※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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 帰宅後。

 ふらふらと玄関のドアを開け、靴を脱ぎ、小さな声で「ただいま」と言い靴下を洗濯機に入れ、、手洗いうがい歯磨きをして、部屋に辿り着く。

「…………」

 無言。

 もくもくとコートを脱ぎ、ベッドの上に転がるように倒れ込む。取り敢えず横向きでごろり。

「……………………」

 無言。

 大の字に寝転がって、今日一日のことを思い出す。

 その結果。

「………………………………………………………………」

 ぶっちぎりの。

 無言。

 もはや、叫ぶことさえままならない。奉仕部で文集を作ろうなんてことになったら、文集のタイトルで「氷菓」とか付けちゃう勢い。そうです、わたしが関谷八幡です……。

 だめだ、ダメだ、駄目だ。

 もう、視覚も、嗅覚も、触覚も、聴覚も……味覚も、完全にあの人――陽乃さんに染まってしまった。

 一日前、いや数日前に戻れたら、どんなにか気が楽だろう。

 嫌だ……という訳ではない。この……何と言えば良いのか、自分の感情が、自分の心が、ぐらぐらに揺さぶられている感覚が、どうにも不安になる。一度転がって行ったら二度と戻れないのではという不安。それでも溺れてみたいと思ってしまう気持ちが湧いてくることによる不安。様々な感情が入り混じる。

 ――ここから、どうしようか……。

 煌々と光る蛍光灯を見ながらぼんやりと考えていると、LINEの通知が来た。

「誰から……って、げ……」

 いきなりの陽乃さんだった。嬉しいような不安なような嬉しいような……。

 内容がどうであれ、今見ると精神的によろしくなさそうだ。今すぐには見ないほうが……って、んん?

 もう一度画面をよく見ると、何件も来ているメッセージの最後に画像が添付されている。え、なに、画像、どういうこと?

「……うぐ……」

 小さく唸って、指を震わせながら画面に近付ける。好奇心に……本能に抗えないよぉ……!

 タップして、メッセージを確認する。

『ひゃっはろー』

 どうも。

『今日はありがとうね。すごく楽しかった。』

 普通にお礼言うのやめてください。どきどきするから。

『今わたしは服を脱いでます』

 なんで!? なんでそれ言ったの!?

『今、全裸になりました』

 実況なんだ!?

『興奮してるでしょ』

 既読機能がこういう時だけ疎ましい。多分この人にはメールでもバレるけど。

『それで明日のことなんだけど(全裸で話を切り出す)』

 ねえ、()の中身要る? 要らないよね? 

『明日は取り敢えず、学校が終わったら家に帰っておいでよ。話はその後です、隠館さん』

 脈絡ねぇの来たな。なんで急に人に疑われっぱなしの巨漢扱いになったの? 陽乃さん、総白髪じゃないよね?

『それじゃ、最後に』

 ん、ん、んんん……?

『(画像添付)』

『おやすみ♡』

「……………………」

 ええと。

 ティッシュティッシュ。

 はい、セーフ。シーツを赤く汚さずに済んだ。

 あの人、頭おかしいんじゃなかろうかって思ってたけど、うん。これはぶっちぎりでクロだわ。

 あの人、頭おかしい。

「……寝れるかな、今夜……」

 ベッドの上で無意味に正座をして、もう一度添付された画像を見る。

 画像は、陽乃さんが自分で撮った、胸を腕で隠しつつ寄せて上げた豊満で凶悪な谷間と、ついさっきの行為を思い出させる瑞々しい唇を映した写真だった。なんであの人本当に脱いでんだ。これ、多分、陽乃さんが抜いちゃダメと言わなかったら3回くらい抜いちゃうやつなんですけど。なんかもうこれを携帯の――

 もう1件メッセージが届いた。恐る恐る開いて見る。

『待受けにしても良いよ?』

 超高速で部屋を見回した。

 見られてる!? あれ、見られてるのかな!? ていうか口に出して言ってる訳でもないじゃん!? あれ!? どういうこと!?

 もう1件メッセージが届く。もうやだ……。

 恐る恐る開いて見る。

『あー、ダメだ。今日のこと思い返すと、何だか熱くなってきて……あ、濡れて……おやすみ♡』

 布団をかぶった。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!」

 はい、予定変更。

 アイ、スクリーム。

 何!? 何が熱くなったの!? 何が濡れたの!? そしてその後どうしようと思ったの!? 陽乃さんも我慢するって言って……って、これもうあのことしか考えてないじゃん、俺!

 全力で叫んだ所、ものの見事な壁ドンをされた。

「お兄ちゃん、うっさい」

「うぐ、すまん」

「もぐぞ」

「あれ!?」

 どっかで聞いたことある!?

「噛むぞ」

「部長さん?」

「背中蹴るぞ」

「綿矢さん?」

「やっぱもぐわ」

「え」

 すたすたと歩く音と、ばたんとドアが開く音を聞いて――反射でドアの方へ飛び出した。

 がちゃがちゃがちゃがちゃがちゃがちゃ。

「うおぉぉぉ! 小町、もぐな、もぐな、もがんでいい!」

 ホラーよろしく強制的に開けられようとしているドアを必死で押さえて叫ぶ。

「大丈夫だよお兄ちゃん、お兄ちゃんの表情から反省具合を読み取って、小町の判断でもぐorもぐを決めるから」

「もぐ一択じゃねえか! いつからそんなバイオレンスキャラになったんだ!?」

「お兄ちゃんが小町の安眠を妨げた、その瞬間から」

「ごめんなさい。ごめんなさい。マジでごめんなさい」

 中々のホラー展開に気を紛らわされて、この夜は妄想で頭を支配されるのを免れる……と思ったんだけど。

 小町事変を切り抜けた直後、ドアの鍵をかけて(夜這いによるもぎ、略してヨモギを防ぐため)、着替えて今度こそ寝ようとしたところ、陽乃さんから一言『……ふぅ』と送られてきたことで一遍に思考を引き戻された。え、それ何のため息? 何かやり終えた訳じゃないよね? なんなの? なんなの!

「……ふぅ」

 枕にぼふんと顔をうずめて、ため息を吐く。

 ……良いように弄ばれてんなぁ。

 何がやばいって、この感じが少し楽しいとか思い始めてることだ。

 取り敢えず、うつ伏せだと股間が痛いのですぐに仰向けになった。

 

       ×  ×  ×

 

 翌日はもう、朝からひどい有様だった。

 結局寝不足だわ、寝不足によって変に興奮してハイになって制服に着替えてもまだ勃ってるわでもう大変。

 学校で眠くて居眠りをすれば、夢の中ですかさず陽乃さんが出てきた。そんな出席率高くなくて良いんだけど。

 由比ヶ浜に起こされた時がっちがちに勃起してた時は本気で焦った。奉仕部永久追放になりかねんっていうか絶対なっちゃう。

 部活中に読んでいた小説で軽いキスシーンが出てきた時は本気で焦った。勃起した瞬間に雪ノ下に話しかけられて唇を見てしまって、姉妹だとどう似ててどう違うのかなどと考えていたら、「どうしたの比企谷くん、顔が罪を犯しているわよ?」と言って腕を抱かれた。顔が罪を犯すってどんだけやばい顔してたんだ俺。

 

       ×  ×  ×

 

 昨日の指示だと家に帰る所までしか言われてなかったので、取り敢えず帰宅する。

「ただいま」

「おかえりなさい、比企谷くん」

「…………」

「ひゃっはろー」

 ……なに、このSSのタイトルみたいなやりとり?

「お邪魔しました」

 なんだ、家を間違えたか、いっけね、高校3年生にして自宅を間違えるだなんておっちょこちょいだなー☆なんて思いながら外へ出ようとすると、陽乃さんに手首をむんずと掴まれた。振り返ると、陽乃さんがわざとらしく頬を膨らませて拗ねている。わざとと分かっているのに可愛すぎて死にそう。

 ……ていうか、もう。

 ツッコミどころが多すぎて。

「……ええと、状況を整理して良いですか……って、あれ?」

 陽乃さんの後ろに目をやると、小町が居ることに気付いた。腕を組んで何やらうんうん唸っている。

「ううん……雪乃さんでも結衣さんでもない、新たなお義姉ちゃん候補……と考えていいのかなぁ? そりゃあ超絶美人だしスタイルも抜群で頭も良さそうだけど、お兄ちゃんこの人得意じゃない気がするんだよねぇ……でも子どもは絶対イケメンor美人になるよねぇ……ううん……」

 家に入れてからする考え事じゃねぇ。あと先を見越し過ぎだ。

 陽乃さんは俺を家の中に引き入れてドアの鍵をかけると(なんでかけたんだろう)、小町の下に歩いていった。そして小町が「ほへ? どうしたんですか、陽乃さ――」と最後まで言葉を言い切らないうちに、豊かな胸元に小町を抱き寄せた。

「ほふぁああ……!?」

 腑抜けた変な叫び声が、くぐもって聞こえてくる。

「小町ちゃん、わたしのことお義姉ちゃんって呼んで良いんだよ? うりうり~」

 言いながら、ゆらゆらと緩慢に動く。立ったままやっているせいで、脱力した小町の腕がぷらぷらと垂れ下がって、なんかあずまんがみたいな絵面になってる。

「うへへぇ……お義姉ちゃん……」

 はえぇよ。胸が大きけりゃ良いのか……や、大事だけどね! とっても!

「おいこら小町、あっさり攻略されてんじゃねぇよ。あと雪ノ下さん、俺の小町を誘惑しないでください」

 陽乃さんがゆっくり顔をこちらへ向ける。聖母のような穏やかな表情に一瞬どきりとした。かと思いきや、いつものいたずらっぽい笑顔に戻る。

「ふふ、やだなぁ、わたしが誘惑してるのは比企谷くんだけだぞ」

「なんでそう言いながら更に強く抱きしめてんですか」

 小町がくぐもった声で「ふおぉぉ……高まるぅぅぅ……」とか言い始めた。やべぇ。

 ていうか陽乃さん、微妙に震えてんじゃん。小町にばっちり気を許してるってことだから良いことだけど。俺が気付くことも予想してるんだろうなぁ……なんて思っていると、陽乃さんが小町を解放した。小町はぷひーと息を吐いた後、「うへへ……楽園がここにはあるんやでぇ……」と何やら出身がぶれる喋り方でぶつぶつ呟いている。どうしたら元の天使の戻るのかしらん?

「それじゃ、比企谷くん、行こっか」

「あ、はい。どこに行くんですか? どっかの店ですかね」

 もはや為す術も無いので、さっさと移動することにする。

「うんにゃ、ここから歩いてすぐのとこだよ」

「え、どこですか? この近くにそんな程好い店なんて」

「くつろげると思うよ。君の部屋だし」

「ああ、なるほど……って、へ?」

 素っ頓狂な声を上げてしまう。

 歩いてすぐそこにも程があるけど。徒歩15秒とかだけど。

「ほらほら、案内してよ」

「え……」

 ゆるく言いながら、俺にふわりと抱き付く。全身を覆う柔らかな感触に固まった。小町は「にゃぁぁっ!?」と叫んでリビングに逃げていった。待って、逃げないで、置いて行かないで!

 俺の耳に柔らかな唇をぴったりと付けて、脳髄に直接囁いてくる。

「比企谷くんのお部屋で……良いこと、いっぱいしよ?」

「…………っ」

 ああ、これは、ダメだ。

 逃げられない。

「……は、い……」

 震える声で返事をすると、陽乃さんは微笑みながら離れた。部屋に向かう前の手洗いうがい歯磨きを入念に済ませる間、陽乃さんにリビングで待ってもらうことにする。戻ったら小町が再び楽園間違えた胸元にうずまっていた。何この既に定番扱いになってるコース?

「それじゃ……行きますか」

 ぽそぽそと喋ってリビングを出て部屋に向かって歩き出すと、ちょこんと袖を摘ままれた。陽乃さんの後ろではソファに寝そべった小町が「うへへぇ……この弾力は神の御業やでぇ……」とかほざいている。羽川さんに更生を依頼したいです。

 陽乃さんは上目遣いで見つめて、ふいと目を逸らした。そしてまた、ちらりと上目遣いをする。

「……よろしくね」

「…………………………………………はい」

 うっすら頬を赤らめているのはわざとですよね? ね?

 うん、楽しいこと。楽しいことって世の中いっぱいあるよな。そうだ、爽やかなことをやって遊べば良いんだ。

 人生ゲームとか、チェスとか、……ポッキーゲームとか、…………ツイスター、とか、………………王様ゲーム、と、か。

 ……思考がもう、ダメだ……。

 気付いたら俺の手を握っていた陽乃さんの足元を気遣いながら、自室のドアを開けた。

 

 

 

 続く。




盆と正月がいっぺんにやって来ました。

☆☆☆☆☆祝・連載半年&R-18小説累計ランキング1位達成☆☆☆☆☆
うおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉ!!!
長かったぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁ!!!

この半年はあまりに濃かったです。なんだかんだで休んだのが本当に1日だけってこれ奇跡ですね。
そして累計ランキング念願の1位。2位になった時は「まだ1000ポイント以上の差があるのか……」と長い道のりを覚悟していたんですが、本当に長かったです。
実は数日前に一瞬だけ1位になったんですが(たった1ポイント差で)、またすぐ2位になりまして、そこからが途方も無く長く感じました。これも沢山の皆さんが何度もお読みになり、感想を書いて、お気に入り登録をして、評価をして頂いたおかげです。
本っっっっっ当にありがとうございます!!!!!
これからも、何卒「俺ガイル 日常の何気ないエロス。」を宜しくお願い致します!!!

半年記念は何が良いかなと考えて、以前の記念日はゆきのん→いろはすと来ていたので、今回はアクセスを伸ばすきっかけになってくれた(と思われる)はるのんにしました。他のヒロインももちろんですが、本当にありがとうございます(敬語)。
はるのんは次回以降尋常でない程ぞくぞくする展開になります。本番まではまだまだ先……かな?

そんな感じです。取り敢えず今夜は祝杯!(コーヒーで)

ふぅ。

今日は出かけます。ぼちぼちゆきのん編といろはす編のエロ部分を……!

それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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