※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(7)

「…………」

 めぐり先輩と本屋に向かうという、謎の道中。

 <以下、このパーティーのスペック>

 ①城廻めぐり(めぐりん)

 ジョブ:プリースト

 スキル:ヒーリング、リラクゼーション、リザレクション、デトックス

 特徴:お姉さん属性、たまに見せる大人びた雰囲気、あどけない仕草

 説明:味方を癒すと同時に、癒し過ぎて死に至らしめるケースもあり。過回復効果。アンデッドに対する効果抜群。

 ②比企谷八幡(ぼっち)

 ジョブ:ニート

 スキル:卑屈な笑い、寝ているフリして聞き耳立てる、チャリ通学、妙技・妹接待(1~108まで)、ステルスヒッキー、BL疑惑

 特徴:アンデッド属性

 説明:誰にも見られない事を至上の旨とする。味方の癒しが基本的に巡り巡ってダメージになる(めぐりだけに)

 <以上>

 ……なんだこの設定。

 自分で作っておいて難だが、俺のがひどすぎた。腐った目とは幾度と無く言われてるけど、アンデッドは流石に……。

 勝手な妄想で自分に引きながら、めぐり先輩を見る。

「…………」

「ふんふんふんふふ~ん ふんふんふふ~ん ふーふふふふふふ……」

 ……どうやら、今度の鼻唄は80年代の国民的アイドルの曲のようだ。セレクトが自由すぎるし、何よりその前のアメリカ国歌が謎すぎる……。

 あと、字面だけで見ると後半が怪しげな笑い声にしなか見えないけれど、ちゃんとメロディーになってます。バラードです。

 と、まあ、こんな感じで。

 元からめぐり先輩が宣言していたこともあり、そこまで活発に会話をしている訳ではない。

 中々思考がまとまらず、そこまで通り慣れていない道とは言え、いつもよりも「次はここを曲がって……」などという道順がすんなりと出てこない。

 通り慣れていない以上の理由の割合を占めているものの正体は明らかだ。

 緊張。

 緊張である。

 緊張する、緊張してる。

 ああもう、超緊張する。

 そこまで慣れていない人と歩く緊張によるダメージと、めぐり先輩から放たれる癒しオーラによる超回復の均衡状態がマジでスリリング。ここに少しでも更なる心労の要素が混じろうものなら即座に均衡が崩れて、多分死ぬ(重い)。

「うーん、たまには歩いてみるもんだね~」

 ぽてぽてと歩きながら、めぐり先輩がなんとも呑気なセリフを言って(この落ち着きはもはや、縁側でお茶を飲んでいるレベルだ)、ぽわんと笑った。

 ……よし、癒しオーラ優勢。

 そう、俺とめぐり先輩は今、結構がっつりと歩いていた。

 電車に乗ったら本当にすぐ着くけれど、歩くにはだいぶ遠い場所にあったので、駅に向かおうかなーまずは電車に乗る旨を伝えないとと思っていたところ、めぐり先輩が、

「それなら歩いて行こう! わたし最近運動不足だし」

 と言ったため、徒歩での移動と相成った。

 たぶん、一人で歩いていたら中々億劫な時間になったのだと思うけど(寒いし、まあまあ遠いし、あと寒いし)、誰かと歩くというのなら割となんとかなるものだ、うん。

「比企谷くんは普段運動してるの?」

「や、俺は……精々チャリ通学してるくらいですかね」

 …………。

 いざ、答えてみて思うけれど。

 改めて自分の運動状況を考えると、ほんと大した運動じゃないよなと思う。

マラソン大会の時はチャリ通学で良かったなんて思ったものの、大した距離やアップダウンがある訳でもない道を、のんべんだらりと漕いでいるだけなのだから、確かにバスや電車通学よりは運動してるとは言えるけれど、けれど本当にそれまでだと言える。

 うーん……もう少し運動した方が良いのかしらん。

 しかし運動をすることによって達成したい目標も無いし……あ。

 そうか、発想の逆転だ。

 運動によって何かを達成するという、運動を手段として捉える考え方ではなく。

 運動そのものを目的とすればいい。正確に言えば、運動が手段と目的を兼ねるのだ。

 そう、戸塚。

 戸塚ならば(敢えて『彼』という言い方をしないのには別に他意はない。ホントだよ? 八幡、ウソつかない、人間、食う。間違えた、これはもののけ姫のキャラだ)、俺が運動したいと言えば、きっと一緒にジョギングしたりしてくれるかもしれない。そして戸塚が汗で身体を湿らせて、息を艶めかしく切らす所を見る事が出来るかもしれない。やばい、どうしよう、夢が止まらない。戸塚――――!

「……比企谷、くん? どうしたの?」

「あ」

 めぐり先輩が首を傾げて、妄想世界にダイブしていた俺に声を掛けてきた。

 めぐり先輩への回答一つで、ここまで周りを見ないで妄想を繰り広げてしまった事に驚く。これが戸塚の魔力か……恐るべし、傾国の美戸塚(超語呂悪かった、戸塚ごめんね)。

 俺がチャリ通学を大した運動じゃないと捉えたのに対して、めぐり先輩はだいぶ違う印象を受けたようで、

「そっかー、良いね、自転車。わたしは電車だからなあ……やっぱり普段からちょくちょく運動しないとなあ……」

 言うと、めぐり先輩は絶望した面持ちで、スイパラでも見ていた自分の二の腕やお腹をちらりと見る。その目があまりにも悲しげで、うう……空気が重い……。

「ま、まあ、今から始めても全然遅くないですよ。せっかく時間が出来たんですし」

 めぐり先輩は指定校推薦とやらで既に進路が決まっている。ぱないっす。

 そのため、他の3年生と比べて比較的時間はある筈なのである。

 そう思って、気休め程度のつもりで言ってみたのだけれど、思いの外効果はあったようで。

「……あ、確かにそうだね。うん、うん……よし、頑張ってみるよ、うん、色々、色々! 比企谷くん、ありがとね!」

「は、はあ……」

 ふわっとした努力宣言だなあと思いつつ、めぐり先輩が元気になったのを見てほっとする。この人は笑顔が一番だ、うんうん。この調子でがんがん俺を日々の疲れから解放して欲しいまである。

「頑張るぞー、おー!」

「お、お~……え?」

 あまりに唐突な巻き込み事故に、思わず自然と乗っかって、素で戸惑ってしまった。

 

       ×  ×  ×

 

「やっぱり食事制限に安易に走るのは良くないんだよね? うーん……」

 道中の会話が、途中からダイエット一色になる。一色いろはの事ではない。なんだよダイエットいろはすって。元々ほぼ皆無の水のカロリーが更に落ちるの? それとも唐辛子でも混じってるの? 

「そうですね、元々間食だなんだで食べ過ぎていたのを減らす分には良いんでしょうけど、そこから更にリバウンドもしない食事制限をしようとなると……中々素人判断では怖いですよね」

「確かに……って、んん?」

 ぽてぽてと歩きながら、先輩がふと俺に向き直り、首を傾げる。柔らかなクリーム色をしたダッフルコートと、いつもの三つ編みヘアーでくりっと首を傾げる幼い雰囲気がやたらとしっくりして、思わず見惚れて躓きそうになる。

「な、なんですか?」

 歩きながらも心持ち距離を縮められ、避けて距離を取ろうとすると、すぐ隣に一定の感覚で生えている街路樹に肩を強打しかねないので、どうしようも無くてテンパってしまう。

「んー……なんか、比企谷くん、男の子の割にはこういうのに詳しくない? 別に太ってて困ってるようには見えないんだけど……」

 めぐり先輩がじっと俺の身体とお腹を見つめる。流石に舐めるように全身を見たりはしないが、コートの上からでは分かりづらいでしょうに……。

 しかし、詳しいのか、俺は。

 ……あ、そうか。

「あー……多分、小町の影響かなと思います」

「小町さん?」

 めぐり先輩が目をぱちくりとさせる。やだ可愛い。撫でていいかしらん?

「はい。小町は中学生に上がったくらいから毎年毎年『今年はダイエットしなきゃー!』って言って、コンビニに毎年出るようなダイエットやエクササイズ本を買ってくるんですよ。それとしょっちゅうネットでも調べてるみたいで、よく『お兄ちゃん、こんなやり方知らないでしょ? 小町は今度こそ痩せるのだーそしてぼんきゅっぼんのボディを手に入れるのだーふはは!』とか偉そうに言って、1ヶ月後くらいに絶望した顔になってるのを見てきたので。ある程度努力はしてるみたいなんですけど……」

 ちなみに本を買う小遣いのうち5%くらいは母親から、残りは軒並み親父から、貰っている。経済的負担の差が恐ろしい。ちなみに俺もたまに小町が頑張った時のご褒美で本を買ってあげたりしている。その本が見事なまでに活かされなかった時の悲しみは半端じゃない。

「あはは……小町さんも大変だね」

 めぐり先輩が苦笑した。

 でも、それなら――と、めぐり先輩はくるりと身体の向きを変えて俺の前に立ちふさがり、期待に爛々と目を輝かせてこちらを見やる。ちょ、ちょっと……視線がきらきらしすぎて……ま、眩しい! 灰になる!

「比企谷くん、色々知ってそうな気がする。わたしに教えてくれないかな?」

 眩しい光を遮るように手を顔で覆う……のは流石に阿呆らしいのでなんとか堪えていると(結局何もしていない)、めぐり先輩が期待と羨望と期待と期待と期待にまみれた視線をぶつけてきた。80%期待じゃん、これ。

 あー……と、頬をぽりぽり掻きながら、

「取り敢えず、また歩きながらでも良いですか? なんか……」

 距離が近くて恥ずかしい――とは言えないままに。

「あ、そうだね。ごめんごめん」

 めぐり先輩がてへっと笑った。

 …………。

 ふう。

 危ない危ない。

 これでめぐり先輩が自分の頭を握り拳で可愛くこつっとやって、舌をぺろりと出そうものなら、今すぐ養子縁組を両親に相談して姉として迎える所だった……。

 

 

 

続く。




☆祝・連載4ヶ月☆
気付いたら、でした。うおお。これからも頑張りますので、ご感想の程、宜しくお願い致します(^^)

昨日、物語シリーズがあと1冊だ~と言っていたのですが、今日その残り1冊を読み終えました。ああ、寂寥感。
日常の何気ない~を書き始めて1ヶ月程した頃からずっと読んでいたので、中々感慨深いものがあります。ああ、寂寥感。
あの軽妙なやりとりを少しでも活かしたいなあ……頑張ります。

そんなこんなで、めぐりんでした。本屋さんまでの道中の話が3話分書けたので、しばらくそんなシーンが続きます。1話で終わるくらいかなあと思ったんですが、めっちゃ膨らみますわ、雑談。連投しても良いけれど、どうしたものかなあ……。
のんびりのんびり、お楽しみくださいませ(^^)

連休明けですね。皆さん、また頑張りましょ~!

それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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