※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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 めぐり先輩の二の腕をむにむにした後、彼女がお菓子を持ってきてくれるのを待ってしばしぼーっとする。

 や、この言い方だとお菓子を待ち望んでるみたいに見えるけど、単純に気もそぞろってるだけだ。そぞろってるって何だよ。

 

「…………」

 

 自分の手をじーっと見る。

 これで「まだ……足りないか……」とか呟くと一気に厨二感が増す気がする。

 以前、材木座と「如何にして厨二っぽいセリフを言えるか」大会をサイゼでやったところ、我ながら引くくらいに盛り上がった。そして周りの客及び店員に物凄い冷たい目で見られた。

 ちなみに俺は過去の記憶とアニメとラノベを基に考えて言うのに対して、材木座はほぼ呼吸をするくらいの自然さで厨二台詞をぽんぽん出してきたため、ものの見事にあいつの圧勝だった。

 流石、由比ヶ浜に中二と呼ばれるだけはある。

 ……ヒッキーなどと言う俺の呼び名もそうだけど、あいつの考える呼び名って悪意無き悪意って感じでむしろ何よりも恐ろしい。

 

「お待たせ」

 

 めぐり先輩がお盆を持ってとてとてと戻ってきた。

 ソファの前のテーブルにお盆を置くと、中には形の良いクッキーがぎっしり詰まっていた。

 

「……ん?」

 

 ……何だろう、置いた場所若干遠くない? 

 これだと取ろうとしたらいちいち腕を伸ばさないといけないんだけど……。

 

「…………」

 

 お菓子の配置に違和感を覚えていると、めぐり先輩がクッキーを1つ取って、手の中のそれと俺の顔を交互に見ている。めっちゃ凝視している。

 あ、俺を見た。ぎこちない笑顔。い、いかん、来る!

 

「ひ、比企谷くん……あ、あーん……」

「…………」

 

 手をぷるぷるさせながら、めぐり先輩が笑顔で口元にクッキーを差し出してくる。

 カフェでは恥ずかし過ぎて避けたんだけど、ここで避けるのは流石に……。

 ……でも二人きりと考えると余計恥ずかしい……! 

 てかこの人、俺が自分でクッキーを取るのが面倒になるように遠くに置いたの? 

 何その愛らしい小細工? 可愛すぎるでしょ。

 数秒の間に夥しい程の逡巡を終えて、静かに悟りを開く。

 

「……………………あーん」

 

 悟りを開いた割に物凄く戸惑いながら、ゆっくり口を開ける。

 めぐり先輩の手が、おずおずと伸びた。

 

 あむっ。

 むぐむぐ。

 ごくん。

 

「……美味しい?」

 

 めぐり先輩が微かに俯いて、上目遣いで問うてくる。アンデッドを浄化させる癒しの光の威力がやばい。

 

「……美味いです」

 

 目を逸らして答えると、めぐり先輩は嬉しそうに小さな声で「良かった……」と呟いた。

 ……んん?

 

「……えと……?」

 

 店で売っているお菓子ならこんなリアクションするか……? と思っていると、めぐり先輩がたははと笑って頬に手を当てた。

 

「……そ、その、作ってみたん、だけど……昨日」

「……え、あ、そうなんすか。凄いっすね、美味いです……って、え?」

 

 え、これ手作りなの? ……ていうか、昨日? なんで? 毎日作ってるのか?

 一体何が起きているのかがさっぱり掴めない。

 なんだこれ? 取り敢えず妙に恥ずかしいぞ? 何でだ?

 

「と、とにかく!」

 

 俺が頭の上にクエスチョンマークを乱立させていると(材木座が奉仕部に来て俺と話している時の、雪ノ下と由比ヶ浜と一色がいつもこんな感じだ)、めぐり先輩が無理矢理話題を切るように声を上げた。

 そしてクッキーをもう1つ摘まんで、俺の目の前におずおずと差し出す。

 

「はい、あーん」

「え……」

「……あーん」

 

 ちょっと。

 「食べてくれないの……?」みたいな悲しげな顔はやめてよぉ!

 拾って飼いたくなっちゃうまである。飼うって表現が色々とまずい。

 

「うぐぐ……あーん」

 

 観念して2つ目を口にする。

 

 あむっ。

 むぐむぐ。

 ごくん。

 

「……どうかな?」

「……これも美味いです」

「やった……ありがとう。それじゃあ次ね」

「え」

「あーん」

 

 この後、わんこクッキーの時間になった。ギブアップは認めてもらえませんでした。

 

       ×  ×  ×

 

「げふ……」

 

 クッキー地獄から十数分後。

 俺はソファでぐったりと寝転がっていた。

 量自体はそこまでひどくなかった。ゆうてクッキーだし。

 しかし同じ味のクッキーを間髪入れずに口に入れられ、苦しいっすという顔をするとこれまた間髪入れずに紅茶を飲ませてくれたので、何かもう色々としんどい。飲ませてくれたって言っておこう、彼女の名誉の為に。あの人はリアル紅茶タンクだったのか……。

 まあ、こんな状態でも食べ盛りの高校生なので、このままでもあと1時間もすれば回復するし、運動を挟めば夕飯時にはちゃんと腹も減るだろう。

 …………。

 

「……運動、か……」

「比企谷くん、運動がどうしたの?」

「すいません激しくなんでもないですすいません」

 

 めぐり先輩がクッキーや紅茶を片付けて戻ってきた。

 何で俺はあのワードを呟いたんでしょうまるで分かりません。

 めぐり先輩は寝転がる俺の頭のすぐ横に座ると、呻く俺のおでこを柔らかな手で撫でてくれた。柔らかな手の温もりに、自然と頬が緩む。

 

「……ごめんね? 嬉しくてつい……」

「……や、大丈夫ですよこれくらい。運動すればすぐです」

「運動?」

「あ、や、何でも無いです」

 

 頭のすぐ上にめぐり先輩の太腿があるという状況の為に気が気でない。何なのこの甘い匂いは。こんなこと考えてるけど俺は断じて変態じゃない。

 口を滑らせて目を泳がせていると、めぐり先輩が身体の向きを変えて、俺の顔を上から覗き込んできた。

 

「比企谷くん、さっきも運動って言ってたよね? それって何のこと? どうしてそんなにこの話を避けようとするの? 別に運動自体は恥ずかしいことじゃないよね?」

 

 めぐり先輩が、優しくも気の強いしっかりした姉のような口調で問うてくる。

 何でも知ってるんですねって言った場合の返しが気になる。や、そうじゃなくて。

 

「や、えーと、その……っ?」

 

 これを直接答えたら絶対気まずくなるし、どうしよう……四股踏みとか言って適当にごまかそうかなぁ、バランスボールとか言っときゃ良いかなぁ、めぐり先輩がバランスボール乗りながら「よっ……ほっ」とか言ってる光景を見たら和みすぎて来世に直行しちゃうなぁ……などと考えていると、めぐり先輩の顔の……すぐ下の部位に目が行った。

 瞬間的に目を逸らして、そろりと声をかける。

 

「あー、えーっと、先輩、その……」

「? 比企谷くん、どうした……の……」

 

 事態に気付いためぐり先輩の顔が、見る間に赤く染まる。なんだか仮装大賞の採点を思い出した。超どうでもいいな。

 めぐり先輩が着ているのは白のワンピースとピンクのカーディガンで、立ったり座ったりしている分には気になっていなかったけれど……今のこの体勢だと、見えてはいけないものがちらりと見えてしまっている。

 

「あわわ……うぅ……」

 

 めぐり先輩が固まったまま目をきょろきょろさせて口をもにゅもにゅ動かす。

 死ぬほど可愛いけど、こんな恥ずかしい指摘をしてしまったのは申し訳ない。

 一刻も早く体勢を戻してください……と祈っていると、めぐり先輩が落ち着いたのかふぃーっと息を吐いて、どこか艶のある笑みを浮かべた。

 

「……見ても、良いよ?」

「……え……?」

 

 あまりに予想外な言葉に、言葉を失った。

 

       ×  ×  ×

 

 ――言葉を失った……とは言いつつも、めぐり先輩の言葉を聞いて、俺は仰向けのままでいることを良しとせず、満腹感に呻いていたことも忘れて、神速で起き上がってめぐり先輩の横に正座していた。

 俺ってこんな速く動けたんだな。火事場の馬鹿力ってやつだろうか。違うな。

 

「ひ、比企谷くん……?」

 

 俺の余りの変貌ぶりに、めぐり先輩が存分に戸惑っていた。引いていないだけマシというものだ。

 俺のテンションはあの緊迫した状況下でのめぐり先輩の思いがけぬ言葉により、完全に振り切れてしまっている。童貞みたいだ。童貞だけど。

 

「……見て、良いんですよね?」

 

 あまり声がぎらつかない程度に抑えながら聞くと、めぐり先輩が「う、うん……」と戸惑いながら頷いた。

 ……ほんの十数秒前に自分で言ったことを繰り返すのが躊躇われるくらい、今の俺はウザいテンションなんだろうか。

 腕を組んで、熟考する。

 めぐり先輩の胸を見て良いという、今のこの状況について。

 ――この言葉の、何と甘美なことか。

 めぐり先輩の胸を見るということはそれ即ち天使の胸を見るということ。そしてそれ即ち戸塚のごめんなさいなんでもないですやり直し。

 ……めぐり先輩は見ても良いとは言ってくれたが、どの程度まで許してくれるのかまでは言及してはいない。

 なので、さっきの状況――所謂胸チラという状況までは少なくとも許可されていると見るのが妥当だろう。

 ……よし、決めた。

 

「……これなら負けない」

「何に!?」

 

 めぐり先輩の強めのツッコミが返ってきた。

 正座を解いて、ソファの背もたれにもたれかかる。

 ふひー。

 

「……先輩」

「……な、何かな? 比企谷くん」

 座っている俺の脚と脚の間を指差す。

「……ここ、座ってもらえますか?」

「え……?」

 めぐり先輩が、期待を孕んだ声で返事を……とはいかなかった。

 心底戸惑っちゃってる。どうしようごめんなさい。

「あ、すいません、ここ座ってもらえますか? きついのならやんなくて良いんで」

 頭をがしがし掻いてポップめに言い直すと、めぐり先輩はどこか安心した表情を浮かべた。

 数秒前までの俺、猛省。

「あ……ううん、きつくなんてないよ? ……わかった」

 まだ戸惑いは見せながらも、めぐり先輩が柔らかな微笑みを浮かべる。

「……っ」

 

 俺の前に立って、小ぶりで可憐なお尻をこちらに向けたとき――どうしようも無い程の劣情と、この人にこれからこんなことをして良いのかという迷いとが、胸の中で同時に湧き起こった。

 

 

 

 続く。




めぐりんでした。

☆☆祝・100万字達成☆☆
これはただの字数ではあるんですが、一つの大きな区切りかなと。1話1話の字数が少ないので、この字数に達するのに253話かかりました。
これからも頑張ります。どうぞよろしくお願い致します!

それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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