※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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今回、気付いたらめぐりんが出ませんでした。初のことです。兄妹のゆるゆるとした会話をお楽しみください。


(17)

 再び翌朝。

「…………」

 起床して、まず思うこと。

 ……なんか、早起きするの慣れてきた……。

 リビングでトーストにジャムを塗りながら、早起きの割に……どころか、いつもよりも明らかに爽やかな気分になっていることに気付く。全然ぬぼーっとしてない。どうしよう。

「ありゃ? お兄ちゃん、こんな朝早くからどしたの?」

 うぬぬと唸っていたら天使が降臨した(訳:小町がリビングに来た)。寝ぼけ眼をこしょこしょとこすっていてただの天使だと思いました。

 俺のキャラを15年間見てきた小町に、試しに現状を伝えてみることにする。

「小町。お兄ちゃんな、早起き爽やかキャラになっちまった。アイデンティティクライシスだ」

 哀愁たっぷり(&ウザさたっぷり)に言ってトーストをはもはもしていると、小町が目を半開きにして口をへの字に曲げた。あれ、どっかで見たことあるような……?

「ちょっとやそっとで変わるものが個性なわけあるかよ」

「うぐ……」

 伝説の名台詞(訳:黒歴史のトラウマ発言)直後に小町との会話で言われたことをもう一度言われた。しかも俺の真似をきちんと添えて。

 俺がトーストをもぐもぐしながら羞恥心に悶えていると、小町は腰に両手を当てて満足気にふんすっと息を吐いた。可愛いけどムカつく……。

「ごみいちゃんの個性に対するどうでも良い執着は置いておいて……お兄ちゃん、なんでまたそんな早起きしてんの?」

「あ、や、まあ、その、なんだ、うん、ちょっとな……」

 目を逸らしてコーヒーを飲む。しまった、まだ砂糖を入れてなかった……! なんか胃に変な負担が来る。

 俺の抜群のキョドりっぷり、略してキョロ(慣れたらオレマンでも良い)を見て、最初は訝し気だった小町の眼差しが不意にきらりと輝いた。

 ずいずいずいっと俺に近付いて、テーブルの向かい側からきらきら笑顔で身を乗り出す。なんだよこいつ超可愛いな。キスするぞ。しねぇよ。

「お、お、お? おやおやおや? お兄ちゃん、まさか、ほーん、こんな健康的な時間帯を利用して? ほーん? ほーん?」

「なんでもねぇよ……」

 なんだこいつ、ほーんが鳴き声みたいになってんだけど。

 俺が下手にも程があるはぐらかし方をして目を再び逸らすと、今度は俺の後ろに回り込んで、よいしょ感丸出しで肩を揉み始めた。砂糖を混ぜづらい……。

「やー、そうかそうかー、お兄ちゃんもついに、うん、そうかそうかー……小町は嬉しいようで寂しいような……よよよ」

「肩揉みながら泣き真似って器用すぎんだろ。別に、何でもねぇよ」

「この間のスイパラで一緒に居た人?」

「…………」

 あれ、詰問タイムスタートしてる?

 小町は肩を揉む速度を緩めて、むふふと邪悪な笑みを浮かべながら俺のすぐ横に顔をにょきっと出してきた。なんで吐息が甘いんだこいつ。変な気持ちになるからやめてほしい……。

「お兄ちゃん。無言って大抵肯定にとられるよね」

「黙秘権って知ってるか?」

「じゃあさっきのは当たりってことでいいね」

「人権って知ってるか?」

 決めつけちゃった。

「お兄ちゃんがよくバッグから落としちゃうもの?」

「俺のバッグにそんな一生もんの大事なものを入れて持ち歩いたりするかよ」

 あ、でも、雪ノ下との会話の時ならいつも余裕で落としてるな、うん。

「いろはさん?」

 この尋問の仕方、ダメだと思うんだ。

「ねえ小町ちゃん」

「めぐりさん?」

「ねえ小町ちゃん」

 全く同じ声音で台詞を言えた俺に拍手を送りたい。心臓のBPМが15くらい上がった気がする。

 俺の薄い反応を全く意に介さず、小町が腕を組んでむむむと唸る。パイプを加える動きをジェスチャーでやってるんだけど下手すぎて可愛い。

「なんとなく、雪乃さんや結衣さんじゃない気がするんだよなぁ……。もう一緒に時間を過ごすようになってかなり経つのに、今になってこんな時間をかけた籠絡をしようなんてこと考えるかなぁ……」

 あれ、これマジなやつなのん?

「ねえ小町ちゃん、推理を続けないでくれるかな」

 肩叩きを再開して、とんてんとんてんと俺の肩を叩きながら、小町の推理が続く。今は崖の上にいるイメージ。小町が船越さんな。

「お兄ちゃん、この中には居るんだよね?」

「や、そんなこと一言も――」

「めぐりさんだね」

 助けて。

 小町が肩たたきの手を止めて、首にそっと両手を添えた。え、何この絶対逃がすまいとする強い意志は……?

 バレるとなんか色々恥ずかしい。なんとか誤魔化さねば。

「ふむ、君の推理を聞かひぇてもらおうかな」

 裏返った。

 死にたい。

 小町ちゃん、俺の首に添えた手が笑ってぷるぷる震えてんだけど。やめて、笑わないで。

「ぷっ……くくくっ……ふぅ。では、小町の推理を聞かせてあげましょう!」

「頬をわしゃわしゃってするな。頬をわしゃわしゃってするな」

 なんで自慢げなセリフと鬱陶しいテンションと共にムツゴロウさんみたいなノリで、俺の頬をわしゃわしゃしてんだこいつ。

 いつもよりもテンションが高くなった小町が、再びふんすっと息を吐く。

「お兄ちゃん、早起きしだしたのはつい最近……どころか、今週に入ってからだよね。で、先週末はスイパラに行った訳だけど、その後小町はお兄ちゃんと別れて雪乃さん、結衣さん、いろはさんと遊びに行ったわけです。それでその後のお兄ちゃんの動向は確認出来ていません。しかし、そこから後、お兄ちゃんは真っ直ぐ帰ったからかもしれないし、あるいは他の行動をしていたかもしれない。ここであの日の夜を思い出すと、お兄ちゃんは心持ちぽーっとしていた覚えがあります」

 勉強会という響きに浮き足立ってたり、初LINEの時に悶えてたのが鮮やかにバレてる。やべぇ。

「以上のことから……お兄ちゃんは小町たちと別れた後、何らかの流れでめぐりさんと一緒にどこかに行き、その時に何らかの約束をして今こういった状況になってるんじゃないかな、と思ったのです」

「…………」

 女の子、こわい。

 何この推測。何一つ具体性は帯びてないのに、真に迫った感じが――

「例えば2人でお兄ちゃんが行きつけの本屋さんに行って、併設されたカフェでお話してたらお兄ちゃんの勉強を見てあげようかーって流れになって、放課後だと奉仕部があるしお昼休みじゃまとまった時間は取れないから、それなら朝にしようと思った……とかね!」

「お前は俺の心を読んだのか!?」

 こわっ! 急に俺の心がハッキングされた! こわっ!

「ふ、ふむ、まあ、それなりにそれっぽい推理をするじゃあないか、小町くん。しかし物的証拠が無い限りは……」

 冷や汗をだらだら流しながらなんとか言葉を紡ぐと、目の前ににゅっと手が伸びてきた。何、なんか欲しいの?

「LINEのトーク履歴。見せて☆」

 追及が止まらねぇ。

「いや、『☆』じゃねぇよ。なんで見せなきゃいけねぇんだ。お前は俺の彼女か」

「彼女にだって普通見せないよ。まあその立場には恐らくめぐりさんがスポッと収まってくれるわけだけど」

「や、お前、何言ってんだ、よ、こら」

「お兄ちゃん慌ててる~、図星だ~!」

「なんで急に中学生みたいなノリになってんだお前」

「中学生だもん小町」

「そういやそうだった」

 問答で食事が長引いたなと思い、トーストを食べるペースを上げると、頭にぽすりと柔らかなものが置かれた。身に覚えのある感覚に神経を集中して、数秒後にそれが手だと気付いて振り返ると、小町がにこやかに微笑んでいる。

「……お兄ちゃんのこと、あったか~く見ててくれる人だと良いね」

「……さあ、どうだろうな」

 返しに困る言葉に、中途半端な返答しか出来なかった。むう、顔が熱い。

 目をぷいっと背けたままの俺の目の前に回り込んで、小町がにぱっと笑う。

「今の、小町的にポイント高いよね!」

「うるせぇよ……」

 なんで時間差で言ったのん?

 俺のげんなりしたジト目など気にもせず、小町がにぱぱーっと笑う。眩し過ぎて溶けそう。

「よーし、お兄ちゃん、頑張ってね!」

「……勉強を、だよな? ……あいよ」

 頭をがしがしと掻いて、ごちそうさまの挨拶をして、皿をシンクに置く。小町が洗ってくれるとのことで、もうただの小町大明神様だなと思い崇め奉ってよいしょしすぎたら白い目で見られた。つら。

 着替えも済んでいたので、ささっとコートを着て玄関で靴紐を結ぶ。立ち上がってドアノブに手を掛けると、小町が手を振って満面の笑みを向けてきた。

「それじゃあ、お義姉ちゃんによろしにゃっ!?」

「うっせ、行ってきます」

「うぅ……行ってらっしゃい……」

 恥ずかしいことを何度も言うアホ可愛い妹のおでこにチョップをして、まだ凍える寒さ漂う外へ足を踏み出す。小町はおでこを両手で押さえてうにゅにゅと唸りながらも、指を数本上げて器用にひらひらと振って見送ってくれた。

 小町に恥ずかしいことを言われたから尚更なのか、身体が熱い。きっと、学校へ近付くにつれてコートが要らないと感じるくらい熱くなるんだろう。

 この心地良い昂揚感は一体何なのかと自問しながら、自転車を漕ぎだした。

 

 

 

 続く。




基本的に、余計な先入観を与えたくないため前書きは書きたくないんですが、書き終わった後「めぐりん出てねぇじゃん……!」と思ったので今回は書いてみました。

残業が続いているのもあり、今日は筆休めな感じでした。ゆるゆるの会話をちゃんと書こうと集中した結果、兄妹の朝の会話で一話が終わるという。
ちなみに前回の筆休めは平塚先生編のアフターをスタートさせるというかっ飛ばし具合を見せていました。なんたる荒業だったんでしょう。

明日ははるのんです。

感想、本当にありがとうございます。元気が出ました!
シルバーウィークは土曜だけ短めの出勤をしたら、その後4連休なので気合を入れて休みます(おかしい)。
集中力が落ちたなと思っていたところ、同じことを一日中やると集中力が上がるというくだりを読みまして。思い返すと、俺ガイルを1日に4冊くらい読んだ後、執筆にしろ読書にしろ仕事にしろ、集中力がかなり上がっていたのを思い出しました。なので、この連休のうち丸1日は執筆・丸一日は読書みたいな日を設けられたらなと思います。嵩流力アップ云々の詳しい情報をお持ちの方がいましたらぜひ教えてくださいませ!

平日の最後ですね!!頑張りましょう。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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