それではどうぞ、お楽しみください^_^!
(1)
妹である比企谷小町と一線を越えた。
その後の生活についての話なのだが、最初は如何に俺が迸る愛情を抑えるか苦心するんだろうと思っていた。
今までも散々妹可愛い小町可愛い小町は世界に誇れる妹いや世界の妹だなどと言っていたのだけれど、ひとたび今の関係になってしまえば、妹として注いでいた愛情が、妹兼恋人に注がれるものに変換されて、しかも同じ家に住んでいるのだから下手をすれば暴走気味になるのでは、そんな風に考えていた。
しかし。
結果で言えば、逆だった。
何が逆なのか分からんわこのボケがこらぁとか言われたらぐうの音も出ないです、ごめんなさい。
それで、まあ、結局の所。
俺がどうこうする以前に、小町がデレた。
別に今までツンだった訳ではないのだけれど、それにしても、これはやばいだろうと言うくらいにデレた。
どこぞのヒロインは最初はツンデレというかツンドラと言われ、その後改心するとツンデレというかツンドロなどと言われていたのだが、小町の場合、なんかもう、デレもドロも通り越して気化している勢いである。もうちょいレベルを越えたら次はプラズマ化するんだろうか。理系科目は全捨てしてる俺ではあるが、プラズマの存在はどこかで聞いた気がする。
そんな訳で。どんな訳だ。
冬のある日々を境にアレな関係になった俺と小町の生活ぶりを、いくつかのケースに分けてつらつらと報告してみようと思う。「いやー困ったわーでも小町可愛いから断れなくてねー」みたいなテイストで書くので、気が向いたらぶん殴ってくれて構わない。氷嚢でケアしながら俺はのろける。のろける。のろける!
× × ×
冬のある日。
いつも通り朝の戸塚を愛で、いつも通り授業を受け、いつも通り昼休みの戸塚を慈しみ、いつも通りに午後の授業(数学)を受け(寝て)、いつも通り部活に元気よく出かける戸塚を鼻の下を伸ばしながら見送り、そしていつも通り部活を終えて、家路に着いた。俺どんだけ戸塚好きなんだよ。
自転車をきいこきいこ漕いでいると、前方に見慣れた後ろ姿を発見する。
八九寺だ。間違えた、小町だ。別に小町はリュックキャラじゃないしツインテールでもないし、共通点はなんだろう、可愛いとこ? あとは……可愛いこと?
まあ、例の変態吸血鬼もどきさんよりも俺の方がよっぽどやばいことをしてるよなーなどと思いつつ、とてとてと歩いている小町に後ろから接近し、途中で自転車から降りてそろりと近付く。
「お疲れ」
「わひゃぁっ!?」
ごく自然に声を掛けたのだが、小町は盛大に飛び上がり、慌てるあまりにあわあわとよろけて、つんのめった末に俺の胸元にぽすりとうずまった。器用だなあこいつ……。
俺の胸元であたたと唸りながら、小町が顔を上げる。
おでこを手ですりすりと撫でながら、目にうっすら涙を浮かべている姿は何とも可愛らしく、なんだよこいつ抱き締めちゃうぞとか思った。既に抱き締めてるけど。
「お兄ちゃん、びっくりしたよー」
「おう、わりぃわりぃ」
ここで「挨拶代わりにセクハラしてこないお兄ちゃんなんて何の価値も無いのに」とか言ってきたらそれはもう盛大にツッコめたのだけど、まあそれはハードルが高すぎるというものだ。
――などと考えていたら。
「最近のお兄ちゃんなら、てっきり出会い頭にセクハラしてくるものかと思ってた。意外と大人しいんだね」
「お前は俺の心を読んだのか!?」
珍しく。
大声でツッコんでしまった。
小町はツッコミにより息を荒げている俺に対して、ほけーとした顔で「こいつ馬鹿なのかにゃー?」みたいな顔でこっちを見てくる。うう、やめろよ……俺にそっちの気はねえよ……たぶん。
× × ×
「お兄ちゃんも今帰りなんだ」
「ああ、小町は勉強してたのか?」
「そうそう。ちょっと塾の自習室でねー」
2人並んでぽてぽてと歩きながら、他愛も無い会話をする。
ぱっと見なら、まあ恐らく仲の良い兄妹に見えるだろう。そうじゃなかった場合は通報される未来しか見えない。何それつらい。
……しかし。
「……なあ、小町」
「うん? なあに?」
「なんですんごいナチュラルに手を繋いでんだ?」
そう。
小町は、会話の開始直後に極めて自然に俺と手を繋いできた。そのナチュラルさはまるで始業1時間前に会社に来て陰鬱な顔でPCを起動するサラリーマンのようである。なにそれどこのうちの親父だよ。
小町は俺の質問の意図が理解出来ないと言わんばかりに、不思議そうにくりんと首を傾げる。なんだお前超可愛いな。
「うん? ダメなの?」
「や、ダメっていうか、その……」
恥ずかしい。超恥ずかしい。
なんでこの子、堂々と恋人繋ぎしてきてんの? なんでしゅるしゅると指を動かして愛おしそうに俺の指を撫で回してくんの? やめてよぉ! 死んじゃう!
冬の冷たい外気に晒されているというのに、やけに顔が熱い。
電柱に書かれた落書きを見て「もうちょい面白いこと書けよ、センスねえなあ……」などと悪態をついて気を紛らわせていると、小町が手を握る力をきゅっと強めた。
そして少しおどおどした様子で、上目遣いでこちらを見つめる。
その瞳はしっとりと濡れていて、切実な感情を纏っていた。
「……だめ?」
「いやもう全然問題無い超大歓迎だぞ」
「よっし」
妹のおねだりに瞬殺される兄と。
KOしたと見るや瞬時に素に戻る妹。
なんだこいつら。自分のことだった。
× × ×
しばらくゆっくりと歩いていると、やがて広い公園の前を通りがかった。
既に日もとっぷりと暮れて、真冬の寒々しい宵闇が辺りを包んでいて、当然の如くその公園にも人影は無かった。
「…………」
不意に、ぴたりと。
手を繋いでいた小町の動きが止まり、俺もそれに合わせて立ち止まった。
振り向くと、小町は俯いていてどんな表情をしているのかが見えない。
「どうした」
尋ねると、小町はゆっくり顔を上げ、にへっと笑った。
苦笑いのような、それでいて蠱惑的にも思えるその笑みに、どきりとして心臓が跳ねる。
学校に居る間は(主に戸塚のおかげで)忘れていた感情と情欲が、不意に頭をもたげた。
「ちょっと……寄り道して行かない?」
公園に視線をやってそう言うと、俺の返事を聞きもせずに俺の手をくいと引っ張って歩き出した。
「お、おい、ちょっと……」
片手で引っ張っていた自転車を倒さないようにしながら、俺はなされるがままに付いて行った。
× × ×
「ここなら……大丈夫かな。お兄ちゃん、自転車その辺に止めて」
小町が連れてきたのは、公園の幾分奥の方で、木や遊具により周囲から死角になっている所だった。
……こんな所に連れてくるなんて……。
こんな所にいる時点で、小町がやろうとしていることなんて限られている。
それは別にいやではない。むしろ大歓迎だ。
……でも、恥ずかしいなあ。
これからの展開に覚悟を決めながら、俺は数メートル離れた場所に自転車を止めた。
「お兄ちゃん、鞄ここに置いといたよ」
小町が指差した先を見ると、ベンチの上に俺と小町の荷物が並んで置かれているのが見えた。
「おう、ありがとな」
言って、いつもの流れで小町の頭を撫でようとして……その動きが止まった。
小町の表情が、明らかに、夜、家で2人きりの時に見るものだったからだ。
「お兄ちゃん、ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから……」
熱を帯びた声でねだるように囁くと、小町は俺に抱き付いてきた。
「え、や、おい、小町……っ!?」
普通そういうのを言うのって男じゃないのん? とか野暮なことを考えながらも激しく混乱していると、小町は俺のコートをボタンをいつの間にか外しに掛かっている。
俺のコートのボタンを全て外し終えると、今度は自分のコートのボタンを外す。
別に脱がせる訳でも、脱ぐ訳でもない。
ただ、ボタンを外すだけ。
それだけの行為、の筈なのに。
「お兄ちゃん……」
「……っ」
もう我慢の限界だとでも言いたげな、泣きそうな声で語りかけてくる。
その双眸に映る熱情が、ひどく心をざわつかせた。
小町が半歩、距離を詰める。
俺は自然に、腕を広げて小町を迎え入れる体勢を作る。
腕は、心なしか震えていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……っ」
今にも爆発しそうな欲求を必死で我慢しながら、小町が俺に抱き付いて来た。
続く。
突然の小町どーーーーーん。
筆休め(?)を兼ねて小町を再び。
パターン的には平塚先生パターンと同じでございます。イレギュラーに更新して行きます。
小町の登場率がえぐいですね。それだけ可愛くて良い動きをしてくれるんだなーと。
!!!☆祝・R-18小説累計ランキング3位☆!!!
驚異的なスピードです。皆さん、本当にありがとうございます。これからも何卒宜しくお願い致します。
今やこの小説がすっかり生活サイクルの中に組み込まれております。すごい話だ……。
頑張ります(^^)!!!
6月も終わりだというのに、雨続きの為かこちらは妙に寒いです。半袖だときついくらいに。皆さんもご自愛くださいませ。
それではまた1週間、頑張りましょーーー!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!