肩を揉む手に込める力を突然強くしたり弱くしたり、揉む場所を急に変えたりして、どんどんかき乱す。
雪ノ下はその度に身体をびくんと震わせ、右手で必死に押さえ込んでいる口から艶っぽい声が漏れる。
その度に、俺の頭の中で理性の糸が焼き切れて行く感覚がした。
再び、陽乃さんの言葉を思い出す。
「敏感な雪乃ちゃんはねー、本当に弄りまくると段々抵抗しなくなって、すごく従順で可愛らしくなるんだよ?あんまり色っぽい声と表情になるもんだから、私中1で何かいけないものに目覚めちゃった!あ、耳フーとか背中ツツーとかやるともうたまんないよー!」
「…あの、鼻血止まらなくなるんでもうその辺で…」
「やだーもう比企谷くんったら!目が腐ってるのにピュアなんだからー♪」
「褒めるのとdisのをセットにするのやめてくれますか…どこぞの氷の女王を思い出すので…」
…あの人、小4の雪ノ下に何してんの?バカなの?魔王でしたね。
「…」
陽乃さんの言葉を思い出して、雪ノ下の背中をつつっとなぞってみた。
くすぐったがる人が多いいたずらだ。多少のリアクションでは動じまい。
そう思っていた。
「…~~~!!!」
予想を、超えていた。
雪ノ下は、声にならない悲鳴にも似た喘ぎ声を上げた。
生まれて初めて聞く、生身の女性の嬌声だった。
背筋を一瞬弓なりに反らせて、その直後にぐっと屈みこんでぶるぶると震えている。
背中越しに見ているだけで、ぞくぞくした。
こうなってくると、どんどんと試してみたくなる。
一度下ろした指を今度は上げるようにして、先程とは逆の軌道で雪ノ下の背中をなぞる。
面白いようなびくんびくんと跳ねて、声を漏らす。
あの雪ノ下が、こんな声を出すなんて。
嗜虐心がどんどん芽生えて来た。
ふと、どんな顔をしているのだろうと思い、首を伸ばして雪ノ下の顔を覗いた。
「…!!」
急に自分の顔を見られたことが余程恥ずかしかったのか、顔をかぁっと赤らめる雪ノ下。
右手は口に添えられたままだった。
その隠された口に、興味が湧く。
彼女と口を覆っている右手を、同じ右手で引き剥がした。
「…え…あ…?」
雪ノ下は甘えるような、戸惑う声を上げた。
そして、左手の中指と薬指を彼女の口にゆっくりねじ込んだ。
「んんっ!?…んっ…んむっ…」
一瞬だけ驚きを見せるも、すぐさま指を迎え入れ、それどころかアイスキャンディーでも舐めるかの如く舐め始めた。
予想に反して、どころではない従順な反応だった。
耳も…と思い、右手を雪ノ下の右耳に、そして口を左耳に近付ける。
そして、右耳をさわさわと触り、左耳に息を吹きかけるのを同時に行った。
その瞬間、雪ノ下は目を、見開いた。
声を上げんとする瞬間に、俺の左手を雪ノ下は両手で掴み、更に深く咥え込んだ。
そして涙を目にためながら、荒い息遣いをしたままぶるぶると震えている。
もう止まらなくなり、今度は息を吹きかけるだけでなく、左耳の中に舌をねじ込む。
雪ノ下の口にねじ込んだ指は、口内に居る舌を絡め取るように動き回らせる。
目にためていた涙をぽろぽろとこぼしながら、雪ノ下はうーっ、うーっとずっと呻き声を上げていた。
そのやりとりをどれくらいしていただろうか。気付くと、雪ノ下は疲れ果てていた。
肩で息をしているのが分かり、汗でワイシャツはほとんど透けてしまい、ブラがはっきりと見てとれた。
二人の荒い息遣いと、呑気に寝ている由比ヶ浜の寝息が部室に響く。
雪ノ下が、顔を上げて俺と目を合わせた。
上気した頬、潤んだ瞳、半開きの口。
抵抗など、する気配がまるで無かった。
俺は、左手を雪ノ下の口から引き抜くと、両手をそっと彼女の胸へと伸ばした。
「…ん、う~ん…」
「「!!」」
俺の手が今にも雪ノ下に触れそうになったところで、由比ヶ浜が今にも起きそうな声を上げた。
その瞬間、俺と雪ノ下は極めて素早く体勢を元に戻した。
指には、雪ノ下の唾液がまだくっきりと付いている。
「ん…あれ、私、寝ちゃってた!?ってあれ、ゆきのんが膝枕!?え、あれ、ええ!?」
事態を順々に把握して行く由比ヶ浜。全く呑気なやつめ。
「比企谷くんのマッサージの途中で寝てしまったのよ。邪魔するのも悪いから、この体勢にしておいたの」
雪ノ下は冷静に話した。
その首筋に、かぶりつきたくなったのをぐっと堪えた。
「あー、そうだったんだー!ごめんね、ありがとう!って言うかもうこんな時間じゃん!今日はもう無理だねー。せっかくだから明日もやんない?」
「…え、ええ、構わないわ」
「ああ、まあ、別にいいぞ」
「やった!じゃ、また明日もやろうねー!」
元気な由比ヶ浜と、まだ先程までの余韻が残っている俺たち二人は、いつも通り帰り支度をした。
「あ、私今日は優美子と姫菜とこの後買い物行くんだった。ごめん、先に行くね。また明日ねー!」
「ええ、また明日」
「じゃな、また明日」
由比ヶ浜が急ぎ足で、特別棟の廊下を駆けて行った。
廊下に二人がぽつんと残された。
何を言ったら良いものかと思っていると、雪ノ下が俺の袖をくいっと引っ張っている。
そっちを向くと、上目遣いでぽそりと言った。
「…出来たら、その、今度、私の家で…また、肩を揉んでもらえるかしら?その、最近はパソコンでの作業も多いから…」
そう言って目をふいと背けた。
え、何この可愛い生き物?おかしいな、俺の中でのWBC・WBAチャンピオンは小町と戸塚だったのに…今度はIBFにこいつが?そんなまさか。いやでもちょっとこれは可愛過ぎる、どうしよう。
「…肩揉み、だけで…良いのか?」
おい、俺何言ってんの?今までの経験はどこに行ったの?ちょっと?このセリフはバッドエンドと言うかデッドエンドしか見えないよ?
すると、俺の袖を掴む手が、今度は俺の手を直接握って来た。
「それは…その時の雰囲気に…よりけり、かしら…」
あれ、予想に反して。
顔は俯いていて表情は分からない。
だけど、絶対真っ赤だ。俺の数学の成績が学年最下位なことより確信出来る。比較対象が辛い。
「…ああ」
阿呆みたいに少ない字数で答えてしまった。
特別棟から出るまで、そのまま手を繋いでいた。
その後は、人に見られては恥ずかしいと互いに思ったのか、自然と手を離した。
このまま別れるのが何となく惜しくて、雪ノ下の家の近くまで送る。
家の近くまで来ると、雪ノ下は少し寂しげに振り向いた。
俺と同じ気持ち、なのだろうか。
もしそうだったら、嬉しい。
「じゃあ、ここまで来れば大丈夫だから…」
「ああ」
「…」
さて帰るか…と思ったら、雪ノ下が俺の手を握って来た。
心臓が、どくんと跳ねあがる。
「…また、明日」
今までで一番優しく、可愛らしい笑顔だった。
「…ああ」
また阿呆みたいに少ない字数で答えてしまった。俺が今日の雪ノ下と交わした会話、Twitterの字数で言ったら5ツイート以内に収まるんじゃないだろうか。
そんなくだらないことを考えながら自転車をこぐ帰り道。
…いっけね、今、絶対にやけてる。
初めてだぞ、明日を楽しみにする感覚。明日を憂鬱に思う気持ちなら年中抱えてんのに。
ああ、家で小町にまたごみいちゃんって罵られる。
お終い。
こんな感じで、思い付くままに書いて行こうと思います。
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!