コートで陽乃さんを周りから隠したのは、単にこの痴態を見られたくなくて咄嗟に――と思ったのだけれど。陽乃さんの言葉で、その意志が大きく揺らいだ。
「ふふ……どこまで我慢出来るかな……えいっ」
「……~~~~っ!?」
陽乃さんの両の手が、股間のすぐ周りを妖しく蠢く。ゆっくりと周回しながら中心部に迫ってくるその動きに否が応でも期待してしまい、ジーンズの膨らみが更なる熱を帯びてしまう。
陽乃さんはその変化を見逃さず、くすりと笑う。
「あは……なぁに、そんなに興奮しちゃったの? 嬉しいなぁ……じゃあ、えいっ」
「――――――っ」
直前までの焦らす動きから一転して――陽乃さんは、膨らんで山になっている部分に10本の細い指を一斉に絡ませて、ぐにゅりと握った。
突然身体の奥底まで突き抜けた強烈な快楽に、身体がぶるぶると震えるが……今身体を大きく動かせば、きっと周りにバレてしまう。必死に堪えていると、陽乃さんがたまらなく幸せそうな顔をした。
「ああもう……君は本当に可愛いなぁ。……もーっとイジメたくなっちゃう」
ぞっとする言葉を言い放ったかと思うと、ジーンズのチャックに手を掛けた。
「っ!? ちょっと……っ!」
信じられない展開に小声で牽制すると、陽乃さんは人差し指を口に当ててチャーミングにウインクした。
「声出すと、せっかく気持ちよくなれるチャンスを逃しちゃうよ?」
や、それ、何もここでじゃなくても……って、そうじゃなくて!
「や、だから……って、う……っ!?」
チャックを開けるとそのままその中に手を滑り込ませて、パンツ越しに勃起した肉棒を握ってぎた。ジーンズの上からとパンツの上からとでは、与えられる快感の度合いがまるで違う。俺は必死で口をつぐんで、声を殺した。
「あはっ、すごい熱いねぇ……比企谷くん、良いもの持ってるじゃない。……じゃ、直接触っちゃおうか」
「えっ……」
戸惑いの言葉さえ口にする前に。
陽乃さんはチャックの中に手を滑り込ませたまま、その中でパンツをずり下ろし、反り返った肉棒を外気の下へ引きずり出して、亀頭を手の平に含んでぎゅっと握った。きゅっと、ではない。ぎゅっと、だ。
「~~~~~~~~っ」
あまりに甘美な快感に、コートを持つ手もぶるぶると震える。戸惑う余裕さえない。
「大丈夫。周りに見えないようにきちんと両手で隠すから……」
陽乃さんが耳に口を近付け息混じりで囁き、亀頭と竿をそれぞれの手で包みこんで、ぎゅっ、ぎゅっと握り込んでくる。
「うぐぁっ……ゆ、雪ノ下さん、さっき、ここで出すのはまずいって言ったんじゃ……」
自分の歯がかちかちと鳴るのを聞きながら、陽乃さんに尋ねる。すると陽乃さんはんーと小さく唸って、にこっと笑った。
「比企谷くんの反応がすごく可愛いから、予定変更しても良いかなって。大丈夫、本当にイク時は停車した瞬間に調整してあげる。そしたらすぐ逃げられるでしょ?」
「……っ」
心臓が凍り付くかと思った。
いっそ助けを呼びたいとさえ思ったが、陽乃さんが手さえ離してしまえば、傍から見れば俺はただ美女に興奮した露出魔にしか見えないだろう。詰んだ。
「さてさて、比企谷くんは綺麗なお姉さんにいたずらされると、一体どれだけ出しちゃうのかな……?」
助けて、マジで。
……これはもう諦めて、如何に早くこの車両から逃げ出すかを考えた方が良いかな……と絶望した気持ちでいると、電車が次の駅に着いた。
× × ×
もう大丈夫かと思ったが、ここに来てまさかの更なる混雑。
「ありゃー、まーた混んできたね。大変だー」
まるで他人事のように呑気な調子で陽乃さんが呟く。なんで俺のモノを雑巾みたいに絞りながらそんな平然と喋れるの? にちゅにちゅ音がしてんですけど。
「ところで比企谷くん……良いの? その体勢で」
「……しょうがないでしょう」
更に混んでから、俺はコートを掴んでいた手を離して、再び両手での壁ドンに戻っていた。乗客密度は更に上がったため、もはやコートで隠さなくても、俺の身体の目の前でいたずらをする陽乃さんの悪行は誰にも見えない。悪行って言っちゃった。
それに、理由はこれだけではない。
「……この体勢以外じゃ、雪ノ下さんに思い切り負荷がかかるんで……」
涼し気を装いながら(出来てないけど)言うと、陽乃さんが目をぱちくりとさせて、目を狡猾に細める。
「ふぅん……立派だねぇ。……これでも、まだ守りたいって思ってくれる?」
陽乃さんの捻じり込む手の動きが更に加速して、ぐっちゅぐっちゅという水音が更に増す。竿を掴む手は時折玉まで揉んできて、激しい快感の中にも柔らかい快感を混ぜてきて、更に快感が増す。
「あっ、うぐぁ……っ! ……そ、それでも、で、す……っ。女の人は男が守るものだって母ちゃんにしつけられてるんで」
答えると、陽乃さんは楽しげに笑う。
「……これでも?」
陽乃さんの身体に、他人も自分も触れていないぎりぎりの状態をキープしていると、今度は亀頭を包んでいた手で肉棒の先半分を強烈にしごき上げてきた。
「~~~~~~~~っ!」
狂いそうな程の快感に視界が霞むが――今ここで力を抜いてしまえば、良くても俺、悪ければどこぞの不特定多数の他人の身体が一気に陽乃さんへ圧を掛けてしまう。それは避けたい。その一心で、腰を震わせながらも必死で今の体勢を保つ。
「…………」
陽乃さんは俺の顔を見ながら、何か考えこんでいる。
「……比企谷くん、良いの? もう出ちゃうでしょ?」
陽乃さんの言う通りだ。正直もう、8割方出かかっている。
でも、それでも。
「……ここでこの手を離す訳にはいかないんで。もし出したら……後処理の手伝いお願いします」
にひっと不自然に笑って言うと、陽乃さんの動きがぴたりと止まった。妙な緊張感に包まれたまま数秒経つと、
「……ん、そっか」
とさらりと言って、手を離し、俺の肉棒をパンツの中に収め、チャックを閉めた。コートの前面だけは開いた状態で、陽乃さんがするりと抱き付いてきた。今度はいたずらっぽくなく、まるでただ甘えるような仕草だった。今さっきまでとの雰囲気の違いにとくんと心臓が鳴る。
「……雪ノ下さん?」
艶やかな黒髪とつむじに向かって呼び掛けると、陽乃さんが顔を上げた。その表情は穏やかで優しい。
「ん、比企谷くん、かっこいいね。怒りもせず、快感に負けもせず、守ろうとするなんて……中々ポイント高いぞ」
「……っ」
にっこり微笑むその表情は凶悪なくらいに可愛くて。
ここから続けられた追撃に、更に理性がぐらつく。
「……ここまで頑張ったご褒美に、もうわたしを壊すくらいの勢いで抱きしめても良いよ?」
「……え……っ」
安心した所で、違う角度からのボディブローを浴びせられる。
俺の胸に顔を埋めて、すりすりとしながら甘えた声で誘惑を続ける。
「ねえ……そんなにわたしのこと抱きしめたくないの?」
「や、だから、そんなことしたら雪ノ下さんが」
「わたしね」
陽乃さんが俺の言葉に割って入る。まるでそんな言葉を聞く必要は無いと言わんばかりに。
そしてすうはあと息を吸って、潤んだ目でとびきりの爆弾を放り込んできた。
「わたし……比企谷くんなら、良いよ?」
「…………っ!?」
なんてずるい言葉を……! 首を傾げて尋ねる陽乃さんの魅力は、わざとなんだとどれだけ心から分かっていても、今まで築き上げてきた自衛意識がどれだけ分厚くても、それを軽々と突き破ってくる。
ずがんという衝撃が頭に走ると同時に、電車ががたんと揺れた。そしてそれを合図に、壁に付いていた手をぱっと離して、そのまま陽乃さんの背中に回して――
ぎゅっと、ではなく、ぎちゅっと言うくらいの強さで。
陽乃さんを、強く強く抱きしめた。
――と、その瞬間。
「――――――あっ……これ、やばっ……」
陽乃さんは耳元で小さな声を上げて、きゅっと強くしがみついてきて、全身をがくがくと震わせた。息遣いを荒くしながら目をしばたたかせる様子が、事態の異常さを物語っている。
「ゆ、雪ノ下さん……?」
予想外の反応に面食らって陽乃さんの顔を見ると、その目は虚ろな色を孕んでいた。そして口を数回ぱくぱくと開いて何か言ったような仕草を見せたかと思うと、そのままはらりと目を閉じた。彼女の身体からもがくんと力が抜ける。
……え、まさか、これって……?
事態を呑み込めていないうちに電車はまた止まり、空気を読んでいるかのように乗客が一気に降りた。車内が座れる程に空いた為、俺は陽乃さんの肩を抱いて、慌てて空いた席に腰を下ろす。
「…………」
焦りで誤魔化していたつもりだが、それでも感じてしまう。
陽乃さんから漂う女性の匂いが、明らかに濃くなったことを。
続く。
はるのんでした。はるのん編は、書いていても展開が一番予想付かない感じがします。
古典部シリーズの……なんかこう、さり気なーく笑わせてくる感じが……悔しいです!w地の文の1行で噴きそうになるあの感じ、あの質感をどうやったら出せるかなーと考えています。「何しろ俺は、ホラーが苦手なのだ。」とか、もう!w
GJ部で言うと5巻冒頭のタマの「笑う怪物のことですね。」とか。
オリジナルの長編は今執筆が止まっていることもあり、今は小説を読んでいる時、キャラクターの色付けの特徴で気に入ったものを分析しています。
さり気なさで気に入っている本:
①古典部シリーズ
②喫茶店タレーランの事件簿シリーズ
③ホーンテッド・キャンパスシリーズ
④不思議系上司の攻略法シリーズ
⑤櫻子さんの足下には死体が埋まっているシリーズ
ゆるいキャラ付けが好きな本:GJ部シリーズ
圧倒的濃度:物語シリーズ
こんな感じです。俺ガイルはもはや書き過ぎて言葉に出来なくなってますw
キャラ登場時の特徴の出し方とか、その後キャラの硬さを崩した時のギャップとか(紫音さんやばし)を、セリフ・地の文で描かれる描写諸々で研究中です。読んで書いてというサイクルが出来ているので楽しいです。日々是精進。
そんな、本についての雑記でした。
エロ部分については……地の文の表現のバリエーションをもう一段階増やして、くどくない程度にセリフの合間の描写を増やしたいです。これも研究だなぁ……。
それでは、平日中日の水曜日も頑張りましょう!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
また明日(^^)!!