「……比企谷くん」
「何でしょう」
「……君って、変態だね」
「そうですよ?」
「全く否定しないんだね!?」
こんな呑気な会話をしているけれど、状況は中々シュールである。
今俺は、めぐり先輩に膝枕をしてもらっている。
……お互いに、全裸で。
さっきの行為の後、俺は射精の余韻でへとへとになりながらも、めぐり先輩と一緒にシャワーを浴びることを希望した。
しかしめぐり先輩は、
「今日これ以上恥ずかしいことしたらわたし死んじゃう!」
と真っ赤な顔をして早口で言って、別々にシャワーを浴びることになった。まあ断る時の表情が死ぬ程可愛かったから許すとしよう。俺何様だよ。まあ、「今日は」という言い方をしていたから、明日また頼むとしよう。どんだけ癒されるか分かったもんじゃない。
そして、一緒にシャワーを浴びないのと交換条件で、全裸膝枕と相成ったのである。何でこの取引が成り立ったのか甚だ疑問ではあるが、幸せなので気にしない。
「……こっちの方が恥ずかしい気がするんだけど……」
めぐり先輩の太ももがぷるぷる震えている。俺は今、誰かに撃たれても文句は言えない気がする。
「……だめですか?」
少しだけ悲しそうに言うと、柔らかな手の平がおでこに乗せられた。
「……ふふ、もう。大丈夫だよ、これからもこういうこと、いっぱいさせられそうだから……慣れないとね」
「……っ」
女神のような笑顔に撃ち抜かれて。
しまった、やられたと思った。
この人のこんな可愛い顔にやられたら、とても叶わない。
……。
よし。
もっと調子に乗ろう。
「……女神のようなめぐり先輩」
「……なぁに、その言い方。どうしたの?」
褒めちぎりつつ呼んだら(俺にとっては誇張でも何でも無く、ただの事実なんだけども。今はそこをいくら熱弁した所でめぐり先輩に笑われてしまうだろう)、めぐり先輩は穏やかな表情で微笑んで、俺のおでこをゆっくり撫でてくれた。
めぐり先輩の手を掴む。
「あのですね、よろしければ……」
「え、え、え……?」
言いながら、その手を自分の下腹部に招いていく。めぐり先輩は俺が何を望んでいるのかに気付くと、頬を赤らめて眉根を寄せた。
「……比企谷くんのエッチ」
その言葉で、下腹部がびくんと反応した。
めぐり先輩の手がそろりと俺の股間に伸びる。俺はめぐり先輩の手と顔を交互に見つめる。めぐり先輩は頬を朱に染めながらも、肉竿をきゅっと握った。
「うっ……」
細い指が絡まっただけで、たまらない愉悦が訪れる。
「……気持ち良いの?」
めぐり先輩は艶っぽく目を細めると、ゆっくり手を上下にしごき始めた。しゅるしゅると肉肌を撫で上げる、滑らかな指の質感が心地良い。自分でする時よりも明らかにゆっくりとした動作にも関わらず、腰がびくびくと反応してしまう。
「あん……」
目の前に実っている二つの房に触れると、めぐり先輩は色っぽい吐息を漏らした。艶めいていながらも母性に溢れた表情に、興奮は高まるばかりだ。
「あ……ふふ、比企谷くん、エッチな音してきたよ?」
めぐり先輩の言葉にどきりとする。気付けばめぐり先輩の指と肉棒の間で、にちにちといやらしい音が立ち始めている。時折人差し指で鈴口をぴとぴとと触れられる度、頭蓋から蕩ける程の愉悦が込み上げる。
反撃の意味を込めて乳頭を摘まんでみるが、
「あぁん……ん……っ、ふふ、だーめ。今はわたしが比企谷くんを気持ち良くしてあげるんだから……ね?」
反撃を止められる訳ではないが、今はそんなことをしても形勢は逆転しないということを告げられた。
徐々に近付く限界に身体を震わせていると、めぐり先輩がふわりと微笑んだ。
「比企谷くん……こうしてると、赤ちゃんみたいだね」
「……死ぬ程恥ずかしいんですけど」
こんな目が腐った赤ん坊がいてたまるか。
俺が目を背けると、めぐり先輩が俺のおでこを撫でた。
「ふふ。……それじゃあ……これは、どう?」
「え……うお……っ?」
少し恥ずかしがったような声が聞こえたかと思うと、目の前に乳房が迫ってきた。めぐり先輩はどうやらわざわざ上半身を屈めたらしい。
「比企谷くん……どうぞ」
上ずった声で言いながら、肉棒をしごく手の動きを速める。
「うぐ……っ」
もうじき訪れる限界を悟り、射精欲に意識が集中する中でめぐり先輩の乳頭に吸い付く。こんなことをしても恥ずかしさに拍車がかかるだけなんだけど、射精直前だというのに意外と心は落ち着いた。
「んんっ、ふぅぅ……比企谷くん、比企谷くん……っ」
俺に乳首を舐め転がされながら、めぐり先輩が愛おしそうに俺の名を呼ぶ。細い指と肉棒が立てる音が益々大きくなり、にちゃにちゃという音が互いの官能を高める。
「んむっ……ぐぅ……っ」
自分の口から洩れる呻き声が、間もなく訪れる下半身の決壊を伝えてくる。
限界が訪れる瞬間。
俺は、声を上げて限界を知らせる代わりに、めぐり先輩の手を握った。めぐり先輩が握り返してくれたのを感じた瞬間に、身体の奥底から心地良い欲望の奔流が込み上げてきた。
「――――――――っ」
めぐり先輩の手の中で、白濁の爆発が起きる。
「わっ、わわっ、わっ……すごい……あっ、あんっ、もう、こらぁ……っ」
脈動を続ける間も乳頭に吸い付いていると、めぐり先輩が困ったように笑った。
× × ×
「はぁぁ~~……これ、すごく気持ち良いよ」
「……それなら良かったです」
あの後、俺はあまりに沢山の量を出したが為に、もう一度シャワーを浴びた。試しにと思ってめぐり先輩を誘ったが、「今度ちゃんと一緒に入ろ……あ、な、何でも無い」と言われた。どうやら相当しっかりと一緒に入ってもらえるらしい。今日は駄目のようだが、今後が楽しみだ。ものすごく。
そして、現在。
今度はめぐり先輩のリクエストを聞くことになり、二人ともきちんと服を着た上で、俺がめぐり先輩を後ろから抱きしめる体勢をとっていた。二人ともベッドに座り、俺が背中を壁に付ける形だ。中々の安定感である。
めぐり先輩の頬は緩みきって、俺が回した腕に顔をうずめている。もうちょいしたら「ほふにゃ~ん」とか言いそうだ。言わないか。でも言ってほしい……。
「……もうすぐ卒業かぁ」
「……そうですね」
めぐり先輩の言葉に、胸がきゅっと詰まる。
今は同じ学び舎にいても、間もなく、次の春が来れば俺たちは離ればなれになる。
「先輩はここから通うんですか?」
先輩が推薦で合格を決めた大学は、ここから結構近いはずだ。宅通をしようと思えば出来る距離ではある。
俺の言葉に、めぐり先輩は「んー……」と、考え込むように小さな声を漏らした。
「最初はそのつもりだったんだけど……つい最近、一人暮らししようってことにしたんだ」
「え、そうなんですか?」
めぐり先輩の発言を嬉しく思いつつも、それ以上に驚く。めぐり先輩は何やら恥ずかしそうに俺に流し目を送ってくる。
「そ、その……今みたいな距離ならまだしも、これから大学に行って、しかもわたしが実家暮らしじゃあ……あんまり、一緒にゆっくり出来ないでしょ?」
「え、あ、そ、そうですね」
何だろう、すごい勢いで心拍数が上がっていく。確かに、大学一年生と高校三年生では、新しい生活と受験勉強が重なって中々時間が合わない気がする。
「だから、その……両親には迷惑をかけるけど、ずっと実家に居る訳にもいかないから、一人暮らしの練習をさせてって言って……引っ越すことにしたの。大学からも近くて、ここからもすぐ行けるくらいの距離のマンションに」
「……マジですか」
「うん」
セキュリティがちゃんとしてなきゃ、不安で住まわせることが出来ない――っていうのが両親の意見でね、とめぐり先輩が笑う。確かに、年頃の女の人が一人暮らしをするなら、相応のセキュリティが必要になるだろう。
だから……と、めぐり先輩が俺の腕をきゅっと握る。
「その……いつでも泊まりに来て良いよ? もちろん、お互いが負担にならない程度に……ね?」
「……っ、は、はい……っ」
溢れ出す喜びに、転げ回りそうになった。思わずぎゅっと抱きしめると、めぐり先輩は「あう……」と恥ずかしそうに呻いて、潤んだ瞳でこちらを見つめた。
「ん……っ」
唇を合わせると、たまらない幸せが溢れ出してくる。めぐり先輩も同じ気持ちなのか、穏やかな瞳で俺を見つめている。
「俺、頑張ります。大学生活で疲れためぐり先輩の為に料理も掃除もしますし、何ならマッサージもします」
主夫をする気満々の発言をしてしまった。
「そ、そんなに? あはは……でも、本当に嬉しいな、そうしてくれるのって」
若干の苦笑いを浮かべながらも、めぐり先輩は幸せそうに目を細め、俺の頬に手を添えた。
「それに……その、めぐり先輩の家に泊まれるなら、色々出来ますしね」
頬をかきながら、視線を明後日の方向に向けながら呟くと、めぐり先輩の顔が一気に赤くなった。
「……比企谷くんのエッチ」
「……そうですね、俺は相当ですよ」
「比企谷くんは、どうして私にそういうことをしたいの?」
「え……」
めぐり先輩がいつの間にか、いたずらっ子のような表情を浮かべている。
「え、や、その……それはですね……」
理由は性的欲求ですとか言ったらすげぇ冷たい目で見られそうだ。どう答えれば良いんだろう。
「わたしのことをどう思ってるから、そういうことをしたいの?」
「うぐ……」
そういう方向か。ちくしょう、急に恥ずかしくなってきた……!
「比企谷くん? ……聞かせて?」
「うぐぐ……」
諦めの嘆息を一つ。
ふいー。
こうなりゃ開き直るしかない。
めぐり先輩の細身の体を、優しく抱きしめる。
「……好きだから、です。ああもう、好きですよ、大好きです。だからもう、たくさんエロいことしますから。ありとあらゆることを、めぐり先輩が喜ぶ範囲でがんがんしちゃいますからね。覚悟しておいてください」
「……っ」
俺がまくし立てた言葉に、腕の中のめぐり先輩の身体が一気に熱を帯びる。
「……比企谷くん。やっぱり君は最低だね」
「……っ」
そう言いつつもめぐり先輩の表情は、眩しいくらいの笑みを浮かべていて。いつか同じ言葉を言われた時とは、二人の関係が明らかに違うんだという実感が湧いた。
「……そうです。最低ですよ、俺は」
「……ふふ、でも大好きだよ」
「うぐ……」
面と向かってのカウンター攻撃に悶える。
「うぐ……お、俺も好きです」
「……わたしは、『大好き』だよ?」
「うぐぐ……」
え、まだ言わせたいの? 鬼なの?
「……大好き、です」
「アイスが?」
「だからなんで!?」
「つーん」
何でこの人、口に出してこのフレーズを言うんだろう。死ぬ程可愛いから今後も継続して頂きたい。
顔を逸らして、咳払いを一つ挟む。
「めぐり先輩。あなたのことが、大好きです」
「……えへへ、嬉しい」
めぐり先輩ははにかんだかと思うと、もぞもぞと身体の向きを変えた。俺と正面から向かい合って、真っ直ぐに見つめてくる瞳はどこまでも優しい。
「比企谷くん」
「はい」
「卒業しても……ずっと一緒にいたいです。……いいかな?」
「……ぜひとも。こちらこそよろしくお願いします」
「えへへ……嬉しい。ありがとう。大好きだよ、比企谷くん」
「俺も大好きです、めぐり先輩」
好きという言葉がすんなりと口から出て、慣れとは怖いなと思いながら。
めぐり先輩と抱きしめ合って。
「……んっ」
優しく唇を重ねる。
この先、どんなことが待っているか分からないし、大変なことはそれこそ山のようにあるんだろうけれど。
「……ぷはっ。えへへ……」
「……」
目の前で向日葵みたいに笑うこの人となら、そんな道程も楽しめるんじゃないか――そう、思えた。
実際に過ぎた時間の割に、やたらと濃密に覚えた日々も、これにてお終い。
新たな物語が。
いや、物語と言う程でも無い、何気ない日常が。
これから、ゆるりゆるりと、始まる。
「比企谷くん。……泊まってく?」
「……ぜひとも」
――そう。
いつだって、城廻めぐりは見てくれている。
お終い。
うわあああああああ終わったあああああああ
そんなこんなで、「いつだって、城廻めぐりは見てくれている」最終回でした。
全54話。文庫本だと(計算が間違えてなければ)少なくとも400ページ分くらいになりました。
このエピソードを始めたのが7ヶ月前で、まだこの作品を書き始めて3ヶ月も経っていない頃でした。同時並行で書いていたエピソードは、単発企画も含めれば15個。それらを書いていた間、ずっとめぐりんが常に頭の隅にいました。連載中にめぐりんの誕生日を迎えたのは偶然でしたが、それに合わせて本番突入シーンを書けて良かったです。
最初はアフターを書く気は無かったんですが、終わり際に書いていためぐりん大学編を書いてみたくなりました。時期で言うと今のいろはすやルミルミと同じ辺り、八幡が3年生になって少ししたくらいかなと。
めぐりんは書く度に癒されていました。原作で出番が多くない分、じっくり書こうと思ったら……初キスが第19話という(確認しました)。そしてそこからも……いやはや長かった……。何気にオリジナルモブキャラが一番活躍したエピソードでもありましたw
いくらでも書けるキャラなんだなと、しみじみ思いました。
ここ数ヶ月はめぐりん編だと感想が少なくなっていたので、常連の方も通りすがりの方もお久しぶりの方も、がんがん書いていってくださいませ!テンションを上げたいです!めぐりんと八幡(と僕)にお疲れ様のメッセージを!ぜひ!
今日から2月。皆さん、頑張って冬を乗り切りましょう。宜しければこの小説をお供に。
さて明日は誰を書こうかな……。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!