動揺しながらも陽乃さんの頭を撫で続けてしばらく経ち、ハッと我に返る。
「あ、小町のご飯……」
ぽそっと呟くと、俺の声に反応して陽乃さんがゆっくり顔を上げた。まるで寝起きのようなぽわぽわした表情で、さっきまでとのギャップがありすぎて、そして可愛すぎて、全くもって落ち着かない。
「ん……そうだね。よ~し、比企谷くん、取ってくるのだ~……」
「え、あ、ちょっと……っ」
まるで今のセリフが寝言であったかのように、再び俺の胸元に陽乃さんが顔をうずめる。う、動きづらい……可愛い……。
小町に申し訳無いが、正直今はほんのちょっとでもこの幸せな時間を長く……と思っていると、陽乃さんが顔をくりんと上げて、いたずらっぽく微笑んだ。
「早く取りに行かないと……また、搾り出しちゃうぞ?」
「イエス、マム。すぐ取りに行きます。すぐ行きます」
「よろしい」
女王様に命令される兵士のごとき勢いで返事をして、陽乃さんをそっと引き離して立ち上がる。脅し文句が恐ろしすぎる。
ドアを開けると、すぐ足元にお盆が置いてあった。料理は幸い冷めても美味しい類のものだった。部屋に戻ってテーブルに料理を置くと、陽乃さんが穏やかに目を細める。
「ん、美味しそうだね」
「そうですね、自慢の妹が作った料理なんで。心して味わってください」
学校で言ったら毎回どん引かれるようなセリフを言うと、陽乃さんはにっこりと微笑んだ。
「ん、そうだね。ありがたく頂きます」
「え、あ……はい。ぜひ」
うぐ……か、寛容だ……。
何これ、これが年上お姉さんという存在なのかと戦々恐々としていると、陽乃さんが小さな声で「あっ」と言った。
「そうだ、手、洗わないと」
「……それもそうですね」
俺はまだともかく、陽乃さんの手は今色々と……うん、卑猥だ。
陽乃さんの手をじっと見つめていると、陽乃さんがふっと妖艶に微笑んだ。
「比企谷くん。一緒に手、洗いに行こうか」
「……っ!? は、はい……っ」
喋っている言葉は極めて普通なのに、異様なまでに心拍数が跳ね上がった。
落ち着け落ち着けと言い聞かせながら立ち上がると――不意に、陽乃さんの手がこちらに伸びてきた。
× × ×
「ちょ……っ!?」
陽乃さんは手を伸ばして、既に閉めてあるジーンズのチャックにその細い指をかけた。事態を認識出来ない内にあっという間にチャックは下ろされ、それと同時に陽乃さんがぐいっと顔を寄せてきて、耳元で熱っぽい息混じりの声で囁く。
「比企谷くんが逃げないように、ちゃんと掴んでてあげる」
「っ!? な、何を……って、うおっ!?」
混乱がやまないうちに、陽乃さんが肉棒をパンツ越しになぞった。たったそれだけの行為で再び勃起すると、すかさずパンツの中に手を突っ込まれ、肉棒をずるりと引き出された。
――掴むって、そんな、犬のリードみたいな言い方しておいて……まさか、俺のを掴んでってことか……!?
いやな予感は当たるもので、陽乃さんは竿の部分をがっしりと掴むと、にこやかに微笑んだ。
「よし、じゃあ洗面所に行こうか」
「……っ、は、はぁっ!?」
全力で抗議の声を上げると、陽乃さんがいやらしく目を細める。
「大丈夫だよ。小町ちゃん、きっと今キッチンでしょ?」
「た、確かに、きっと今は後片付けをしてる頃でしょうが、いくらなんでもそれは……んぐぁっ!?」
問題なんてあるのかと言わんばかりに、陽乃さんが肉棒をぐいっと引っ張って歩き出し、ドアノブを回す。廊下の冷気が身体を撫でても、肉棒はまるで熱を失わないどころか、益々強烈な熱を帯びている。
「ちょ、ちょっと、雪ノ下さん、ほんとに……っ!」
泣きそうな声で言うと、陽乃さんが振り返ってにっこり微笑む。
「あはは、比企谷くん、なに泣きそうな顔してるの? ……ほーんと、可愛いんだから」
言うやいなや、肉棒をぎちゅっと握って、前に歩を進めながら亀頭をしごき上げてきた。
「うあぁぁぁ……っ、や、やばい、それ、やばいですから……っ!」
「ほらほら、頑張れ少年。廊下に撒き散らかしたくないでしょ?」
しごきながら、陽乃さんは楽しそうに歩き続ける。しかしある程度歩くとぴたりと止まり、くるりと振り向いた。穏やかな笑顔に心がざわめく。
「あ、そうだ。洗面所ってどこ? まだ聞いてなかったね」
「それは雪ノ下さんが勝手に歩き始めるか……ら……っ!?」
陽乃さんが不意に手を肉棒から離したかと思ったら、呆然と目で追ってしまう程美しく滑らかな動きで俺の後ろに周りこみ、俺の両腕を背中に回して片手でぎりりと極めて、もう片方の手で再び肉棒を握った。
「あーん、ごめんね、許して? ここからはちゃんと比企谷くんに案内してもらう……から……っ」
俺の耳元で艶っぽい声で囁くと、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てながら肉棒をしごき始めた。
「うぐぁぁ……っ!? ちょ、行きますから、行きますから……っ!」
今にも達してしまいそうな衝動に駆られながら歩き始めると、陽乃さんが今度はぞっとする程冷たい声で囁いた。
「あ、ちなみに洗面所に行くまでに出しちゃっても、止めずに歩かせるからね。手も止めないから」
「……っ」
底冷えのする声とそれ以上に恐ろしい言葉の内容に心臓が激しく高鳴る。
「わか……りっ、まし…………たっ、から……っ」
変わらず俺を快楽の泥沼に引きずりこもうとする手の動きに、腰をがくつかせつつも耐えながら、洗面所に向けて歩き始めた。
× × ×
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……着きましたよ」
「ありゃ、ざんねーん。ここまでだね。案内ありがとね」
洗面所に着くと、陽乃さんはあっさりと手を離した。
「さ、まずは比企谷くんから洗って」
「え、あ、はい」
なんでこの家に初めて入る陽乃さんがこんなに偉そうなんだ……と内心文句をぶつくさ言いながらモノをズボンの中にしまおうとすると、陽乃さんが俺の手をがしりと掴んだ。
「それは出したままだよ」
「え」
「良いから」
「…………」
……全然、良くない……。
しかしこの人には文句の言いようが無いので、大人しくオープン状態のまま手を洗う。後ろでぶつぶつと「やっぱりここで一回出させようかなぁ……いやでも流石に……」などという恐ろしい呟きが聞こえる。ここ、あなたにとっては人様の家の洗面所ですよね? そこんとこ把握してますよね?
実際は特に何かされる訳でもなく、恙なく手を洗い終えた。手当たりってこんなスリリングじゃないと思うんだけどな……俺の記憶違いかな……。
「じゃ、次はあたしだね。比企谷くんはわたしの後ろで待っててね」
「え? あ、はい」
なんで場所の指定を……? と思っていたが、その理由はすぐに分かった。
「…………」
陽乃さんが、わざとらしく尻を突き出して、手を洗いながらも緩慢な動きで形の良い尻を振り始めた。プリーツスカートの奥にある下着が見えそうで見えなくて、もどかしさと興奮が爆発的に高まる。
「う……」
まるで動物の求愛行動に魅せられたかのように陽乃さんの下へふらふらと2歩3歩と歩み寄る。陽乃さんはうがいをしているのかこぽこぽと音が聞こえるが、今はそちらに目をやる余裕も無い。外気に晒されたままの肉棒は反り返る程に勃起して、鈴口にはカウパーが新しくぷっくりと滲んでいる。
甘い水に惹かれる蛍のように、悩ましい動きを続ける美しい臀部に本能的に震える手を伸ばすと、柔らかそうな肉に触れる寸前で陽乃さんがくるりと振り返った。
「あ……んんっ?」
情けない程に名残惜しそうな声を上げると、陽乃さんがちゅっと軽く口付けをしてきた。そして俺の口に一本指を当てて、楽しそうに目を細める。
「んふっ。比企谷くん、えっちだねぇ~。……でも、まだまだここからだよ? じっくりね、じ~っくり……」
「…………っ」
唇に当たっている人差し指の温もりを感じながら、陽乃さんの言葉に身体を固まらせる。
陽乃さんがつと視線を下にやると、ふっと笑った。
「あ、それもうしまって良いよ。悪戯するタイミング逃しちゃったし」
「……………………はい」
振り回されっぱなしである。
すごすごとチャックを閉めている内に、陽乃さんは手を離した。洗面所の出口に立ったところで、陽乃さんがくるりと振り返る。その表情は優しく美しく、振り向いただけでそれが一枚の絵画として成り立ちそうな程に映える光景だった。
「ほら、帰ろ?」
「え、あ、はい」
陽乃さんが「行こう」ではなく「帰ろう」と言った事にひどく心臓を高鳴らせながら、どうせそれも計算だろうとは思いつつも、今日これからのこと、そしてもっと先の事まで妄想を膨らませてしまって、恥ずかしさで顔が熱くなった。
部屋に着くまでの短い間、陽乃さんは俺の手を握っていた。その手は柔らかくて温かく、もはや冬の廊下の寒さなどすっかり忘れていた。
続く。
はるのんでした。もうちょいしたらずっと書きたかったシーンに移ります。結構トリッキーな気配がしそうです。
平日ラストですね。頑張りましょう。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!