※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(19)

 翌日。もう金曜日で、平日も終わりに差し掛かっていた。

 起床時点で元気もりもりな自分を見て「ウケる」とか思ってしまった。お前はどこの折本だ。

 前日までと同様、この生活リズムに慣れてきた……というのもあるけれど、まためぐり先輩に会える……というのもあるけれど。

 何よりも……めぐり先輩に対して今まで抱いたことの無い、むしろ本来であれば一生抱かなかったであろう種類の感情が身体の中に燻っていて、それをめぐり先輩にまた会うことで確かめたい……そんな、焦りにも似た欲求が心を心地良く満たしていて、それが眠気を吹き飛ばしているのかもしれない。早起きのコツは朝起きた時に楽しみ(まだ読んでいない本やマンガなど)を残しておくことなんて記述を読んだことがあるけれど、今の状態が正にそれだと思った。

 西郷隆盛よろしく、掛布団を足でばふぉっと蹴飛ばして起きる。

「…………」

 さむっ。

 眠気は更に吹き飛んだが、その代り興奮が少し鳴りを潜めた。柄にもないことはするもんじゃない。

 

       ×  ×  ×

 

 早朝の学校へ辿り付き、足早に図書館に向かう。

「先輩、おはようござ……」

 奥のスペースに足を踏み入れて、固まった。

「……すぅ……すぅ……」

「…………」

 ……ええっと。

 また、寝てらっしゃる?

 そろりそろりと近付いて、様子を窺う。

 昨日は机に突っ伏して寝ていた(寝ていたということにしておこう)けれど、今日は、椅子の背にもたれかかって、足は女の子らしく内股で膝を合わせて、手はきちんと膝の裏で重ねている。何かすごい出来た絵面で、何かもういかにも過ぎて、超怪しい。

 取り敢えず、昨日同様隣に腰を下ろすと……やっぱり、ぴくっと震えた。いやもうこれ絶対ダウトだろ。……ダウト、だよね?

「……せんぱ~い?」

 字面だけ見ると一色みたいだけど、れっきとした俺の声でめぐり先輩にそろりと呼び掛ける。

「……すぅ……すぅ……」

 応答なし。昨日よりは自然な寝息ですね。慣れってあるのかな。慣れって言っちゃった。

 しかし、まあ、なんだ。

 この状況で俺が取るべき行動は、ただ一つではなかろうか。

 そう、撫でる。

 ただそれだけだ。

 数日前までの俺だったら、「しゃーねぇ、勉強するか」又は「本でも読むか」なんていう風に考えたかもしれない。いや、考えただろう。

 しかしもう、昨日の今日だから。思考回路もだいぶ組み替わっている。

 今のめぐり先輩が昨日同様寝たフリなのであれば問題無いどころか撫でるという行為は推奨される訳だし、寝たフリじゃなかったとしても撫でるだけなんだから、起きた時にきちんと謝れば済む話だ。なんか思考が安易にゴールに行き着いているような気はするがまあ良いだろう。

 右手をそっと伸ばして、めぐり先輩の髪の毛にふわりと着地させる。

「ん……」

 めぐり先輩の寝息がぴたりと止んで、微かに声が漏れた。はいもう寝たフリ確定。

 や、しかし。

 もはや「さあ撫でて良いですよ」と言われてるも同然の状況ではあるのだけど、それでもめぐり先輩が起きている状態で「撫でて」と言われるのと比べると、かなり状況が異なっている。なんというか、妙にぞくぞくしたものを感じる。このまま続けたら、何かいけないことを考えてしまうのではないか……と思いながらも、ふわりと漂う甘い匂いと手に伝わる柔らかな感触の誘惑にはとても勝てそうにない。

 そのまましばらく撫でていると、徐々にめぐり先輩の反応に変化が生まれてきた。

「ん……ふっ……んふぅっ……」

「……っ」

 なんだか段々色っぽくなってきた声に、興奮が加速度的に高まっていく。

 めぐり先輩の顔を見ると、その頬はほんのりと紅潮していて、綺麗に伸びた睫毛もふるふると震えている。手はいつの間にか解かれて椅子を押さえていて、足は悩まし気にくねらせて内股をこすり合わせている。スカートの為いけないものが見えてしまいそうなスリルにどきどきする。

 うわ、うわ、うわ。

 ちょっと待って、待って、待って。

 俺、こんなめぐり先輩、知らないぞ。

 思考が追い付くまで一旦手を止めたいところだが、生憎それは本能が許さない。

 やがて、横から片手で撫でるだけでも満足出来なくなって……すっくと立ち上がった。めぐり先輩は机から若干距離を空けて座っていたので、机とめぐり先輩との間に立つ。正面からめぐり先輩を見ると、俺の移動に気配で気付いたのか、体勢はそのままに口をきゅっと引き結んで、事の成り行きを見守っているように見える。

 心臓は爆発しそうな程に鼓動を速めていて、息が荒くなるのを抑えるので精一杯だ。

 両手を使うためにこの体勢にした。ごくりと喉を鳴らして覚悟を決めて、そろりと両手をめぐり先輩の下へ伸ばす。

 手の平が触れる直前、めぐり先輩がぴくっと震えたのが見えた。

 

       ×  ×  ×

 

 めぐり先輩の髪――耳の辺りに触れると、反応がより一層大きくなった。めぐり先輩の色付く息遣いに言いようのない昂揚を覚えながら、ゆっくり指を蠢かせていく。

「あ……んっ、ふぁっ、んっく……あぅっ……」

 悩まし気に眉を寄せてまぶたをひくつかせ、椅子を押さえる腕に力が入っているのか、腕全体が棒のようにぴんと張り詰めている。

 なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ。

 俺は何をやっているんだという自己嫌悪もある。だが、それ以上に、あのめぐり先輩が、清純な癒しの天使であるめぐり先輩が、こんな姿を俺に見せてくれている……そんな嬉しさと興奮とが、自己嫌悪を軽く上回っていた。

 もっと見ていたい……と思い、もはやめぐり先輩が寝たフリをしていようが、本当に寝ていようが関係無いとでも言うようなふてぶてしい行動に出る。手はめぐり先輩の髪を愛でたまま、顔をずいと近付けてめぐり先輩の反応を目の前で見つめた。

 互いの息がかかりそうな距離でしょりしょりとめぐり先輩の髪を愛でながら、ついでに耳にもそれとなく触れていると、僅かな反応も見逃すことなく観察することが出来て、ますます興奮する。

 ああ、どうしよう。ここから何が出来るだろうか――と、昂揚がピークに達したところで。

「……え?」

 俺の両手に、めぐり先輩の手が重ねられていた。

「ひき……がや、くん……」

 うっすらと目を開けためぐり先輩を見て、身体が凍り付く。あ、これ、やりすぎたかな? やりすぎたよね? うわ、終わった――なんて思っていると、めぐり先輩の目がうっとりとしていて、昂揚と期待に満ちていることに気付く。

「比企谷くん……」

 もう一度、熱を帯びた声で俺を呼ぶと、その手を俺の頬に伸ばしてきた。

 互いが互いに、相手の身体に触れている状態。

 その体勢で、しばし時間が止まる。その時間は、この先起こるであろう展開への期待で俺の心の空のプールを満たした。

 互いの吐息がかかる。女の人の吐息はなんでこんなに甘いんだろうかと不思議に思った。

「せん……ぱい……」

「比企谷くん……」

 後は、星と星とが引力で引き寄せ合うように。

 吸い込まれるように、めぐり先輩と唇を重ねた。

 

       ×  ×  ×

 

「…………………………………………」

「…………………………………………」

 互いに、無言。

 唇を離した後、互いにハッと目が覚めたように冷静になった。2人して真っ赤になり、俺は急いで隣に腰を下ろして俯いた。めぐり先輩を見ると、俺と同じように俯いている。

 ……やってしまった。

 や、あそこまで来たらキス一択なのは分かってますよ? 分かってるんですけど、いざ冷静になると、もう、もう、もう!

 いやしかし、めぐり先輩の唇超柔らかかった。この世にあんな柔らかいものがあるだなんて……って、そうじゃなくて。

「……あーっと、その……」

 ここは俺から話し始めた方が良いかと思い、頬を掻きながら切り出す。

「さっきのはですね、その――」

「あのねっ」

 切り出したものの、何を言えば良いかと言葉に詰まっていると、めぐり先輩が切り出してきた。

「わ、わたし、自分の髪がこんなに弱いだなんて、昨日まで知らなくって。自分で触っても何とも思わなかったし。だから、あれは何だったんだろうってすごく気になったの。それで、このことは比企谷くんとのやりとりで気付いた訳だし、もしかしたら比企谷くんとやりとりを続けたら、もっと自分のことが分かるかも……なんて思った……ん……だよ、ね……」

 めぐり先輩が珍しく早口で捲し立てるが、後半はしおしおと勢いが萎んでいく。

 比企谷くんとはここ最近すごく仲良くなれたから良いかなと思って、と付け加えて、めぐり先輩が続ける。

「そ、その……いざ撫で始めてもらったら、比企谷くんの手が意外とごつごつしてて男の子してるなって思っちゃって」

 ん?

「しかもその割に手つきがすごく優しくて、それで段々気分がふわふわしてきて……」

 んん?

「比企谷くんが正面に来たとき、もう心臓が爆発しそうになってて。しかも両手で撫でられちゃって、そ、それで、なんかよく分かんないけど、無性に……その……あぅっ」

 両手で顔を覆って、俯いてしまった。時折いやいやと首を振っている。

 ……ええと、その、なんだ、あーっと、その……。

 もはや地の文でさえ思考が追い付かない。地の文って言っちゃった。

 まあ、その、なんだ。

 これはお互い勢いでやってしまったことであり、そのため、ここで示し合わせて無かったことにしさえすれば、今後もこの関係を維持出来るのだろうか――などと考えていると、めぐり先輩が手を外して顔を上げ、頬を朱に染めたまま俺の袖をきゅっと頼りなげに摘まんだ。

「比企谷くんは……いやだった?」

「全っ然」

 あ。

 しまった。

 俺が脊髄反射の勢いでした返答を聞いて、一瞬めぐり先輩は驚いたように目を見開き、間もなく満開の笑みを咲かせた。向日葵を思わせるその笑顔は、まだ暖房の効きが弱い図書館にいることさえ忘れる程に、心と体をぽかぽかにしてくれる。

「そ、そっか……あ、あの、ね? せっかくだし、その……さっきはあっと言う間だったから……」

 めぐり先輩がもじもじとしながら、椅子をすすすと寄せてくる。

「あ、や、まあ……はい」

 どれだけ情けない返事をしてんだ俺はと我ながらびっくりしながら、ゆっくりと近付いてくるめぐり先輩の唇を迎えた。

 

 

 

 続く。




めぐりんでした。
登場シーンが少ない分、八幡との関係の進展はじっくりじっくり書いて、エロ辺りのシーンに行くまで20話くらいかかるかもしれないです……と随分前に書いた気がするんですが、本当にそんな感じになりました。19話でキスて。マジか。
ここからもしばらくはピュアor微エロくらいでしばらく続きます。書きながら浄化されようと思います。

<小説情報募集>
今回、めぐりんの感情吐露の長台詞を書いていて、どうも文尾の書き方や接続詞の使い方が上手く行かないなと思いました。これは書き慣れていないのは勿論ですが、インプットもあまり出来ていないというのが原因としてありそうです。
なので、今回のめぐりんの台詞のような、「キャラクターが自らの感情や思考・思想などを結構な長台詞で喋る」描写がある小説をジャンル問わずでお聞きしたいです。そういったシーンが一部あるだけでも構いませんので。久しぶりのピンポイント募集です。こういうシーンが思い付くようになっただけでも成長しているかとは思いますが、ここでもう一皮剥けたいです。
ぜひ、宜しくお願いします。

最近進行の関係で、今までもたまにあった「エロがそんなに無い時期」が続いています。しかしエロに持っていくシーンを安易に書いては興奮が薄れてしまうので、ペースは変えずじっくり書こうと思います。

完全に予定が無かった火・水で、読みかけの本をぶわっと読みました。
①妹さえいればいい。2
②GEφグッドイーター
③帰ってきた平成好色一代男 一の巻
④sex
⑤異世界居酒屋「のぶ」二杯目
の5冊です。
⑤はしばらく止まっていたので、読めてすっきりしました。
今手元にある、読みかけ&新しく読み始める本が
(1)インシテミル
(2)生徒会の六花
(3)失楽園 上
の3冊です。落差ぱねぇ。
(1)のインシテミルが面白くて、気付いたらぐいぐい読んでいます。米澤穂信先生はどうやら作家レベルで好きなことが分かりました。しばらく作品を漁ってみようと思います。勧められた小説もあることですし、嗚呼、とても楽しみです。

部屋の掃除をしていて、読んだ本の中でガガガ文庫の本を集めてみたらかなりの冊数になりました。かなり大きい棚の丸々1列が真っ青に。作品テイストや字のフォントが好きなんだろうなと思ったりなんだり。

連休が終わるーーーー。しかし連休の良い所は、連休の時だけでなくその後の平日がすぐ終わる点だよなと思っています。2日頑張ったらまた休み。うっし。頑張りましょう。

それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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