※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

188 / 700
(33)

 めぐり先輩と早朝にあれこれした、後日。

 日差しが程良く差す、朝。

「お兄ちゃんさ」

「んー」

 小町と朝ご飯を食べていると、ふと小町から話題を切り出してきた。小町手作りの味噌汁を飲んでいるため、確実に顔がふやけていると思われる。だって冬に味噌汁とかもう五臓六腑に染み渡るしかないじゃん? しかも小町が作ってくれたんだぞ?

 温かい汁を喉から身体の内にに流し込みながら目を細めて生返事をすると、小町がにぱっと笑った。やだ、この子ったら天使なの……?

「めぐりさんと上手くいってるみたいだね」

「…………」

 味噌汁をこぼすところだった。

「…………」

 黙っておわんを置いて、ゲンドウさんのポーズをとる。俺が黙り込む様子を見て、小町が「はりゃ?」と言って首をくりっと傾げた。MAX可愛い。マジで。

「聞こえなかった? お兄ちゃん、最近めぐりさんと上手く」

「待て、聞こえてる。聞こえてるから」

 しゅばっと右手を突き出して(張り手してるみたいになった)小町の言葉を止める。小町は再び「ほえ?」と首を傾げた。可愛すぎて、もはやこれから一生味噌汁を作ってほしいまである。あ、もう作ってもらってるわ。じゃあこれを継続させる方向で――と全力で現実逃避していると、小町がにやりと目を細めた。むぅ、いつの間にこんな邪悪な顔を……。

「……お兄ちゃん、照れてるんだ」

「ばっ、おまっ、そんな訳っ、なっ」

 セリフの全ての文字に下手なスタッカートを入れてるのかってくらいの勢いで喋ってしまった。すんごい跳ねてる。ミス・メリークリスマスかよ。

 俺が高速目泳ぎをしていると、小町が肘をテーブルについて顎を手に乗せた。マナー上どうかと思ったけど、小町はもう食べ終わっていたようで、食器はちゃっかり横に片付けられている。出来た子ですよまったく。要は、小町の仕草が何の文句も問題もツッコミどころも無く可愛いということだ。

「んふふー、お兄ちゃん分かりやすいよねー。ポーカーフェイスにしようとしてるのに、あちこちで不自然ににやけてるんだもん。ほーんと分かりやすい」

「そうかそうか、ということはあちこちで俺は可愛い顔をしていたということか」

「うんにゃ、気持ち悪かったよ。口角を上げなれてないからか知らないけど、口がひくひくしててなんか危ない人に見えたよ」

 つら。

「……そんなにか……」

 味噌汁に目線を落として絶望に打ちひしがれる。味噌汁よ、お前なら分かってくれるか……。

 妹(天使)による言葉の暴力でぶへぁぁっという変な声と共に盛大に息を吐くと、小町がにひひと笑った。

「……まあ、気持ち悪かったのは確かだけど。それでもお兄ちゃんがそれだけ無防備な顔をするくらい、めぐり先輩と過ごす時間が楽しくて幸せなんだなーって思って。なんだか小町も嬉しくなっちゃったのです」

「……そうか」

 小町が優しく目を細めるのを見て、心から安らぐのを感じた。ずっと俺の隣にいたこいつがこんな風に言ってくれると、こうも嬉しいものなのか……。感慨に浸っていると、急に小町が立ち上がって、自分の椅子を持って、お尻に付けたままとたとたと隣にやってきた。何この小学生みたいな行動。超可愛いんですけど。

「それでそれでー? 今お兄ちゃんはどれくらい幸せなのですかー? うりうりうりうり」

「やめろやめろやめろやめろ」

 肘で二の腕にぐりぐりするのと、人差し指で頬にぐりぐりするのの合わせ技とか器用なことをするなよ。

「ほれほれー、答えないとずっとぐりぐりしちゃうぞー。うりうりうりうり」

 可愛すぎていっそ答えないのも手かと思ったけど、このまま行くとうりがゲシュタルト崩壊しそうなので回答を考える。2ヶ所をぐりぐりされながら。

 ぐりぐり。

 ぐりぐり。

 ぐりぐり。

 …………。

「……家に帰った時、先輩と小町がおかえりって言ってくれたら、一生頑張れる気がする」

「そんなに!? しかも小町もセットなんだ!?」

 小町が凄まじいオーバーリアクションでのけぞった。顔が瞬間的に劇画タッチになっている。あ、戻った。今度は両頬に手を当ててくりくりとせわしなく顔を動かし始めた。

「うぅ……お兄ちゃんったら、この場面で小町まで攻略しようとするなんて……もう、これだから捻デレは……」

「お前そのワード気に入りすぎだろ」

「うん、すごい気に入ってる」

 照れる演技(演技なのかは分からないが)から一瞬で切り替えて、にぱぁっと笑った。あゝもうほんと天使。あゝとか書いちゃうくらい天使。

「それで、今日はめぐりさんと何かするの?」

 言われて、少しばかり身体が強張る。

「あー……昼くらいに、ウォーキングをしようとしてる。この間はあんまり捗らなかったから、先輩がやる気満々になってるんだよな」

「お、お、お?」

 何気なく答えたつもりだったのだが、急に小町が食いついてきた。目をきらきら輝かせて、ぐいと顔を寄せる。このままほっぺにキスしてくれないかなぁ。

「この間捗らなかった、とは?」

 ……しまった。

「……あー、気にすんな。何でもない」

「ほーん、ほーん、ほーん?」

 益々目を輝かせて、俺の太腿をぺちぺちしだした。そろそろちょっと変な気分になりそうだからやめてほしい。俺の獣モードを舐めるなよ。

「へー、ふーん、そっかそっかー、まぁ、敢えてこれ以上追求はしないでおこうかな。えへへー」

「……それだと助かる」

 小町がにへっと笑って顔を離して、やっと一安心する。

「今度めぐりさん、家に招待してよ」

「ん、まあ、気が向いたらな」

「じゃあ連絡しとくねー」

「あれ、俺のタイミングとか考慮してくれないの?」

 俺に頼んだ意味ねぇじゃねぇか。

「? なんで?」

「すげぇナチュラルに人権を踏みにじるよな」

「そんなことないよー、うん、ぜーんぜん…………うん」

「もうちょっとちゃんと言葉を続けろよ。全くフォローになってねぇじゃねえか」

「えーと、めぐりさんの連絡先は……」

「待て待て待て、早い早い早い早い」

 心の準備が一切整ってないっての。

 

 ――こんな会話を交わしながら。

 兄妹の朝は、穏やかに過ぎた。

 

       ×  ×  ×

 

 数時間後。

 昼ごはんを軽く食べて、前回と同じ公園でめぐり先輩を待っていた。気温が一日の中で最も高くなる時間帯だからか、前回待ち合わせた早朝に比べると流石にかなり暖かい。正確に言えば寒くないという言い方になるが、それでも相対的にかなり暖かく感じる。春に近付いているというのもあるのだろう。

「あ、いたいた。比企谷くーん」

「ども」

 めぐり先輩が俺を見付けて、穏やかに手を振りながらとてとてと歩いてきた。会って早々既に可愛い。

「ごめんね、待った?」

「いえ、今来たばっかりどころか、もはや先輩が先に来てたまであります」

「? あはは、比企谷くんは面白いなー」

 むぅ。

 軽くボケてみたが、今日は不発だったようだ。めぐり先輩ももう少しテンションが高かったら良い感じにツッコんでくれるんだけどなぁ。まあ、可愛いから何でも良いけど。何でも良いのかよ。

「それじゃあ、早速行き――」

 話しながら2人とも歩き出すと、互いの手と手がちょんと触れた。

「……あ……」

 どちらが漏らしたのか、あるいはどちらも漏らしたのか分からない程の、ささやかな声。

 めぐり先輩が、周囲を気恥かしそうに見回す。

「……その、今暖かいし、しばらくしたら手に汗かいちゃうだろうから……最初だけ、ね?」

「……はい」

 めぐり先輩がそっと差し出した手を、そっと握り返す。やっべ俺幸せすぎるでしょこれ俺爆発するべきかなこれで俺は過去の俺にさよならするんだいやでも過去の俺も誇るべき自分なんだからさよならするというのは過去の自分にかなり失礼だよなあはは俺ったらもうキャラを見失ってるじゃんしっかりしろよな……等という、しっちゃかめっちゃかな思考が頭を駆け巡る。

「じゃ、行こっか」

「はい」

 右手に優しい温もりを感じながら。

 めぐり先輩と、歩き始めた。

 歩くペースは段々上げるから、最初だけね、最初だけ。

 

 

 

 続く。




久しぶりの非エロでした。最近どのエピソードもエロに次ぐエロで精気を吸い取られつつあったので、めぐりん編で非エロ日常回を挟もうと思います。最近書いてなかったシチュエーション(日常部分)を書いてみようかと思います。楽しみ。
めぐりん編、50話くらい行きそうな勢いです。

木曜日も頑張りましょう!
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。