※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(18)

 学校へ向かう道中。ふと昨日の、俺が寝たフリをした理由を自白した時のめぐり先輩の反応を思い出す。

 ――なんだろう、ただ許してくれた、というだけの反応にも思えなかった、不思議な感じ。違和感の正体が拭えず、胸の奥がむず痒い。

「うおっと」

 ぼへっとしながら運転していたら、目の前を猫が通り過ぎた。慌てて止まると、野良のはずなのにどこか育ちの良さそうな、綺麗な顔立ちの猫がこちらをじっと見据えて、やがてふいっと顔を背けて優雅に立ち去って行った。なんか雪ノ下みたいなお澄ましさん。

 雪ノ下似の猫、略して雪猫(捻り0)を見て、ふと土曜日のスイパラのことを思い出す。あそこから話がトントン拍子に進んだ感がある。何に対して進んでるんだって話だけど。

 うーん。

 ……俺とめぐり先輩、なーんでこんな仲良くなってるのん? ほんの数日前までは「君って……最低だね」って言われるだけの関係だったのに。言い方がまずすぎる。しかしあの人のことを冷静に考えると癒されるわ可愛いわ和むわでもう良い要素しかないから困る。多分お味噌汁を作るのが上手い。ただのイメージだけど。小町・戸塚ラインに並べるか真剣に悩むレベル。……って。

「……俺は何を……」

 調子に乗ったことを――なんて考えながら漕いでいると、気付けば校門に辿り着いていた。予想通り身体はすっかり熱くなっていて、今日は何が起きるのやらと思いながら駐輪場に向かった。

 

       ×  ×  ×

 

 3日目ならもう現地集合で良いかな、というめぐり先輩の提案により、図書館に直接向かう。一人で静かな朝の校舎を歩くというのは、どうも不思議な感じ。いかん、窓から差し込む朝日のせいで目の濁りが取れていく……!

 どうでも良いことを考えながら歩いていると図書館に着いた。ドアに手を掛けると既に開いていて、めぐり先輩が来ているのだと知る。

「先輩、おはようございまー……?」

 もはや2人の定位置と言っても過言ではない、図書館奥のスペースに迷うことなく歩を進めると、予想もしていない光景が目に入った。

「…………」

 えーと。

 めぐり先輩が、寝てる。

 ……なんで? 

 や、朝早いから眠くなるのは自然な現象ではあるんだけど。

 俺が来る前からそんな限界を迎えてたの? なんかすんごい違和感あるんだけど?

 そろりと近付いて、もう一度声がけをする。

「先輩、おはようございます」

「っ」

 ん、今ぴくっと動いたような――

「すぴー」

「!?」

 え、なに!?

 今、すぴーって言った!?

 実際寝てる人が言わないセリフトップ2に入るセリフを!?

「ZZZ」

「!?」

 トップ2のもう片方まで!?

 え、なに、どうなってんの――と朝から混乱の極みに達していると、ふと昨日までのことを思い出した。

 突っ伏して寝ていたら俺が撫でられて。

 寝たフリをした時、もう一度撫でられて、自白しても許してもらえて。

 自白して許してもらえたと思ったら、なんだかそれだけじゃない奇妙な反応が混ざってて。

「…………」

 これは……まさか。

 すーはーと深く息を吸って吐いて、もう一度だけ声がけを行う。

「先輩、起きてますかー……?」

「……すぴー」

「…………」

 うん。

 確定、としよう。

 何事も無いかのように、口笛を吹くくらいの気軽さでめぐり先輩の隣に腰を下ろして鞄を下ろすと、めぐり先輩がぴくりと動いた。これもう絶対起きてるだろ……。

 迷いに迷って、恐る恐るめぐり先輩の頭に手を伸ばす。髪に触れるか触れないかの位置で手を止めると、緊張でぷるぷると震えた。いいのか、本当にいいのか――? そんな疑問を心の中で何十回と繰り返し発するが、今からやろうとしている行為以外には解は無いとしか思えない。

 めぐり先輩に聞こえないように、小さく喉を鳴らす。

 勇気を出して先輩の髪の毛に震える手を着地させると、

「んっ……」

 めぐり先輩が小さな声を上げた。

「……っ」

 シャンプーの良い香りに混じって聞こえたその声音は、微かな音量でもはっきり分かるくらい、穏やかでどこか甘味を帯びた声で。

 反射で離しそうになる手の動きを、好奇心が止めた。

 恐る恐る、髪の毛に乗せた手をそのまま動かして、ゆっくりと左右に動かす。すべすべとした滑らかな髪はとても撫で心地が良く、いつまでも撫でていたくなる。めぐり先輩は甘い吐息を漏らしてもぞもぞと動くが、起きるフリをすることもない。フリって言っちゃった。

「う……わ……」

 めぐり先輩の匂いと、触り心地と、反応に、正常な思考がとろとろと心地良く蕩けてゆく。

 気が付くともう片方の手も伸ばしていて、両手でめぐり先輩の髪を愛で始めた。

「んん……っ、んっ、んん……っ」

 めぐり先輩の声が、少し抑えているという程度ではなく、徐々に押し殺したものに変わってゆく。なんでこんなに反応するんだ……? 疑問は尽きないが、今はただただ撫でていたい。続けることにする。

 ただ撫でるだけの動きから、徐々に手櫛で梳いたり、マッサージをするように揉む動きを加えていく。

「ふぁっ……んっ、ふっ、くふぅっ、んんん……っ」

 めぐり先輩は腕を重ねてそれを枕に寝ていたが、その腕は徐々に解かれて開いていき、今はそのおでこに両手の中指と人差し指が触れるだけになっていて、丁寧にお辞儀をするような姿勢になっていた。微かに横顔が見えるが、影になっていてよく見えない。

「先輩……」

 うっすらと呟いて、めぐり先輩の髪の毛を触る手にほんの少し力を入れると、

「あっ、それ以上は……っ!」

「えっ」

「………………ん、あれ、わたし、寝ちゃってた……?」

「…………」

 ちょっと待て。

 すんごい気になる反応と、すんごい白々しい演技を畳み掛けられたんですけど。

 めぐり先輩が下手にも程がある演技をしながら顔を起こしてきたので、それに伴って手を離す。

「あはは、ごめんね比企谷くん。気付いたら寝ちゃってたよ……って、あ、れ、比企谷……くん……?」

「あ……すいません、触り心地が良くて、つい……」

 めぐり先輩が頭をぽりぽりとして笑う姿を見て何か込み上げるものを感じて、反射のごとく両手を伸ばして、先輩の頭をしゅるしゅると撫でてしまった。この場面だけ切り取ればただの俺の乱心なんだが、直前までの過程を考えると我慢出来なくてもしょうがないよねーなどと言い訳してしまう。

 こんな俺の行動にも怒りもせず、めぐり先輩は少し笑って、

「あはは……なあに、比企谷くんは撫でられるのも撫でるのも……好き、なの?」

 俺に頭を撫でられながら、穏やかに目を細めて首を傾げる。大人びたその仕草に、心臓がとくんと鳴った。

「……ええ、そうですね。すげぇ好きです。……撫でられるのも、撫でるのも」

 今まで見たことの無い、ぽーっとした表情のめぐり先輩とうっすらとした中身の無い会話を交わす。

「あっ……んっ、んん……」

「……っ」

 うっとりとした表情で、時折明らかに、ただ髪を触られて心地良いだけとは言えない反応が返ってくるこの状況に、心拍数がどんどん跳ね上がる。真正面から見るめぐり先輩の顔は、穏やかさに混じってどこか色を帯びた目をしていて、頬が桜色に紅潮していてとても色っぽい。めぐり先輩って、まさか……?

「比企谷……くん」

 熱を帯びた声音で、めぐり先輩が俺の名を呼ぶ。

「は、はいっ」

 え、まさか、これは、おおお……っ!?

 何だかよく分からないが、これから起こりそうな何かに対してものすごく期待を抱いていると、めぐり先輩の髪の毛の上に置いた両手に、更に手がぽすりと重ねられた。温かな手の感触がなんとも心地良い。

「比企谷くん……」

「は、はい、何でしょう」

 妙に舞い上がってしまい、やたらとはきはきと答えてしまう。

「……勉強、しよっか」

「…………………………………………………………………………………………そうですね」

 穏やかながらもはっきりとした口調で。

 ばっちり、本来やるべきことを突き付けられた。

 この後、普通に、真面目に勉強しました。そうだよね、そういう会だもんね。

 めぐり先輩の顔をちらちらと見て、自分の手のひらを見て、めぐり先輩の反応を思い出してもやもやした気持ちになっていると、その度にめぐり先輩に叱られた。叱り方が可愛すぎて永遠に叱られてたいまである。永遠に叱るってそれ地獄よりやばくないか。ちなみに叱られた回数は約15回。数分に1回ペースだった。バカすぎるだろ、俺。

 

 

 

 続く。

 




めぐりんでした。前話でめぐりんが出てこなかったので、少し早めに更新しました。
少しばかり妖しい気配を。まだまだこのテイストのやりとりが続きます。

以前ここでちらっと書いた、10分間の官能小説集という本を1~3まで読んだんですが、石田衣良先生の作品が一番心にざわっときました。
それで石田先生の他の本も買って読んでいるんですが(妖しい系を読んでいます。池袋ウエストゲートパークの著者だと後で知りました)、すんごく良い感じでぞくぞく来ます。
この雰囲気を出したい。どうやったらこの感じを出せるようになるかな、石田先生の本を読み漁りつつ、石田先生以外の方のも読みたいな……などと思っていたら、短編集の中で結構具体的な著書を上げている話がありました。そこに書いてあったのをメモして早速購入したりなんだりしています。今日は大漁でした。
しばらくしたら、エロや他の描写のレベルがくくっと上がって……いたら良いなと思います。ぞくぞく感の練磨をメインに。そこに甘々を混ぜ込んで行きます。

ちょっと久しぶりにこういうことを書いてみました。

活動報告でのリクエスト受付が、結構な数になっていてありがたい限りです!甘々を前提にならなんでも良いので、ぜひ思うがままに書いてみてください!それにインスパイされてモティベーションとリビドーが(意識が高くなりそうなので以下略)

たくさんの感想、ありがとうございます。明日以降にきちんと返信致しますので。

連休だぁぁぁぁぁぁぁ!!!

それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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