めぐり先輩がぱたぱたと駆けて行くのを追いかけていて、ふと気付く。
……どこに向かってんだ?
てっきり自分の探し物から切り替えて、ラノベコーナーに行ったと思ったんだけど……そっちに向かった様子は無い。はてさて。
「……お」
しばらく歩いて回ると、見覚えのあるおさげ頭を見て安心した。
「ふいー……」
めぐり先輩は何やら大きめの本をぱたんと閉じて、一息ついていた。
「先輩」
「あ、比企谷くん」
声を掛けると、めぐり先輩がいつも通りの笑顔で迎えてくれた。おお、もう切り替えている……。一体何を読んで切り替えたんだ……と思って上を見ると、「動物コーナー」と記されていた。
「ふふ、ごめんね? 落ち着きたくて……これ読んでたの」
「…………」
めぐり先輩が掲げたのは、だいぶ大き目の表紙にでかでかと書かれた「ペットで和もう」という死ぬ程分かりやすいタイトルの本だった。その本で顔を隠して、ちょろりと顔を覗かせながら照れ照れとしているめぐり先輩がやたらと可愛い。なんだこの人、撫でるぞもう。あと何気に読むの速いな……。
しかし、ここで深くツッコもうとすると、さっきの件に触れてしまいそうだ。
「……そうでしたか。じゃ、次ラノベの方行きましょうか?」
「うん、そうだね」
言葉少なに切り上げる事にした。
にしても先輩がペットの本読むとか……神がかって似合うな……。癒しに癒しをかけるとか、やだもう、もはやヘルシングの敵にさえ成り得るかも。……絵のタッチのギャップが激し過ぎるな。
× × ×
「へええ、こんな感じなんだ……」
俺が目的としていたラノベコーナーに連れて行くと、文学コーナーとはかけ離れた雰囲気にめぐり先輩が感嘆の声を上げていた。
ふむふむと言いながら本を眺めるめぐり先輩。なんかもうアレだ、撮りたい。ごめんなさい何でもないです捕まえないで!
「色々と種類があるみたいだけど……あ、なんか可愛い女の子のイラストが多いね。後は結構タイトルが長いのが多いのかな?」
めぐり先輩が平積みにされた本を見ながら、ふと気付いた傾向を並べる。確かにどちらもラノベにはよくあることだ。
「そうですね。後は本の中でイラストが描かれている事が多いですよ」
「へえ……あ、本当だ。女の子可愛いな~」
ぽわぽわした表情で、口をほえーと感嘆の形に変えながら、めぐり先輩が唸る。や、あなたの方が……とか、もう似合わな過ぎて来世でも言う権利が無い程恥ずかしい事を言いそうになったのはめぐりん効果が故だろうか……?
「ちなみに比企谷くんはどんな作品が好きなの?」
「ああ、青い本が好きですね。すぐ目につきますし」
「ふむふむ」
そんな会話をしながら、めぐり先輩はぱらぱらと本を手に取り、イラストを含めて文の雰囲気を探っている。
青い本が好きと言ったためか心持ち青い本を手に取る事が多いのだけれど……しまった、お目当ても青い本だったから、探すとなると妙に近付いてしまう。
なるべくぶつからないように――と気を付けながら青い本のエリアに踏み入った矢先。
――とん、と。
「あ、ごめんね?」
「い、いえ」
横にスライドしてきためぐり先輩に、ベタとしか言えないぶつかり方をされた。何これ恥ずかしく死にそう。
先輩の二の腕柔らかいなーそういやさっきダイエットのくだりでふにふに触ってたりもしたなーとか考えた所で、必死に頭を振って煩悩退散。無理だった。
「ちょっとこっちも見てみるかな……」
先輩があごに人差し指を当てて屈むと、先輩の物色の対象が青い本以外に変わった。
ふう……と安心して(さっきのが何気にダメージがでかい)物色を再開すると、突然耳に密度の大きな空気の振動が叩き付けられて飛び上がった。
「ええ!?」
「!?」
めぐり先輩から発せられた声だと気付くのに一瞬間が空く程の、大きな声。周りにちらほら居た客もちらちらとこちらを見ている(普段このコーナーであまり見かけないタイプの女の子が居るからだろう、さっきからちらちら見てきてはいたのだけれど。なんだお前ら目に水平チョップかますぞ)。
「せ、先輩、どうしました?」
本を開いたまま顔を茹でダコの様に真っ赤にしているめぐり先輩に声を掛けると、ぎぎぎと首だけこちらに振り向いた。顔を真っ赤にしながら何とも形容しがたい面白い顔になっている。
俺が近寄ろうとすると、面白顔(失礼)をこちらに向けたまま、本をしぱーん! と閉じた。
「ななななな、なんでもないよ!? うん! ほんと、なーんでもない! あ、騒がしくてすみません! あ、わた、わたし、もう一回文学コーナーに行ってくるね! 買いたい本持ってくるから!」
「え、あ、ええ? あ、は、はい」
「じゃ、じゃあ、うん、また後で! ……む、胸……」
丁寧に周りに謝りつつも、今まで聞いた事がない速さで捲し立てると、最後にやたら気になる単語を呟いて、ぴゅーという擬音が付きそうな速度で早歩きしていった。あれだけ慌てていても、走りはしない辺りが律儀だなあ。
……それにしても。
「何を読んだらあんな反応を……あ」
先輩が読んでいた本を手に取ると、色々と合点がいった。
「新妹魔王の……ああ、これは……」
バトルものとラブコメ、正確にはバトルものとどエロを組み合わせた、現在8巻程出ている作品だった。俺も最近読み始めていて、今は3巻をちまちまと読んでいた。この本ではやたらとレベルの高い絵師が、仕事中に会社の人と「それ何のエロゲの仕事?」「ラノベの作業です」「!?」なんて会話をする程エロいシーンとイラストをたくさん載せている。具体的に言うと、本番だけしてない。しかしそこまででも十二分にエロい。本当にエロい。どんだけエロいを連呼してんだ俺。
そういやめぐり先輩、開いていたのは最初のカラーイラストだったな。それで「む、胸……」って言ってたのを考慮すると――などと、無駄に推理しながら彼女が見たものが何かを探る。
ぺらぺらとページを捲ると、
「……あ」
恐らくこれが正解だろう。とんでもないものに行き当たった。
4巻のカラーイラストで、美しすぎる養護教諭が、自宅の浴室で主人公のモノを胸で挟み込んで、それをタオルで覆っているという洒落にならない程エロいイラストだった。タオルに包まれた先端が何とも生々しい。
……いきなりこれを見かけたらびっくりするよなあ。画力が半端ない分、余計に。
「…………」
…………。
……うん、買っておこう。
早くこのシーンに行き着きたい一心で、購入したい本の間にさりげなく挟んだ。
× × ×
「先輩」
「ひゃわっ!?」
文学コーナーで本を手に取っていた先輩に、もう落ち着いたかと思って声を掛けたんだけど……。普通に声を掛けただけで、本がぴょいんと手から跳ねた。なんだよ付喪神か?
落としそうになった本をお手玉をした末になんとかキャッチすると、胸に抱えてぜえはあ言いつつこちらを見る。
「あ、ひ、ひき、比企谷くん、ごご、御機嫌よう」
「…………」
動揺が甚だしい。甚だし過ぎる。キャラが変な事になってるし。さっきより時間を置いたのに、まるで回復出来ていない。
……思わず、ほんの少しだけ、さっきの件に触れてみたくなった。
「先輩、さっきの――」
「わー! わー! わー! わたしは何も見てないよ? ぜーんぜん! なーんにも! や、やだなあ比企谷くん、あ、あんな、胸でするなんて……ってわたし何をー!?」
「せ、先輩? 落ち着いてください」
顔を真っ赤にして目をくるくる回しながら慌てる先輩はとんでもなく可愛いんだけど、周りの視線が痛すぎる。「胸でする」とか直接言っちゃってるし。さっきのイラストで確定じゃん、もう!
「そ、そろそろ本買おうか! ね!」
「あ、は、はい」
大慌てのめぐり先輩が、お目当ての本と思われるものを3冊程手に持って――
「……んん?」
めぐり先輩には聞こえなくくらいの音量で、小さく呟いた。
……あの本、さっき先輩が見てた本じゃあ……? あ、でも初めから買おうとしてたっぽいしな。
……なんか妙にどきどきすんのは何故なんでしょうか。
――と、そんな事を考えていると。
「…………」
めぐり先輩も、ちらちらと俺が買おうとしている本を見ていた。
「…………」
悪戯心が過ぎって、他のコーナーに目をやって歩きながら、さりげなくさっきめぐり先輩がイラストを見た本の表紙を、先輩に見えるように手の中で位置を変えてみた。
――すると。
「ほわあっ!?」
ぼしゅっ、と音がしそうな程の勢いで、めぐり先輩の顔が真っ赤になった。
そして顔を本で覆って何も知らぬ存ぜぬという振りをしつつも、ちらちらと顔を覗かせてこっちを見ている。
……え、なにこの可愛い人。死んじゃう。
しかも可愛さに加えて、こういうものに疎いながらも興味はあるという凶悪な属性を兼ね備えている……だと……?
なんだか、不意に。
後は本屋を出て別れるだけ……のはずなのに、妙な高揚感が身体を包んでいた。
続く。
小町からの落差が半端ない。
今、ふとグーグルで「俺ガイル」と検索したら……アニメ公式ページ、ウィキ、ニコニコ大百科に続いて4番目にこの作品がヒットしました。え、ほんとに? え?
なんやかんやでめぐりん編も11話目ですね。ううむ、どうやったらもっと凶悪なまでに可愛くなるかを模索中です。
今までそれぞれのヒロインを書いてきた時の「あ、これ行ける」感が出ると、後はもはや無敵モードに突入するんですが(特にいろはすで実感しました)……試行錯誤せねばですね。
ルミルミはまだしも、はるのんがもうどうしたもんかなーと未だに悩んでます。それなりの感じでは書けるんですが、その先ががが……。
ちなみに今回触れたイラストは、このシリーズを買うきっかけになったイラストです。たまたまネットで見つけて「!?」となって、そのまま読み始めました。行きつけの書店にずっと7巻までしか置いてなくて、今Amazonを確認したらとっくに8巻が出ているのを発見して絶望しながら注文しました。
<感想返信についてのお詫び>
誠に申し訳ありません。誕生日のお祝いメッセージやその他の励ましや通常の感想などで、一時期のものに対して返信が追い付かなくなりました。嬉しいと同時に非常に申し訳ないです。
感想自体は逐一(本当に逐一)チェックしています。というか反芻していますw
皆さんのご感想一つ一つにとても元気づけられています。
最近書かれた感想には返信出来ていますので、もし僕の返信出来なかった時期に書いていた方がいましたら、ぜひまた新たに書いて頂けますでしょうか!!お盆休みに入るのでいくら書いて頂いてもきっと大丈夫なはず!!w
そんな訳で、ご感想お待ちしています(^^)!
最近の悩みは、iPhoneでこの作品の目次をスクロールする時にかかる時間がえぐいことです。や、マジでえぐい。今後も増え続けるのに……!章ごとにページを作れたらなあ……。
給料日に合わせて(事情がリアル)小説を大量購入しました。ほくほく。
古典部シリーズの2作目以降や官能小説、GJ部などを。紹介して頂いた小説は他にもちまちま買っています。
pixivに完結した分のエピソードをちょこちょこ転載しています。もっとたくさんの方に見てほしいので。うーん、どの作品も閲覧数が最低1万以上行くくらいは頑張りたいなあ。アフターを書くとその前のエピソードも見てもらえるというね、ふふふ。
あ、朝に汗をかいてから仕事に臨んだら見事に作戦成功して、かなり暑かったのに熱中症の症状が全く出ませんでした。やった!毎日走るのはしんどいので基本は朝半身浴くらいに留めておきます。
今日も徒然なるままに書きました。もはや日記。900字越えてもうた……。
それではまた明日お会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!