう、と小さく息を吐いて、頭をがしがしと掻く。

「……分かりました。一緒に行きましょう」

 渋々なテイストが尋常でない程に出ちゃったけれど、めぐり先輩は気にする様子も無く。

「やった! ありがとね、比企谷くん!」

 俺の手を握って胸の前まで持ち上げ、にこーっと笑った。

 うん、やばい、癒されすぎてにやける。

 なんだよ、聖母かよ。新番組スタート! めぐ☆マリ! 第1話は来週火曜26時からだよ! ディープな時間帯だけど頑張って見てね! 録画よりも生で見てくれた方が嬉しいよ! 見てね! 約束だよ! なんだこれ。

「…………」

 隣を歩いている、さっきよりも一層、天使みたいににこやかな笑みを浮かべているめぐり先輩を見る。

「ふんふふんふんふんふ~ん……」

 何故かアメリカ国歌だ。鼻唄チョイスが謎すぎる。

 取り敢えず、今日これからの展開を考える。

 ……緊張ががっつり続く事が確定したので、俺の身体がもつか心配です。

 緊張による体力の消耗及び魂の摩耗と、めぐり先輩のめぐりっしゅパワーによる癒しのせめぎ合いという謎の展開になりそうだ。なんだこれ。

 

 

 

 続く。




エロの反動で、久しぶりにがっつりわちゃわちゃしました。途中は敢えて地の文を入れずにひたすら会話を。物語シリーズの雑談が好き過ぎて、ちょっと練習してみました。
めぐりん編はやっとこさ2人きりになります。ここからもゆーーーーーっくりラブコメって行きますので、のんびりお楽しみください(^^)ブレインダムド!

エロシーンで悶えたり鼻血を出したり全裸待機したり賢者になったりと様々な反応を頂いております。ありがとうございます。より艶かしく書けるよう頑張ります!!!

以前ご意見を募った、「場面転換を挟まずに、数人で長い時間話すシーンがある小説(物語シリーズはよく分かっているので除外)」ですが、またご意見を募りたいです。ミステリー系数作と、ラノベでは「ココロコネクト」「妹さえいればいい。」「境界線上のホライゾン」などを挙げて頂きました。
出来るだけ賑やかで、笑いの要素がたくさん入っているものがあったらぜひ教えて頂きたいです。よろしくお願いします!

それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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