※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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 慌てて店を出ようとしたところで女性店員に呼び止められて、お会計を忘れていたことに気付く。いくらめぐり先輩からのお願いが強烈だったからといって、ここまで我を忘れるものなのかと驚いた。

「…………」

 めぐり先輩の手を握っている自分の手のひらにはじんわりと汗が滲んでいて、心底がっついてるじゃねぇか俺……と心底呆れた。

 一旦ここで冷静になろう、うん、うん、うん……。

 くるりと振り向いて、女性店員の目を見て頭をがしがしと掻く。

「ひゅいません、すぐ払います」

 …………。

 ……冷静になろうとしたんだけどなぁ。

 あ、女性店員が目を逸らした。ぷるぷる震えんのやめてよ。やめてよぉ! 遣る瀬無くて隣に視線を走らせたら、めぐり先輩は「もう、しょうがないなぁ比企谷くんは」的な微笑みを浮かべていた。恥ずかしすぎて何かもう出家したい。御髪おろしたい。

 

       ×  ×  ×

 

 会計で値段を聞いて、お金を払う間もずっと落ち着かなかった。なんで俺女性2人にこんな微笑ましく見守られながらお金を払ってんだ? って思うくらい、何やら暖かい空間が出来上がっていた。ドラマのフルハウスくらい暖かい。ベクトルがちょっと違った。ぽたぽた焼のおばあちゃんくらい暖かい。もはや何が言いたいか分からなくなった。

「ありがとうございましたー」

 もう一度からんからんとドアベルを鳴らして、女性店員の挨拶を聞きながら店を出る。時間帯は昼過ぎで、店に入るよりも幾分気温は上がっていて、身体を撫でる風に感じる冷気も幾分収まっていた。

 しかし、今からやろうとしている行為を考えると、春を感じさせる晴れ渡った空はどうにもミスマッチに思えて落ち着かない。

「先輩、行きましょうか」

 めぐり先輩の手を引きながら歩き始め、手頃な場所が近くに無いかと視線を巡らせる。別に裸になろうなどという訳では無いから、ちょっと人目につかない場所でさえあれば……と考えながらしばし歩いていると、めぐり先輩の手がさっきまでと比べて熱を帯びていることに気付く。

「……先輩?」

 立ち止まってめぐり先輩に顔を向けると、手を繋いだまま俯いていることに気付いた。心配になって声を掛けると、めぐり先輩がゆっくりと顔を上げた。眉根を悩ましく寄せて、頬を朱に染めた顔はたまらない程色っぽくて、微かに震える薄く綺麗な唇は見ているだけで息を呑む。

「……あ、そ、その……自分から言っておいて難なんだけど……ちょ、ちょっと、恥ずかしくなっちゃった……えへへ」

「……っ」

 とぼけたように笑って首を傾けるその仕草に、心臓を鷲掴みにされる。それと同時に、ちょっとした悪戯心が湧いた。めぐり先輩の手を握る力を強めて、一歩距離を詰める。

「……先輩は、したくないんですか? キス」

「……っ。……あ……ぅ……」

 今口にした直接的な表現はたった2文字だと言うのに、身体の底から火が点いたように熱くなるのを感じる。恥ずかしさもあるけれど、それ以上に、これから2人でしようとしている行為を明確に示したことで、この流れを曖昧にしてうやむやにすることはもう出来ない状況に追い込むことが出来た面が大きい。これからやろうとしている行為を強く実感して、心が昂っていくのを感じる。めぐり先輩は俺の言葉に目を見開いて驚き、唇を戦慄かせながら顔を逸らした。

「……そ、そういう訳じゃ……無い、んだよ……? だ、だけど、その、やっぱり、昼間から、外でっていうのは、その、は、恥ずかしい……かなって……」

 顔を逸らして目だけこちらに向けることで、婀娜っぽい流し目を送っているようにしか見えなくなっていることに本人は気付いているのだろうか。震える唇をか細い指で艶かしく撫で回しているのは、意識してやっているのだろうか。ただキスをしたいというシンプルな欲求だった筈なのに、めぐり先輩の躊躇う様があまりにも扇情的で、シンプルになるはずの行為が急に複雑で、背徳的で、淫猥な行為に思えてきて、下腹部に血液が集まってくる。

 先輩の両手を握って、ぐっと引き寄せた。

「先輩は、今、したくないんですか」

「……っ」

 こきゅっ、と可愛く喉を鳴らす音が聞こえる。熱を帯びた瞳が微かに波打つ。

 やがて、めぐり先輩は困ったように眉根を寄せて、目に笑みを浮かべながら、泣きそうな声で囁いた。

「……したい、な」

「……俺もです。行きましょう」

 めぐり先輩の手を握る力を思い切り強めてしまいそうになるのを必死で堪えながら、平静を装って歩き出す。

 視線を巡らせると、通りの向こうに広い公園が見えた。あそこなら……出来るかもしれない。めぐり先輩に顔を向けて、公園をちょいちょいと指差す。めぐり先輩は公園に視線を向けた後俯き、小さくこくこくと頷いた。

 

       ×  ×  ×

 

 都会の中にも自然を……という売りなのだろうか、その公園は中々の広さで、手入れの行き届いた木が林のように沢山存在していた。休日だがそこまで人通りは無く、その中でも特に人通りが無い場所を探して、更に公園の中の通りからは見えづらい林の中に足を踏み込んだ。特に立ち入り禁止になっている訳でもなく、幾分か人が通った事あることを示す、折れた木の枝や足跡が散見される。確率は低いだろうが、絶対人に見つからない訳では無い……そう思っただけで、ぞくぞくした。

「先輩、ここで……」

 木を背にした状態でめぐり先輩を立たせて相対すると、めぐり先輩は不安げに周りに視線を巡らせて、胸に手を当ててこくりと頷いた。

「ん……」

 息混じりの艶っぽい声を漏らして、めぐり先輩が目を閉じて顎を上げる。手で顎を支えるようにして、前髪をかき上げると白く可愛らしいおでこが見えた。

 さっき店を出てからまだ15分程しか経っていないと言うのに、どうしてこんなにも、まるで何時間も何日も待ちわびたかのような高揚感に包まれているのか。

 確実に訪れる幸福は、それを待つ時間にこそ真の幸福がある。

 どこかで聞いた言葉を思い出しながら、めぐり先輩にそっと唇を重ねた。

 

       ×  ×  ×

 

 唇を重ねた瞬間、まるで電気が走ったような感覚に陥った。

 待ち侘びていた事もあるからだろうけど、それ以上に、めぐり先輩の唇が、昨日よりも熱く、柔らかく感じたからだ。

「んっ……んふぅ……っ」

 めぐり先輩が目を閉じたまま俺の腰にそっと手を添えて、唇を愛おしそうに咥えてくる。はむっはむっと何度もあどけない仕草で咥えてくる様は本当に愛らしくて、たまらない幸福感をもたらしてくれる。待つ時間も幸せだけれど、やっぱり今この瞬間この身を包んでいる幸福感の方が大きいし心地良い。そう思った。

 めぐり先輩の手を握って、そっと舌を絡める。

「んぅ……ふむぅ……っ」

 その吐息には徐々に色が宿ってきて、うっすら開けられた目は幸せそうに細められている。互いの手の感触を味わいながら、ゆっくりその手を離して、今度はめぐり先輩の髪を撫で始める。頭頂部と後頭部に手を添えると、めぐり先輩がびくりと跳ねた。

「んんっ……!? んっ、んふぅっ、んむぅぅぅ……」

 触れている唇がより熱を帯びて、艶めかしく震える。たまらなくなって、めぐり先輩の顎の下に再び手を添えて、くいっと上げて口内に唾液を流し込む。

「んむふぅ……っ、んっ、んっく、ごく、んふぅっ……ごく、ごく、ごく……んはぁっ、……はっ、はっ、はっ……」

 めぐり先輩が喉を鳴らす音を心行くまで堪能して唇を離すと、二人の間に淫猥な液体の橋がかかった。めぐり先輩は腰をがくつかせていて、顔は紅潮しきっていて目もとろんと蕩けている。

「はっ、はっ、はぁっ、比企谷、くん……んっ、ふあぁ……っ!?」

 上目遣いで名前を呼ばれてたまらなくなり、めぐり先輩の白く滑らかな肌触りの首に吸い付いた。唇を押し付けて強く吸い付くと、めぐり先輩が俺の背中をぎゅっと抱きしめてがくがくと震えた。

「ふあぁぁ……っ! あっ、んはぁっ、だ、だめ、比企谷くん、これ、変、なんか変だよぉっ……ひあぁっ!」

 舌先でつついてなぞる度にめぐり先輩の身体がびくんびくんと跳ねる。その間も絶えず髪を撫で回しているのもより効果的なのか、めぐり先輩はもはや立っていられないくらいに足をがくつかせていた。

「も、もう、無理、無理だよぉ……っ。比企谷くん、お願い、許して……っ」

「……っ」

 めぐり先輩の扇情的な哀願に心が激しくざわめく。もっともっと色々したいしさせたくなったけれど……ここは外なのだと言うことを、今になって思い出した。

 めぐり先輩の首から口を離して、そっと抱き寄せる。

「はぁっ、はぁっ、んっく、はっ、はっ、はっ……」

「…………」

 めぐり先輩の荒い息遣いと艶めかしい声が、胸骨から全身に響き染み渡るのを感じながら、めぐり先輩の頭をぽんぽんと撫でる。

 しばらくそうしていると、落ち着いたのかめぐり先輩から離れた。

「……ん、もう大丈夫。ありがとう」

「いえいえ。……その、俺もやりすぎました。すみません」

 頬をぽりぽりと掻きながら謝ると、めぐり先輩が首をぶんぶんと左右に振った。

「ううん、そんなことないよ。わたしも気持ち良かっ……あ」

「え」

 めぐり先輩が一瞬ぴたりと止まったかと思うと、急にざっざっと歩き始めた。あれ、歩くの超速いぞ?

「ちょ、ちょっと、めぐり先輩?」

「何でもない。何にも言ってないよ? わたし何にも言ってないよ?」

 引き離されないのが精一杯な程の早歩きで進みめぐり先輩を、必死で追いかけながら会話を交わす。

「そうですね、気持ち良かったなんて言ってないですもんね」

 ちょっと悪戯心を含んだ言葉を言った瞬間――めぐり先輩がぴたりと止まって、くるりと振り向いた。ぷるぷると震えている顔は真っ赤で、目にはうっすら涙が浮かんでいる。

「う……うぅ……そ、そんなこと……言ってないもん……っ!」

「あ、え、ちょっと、めぐり先輩!?」

 子どものような喋り方をしたかと思うと、踵を返して再び進み始めた。今度はさっきより更に速い。油断したら見失うレベルの早歩き。

 結局、この後追い付いて謝り倒して機嫌を直してもらうまで相当時間がかかった。どうしよう、ぷんぷんしてるめぐり先輩が可愛すぎてまた怒らせたくなってしまった……。

 

 

 

 続く。




めぐりんでした。

<由比ヶ浜マ>
由比ヶ浜マの反応の大きさにびっくりですwwwありがとうございます!

<アクセス>
休載明けにも関わらずアクセス数がすぐ戻って嬉しい限りです。引き続きよろしくお願いします。

<執筆のやり方>
帰る前にフードコートで執筆したら、いつもより格段に集中して書けました。今日からこのやり方で行こうと思います。

<読書>
感想で知ってびっくりして、今日書店で西尾先生の「愚物語」「掟上今日子の遺言書」を購入しました。や、もう、あの方の刊行ペース本当に尋常じゃないですね。前作の掟上今日子の挑戦状を他の本と並行して読んでいる内にまさかの新刊発売。びっくりです。2ヶ月経ってない……!

平日中日も頑張りましょう。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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